2007年03月01日

Bat Dayの話 フレンズ3-1その26

ジャニスが出て行った後、
チャンドラー: You still can't stand her, can you? (今でもまだ彼女のことが耐えられないんだな?)
ジョーイ: I'm sorry, man, I tried! I really did! (ごめんよ。頑張ってトライしてみたんだよ! 本当なんだ!)
チャンドラー: Well, you know, I appreciate you giving it a shot. (あぁ、ジョーイがトライしてくれたことには感謝するよ。)
ジョーイ: But, hey, look, you know, the good thing is, is that we spent the whole day together and I survived. And what's even more amazing, so did she. It was Bat Day at Shea Stadium. (でも、ほら、良かったこともあるんだよ。一日中一緒に過ごして、俺がその一日を無事に切り抜けたってことだ。さらにもっと驚くべきことは、彼女も無事に生き延びた、ってことだよ。今日は、(メッツの)シェイ・スタジアムでバット・デーだったんだよ。)
チャンドラー: Well, I guess that's something. (あぁ、それって意味のあることだと思うよ。)
ジョーイ: No man, that's huge! Now I know I can stand to be around her. Which means I get to hang out with you. Which is kinda the whole point anyway. (いや、意味がある、なんてもんじゃないよ。すごく大きなことなんだよ! 今、俺は自分が彼女の傍にいても平気だってことを知ってる。それは、俺がお前と遊べるようになるってことなんだよ。それがとにかく一番重要なことなんだ。)

stand は他動詞で「…を我慢する、耐える、辛抱する」。
フレンズ2-17その16 でも、stand について説明しています。
チャンドラーはしっかり見抜いていたようですね。
疑問文で「耐えられないのか?」と尋ねるのではなくて、「我慢できない、そうなんだろ?」という風に付加疑問文を使っているのが、その言葉に確信を持っていることの表れですね。
still は「まだ、今までどおり、依然として、今でもまだ、やはり」ということで、前の動作や状態がその時なお続いていることを示します。
ずっとジャニスのことを我慢できないと言っていたけれど、「(そんな風に打ち解けた風を装っている)今でも依然としてやっぱり我慢できないんだろ」と言いたいのです。
ジョーイは何とも情けない声を出していますね。
"I tried!" と言っているのが笑えます。
「仲良くなろうと努力してみたんだよ、やるだけのことはやってみたんだよ、頑張ってみたんだよ」ということです。
楽しそうな感じに見せてはいましたが、I love this woman. というセリフには、ちょっと無理してるかなぁ、という感じは確かに漂ってましたよね。

shot は「試み」。
give it a shot は「試してみる、試しにやってみる、挑戦してみる、一丁やってみる」という意味。
give it a try でも同じ意味になりますが、ここではジョーイの try という単語に対して、全く同じ単語を使って give it a try と「まんま」に返すのではなく、ちょっとバージョンの違う give it a shot を使ってみたのかもしれません。
同じ英単語を何度も使うと、文章が稚拙に感じられる、とよく言われますよね。
ここではそれほど深い意味はないのかもしれませんが、try を使うよりは「ひねり」がある感じがします。

次のジョーイのセリフが面白いですね。
ポイントは survive という動詞にあるのですが、まずは Bat Day at Shea Stadium について説明しなければなりません。
Shea Stadium 「シェイ・スタジアム」はニューヨーク・メッツのホーム・グラウンドです。
そう言えば、二人が帰ってきた時に、メッツの試合に行って来た、とジョーイは言っていましたよね。
Wikipedia 英語版: Shea Stadium
Bat Day は英辞郎に載っていました。
bat day=(米)(野球)バット・デー、バットの日。(観客が無料でバットをもらえる日)
"bat day at * Stadium" でぐぐると、いろんな球場名が出てきます。
どこの球場でもやっているイベントのようですね。
それで、改めて、bat day を英語で定義している文章を探そうと思ったら、これが意外と見つかりません。
"Bat Day is the day..." とか、"Bat Day means... " とかの形で、何か英語で説明されているかと思ったのですが、ないんですよ…。
野球チームや球場のオフィシャルサイトのイベント欄とかに何か説明があるかなぁ、とも思ったのですが、それもない。
英辞郎に書いてあるからそういう意味ってことでいいじゃん、とは言うものの、英語でどこかに説明してくれてないと何だか落ち着かなくて(笑)。
ウィキペディアでも全くヒットしませんしね。
アメリカ人には当たり前すぎて、今さら説明することもないのでしょうか?
どなたかアメリカのバット・デーでバットを配っているのを見たことがある、という方は教えて下さい。
年に何度くらいあるイベントなのかもわからないです…。

そのイベントのイメージは、何となく私にもわかります。
私の記憶では、マリナーズの試合で、ファンの子供たちにイチローの人形をプレゼントしているのをニュースで見たような気がします。
日本もファンサービスで握手会とかサイン会はやりますが、バットまではくれない気がします。(プロ野球の試合を見に行ったことがないので、全然知りませんが。)

以下に、Bat Day 関連の情報が載っているサイトをいくつか紹介します。

Social Science Research Network: Does Bat Day Make Cents?: The Effect of Promotions on the Demand for Baseball
「バット・デーは利益を生み出すか?:野球に対する需要におけるプロモーションの効果」という調査結果を記した記事なのですが、無料でそういうイベントを行うことで、何か効果があるのだろうか?と疑問に思う人がいる、ということでしょうね。

eBay「イーベイ、アメリカ最大のオークションサイト」で、メッツのバット・デーで貰ったバットが出品されていました。写真も載っています。
eBay: 60S-70S BUD HARRELSON AUTO. METS BAT DAY BASEBALL BAT

The New York Times Store: Bat Day, 1968 には、スタンドでファンがバットを振り上げている写真が載っています。

何となくバット・デーのイメージが掴めたところで(笑)、動詞 survive の話に戻りますが、survive は「生き残る、生き延びる」「(災害・事故などを)切り抜けて生き残る、(…から)助かる」という意味です。
ロングマン現代英英辞典には次のように書いてあります。(それぞれの日本語訳は私がつけたものです。)
survive:
1. to continue to live after an accident, war, or illness
例) She survived the attack.
「事故や戦争や病気の後に、生き続けること。」
例) 彼女はその攻撃を生き延びた。
2. to continue to live normally in spite of many problems
例) I'm sure she will survive this crisis.
I've had a tough few months, but I'll survive.
「多くの問題があるにも関わらず、通常どおり[普通どおり]生き続けること。」
例) 彼女がこの危機を無事に切り抜けると私は確信している。
つらい2、3ヶ月を過ごしているが、何とか切り抜けられるだろう。


ジョーイが自分のことを I survived と言っていたのは、実際に生死に関わる問題だったのではなく、many problems や crisis を生き延びた、切り抜けた、という意味で使っています。
一日中一緒にいて、イライラしっぱなしだったけど、何とかそれを乗り越えて特にトラブルになることもなく無事に戻ってきたよ、という感じでしょう。
ジャニスのことを、so did she と言っているのは、she survived, too. 「彼女も(俺と同じように) survive した。」ということですね。
ここでの survive はまさに基本的意味の「生きるか死ぬか」の話をしています。
DVDの日本語字幕では「殺さずに済んだ」、吹替では「バットで殴り殺すところだった」と訳されていましたが、まさにジョーイが言いたいのはそういうことで、今日、球場でバットを配っていたので、ジャニスにイライラしていたジョーイは、そのバットを使って、思わずジャニスを殴ってしまう[殴り殺してしまう]ところだった、すぐ手の届くところにそういう凶器があったのに、ジャニスはその危機を「生き延びた」(survive)と表現しているのが笑えるのですね。
確か大阪府堺市で、「包丁市」という、包丁をたくさん売っている市(いち)があったと思うのですが、「いやぁ、危ないところだったよ。今日行ったところでは包丁市をやっていたからね。」みたいな感じで、そういう場所に行って、そういう凶器を使わずに済んだよ、というジョークなのです。

チャンドラーはジョーイがジャニスとの外出を無事切り抜けたことを、something だと表現しています。
something は「意味のあること」という意味。
フレンズ2-18その22 で、mean something などの表現について触れています。
ロングマン現代英英辞典の語義は以下のとおり。
be (really/quite) something: (spoken) used to say that something is very good and impressive
「(口語)何かがとても良い、または印象的であると言う場合に用いられる」

ジョーイは、"No man, that's huge!" と、something であることを否定して、something なんて生易しいもんじゃない、これは huge だよ、と言っています。
フレンズ2-19その9 で、huge の説明をしていますが、とにかく「おおごとだ!、すごいことだ!、重大なことなんだ!」みたいなニュアンスですね。
the whole point は「ポイント全体」ということなので、「それがポイントの全てだ、それがまさに重要なポイントなんだよ。」という感じだと思います。

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posted by Rach at 13:45| Comment(4) | フレンズ シーズン3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする