2008年06月02日

脱ぐのか捨てるのか フレンズ3-13その24

リチャードの服にトマトが飛んで、そのシミをソーダ水をつけて落としていたモニカ。
モニカ: Umm, you've got some on your pants. (えーっと、パンツにもトマトがついてるわ。)
リチャード: I'll just throw them out. (パンツは捨てちゃうことにするよ。)

昨日の続きです。

この I'll just throw them out. の部分、DVDの日本語字幕では「脱いで落とす」、日本語音声(吹替)では「脱いで洗ってくる」と訳してありました。
ただ、throw out は通常、「捨てる、処分する」という意味で使われることが多いように思います。

ロングマン現代英英辞典では、
throw somebody/something out (phrasal verb):
to get rid of something that you do not want or need

つまり「欲しくないもの、要らないものを取り除く・処分すること」。

同じ throw という動詞を使った句動詞の throw off の場合は「脱ぐ」という意味があるようですね。
研究社 新英和中辞典では、
throw=(他動詞)(+目+副)(衣服などを)急いで着る (on)、(衣服などを)急いで脱ぐ (off)
He threw on [off] his bathrobe. 彼は急いでバスローブを身にまとった[脱ぎすてた]。

同じ「脱ぐ」という意味がロングマンでは以下のように出ています。
throw somebody/something off (phrasal verb):
to take off a piece of clothing in a quick careless way

つまり、「すばやく無頓着に服を脱ぐこと」。
throw 「投げる」という動詞なので、「さっと」「ぞんざいに」「乱暴に」「急いで」という感触が出るのでしょう。

ですから、throw them off なら「脱ぐよ」で、「脱いで洗うよ」「脱いで別のパンツにはき替えるよ」というニュアンスも可能かと思うのですが、ここでは throw thme out となっているので、やはり「捨てる」なのかなぁ?と。

throw off と throw out を比べてみた場合も、throw は「何かをすばやくぞんざいに扱う」感じが出ていて、off だと「分離」、out だと「外へ」という感覚ですね。
「パッとはずす」感覚が throw off、すなわち「脱ぐ」で、「パッと外に放り出す」感覚が throw out、すなわち「捨てる」ということなのだと思います。

フレンズ2-13その14 では、
モニカ: I'll help you fix your sweater. (あなたがセーターを直すのを手伝うわ。)
レイチェル: I'll help you...throw out your purse. (私があなたが・・・カバンを捨てるのを手伝うわ。)
というやり取りがありましたが、ここでは明らかに「捨てる」という意味で使われています。

ここからは私の勝手な推測ですが、訳者のかたは「捨てる」という結論はあまりに早急に過ぎる、というか、極端すぎるので、無難な結論「脱ぐ、脱いで洗う」というニュアンスとして訳されたのかな、と思います。

リチャードの意図は、「今ここでモニカにソーダ水でこすって汚れを落としてもらうのは断念するよ。」ということです。
場所が場所だけに(←しつこい…笑)、パンツをはいたままこすってもらうわけにはいかないから、ということですね。
リチャードは(恐らく)経済的に裕福で、「もうシミになってもいいよ。捨てちゃうからいいよ。」と言う意味で throw out を使ったのでしょう。
でも、普通の感覚で考えた場合は、トマトのシミがちょっと飛んだくらいで、いきなり「捨てる」というのも飛躍が過ぎる気がするし、普通なら、「洗濯する、クリーニングに出す、普段着に使う」みたいなことを言いそうにも思うのですね。
話の流れとしては「ここでシミ抜きをするのは断念する」ということさえわかればいいので、極論を言えば、海外ドラマの日本語版を制作するに当たっては、「脱ぐ」でも「捨てる」でもどっちでもいい、とも言えるわけかなぁ、と。
(この「どっちでもいい」という話については、明日、語ります。)

私の解釈としては、やはりリチャードは「捨てる」という意味で言っているのだろうと。
ただその throw out というのは単なる言葉のアヤで、「捨てるからいいよ」「そうね、捨てちゃって」と二人が言い合うことで、お互い、ヘンな気を起こさないように気をつけましょうね、と自重している感じ、またヨリを戻してしまって、ことが複雑になるくらいなら、これを捨てちゃった方がましだね、みたいな気持ちを二人とも持っているのかな、という気もしました。

throw them out と言った後、モニカは玄関・外の廊下の方を親指で指差して、そうするしかないわね、という感じで、「そっちよね、外よね。」みたいな仕草をしています。
モニカが外を親指で示す仕草がまさに out というニュアンスを出していて、やはり「捨てる」「放り出しちゃう」という意味で使っていると解釈した方が自然かな、と思うのですが、どうでしょう??


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posted by Rach at 13:09| Comment(2) | フレンズ シーズン3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月01日

声が次第に小さくなる フレンズ3-13その23

モニカ: Hold on a second, just put a little club soda on it. (does so) Get to it right away. It should do... the trick. (ちょっと待って。ちょっとそのシミにソーダ水[炭酸水・クラブソーダ]を少しつけてみるから。 [ソーダ水をつける] すぐにシミに染みこむわ。それは効き目があるはずよ。)
(She is rubbing his chest and her voice trails off into silence, a long pause follows.)
モニカは彼の胸をこする、そして、彼女の声は次第に小さくなって黙り、長い絶え間(ポーズ)がその後に続く。
リチャード: What? (何?)
モニカ: Umm, you've got some on your pants. (えーっと、パンツにもトマトがついてるわ。)
リチャード: I'll just throw them out. (パンツは捨てちゃうことにするよ。)

club soda というのは「ソーダ水」。
ロングマン現代英英辞典では、
club soda: [uncountable and countable] water filled with bubbles that is often mixed with other drinks (synonym: soda water)
つまり、「泡(気泡)で満たされた水、しばしば他の飲み物と混ぜられる。同義語 soda water」
私はよく知らないのですが、そういうソーダ水を使うとシミが取れるんでしょうかねぇ? わかるような気はしますが。
get to it は「it=シミに到達する」というニュアンスでしょうか。
洗剤が汚れに到達して、それに染み込み、汚れを落とす、みたいなことかなぁ、と。

do the trick は日本語的に言うと「トリックを行う」みたいな感じになるでしょうか。
英辞郎には、
do the trick=功を奏する、効き目がある、効く、成果を上げる、目的にかなう、間に合う、目的を達する、うまくいく
という語義が載っています。

ト書きに書いているように、汚れを取ろうと胸を rub しているわけですが、リチャードの体を触ることで、過去に恋人であった頃の記憶が蘇ってきたのでしょう。
それで、何とも複雑な気持ちになって口数が少なくなり、ついには沈黙してしまいます。

trail は「通った跡、痕跡(こんせき)、踏みならされてできた道」という名詞ですが、他動詞では「…を引きずる、…の跡を追う、追跡する」という意味があり、また自動詞では特に「trail off [away] into 名詞」の形で「(音などが)次第に薄れて…になる」という意味になります。
この場合は、音が次第に薄れて沈黙する、黙る、ということです。
her voice trails off into silence, a long pause follows. というト書き、なかなかノンネイティブには出て来ない表現だと思います。

さらには、今度はパンツ(と言っても下着の方ではないですが)についているのも発見してしまったので、そこをそんな風に rub しちゃマズいな、という予感があるのでしょう。
下半身は触っちゃだめだ、その気になっちゃいそうで危険だわ、みたいなことです。
DVDの日本語は「股のところにもついてる」と訳してありました。
ただパンツについているだけではなく、その場所がソコ(笑)であるために、こすって落とすことができないのよ、というニュアンスが出るように、あえて「股」という言葉を使っているでしょうね。

pants という言葉でそれを察したリチャードも、それは「友達」としてはヤバイかなと思ったので、もうこうなったら、それをこすって落とそうとすることは考えないで、「ただ throw out することにするよ」という意味で、I'll just と言っています。
throw them out の them は pants という複数形を指す代名詞です。

この部分、DVDの日本語字幕では「脱いで落とす」、日本語音声(吹替)では「脱いで洗ってくる」と訳してありました。
ただ、throw out は通常、「捨てる、処分する」という意味で使われることが多いように思います。

I'll just throw them out. は「脱ぐ」のか「捨てる」のか?について、長くなるので明日にします。


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posted by Rach at 15:48| Comment(3) | フレンズ シーズン3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする