2009年03月10日

脱構築理論 フレンズ3-19その2

ジョーイは自分が出演することになる演劇[芝居]の劇場に来ています。
共演者の女性ケイトと話をするジョーイ。
ジョーイ: So the ah, play's pretty great, huh? (で、この演劇はかなりすごいよね?)
ケイト: Oh, yeah. I love Jennifer Banberry's work. She's so brilliantly incisive when it comes to deconstructing the psyche of the American middle class. (えぇ、そうね。私はジェニファー・バンベリーの作品が大好きなの。アメリカ人の中流階級の心理を脱構築理論を用いて分析することに関しては、彼女は素晴らしく鋭いもの[鋭敏 or 痛烈だもの]。)
ジョーイ: Oh, forget about it. She rocks! (あぁ、そんな(小難しい)ことはともかく。彼女はノリノリなんだよ!)

when it comes to は「…のこととなると、…に関して言えば、…にかけては」。
incisive は「鋭敏な」「(言葉など)鋭い、痛烈な、辛らつな」。

deconstruct は、construct 「建設する、構成する」に、「否定、逆転」のニュアンスである de- という接頭語がついたもの。

今回のセリフでは、演劇の話の中で使われていて、deconstruct は、文学の解釈方法のことを意味するようです。

研究社 新英和中辞典では、
deconstruct=(文学作品などを)脱構築(deconstruction)の方法で分析する
そして、その deconstruction については、
deconstruction=脱構築(構造主義後のテキスト分析の方法論の一つ)
と出ています。
英辞郎の deconstruction の語義説明にも詳しく書いてありました。

LDOCE (Longman Dictionary of Contemporary English) では、
deconstruction: [uncountable]
a method used in philosophy and the criticism of literature which claims that there is no single explanation of the meaning of a piece of writing

つまり、「哲学や文学批評で使われるメソッド[方法・手法]。そのメソッドは、一つの文書の意味のたった一つの説明は存在しないと主張する。」

LDOCE には、deconstruct という動詞形は載っておらず、名詞形 deconstruction も、上に挙げた a method の意味しかありません。
ですから、通常の会話で使われる言葉ではなく、もっぱらそういう哲学的な意味として使われるようです。
「脱構築」という日本語にも、一般には使わない哲学的な雰囲気が漂っていますよね。

また、ウィキペディアにもあります(↓)。
Wikipedia 日本語版: 脱構築

その定義は哲学的な要素も多く、ここでは、deconstruct の学術的・専門的な意味まで理解する必要はありませんが、ただ、ケイトが文芸評論の専門用語を使って、この芝居の感想を述べていることがわかればいいわけです。
この一文を聞くことで、ケイトは演劇についての確かな知識を持っている、きちんとしたところで演劇を学んだ経験がある、ということがわかるのですね。

それに対してのジョーイのセリフですが、Forget about it. は「そんな小難しい感想・分析のことは忘れなよ」みたいなことでしょうか。
rock は「ロックする、ロックンロールする」みたいなことで、その作者、脚本家のことを、「彼女はロックだぜ、ノリノリだぜ、イケてるぜ」みたいに褒めているということです。
ご存知の通りジョーイは、どこかの学校できちんと演劇の勉強をしたことがないので、そういう専門用語はわからない、だから、ケイトの話に合わせることができないし、多分、ケイトの話の内容もよくわかっていないでしょう(笑)。
それがこのジョーイの返事に出ている、ということです。


ケイト: Where do I know you from? (あなたをどこで知ってるのかしら?)
ジョーイ: Dr. Drake Remoray? Days of Our Lives? Voted most datable neurosurgeon by Teen Beat? (ドクター・ドレイク・ラモレーだろ? デイズ・オブ・アワ・ライヴズの? ティーンビート誌で、デートしてもいい[デートできる]神経外科医の1位に選ばれたんだぜ。)
ケイト: No, that's not it. So you're a soap actor. Well, this must be pretty exciting for you, being in a real play, hmm? (いいえ。それじゃないわ。それじゃあ、あなたはソープアクター[ソープオペラの俳優]なのね。じゃ、今回の演劇はあなたにとって、とってもエキサイティングなものに違いないわね。本当のお芝居に出られるんだから。)
ジョーイ: Hey, I've done plays before. I'm a serious actor. (おい、俺は前にも芝居をしたことがあるんだぞ。俺はシリアスな[真面目な・真剣にやっている]俳優なんだ。)
ケイト: That infomercial! For the milk-carton-spout thing! You're-you're-you're the guy that doesn't know how to pour milk! (あのインフォマーシャルね! ミルク・カートンの注ぎ口のやつの! あなたは、あなたは、ミルクの注ぎ方を知らないあの男性ね!)
ジョーイ: See, I actually can pour milk. But I got you believing that I couldn't. Now, see, that's acting. (いいか。俺は実際にはミルクを注ぐことができるんだよ。でも、俺はそれを出来ないと君に信じさせた。ほら、わかるか、それが演技なんだよ。)
ケイト: Right. At the end, you choked on a cookie. (そうね。最後に、あなたはクッキーをのどに詰まらせてたわよね。)
ジョーイ: Yeah, that was real. (あぁ、あれは(演技じゃなくて)ほんとだったんだよ。)

Where do I know you from? を直訳すると、「私はあなたをどこから知ってるの?」ということで、「私はあなたを知っているようなんだけど、それはどこからかしら?」というニュアンスですね。
何だか顔に見覚えがあるんだけど、あなたをどこで見たのかしら、ということです。
それに対して、ジョーイは自分の一番の当たり役の、Days of Our Lives のドクター・ラモレーのことを自慢げに話します。

datable は辞書を見ると「年代測定ができる」などと出ていますが、今回はそういう意味ではなくて、いわゆる「デート」ができる、という意味でしょうね。
デートしたい、というよりも、デートすることが可能な、というニュアンスでしょうか?

Teen Beat は名前からわかるように、ティーンエイジの読者向けの雑誌です。
Wikipedia 英語版: Teen Beat
ウィキペディアに、It is a "sister publication" of Vogue. と書いてあるので、あのヴォーグ誌の姉妹誌、妹分のようですね。

Voted most... by Teen Beat は、「ティーンビート誌が行った投票で、最も票を集めた、最も…な人に選ばれた」ということ。
neurosurgeon 「神経外科医」は、お堅い職業なので、普通はティーンの恋愛対象にならない感じだけれど、ソープオペラの登場人物だったラモレーはティーンに人気(?)で、「彼ならデートしてもいいと思う」という投票で1位に選ばれた、ということでしょうか。
もしくは、神経外科医のようなプライドの高そうな人は、小娘のようなティーンとデートしてくれなさそうだけど、ラモレーならデートしてくれそう、という意味の、datable ですかねぇ?

Days of Our Lives は有名なソープオペラ(アメリカで実在するドラマ)なので、ジョーイをその番組で見たわけじゃないけれど、彼がソープオペラに出ている俳優だ、ということはケイトにもわかったのですね。
それで、今回のようなお芝居、舞台に出ることができることは、exciting でしょ、と言っています。
ケイトは、ソープオペラの俳優は、舞台俳優よりも格下だと思っていることがわかります。

ジョーイの顔をじーっと見ていたケイトは、ジョーイがインフォマーシャルに出演していたことに気付きます。
俺はシリアスな役者なんだ、と力説した後に、インフォマーシャルのことを思い出されてしまうというのが、何ともタイミングが悪い(笑)。

ケイトが言っているインフォマーシャルは、インフォマーシャル フレンズ3-4その1 に出てきました。
このセリフを聞いて、観客もそのインフォマーシャルのことを思い出すことができます。
これが連続ドラマの面白さでもありますね。

ミルクを注げないどんくさい役ね、と笑うケイトに、ほんとは注げるけど、それを注げないように見せている、君が今「ジョーイはミルクを注げない」と信じているように、俺は注げないように見せる演技が上手いんだよ、とジョーイは言っています。
ですが、最後にクッキーをのどに詰まらせた、というのは、演技ではなく本当だった、というオチがついていますね。


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2009年03月08日

等身大ストームトルーパー フレンズ3-19その1

シーズン3 第19話
The One With the Tiny T-Shirt (億万長者とデート!)
原題は「小さなTシャツの話」

[Scene: The hallway between the two apartments, Pete and Monica are
returning from their date.]
2つのアパートの部屋の間の廊下。ピートとモニカはデートから帰ってきたところ。
ピート: ...so y'know, that's why, within a few years, that voice recognition is gonna be pretty much standard on any computer you buy. Y'know, so you could be, like-like, "Wash my car." "Clean my room." It's not gonna be able to do any of those things, but it'll understand what you're saying. (だから、ほら、そんなわけで、2、3年の間に、購入するどのコンピューターにも、音声認識がかなり標準装備されるんだ。ほら、だから、例えば、「車を洗って」「部屋を掃除して」っていうのも可能なんだ。コンピューターは今言ったようなことは何もできないだろうけどね、でも、人の言っていることは理解できるだろう。)

ピートは、有名なソフトを開発した億万長者なので、さすがはコンピューターに詳しいらしく、voice recognition 「音声認識」について語っています。
音声認識(システム)が、今にコンピューターのスタンダードになるだろう、と言っているのですが、話にはちゃんとオチがついています。

音声認識という技術は素晴らしいので、「車を洗え」「部屋を掃除しろ」という voice を recognize することはできるのですが、その命令を実行できるかと言えば、それは別問題になるんだよね、と言っているわけですね。
言っている意味はわかっても、コンピューターがそれを実行するところまでは、まだ機械が進歩していない、ということで、コンピューターは命令を聞いて車は洗うことはできないけど、車を洗えと命令されていることは認識できるんだ、ということです。


ロス: Hey, how'd the date go with Mr. Millionaire? (ねぇ、ミスター・ミリオネア[ミスター億万長者]とのデートはどうだった?)
チャンドラー: "Mr. Millionaire. New, from Snooty Playthings. Third wife sold separately." (「ミスター・ミリオネア、スヌーティ玩具からの新製品です。第三夫人は別売り。」)

ピートと言えば、億万長者のイメージがまっさきに浮かぶので、ロスは彼のことを、Mr. Millionaire と言っています。
そのネーミングが気に入ったチャンドラーは、そのネーミングを使ったCMを考えたようですね。
plaything は、play 「遊ぶ」 thing 「もの」からわかるように、「おもちゃ、遊び道具」のことです。
snoot は「俗物、横柄な人」で、その形容詞形が snooty 「俗物的な、横柄な」ですね。
Snooty Playthings と大文字になっているのは、そういう名前のメーカーやおもちゃ屋さんがある、というイメージでしょう。
もちろん、「俗物的なおもちゃ屋」という名前のおもちゃ屋さんは存在しませんが、「俗物玩具(店)」という名前のおもちゃ屋・おもちゃメーカーから、ミスター・ミリオネアって名前の人形が発売されそうだよねぇ、ということです。

new は新発売、sold separately は「別に売られる」、つまり「別売り」。
third wife 「第三夫人」は、お金持ちには妻がたくさんいるイメージですね。
人形は、男女のカップルとして売られることも多いです。
フレンズ2-6その10 では、バービーとケンの話をしましたが、そのイメージで、ミスター・ミリオネアも、別売りで、第三夫人も売ってるよ、ということですね。

チャンドラーの言い方は、be動詞などが省略された簡潔な表現が使われていますが、それが「おもちゃのCM風」だということです。
ミスター・ミリオネアというネーミングを聞いて、とっさに宣伝コピーを作ってしまう彼の才能が光ります(笑)。


モニカ: He's great. I mean, we have such a good time together. He's so funny and so sweet. And I'm not attracted to him at all! (ピートは最高よ。だって私たちは本当に素敵な時間を一緒に過ごしたの。彼はとても面白くて、とても優しくて。そして、私は彼に全く魅力を感じないの!)
ロス: Still? (いまだに?)
モニカ: Noo! It's driving me crazy. In every other way, he's, like, the perfect guy. He has everything. Plus, he actually has everything. (魅力を感じないのよ! それが私をイライラさせるの。それ以外のあらゆる点で、彼は、そう、完璧な男性なのよ。彼は全てを持っているの。それに、彼は実際に全てを持っているのよ。)
チャンドラー: Life-sized Imperial Storm Troopers from Sharper Image? (シャーパー・イメージの等身大の帝国軍ストーム・トルーパーは持ってる?)
モニカ: Two. (2体持ってる。)
チャンドラー: Wow. Can Joey and I put them on and fight? (わお。ジョーイと俺がそれを着て、戦うことができる?[それ着て、戦わせてくれる?])

ピートの長所を語るモニカ。それだけ長所があるのに、彼には全く魅力を感じない、異性としての彼に惹(ひ)かれない、と言っています。
ロスの Still? は、「まだ依然として、いまだに」というニュアンスで、まだ心境に変化はないの? いまだに魅力を感じない状態のままなの?ということです。

He has everything. Plus, he actually has everything. という表現が面白いですね。
最初の He has everything. は、一緒に楽しい時を過ごせて、面白くて優しくて、恋人の条件としては最高のものを持っている、という意味ですね。
actually の入っている文は、そういう抽象的な資質の話じゃなくて、彼は実際に、物質的にもすべてを所持しているのよ、という感じでしょう。
億万長者だから、全てのものを所持している、欲しいものは全部手に入れている、というイメージです。

そのモニカの言っている意味がわかって、チャンドラーは、Life-sized Imperial Storm Troopers from Sharper Image も持ってるの?と尋ねます。
これは日本人にもおなじみのスター・ウォーズネタなので、英語で理解できた人も多いかもしれません。

Imperial Storm Troopers とはこちら(↓)。(残念ながら写真はありません)
Wikipedia 日本語版: 帝国軍ストーム・トルーパー
白い装甲服を着た銀河帝国軍の機動歩兵のことですね。
以下のサイトには、写真が載っています。
Stormtrooper - Wookieepedia, the Star Wars Wiki
映画の公開前後のイベントで、大勢のファンがこのスーツを着て練り歩いていたりしますよね。

Life-sized は「等身大の」。
その後のセリフで、put them on and fight と言っていることから、等身大の置物ではなく、人間が着ることのできるスーツのことだということがわかります。

Sharper Image というのは会社名のようです。
Wikipedia 英語版: The Sharper Image
上のウィキペディアによると、an American retailer that specialized in high-end electronics and gifts つまり「ハイエンドの電化製品やギフトに特化した小売業者」。
its bankruptcy in 2008 という記述もあり、2008年に倒産したようです。
もちろん、今回のフレンズ3-19 の放映当時(97年)はまだ倒産していませんので、「販売していた会社が倒産し、入手困難になった超レアもの」という意味ではありません。
等身大スーツは、有り余るほどのお金を持っている人が所持している「マニアックで高級なものの象徴」なのでしょう。
シャーパー・イメージ(社)の、という限定がついているところがマニアック、そして2体持ってると言われて、それを着て戦いたい、というのが、少年っぽくて可愛いですね(笑)。

The Sharper Image の倒産についての、ニューヨーク・タイムズの記事はこちら(↓)。
The Sharper Image Files for Bankruptcy Protection - New York
Times -

file for bankruptcy protection はニュースでよく聞く表現です。
その記事の中に、R2-D2 Interactive Droids ($129) という商品名が登場します。
R2-D2 と言えば、C-3PO と一緒に出てくる白いドロイド。
interactive とあるので、こちらの声に反応したりするのでしょうか?
R2-D2 も扱っているのなら、きっとトルーパーのスーツも扱っているんだろうなぁ、と想像できますね。

ちなみに、The Sharper Image の英語版ウィキペディアには、On February 19, 2008, the company filed for Chapter 11 bankruptcy という記述があります。

この Chapter 11 「第11条(チャプターイレブン)」については、「日向清人先生のビジネス英語雑記帳」の 2008年10月10日の記事 で、わかりやすく説明して下さっています。
日向先生のご説明では、
(a) 消滅に向かうものは「破産」(英語ならチャプターセブン)
(b) 再建に向かうものは「会社更生法」「民事再生法」(英語ならチャプターイレブン)

だとのことです。

ですから、上で説明した、ニューヨーク・タイムズの記事タイトル、The Sharper Image Files for Bankruptcy Protection は、Chapter 11 bankruptcy であることを考えると、「破産保護申請を行う」ではなくて、「会社再建手続の適用申請をする」と訳すべきなのでしょうね?

実際、The Sharper Image のサイトは今も存在しているようですから、消滅したわけではなくて再建中だということのようです。
アメリカのサイトはこちら(↓)。
THE SHARPER IMAGE: HOME at tsi (スタイリッシュなサイトです。音楽が流れますので、会社にいる方はご注意を(笑)。)
日本でも取り扱いがあるようです(↓)。
sharperimage.jp


ジョーイが歌を歌いながらモニカの部屋に入ってきて、またそのまま去っていきます。
ロス: I guess he must've gotten the part in that play. (思うに、あの芝居[舞台]での役をゲットしたに違いないね。)
モニカ&フィービー: Oh. (あぁ(なるほど)。)
チャンドラー: Yeah, either that, or Gloria Estefan was right. Eventually, the rhythm is going to get you. (そうだな。それか、もしくは、グロリア・エステファンが正しかったってことだ。最後には、そのリズムが君をゲットすることになる[君に取り付くことになる]って。)

子供っぽい話をしていたところ、そのもう一人の子供(笑)であるジョーイが、歌と踊りだけで去っていきます。
日本人でも、誰かが歌を歌いながらやってきてそのまま去っていったら、「あぁ、なんか嬉しいことでもあったのかな?」と思いますので、それと同じ感覚なのでしょうね。
トルーパーの着ぐるみで遊びたいヤツとか、嬉しそうに歌を歌いながら去っていくヤツとか、子供っぽいヤツらの集団だ、というところがフレンズの魅力でもあるわけです。

チャンドラーがセリフ内でヒントを与えてくれているように、the rhythm is going to get you とは、グロリア・エステファンの歌のことですね。
正確なタイトルは、Rhythm Is Gonna Get You のようです。
アマゾンにある下のアルバムに収録されています。
Gloria Estefan - Greatest Hits
グロリア・エステファンについてはこちら(↓)。
Wikipedia 英語版: Gloria Estefan

チャンドラーが言っているのは、確かに役が決まって喜んでいるのかもしれないし、グロリア・エステファンの歌のように、Rhythm is Gonna Get You の状態になって、リズムに取り付かれて、歌が頭から離れない状態になっているだけかもしれないな、ということですね。


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2009年03月06日

worthは前置詞? フレンズ3-18その7

[Scene: Phoebe's, Frank is watching TV, and he's very depressed as Phoebe enters.]
フィービーの部屋。フランクはテレビを見ている。フィービーが入ってきた時、フランクは非常に落ち込んでいる。
フィービー: Hey, Frank. Look, okay, I know that you think I did, like, this totally evil thing. But I so didn't. There's someone here who can explain this better than I can. (ねぇ、フランク。ねぇ、私が全く邪悪なことをしたってあなたが思ってるのは知ってるわ。でも、私は断じてひどいことはしなかったわ。このことを私よりもうまく説明できる人がここにいるの。)
アリス: Hi, Frank. (こんにちは、フランク。)
フランク: Hi, Mrs. Knight. (こんにちは、ナイト先生。)
アリス: Phoebe's right, Frank. I know it's hard to hear, but it would've been wrong to go through with it. I-I-I was being selfish. Even though we, we want the same things right now, in the future, we may not. (to Phoebe) Is that it, is that what it is? (フィービーは正しいわ、フランク。聞くのが辛いのはわかるわ。でも、結婚をやり通すことは、悪いことだっただろうと思うの。私は(あの時)自分勝手だったわ。たとえ、私たちが今は同じことを求めているとしても、(本当は)同じことを求めていないかもしれない。[フィービーに] そうよね? それが言うべきことよね?)

But I so didn't. の so は意味を強めています。
研究社 新英和中辞典では、
so (副詞)=[程度を表わして][強意的に](口語) とても、非常に、大変
(I'm) so sorry! ごめんなさい, すみません。それはお気の毒に。
You've been so kind. 本当にご親切にしていただきました。
My husband so wants to meet you. 主人がぜひお目にかかりたいと申しております。


この意味を強める so は、研究社の例文では、すべて so にアクセント記号がついています。
so の部分を強調して発音する、ということですね。
(アクセント付きの文字は文字化けするかもしれないので、上の引用では、太字にしました。)
ネットスクリプトでも、そういう強意の so は、SO sorry! のように大文字で書かれていることが多く、その部分を強調してしゃべっていることがわかるようになっています。
so sorry や、so kind のような使い方だけでなく、My husband SO wants to meet you. のように、want を強調することもできるのですね。
今回のフィービーのセリフ、But I so didn't. も、「あなたは私がひどいことをしたと思ってると思うけど、でも、私はひどいことはしなかった」という「しなかった」(didn't)ことを強調する so です。
日本語に訳すと、「絶対にしなかった」や「断じてしなかった」みたいになるかな、と思います。

アリスに挨拶する時に、フランクは、Mrs. Knight と言っています。
婚約者であった時は、アリスと呼んでいたけれど、婚約解消になった今は、元の先生と生徒の関係に戻ったので、先生に対する呼び名である Mrs. Knight を使っているのですね。

go through with は、英辞郎では、
go through with=(つらいことを)やり抜く、守り通す、果たす
例) The elderly couple were going to get married, but did not go through with it. 「老年のカップルは結婚しようとしていたが、果たせなかった。」

この例文、「年の差カップル」に変えると、今回のフランクとアリスの婚約解消にぴったりの文章になりますね。

I was being selfish. について。
これは、I was selfish. 「私はわがままだった。」というのと少しニュアンスが違います。
フレンズ2-19その1 で、
エディー: I don't think you're being fair! (そんなのフェアじゃないよ!)
というセリフがありました。
その過去記事では、「ハートで感じる」大西先生のご説明を使って、"You're unfair." と "You're being unfair." との違いについて語っています。

今回のアリスのセリフも、I was selfish. であったならば、「過去の私の性格・性質はわがままだった。」という意味になるようです。
過去の時点では、いつでもどんな時でも selfish であった、というような、その人の性格・気質について述べた表現になる、ということですね。
それに対して、今回のように、I was being selfish. と進行形が使われている場合は、過去の特定の瞬間についての言及で、「フランクと結婚しようと言った時、結婚するつもりになっていた時の、あの時の私はわがままだったわ。」と、ある瞬間の行為を指して selfish だと言うことになるので、本人の性格そのものを述べたことにはならず、「あの時の私はわがままでどうかしていたわ。」というようなニュアンスが出る、その時の行為が selfish であった、ということを示すことになるのですね。

アリスは自分の気持ちを正直に伝えているように見えて、そのセリフの後で、フィービーの方を振り返り、"Is that it, is that what it is?" と言っています。
これを聞くと、フィービーとあらかじめ打ち合わせをしておいた、フランクを納得させるためには、こう言えばいいのよ、と事前にフィービーに言うべき内容を決められていた、ということがわかりますね。
普通は、こういう不審な行動で、アリスはフィービーの言った通りのことを口にしているだけ、ということに気付くのですが、フランクはアリスと別れるということで頭がいっぱいでそのことに気付かないようです。
その後、フィービーの言われた通りに、言葉で納得させようとしたアリスですが、別れることが正しいという話をしながら、結局、二人はキスして抱擁してしまいます。
この後、盛り上がっている二人を残して、フィービーは自分の部屋を出て行ってしまいます。
二人を別れさせる作戦は失敗に終わった、ということですね。


[Scene: Chandler's bedroom, he's listening to the hypnosis tape again.]
チャンドラーの寝室。彼は催眠テープをまた聴いている。
催眠テープ: Cigarette's don't control you. You are a strong, confident woman, who does not need to smoke. (タバコはあなたを支配しません[コントロールしません]。あなたは、強く、自信に満ちた女性です。あなたはタバコを吸う必要がありません。)
ジョーイ: (He's recorded his voice on the tape) Joey's your best friend. You wanna make him a cheese sandwich every day. (he laughs) And you also wanna buy him hundreds of dollars worth of pants. (ジョーイはテープに声を録音していた) ジョーイはあなたの親友です。あなたはジョーイにチーズサンドイッチを毎日作りたくなる。[ジョーイは(テープの中で)笑う] そして、あなたはジョーイに、何百ドルもするパンツを買いたくなる。)
(Chandler wakes up and stares at the tape.)
チャンドラーは目を覚まして、(何だ今のテープは?という感じで)テープを見つめる。)

少し前のシーンで、夜中に起きたジョーイが、チャンドラーのテープの内容を聞き、このテープのせいで女性化していたことに気付きます。
その時、にやっと笑ったジョーイがたくらんでいたのが、このことだったのですね。
催眠術で、コインをゆらゆらさせながら、「あなたは眠くなーる、眠くなーる。そしてジョーイにパンツを買ってあげたくなーる。」と言っているのと同じ感じです。
声を吹き込みながら途中嬉しそうに笑っているジョーイの声までテープに録音されています。リアリティがありますね。
ちなみに、チャンドラーは、茶色い犬のぬいぐるみと一緒に寝ていますが、これも女性化の一環でしょうか?(笑)

hundreds of dollars worth of pants という表現について。
worth は「…の価値があって」という意味で使うことが多いですが、今回は名詞ですね。
研究社 新英和中辞典には、
worth=(名詞)(不可算) (価格のいくら)だけの分量、(…に)相当するだけ(of)
(例) a dollar's worth of this tea このお茶1ドル分
Give me ten dollars' worth of this cloth. この布地10ドル分ください。

と出ています。

LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
worth [noun] [uncountable]
ten dollars'/​15 cents' etc. worth of something:
an amount of something worth ten dollars, 15 cents etc.
例) $2,000 worth of computer equipment


辞書の例文では、dollars' のように、所有格のアポストロフィーがついていますね。
worth が名詞なので、ten dollars' worth で「10ドル”の”価値」になる、ということでしょう。
$2,000 というドルマーク表記の場合は、所有格のアポストロフィーをつけなくても、$2000 だけで(名詞を修飾する)形容詞の役割を果たす、ということでしょうかねぇ?

ジョーイのセリフには、所有格のアポストロフィーがついていませんが(DVD英語字幕にもついていませんでした)、hundreds of dollars が形容詞的に使われている、ということなのかなぁ?
でも、Macmillan English Dictionary には、
The fire destroyed millions of dollars' worth of equipment.
という例文が出ていますので、millions of dollars' とアポストロフィーがつくのなら、hundreds of dollars も、アポストロフィーが必要なのではないかな、と。

過去記事、トゥーウィークスノーティス フレンズ3-10その16 のコメント欄 で、「映画のタイトル Two Weeks Notice は、正しくは Two Weeks' Notice になるようだ」という話について書いています。
ネイティブでも、複数形の所有格のアポストロフィーを抜かすことがあるらしい、という話なんですが、今回のジョーイのセリフも、それでしょうかねぇ?

英英辞典の語義にあるように、「…の価値がある」という意味の worth は、worth ten dollars のような形で使いますね。
研究社 新英和中辞典には、
worth=【形】【P】 (用法) 目的語をとるため, 前置詞と考える人もいる
と書いてあります。
つまり、一応、形容詞に分類しているけれど、前置詞と考えた方がわかりやすい、という感覚ですね。

手元にある英英辞典を見てみました。
ロングマンでは、この worth は、adjective (形容詞)ではなくて、preposition (前置詞)に分類されています。
Merriam-Webster Online Dictionary も、前置詞でした。
Macmillan English Dictionary (マクミラン英英辞典)は、adj つまり、「形容詞」扱いですね。

worth の特殊な使い方を考えると、確かに前置詞として理解していた方が良いような気はします。

worth doing だと、「…する価値がある」ですね。
研究社 新英和中辞典の例文では、
Rome is a city worth visiting. ローマは訪れる価値のある町だ。
(用法) visiting の意味上の目的語は a city

とあります。
ちょうど、ピートとモニカが今回のエピソードでローマを訪れていたので、この例文を載せてみました(笑)。

フレンズ2-15その18 では、ついに結ばれるロスとレイチェルのセリフで、
ロス: Listen, I'm sorry. I had to work tonight. (ねぇ、ごめんね。今夜仕事があって。)
レイチェル: Oh, that's okay. You were worth the wait. And I don't just mean tonight. (いいのよ。あなたは待つ価値のある人だもの。それは今夜だけのことを言ってるんじゃないわよ。)
というのがありました。
そこでも、worth について少し説明しています。

ここで、worth と紛らわしい単語を二つ、おまけで説明しておきます。
worthy と、worthwhile です。

worthy は、形容詞か前置詞かよくわからない worth とは違って、まさに「形容詞らしい形容詞」です。
be worthy of で「…に値する、ふさわしい」。
名詞の前につけると worthy 「価値のある、尊敬・尊重すべき、立派な」という意味になります。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) の例文では以下のものが挙げられています。
The proposal is certainly worthy of consideration. 「その提案は確かに考慮する価値がある。」
a worthy opponent 「尊敬すべき対戦相手[競争相手]、好敵手」。


worthwhile も同じく形容詞ですが、これは、研究社 新英和中辞典によると、
worthwhile=時間と労力をかけるだけの値打ちのある、やりがいのある
という意味になります。

LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
worthwhile [adjective]: something that is worthwhile deserves the time, effort, or money you give to it
例) a worthwhile job

つまり、「worthwhile なものとは、それに与える時間、努力、金銭の価値があるもの」。
例は、「やりがいのある仕事」。

while という単語は、LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
while [noun]
a while a period of time, especially a short one

とあり、「間・期間、特に短い間」を指すようです。
「短い」というのが少々ひっかかりますが、while の「間」の意味から、worthwhile は何らかの時間をかける価値がある、というニュアンスになるのでしょうね。

以上、worth とその関連語に関する説明でした。


(Rach からのメッセージとお願い)
スピードアップ宣言! での予告通り、3-18 は、今日の その7 で何とか終わることができました。
「2週間で1エピソードを終える」というのをとりあえずやってみたのですが、いかがだったでしょうか?
セリフを選ぶことになる分、省略してしまったところも多いですが、これくらいのペースでエピソードを進んでいける方が、私としては楽しいような気がしました。
一つ一つの記事の長さがこれまでより長くなる傾向にあるようで、読む方は面倒くさいと思いますが…(すみません)。

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2009年03月04日

ダイレクトに言うのを避ける フレンズ3-18その6

フィービーの部屋に弟のフランクが来ていました。
フィービー: What umm, what happened? (何が、何があったの?)
フランク: Umm, Alice ah, she ah, called it off. (あぁ、アリスが、彼女が、結婚を取りやめるって。)
フィービー: Oh, no. Did umm, did she say why? (あぁ、なんてこと。彼女は理由を言ったの?)
フランク: Uh, no, not really. Just that I was too young, y'know. But I don't see how I could all of the sudden be too young, 'cause I'm older than I was when we first got together. (あぁ、はっきりと理由は言わなかったけど、ただ、俺が若すぎるから、って。でも、俺がどうやって突然若くなることができるのかわからないよ。だって、俺と彼女が初めて付き合った時の俺より、今の俺は年を取ってるんだから。)

結婚中止の話を聞いて、驚いたふりをするフィービー。
実際は、フィービーがアリスに結婚をやめるように言ったのですが、それを悟られないために、わざと Oh, no. と大袈裟に言っているのが、わざとらしい感じです。
すぐに理由を聞いたのは、フィービーに説得された、ということをアリスが話したかどうかが心配だったからですね。

アリスから「あなたは若すぎるから」という理由で結婚を中止しようと言われたフランク。
どうして突然そんな話が出てきたのか?とフランクは疑問に思っているようです。
年齢に関して言うと、自分とアリスが出会った時から日が経っているので、その分、俺は年を取っている、それなのにどうして今になって、年が若い、ということが問題になるのか?ということですね。
フランクとしては、そんな理由では納得できない、ということですが、少なくともアリスはフィービーに説得されたことは言わなかったことがここでわかります。


フランクがとても悲しそうなので、ついに真実を告げることにしたフィービー。
フィービー: Uh, well, I can tell you why. It's, it's because of me. But y'know what? I only did it because I love you, okay? (そうね、私は(なぜ結婚が中止になったかの)理由を言うことができるわ。それは私のせいなの。でも、いい? 私はあなたを愛しているから、ただそれをした[結婚を止めた]のよ。)
フランク: What? (何だって?)
フィービー: Umm, well I, I kinda had a little chat with Alice, and I sort of made her see why you two shouldn't be together, y'know. And you're gonna see it too, one day. You really, really will. (そう、私はアリスとちょっと話をしてみたりして、そして、あなたたち二人が一緒にいるべきではない理由を彼女にわからせた、って感じなの。そして、あなたもいつかそのことをわかるようになるわ。本当に本当にわかるようになる。)
フランク: Wait a minute, wait, this is because of you? (ちょっと待ってよ。待って。これは姉さんのせいなの?)
フィービー: Okay. ([覚悟を決めた感じで]そうね。)
フランク: Well, you, wait no, my mother didn't want us to be together, but the worst thing she ever did was tie me to the porch. (俺の母さんは俺とアリスを一緒にしたくなかったけど、母さんがした最悪のことは、俺を玄関にくくりつけることだった。)
フィービー: Okay, but... (そうね、でも…)
フランク: Wait, y'know what, I-I came to you because I thought you'd understand. Oh no! Y'know, I would storm out of here right now if-if I had some money or a place to go. (待ってよ。ねぇ、俺がここに来たのは、姉さんならわかってくれると思ったからなのに。あぁ、なんてこった。俺はたった今ここを飛び出すところだよ、もし、俺に金があったり、行くところがあったりしたらね。)

自分がアリスを説得した、という事情を話すフィービー。
セリフの中に、kinda (kind of) や sort of のように、断定を避ける表現、はっきりと言わずにぼかす表現が入っています。
これまでもフレンズに何度も登場した表現ですが、今回、英英辞典できちんとニュアンスを確認してみたいと思います。

まずは、kind of。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
kind of also kinda:
used when you are explaining something and want to avoid being exact or giving details (SYN: sort of)
例) I kind of borrowed the money from your wallet.

つまり、「何かを説明していて、正確であることや詳細を明らかにすることを避けたい時に使われる」。
例文は、「僕は、君の財布からその金を借りた、って感じなんだ。」
例文も、実際には人の財布からお金を盗んだことになりますが、それを借りたと表現して、盗んだことをぼかしているのですね。

次に sort of。
同じく、LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
sort of (informal):
used to make what you are saying sound less strong or direct (SYN: kind of)
例) Well, I sort of thought we could maybe go out sometime.

つまり、「自分の言っていることを(実際より)強くダイレクトに聞こえないようにするために使われる」。
例文は、「そうだな、僕たち、いつか多分デートできるって思ったりしたんだけど。」

この例文は、デートに誘いたいんだけど、はっきり誘って断られるのがいやなので、できるかな、って思ったりしたんだよね〜と、少しぼやかす表現を使っているのですね。
maybe, sometime という単語を使っているのも、今すぐ、というとすぐに断られそうだから、「多分、いつか」を入れておけば、相手もいやとは言えないだろう、というのを見越している感じがします。

ちょっと話がずれますが、フレンズ1-1 で、ロスがレイチェルに以下のようなセリフを言っていました。
ロス: But do you think it would be okay if I asked you out sometime, maybe? (でも、もし、いつか、多分、僕が君をデートに誘っても構わないと思う?)

ロスのセリフでは、kind of や sort of は使われていませんが、sometime と maybe が使われています。
「もし誘ったとしたら、君はオッケーだと思うかなぁ?」みたいに回りくどい言い方をしています。

kind of などのぼやかす表現を入れてみたり、sometime, maybe と断定しない単語を入れてみたり、と、会話では、ダイレクト過ぎないように工夫する表現がいくつもあります。

日本語でも「…みたいな」と語尾に付けることで、表現を和らげることがありますね。
「みたいな」ばかり言っているとボキャ貧みたいに聞こえますが、人の感情が絡む場面では、言いにくいことはダイレクトに言いたくない、という気持ちになるのは、日本語でも英語でも同じです。

あなたのためにしたことなの、というフィービーに対して、母親の話を持ち出すフランク。
母さんがした the worst thing は、俺を玄関にくくり付けたことだと言っています。
フランクを反省させるために、玄関の柱にロープで縛り付けた、みたいなことでしょうか。
かなりのことをされたわけですが、フランクにとっては、フィービーがしたこと(アリスに直接会って、別れるように説得したこと)はそれよりももっと悪い、と言いたいのですね。
母さんでもそこまではしなかったのに、俺たちのこと、俺の気持ちを理解してくれると思ってた姉さんがそんなことをするなんて、ということです。
その後、仮定法を使って、もしお金があったり、他に行くところがあったりしたら、今すぐこの部屋を怒って飛び出していくのに、と言っています。
それはつまり、今の俺にはお金もないし、母親には追い出され、姉さんのところ以外に行く場所もないから、ここにいるよりしかたない、姉さんに対してものすごく怒っているけど、飛び出していくこともできないんだ、と嘆いているのですね。


ピートがモニカの部屋に来ると、フレンズたちは大騒ぎ。
フレンズたちがあまりに興味津々なので、早々にデートに向かう二人。
モニカ: (in the hallway) Where do you wanna go? ([廊下で] どこに行きたい?)
ピート: Hey, you like pizza? (ねぇ、君はピザが好き?)
モニカ: Oh, that sounds great. (あぁ、それはいいわね。)
ピート: I know a great little place. (素敵なちょっとした場所を知ってるんだ。)
[Cut to a shot of the coliseum in Rome, Italy.]
イタリア・ローマのコロシアム(Colosseum コロセウム)の画面にカット。
[Scene: A restaurant in Rome, Monica is paying for the pizza.]
ローマのレストラン。モニカはピザのお金を払っているところ。
ピート: You're, hey, you're not paying for the pizza. (君は、ねぇ、君はピザのお金を払わなくてもいいよ。)
モニカ: Oh, come on, it's only fair. You paid for the flight. Is, is that enough lira? (もう、よしてよ。これがただフェアーだわ。あなたは飛行機代を払ったもの。それで十分な金額のリラかしら?)
ピート: Ahh, I'd throw another 1000 on that. (あー。僕ならそれにあと1000(リラ)を足すね。)
モニカ: Why, how much is that? (どうして? それ(私の出した額)っていくらなの?)
ピート: That's about 60 cents. (60セントくらいだよ。)

億万長者だから、超高級レストランのフルコースかと思いきや、ピザを食べようというピート。
モニカはお金に釣られるタイプの人ではありませんから、それでがっかりしないとは思いますが、レイチェルなら露骨にいやな顔をしたかもしれません(笑)。

I know a great little place. の little は「ちょっとした」とか「こじんまりした」みたいな意味でしょうか?
小さいけれどいい店、みたいなことかなぁ、と。
そう言っておいて、本場のイタリア・ローマに飛んでしまうところが、さすがはミリオネアです。

飛行機代を考えると、ピザのお金を私が払わないとフェアーじゃないとモニカは言っています。
せめて、ピザ代くらいは払わせてよ、ということですね。

throw は「投げる」ですから、今出しているお金の上に、あともう1枚、1000リラ札(?)をぱっと投げる、乗せる感覚なのだろうと思います。
私が出すわ、と言ったけれど、1ドルが何リラに当たるかを知らなくて少ない金額を出してしまった、ということですね。

I'd throw another 1000 on that. の I'd は、I would です。
こういう I would は、フレンズにこれまで何度も出てきていますが、「もしも僕なら…する」というニュアンスが込められていますね。

これも今さらですが、英英辞典と、英語文法書の両方で見てみます。

LDOCE (Longman Dictionary of Contemporary English) では、
would: ADVICE
(spoken) used when giving or asking for advice
例) I would talk to the doctor if I were you.
What would you do if you were in my position?

つまり、「アドバイスを与える時、またはアドバイスを求める時に使われる」。
例文は、「もし僕が君なら、医者と話をするね。」「もし君が僕の立場なら、君はどうする?」

English Grammar in Use (EGU) では、Unit 36 Would の項目に以下の例があります。
A: Shall I tell Chris what happened?
B: No, I wouldn't say anything. (= I wouldn't say anything in your situation)

訳すと、
A: 何が起こったかクリスに話そうか?
B: いいや、僕なら何も言わないね。(=もし君の立場なら、僕は何も言わないね。)

LDOCE の例文では、If I were you, if you were in my position という条件がついていますが、実際の会話では、EGU の例文のように、そういう条件節なしの I would だけで、I would... in your situation という意味が込められている、ということですね。
「僕は…したらいい?」という質問に対して、「僕は…」とこちらも I を主語にして答えているわけですが、そこで you を主語にすると命令のニュアンスが入ってしまうような気がします。
I would を使うことで、「僕ならこうする」という柔らかなアドバイスになる、ということでしょうね。
日本語でも、「君にそうしろとは言わないけど、僕ならこうするかなぁ」と言って、さりげなくアドバイスすることがありますので、その点は日本語も英語も同じだな、と思います。


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posted by Rach at 12:12| Comment(2) | フレンズ シーズン3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月02日

行動を助長する フレンズ3-18その5

テーブルクロスを汚してしまったから、と、アリス(弟の婚約者)を自分の家に呼び出したフィービー。
家庭科の先生であるアリスはシミの取り方をテキパキと説明します。
アリス: Okay, first, we'll start with a little club soda and salt. And then if that doesn't work we can go back to.... (いいわ。最初に、少しの炭酸水と塩を使いましょう。それから、もしそれがうまく行かなかったら、…に戻ることもできる…)
フィービー: Y'know what? Forget it. It's ruined. (ねぇ。そのシミのことは忘れて。クロスはもうダメよ。)
アリス: Oh no-no, never say that. If you can't get it out, then you can cut around the stain, add a little lace, you make a stylish throw. (あぁ、ダメダメ。そんなこと言っちゃ。もしそのシミが取れなかったら、そのシミを丸く切り取って、少しレースを付けるの。おしゃれな椅子カバーができるわよ。)

フレンズ3-13その23 では、モニカが club soda でシミ抜きをしていました。
そこで club soda について少し説明しています。
また、その記事のコメント欄で、「染み抜きには炭酸水と塩を使う」こと、「この方法はアメリカやヨーロッパで母親から教わる生活の知恵」だということを教えていただいたのですが、今回、家庭科の先生のアリスは、まさにその「炭酸水と塩」を使ったシミ抜きを説明していますね。
伝統的なシミ抜きのコツであることが、よくわかります。

make a stylish throw の throw について。
LDOCE (Longman Dictionary of Contemporary English) では、
throw [noun]: a large piece of cloth that you put loosely over a chair to cover it and make it look attractive
例) a brightly-coloured cotton throw

つまり、「椅子をカバーし、それを素敵に見せるために、椅子の上に軽くかける大きな布」。

私の勝手なイメージですが、語義に put loosely over とあるように、椅子にゆるくかける感じが、throw 「投げる」イメージを想像させて、throw という単語が使われているのでしょうか??

アリスが言っているのは、テーブルクロスとして使えなくなったら、汚れた部分を切り取って飾りをつけて、椅子カバーに使えばいいわ、ということのようですね。


チップとして、モニカに2万ドルの小切手をくれた、ダイナーの客ピートは、Moss 865 というプログラムを開発した億万長者でした。
その小切手を持って、ピートのオフィスを訪ねたモニカ。
その小切手を見せながら、
モニカ: Seriously, what is this supposed to mean? (真面目な話、これはどういう意味なのかしら?)
ピート: Well, y'know, I never know how much to tip. (そうだな、ほら、僕はチップをいくら払うべきなのかを知らないんだ。)
モニカ: You're supposed to double the tax. Not double the tax of Romania. What's-what's the deal? Are you, are you trying to buy me? Is this the way you get girls to go out with you? (あなたは税金を2倍にすることになるわ。それも、ルーマニアの税金じゃないのよ。どういうことなの? あなたは、あなたは私を買うつもり? これが、自分とデートする女の子をゲットするためにあなたがやるやり方なの?)

double the tax の意味がよくわかりません。
tax は「税金」で、やはりこの文脈では「税金」という意味しかなさそうです。

わからないなりに、私なりの仮説を立ててみます。

「税金を2倍にする」というのはどういうことか?
このチップをもらうだけで、モニカの年収が2倍になってしまい、税金を2倍払うことになってしまう、ということでしょうか?
でも、その場合は、double my tax のように、「私が払う税金」であることを示す所有格が付くでしょうか?(よくわかりません)

もっと世間一般の相場の話をしていて、チップにこんなに払ったら、世間の物価や相場が上がってしまう、払うべき税金が2倍になってしまう、という感じでしょうか??
2倍という数字に特に根拠はなくて、値段を上げる、くらいの感覚かなぁ、と。

その次に、ルーマニアの話が出てきますね。
そのことから考えても、モニカという個人の税金ではなく、世間一般の税金の話で、税金の額面が増える→物価・相場が上がる、というイメージなのかな、と思います。

なぜ、ルーマニアの名前が出てきたのか?ですが、Wikipedia 日本語版: ルーマニアの経済 に、以下の記述があります。
1989年のルーマニア革命以降、ルーマニア経済は抑制されているものの高いインフレーションの影響下にあり、生活水準の低下が続いている。
ルーマニア革命では、チャウシェスク大統領が処刑され、日本のニュースでも大きく取り上げられていましたね。

モニカが世界の経済情勢に詳しいかどうかはともかく、セリフの中でルーマニアが出てきたのは、脚本家が、ルーマニアという国にインフレのイメージを持っていたから、ということなのかな、と思います。
そんなとんでもない高額の小切手、インフレのルーマニアならともかく、アメリカではありえないチップの額よ、と言いたいのかなぁ、と。

double the tax という決まり文句がありそうな気がするのですが、調べてもわからなかったので…。
ご存知の方は教えて下さい。


ピート: Come on, you gotta admit that our relationship is ah, is hitting a new level now. 'Cause you used to be like the chef, and I was the customer. But now we're like this-this couple that fights. (ねぇ、君は認めなくちゃいけないよ。僕たちの関係が、そう、今、新しいレベルに到達してるってことをね。だって、以前は、君はシェフで、僕はお客だった。でも今は、僕たちは、そう、喧嘩するカップルみたいだから。)
モニカ: Okay, umm, you're a loon. (そうねぇ、あなたって、おバカさんね。)
ピート: Look, forget the check, okay? (rips up the check) I like you. I think you're great. Come on, what do you say? (ねぇ、小切手のことは忘れて。いいかい? [小切手を破る] 僕は君が好きだ。君が素敵だと思う。ねぇ、君はどう思うの?)
モニカ: I don't know. (わからないわ。)
ピート: Why not? (どうしてわからないの?)
モニカ: 'Cause I don't wanna encourage this kind of behavior. (だって、こういう類の行動を助長したくないのよ。)
ピート: One meal. That's all I'm asking for. Please? We go out, we eat. And if you don't have a good time, I'll give you 10 grand, we call it even. (1回の食事。僕がお願いするのはそれだけだよ。いいだろ? 僕らは外出して、食事をする。そして、もし君が楽しい時を過ごさなかったら、僕は君に1万ドルをあげる。それでおあいこにしよう。)

loon は「ばか」。
LDOCE (Longman Dictionary of Contemporary English) では、
loon: (informal) a silly or strange person - used humorously
つまり、「愚かで変わっている人。ユーモラスに使う」。

ですから、この言葉を使っているモニカの方も、「あなたってあきれちゃうほどのおバカさんねぇ」くらいのニュアンスで、怒りや憎しみが込められた「バカ」ではないのでしょう。

I don't wanna encourage this kind of behavior. について。
encourage は「…を促進する、助長する、奨励する」。
LDOCE (Longman Dictionary of Contemporary English) では、
encourage: to make something more likely to exist, happen, or develop
例) Violent TV programmes encourage anti-social behaviour.

つまり、「何かがより存在しやすく、起こりやすく、または発展しやすくすること」。
例文は、「暴力的なテレビ番組は、反社会的行動を助長する。」
ロングマンの例文でも、behavior が使われているように、コロケーションとして覚えてもいいのかもしれません。

モニカの言う this kind of behavior は、「高いチップを払って、その子とデートにこぎつける」というピートの行動を指すのかな、と思います。

ピートは、正直にそしてはっきりと、"I like you. I think you're great. Come on, what do you say?" と言っていますね。
女性としては、ここまではっきり言われると悪い気はしないでしょうし、実際モニカはピートに対して嫌悪感を抱いているわけではないでしょう。(嫌悪感を抱くような相手のところにのこのこ出掛けることはあり得ませんから…笑)

そのピートの正直な告白に即答せず、I don't know. と言葉を濁したのは、それでオッケーしてしまうと、「高額のチップを渡すことで相手にデートをオッケーさせた」というピートのやり方を認めることになってしまう、モニカとしてはそんなやり方はフェアじゃないと思っているので、あなたのやり方を認めたくない、私がオッケーすることで、そういうアプローチが成功すると思わせたくない、ということでしょう。

10 grand の grand はお金の単位で、アメリカでは「1千ドル」、イギリスでは「1千ポンド」。
単複同形、すなわち複数形も grand で、10 grands のように -s は付かずに、10 grand となります。

call it even は、「貸し借りなしにする、チャラにする、おあいこにする」。
ちょうどのeven フレンズ3-17その25 で、even のことを説明した時に、call it even にも少し触れましたが、ここでもう少し詳しく説明します。

LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
call it even: (spoken) used to say that someone who owes you something does not have to give you anything more than they have already given you.
例) Since you bought the movie tickets and I bought dinner, let's just call it even.


長い語義ですが、you をAさん、someone をBさんとしてみると、「Aさんに何か借りがあるBさんが、BさんがすでにAさんに与えた以上には与える必要がない、ということを言うのに使われる」。
例文は、「君は映画のチケットを買って、僕は夕食をおごったから、これでチャラにしよう。」

つまりは、相手に借りがあるんだけれども、借りがある方も何がしかのものを相手に与えているので、それ以上は何も返す必要がない、これでチャラだ、おあいこだ、貸し借りなしだ、ということになるのですね。

デートを1回してみて、いやなら僕が1万ドル払うよ、それで文句はないだろ?というピート。
「あなたはお金で人を買うつもり?」と高額のチップをもらったことで怒っているモニカに対して、また1万ドルというお金で決着させる案を示しています。
ピートは、モニカがお金で解決されるのがいやだとわかっていて、わざとこういうことを言っているのですね。
「君は2万ドルのチップにカチンと来たみたいだけど、デートをオッケーしてくれたら、その後断られても1万ドルあげるから」と、どこまでもミリオネアらしく、桁違いの金額を提示しているわけです。
ここまで来ると、モニカも笑うしかない、というか、あくまで金額がモニカを誘うための口実でしかないことがわかるので、怒る気にもなれませんね。


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posted by Rach at 13:43| Comment(6) | フレンズ シーズン3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする