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前回の記事、
フレンズ5-12その5 で取り上げたセリフ、
モニカ:
So if you don't mind, maybe this will be it for me on the work things. (だから、もしあなたが構わないなら、多分、仕事のことではもうこれっきりになる[これが最後になる]でしょうね。)
の日本語訳について、ご質問がありました。
その記事の中では、説明を省いてしまったので、今回はそのことを記事にしたいと思います。
当初は、その部分ももう少し詳しく説明するつもりだったのですが、書いているうちに長くなり収拾がつかなくなりそうだったので、説明が中途半端になるよりは…とその部分の説明を丸々カットしてしまったのです。
ですが、せっかくご質問をいただいたので、それをもう一度きちんと説明する良いチャンスだと思いました。
また、今回のフレーズは、This is it. というお決まりフレーズとも関係するものなのですが、ちょうど今日、日本テレビ系の金曜特別ロードショーで、『THIS IS IT 4時間スペシャル』が地上波初放送されることを知り、このタイムリーな偶然は、「コメレスではなく、記事として書いたら?」という英語の神様のお告げに思えたのですね(笑)。
ということで、今回は上のセリフの説明と、This is it. というフレーズについても解説します。
まず、問題のセリフですが、私は前回の記事で以下のように訳しました。
モニカ:
So if you don't mind, maybe this will be it for me on the work things. (だから、もしあなたが構わないなら、多分、仕事のことではもうこれっきりになる[これが最後になる]でしょうね。)
this will be it for me on the work things の this will be it は、this is it の未来形だと考えます。
そして、This is it. というフレーズは、いろんな解釈が可能な言葉ですが、この場合の This is it. は「これで終わりだ」「これで最後だ」のニュアンスだと私は捉えたので、その未来形の意味で「これが最後になるでしょう」「もうこれっきりになるでしょう」と訳したわけです。
This is it. はいろんな意味に解釈可能だ、という話については、後で詳しく述べます。
maybe this will be it for me on the work things の for me は、「私にとって」のような感覚で、on the work things の on は接触を表す on であることから、「その仕事の件に関して」というような「関与」のニュアンスが感じられる気がします。
ですから、そのセリフは、「多分、私にとって仕事のことではこれが最後になるでしょう、仕事の件に関しては私はこれで最後にするわね」のような意味になるだろうと考えた、ということです。
「仕事に関してはもうこれっきり」→「もうこれ以上、(あなたの)仕事関係の用事には付き合わない」と言ったので、「そんな大きな問題か?」とチャンドラーは問い返しているのですね。
ではここで、This is it. というフレーズについて改めて見てみます。
This is it. は日本語では「いよいよだ」と訳されることが多いですね。
映画「インデペンデンス・デイ」で、宇宙にあるエイリアンの母船にコンピューターウイルスを仕掛けてシールドを解除した後、地上の宇宙船に向けて一発目のミサイルが発射された時にグレイ将軍が言っていたセリフが、
グレイ将軍:
Gentlemen, this is it. (諸君、いよいよだ。)
でした。
また、フレンズ1-21 では、マルセルと空港で別れを言っている時のロスのセリフにも、This is it. が登場していました。
ロス:
Marcel, come here, come here. [He sits down and Marcel jumps down and sits beside him]
Well buddy, this is it. There's just a couple of things I wanted to say. (マルセル、おいで、おいで。[ロスは座り、マルセルは飛び降りてロスの隣に座る] ねぇ、友よ、いよいよだね。言いたかったことがいくつかあるんだよ。)
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
this is it! : used to say that something you expected to happen is actually going to happen.
例) This is it - the moment we've been waiting for!つまり、「起こると予期していたことが実際に起ころうとしていることを言うのに使われる」。
例文は、「いよいよだ。我々がずっと待っていた瞬間だ!」
This it it. を直訳すると、「これがそれだ、これがそうだ」みたいな感じです。
this は今目の前で起こっていること、これから起ろうとしていることを指し、it は「話者の頭の中にイメージとして存在する、重要なポイント・焦点となるべき事柄」を指す感覚。
「こういうことが起こるだろうと思っていた、その it がこれだね、it が今、目の前で起ころうとしているんだね」という感じでしょう。
フレンズ1-21 でロスがマルセルに言った、This is it. も、ずっと心の中で考えていた「その(別れの)時」がとうとう来てしまったんだ、という感じの、This is it. です。
そのように、This is it. は「いよいよだ、来るべきものが来た」というニュアンスで訳されることが多いのですが、今回のモニカのセリフに関しては、「これがいよいよになるでしょうね」というような訳だと、何だかしっくりきません。
そこで思い出されるのが、this を that に変えたバージョンの That's it. というフレーズ。
That's it. もドラマの会話で頻出する表現ですが、主に以下の3通りのニュアンスに分けられると思います。
That's it. 1. まさにそれだ。その通りだ。 (直前の発言や行動などに対して、それがまさに求めていたものである、という賛成・賛同・称賛のニュアンス)
2. それまでだ。そこまでだ。 (誰かの行動などに対して不満を覚え、もうそれ以上は続けさせないぞ、と怒っているニュアンス)
3. それでおしまい。それで終わりだ。 (何かが今、終わったことを伝えるニュアンス。
That's it for today. なら「今日はここまで[それまで]。今日はこれで[それで]おしまい」という決まり文句)
フレンズでは、誰かの行動に我慢できなくなって、「もうそこまでだ、そこまでにしろ!」という感じで怒った時に使う That's it! が多いでしょうか。
また、That's it? 「それだけ? それで終わり?」みたいなセリフも登場しますね。
このように、That's it. にはいろんなニュアンスがあるわけですが、その指示代名詞の that を this に変えることで、同じようなニュアンスを出すことは可能だと思います。
実は英英辞典を見ても、This is it. に「これで終わりだ、これで最後だ」というような意味は載っていないのですが、That's it. 「それでおしまい」のニュアンスから、そういう意味を導き出すことはできるだろう、と。
This is it. にそういうニュアンスがあると仮定して、どうして、That's it. や、This is it. で「おしまい、終わり」という意味になるかを私なりに考えてみたのですが、その場合の it は「自分が頭の中に思い描いていたものの全体、全て」を指しているのかなぁ、という気がします。
That's it. だと、that = it 、つまり、「それ(今までにしてきたこと、述べてきたことなど)が、自分のイメージの中にあるもの(全て)である」と等式で繋ぐことで、「今ので全部だ」というイメージにつながり、「それ以上はない、それで終わりだ、おしまいだ」という「終わり」の感覚に繋がるのかなぁ、と思うのです。
This is it. はもっぱら「いよいよだ」と訳されることが多いものの、状況によってはいろいろな解釈が可能だと思う、ということを述べてきましたが、ここで改めて、マイケル・ジャクソンの THIS IS IT について考えてみたいと思います。
「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」(原題: Michael Jackson's THIS IS IT)は、2009年に話題になった映画ですね。
THIS IS IT は元々、2009年にロンドンで行われる予定だったコンサートツアーのタイトルで、そのタイトルを冠した曲もあり、それがマイケルの死後制作されたドキュメンタリー映画のタイトルにも使われたのでしたね。
このタイトルを聞いて、「『これはそれだ』ってどういう意味?」と思った方も多いかもしれませんが、上で説明したように、英語ではよく使われる言い回しだということをまずは覚えておきたいところです。
このマイケルの映画のタイトルの意味は何か?については、何度か関係者のインタビューなどで語られているようです。
ただ、その作品を「受け止める立場」の私たちとしては、本来の意味は何か?を考えると同時に、その抽象的なタイトルから、さまざまな意味を連想できることも否定すべきではないでしょう。
何かの題名、タイトルである場合は、いろんな解釈が可能なフレーズを使うことで、タイトルにより深みが出る、いろんな意味を持たせられるという効果が望めます。小説や映画のタイトルもそういうものが多いですよね。
This is it. というフレーズについては、その映画の字幕や歌詞の日本語訳などで何かしらの日本語に訳されているわけですが、それはそれぞれの状況に合わせて、文脈に合うように訳されているはずです。
それはそれで正しいとして、その訳が、This is it. の意味の「全て」ではない、という気がするのです。
通常、This is it. は、上で説明したように「いよいよだ」というニュアンスで使われることが多いので、マイケルにとっては久しぶりのコンサートであることから、「世界中のファンが待ち焦がれていたものがいよいよ来るぞ」というニュアンスがまず考えられるでしょう。
また、このロンドンコンサートは、マイケルにとって最後のコンサートになるらしい、という噂もありました。
その噂を考慮すると、よく似たフレーズの That’s it. には「それでおしまい、それで終わり」という意味があるので、This is it. にもその「終わり」のニュアンスを持たせて、「これで終わりだ、これで最後だ」というメッセージが込められていると考えることも可能な気がします。
さらには、上で述べたように、it は「話者の頭の中にイメージとして存在する、重要なポイント・焦点となるべき事柄」を指しますので、「マイケル、もしくは多くの人々が求めていたもの、望んでいたものがこれだ。とうとう望むもの、求めるものを見つけたぞ。これなんだよ! これで決まりだよ!」という感覚だと捉えることもできます。
it が指しているのはどういうことか、を多角的に捉えることで、This is it. は実にいろんな意味に解釈可能になる、そこがタイトルとしての魅力でもあるのでしょう。
マイケルが頭の中で描いている it のイメージが何であるかによって、「これが“それ”なんだ」の「それ」が指すものが幾通りにも考えられるということですね。
「いよいよだ」もしくは「これで決まりだよ」と言いながら、「そしてこれが最後だ」というメッセージも込められているのではないか?という憶測が飛び交うことで、ファンの期待度が大いに高まるという効果だと思います。
中1の1学期で習うような this, is, it という3つの単語で出来た文章に、それだけの深さがある、というところが、語学の奥深さでもあるでしょうね。
また、ノンネイティブにとって掴むのが難しい部分でもあります。
英検1級に出てくるような難易度の高い単語をたくさん覚えるより、こういう簡単な単語、特に指示語のニュアンスを感覚として掴めるようになる方が、英語学習においては大切なことだと思っています。
私がセリフの解釈を間違う場合も、そのほとんどは、ある言葉が何を指しているかを取り違えてしまったことが原因である場合が多いですし(笑)。
ということで、長くなりましたが、this will be it for me on the work things の解釈と、This is it. についての説明でした。
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