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ロスに何とか婚姻無効申請を出させたいレイチェルは、「結婚したままの状態でいることはできないの」と言って、ロスを説得しようとするのですが、
ロス: Oh, okay. Y'know what this is? This is a difference of opinion. And when that happens in a marriage-- (あぁ、わかった。これって何だかわかる? これは意見の相違だよ。そして、結婚において、それが起こる時には…)
レイチェル: Oh Ross, come on! This is not, this is not a marriage! This is the world's worst hangover! Ross, listen, if you do not get this annulment, I will! (あぁ、ロス、よして! これは、こんなのは結婚じゃないわ! これは世界一最悪の二日酔いよ! ロス、聞いて、もしあなたがこの婚姻無効を申請しないなら、私がするわ!)
ロス: All right. All right, I'll do it. (わかった、わかった。僕がするよ。)
レイチェル: Thank you. (He goes to leave.) Hey, hey, umm, uh, is there, is there any such thing as an annulment shower? (ありがとう。[ロスは去ろうとする] ねぇ、ねぇ、あのー、婚姻無効シャワーみたいなものって、あるかしら?)
(Ross turns and leaves.)
ロスは背を向けて去る。
レイチェルが「結婚したままでいるなんてムリよ」と力説しても、ロスはまだあきらめていません。
レイチェルが自分とは異なる意見を持っていることを、「これは意見の相違だ、相違にすぎない」みたいに表現しています。
夫と妻の意見が異なることは、結婚生活ではよくあることだろ…と、また「二人はすでに夫婦である」ことを持ち出そうとするロスですが、レイチェルは、「いくら法律上は夫婦でも、こんなのは結婚でもなんでもない、これは世界最悪の hangover だ」と叫んでいます。
hangover は「二日酔い」、または「残存物、遺物、なごり、後遺症」。
LAAD では、
hangover :
1. the feeling of sickness you get the day after you have drunk too much alcohol
例) I have a really bad hangover.
2. a hangover from something
an action, feeling, or idea that has continued from the past into the present time:
例) The institution is a hangover from the Cold War era.
つまり、1. は、「あまりに多くのアルコールを飲んだ次の日に感じる気分の悪さ」。
例文は、「本当にひどい二日酔いだ」。
2. は、「過去から現在に続いている、行動、感情、考え」。
例文は、「その制度は冷戦時代から続いているものだ[冷戦時代の遺物だ]」。
今回の場合は、ベガスで二人がベロンベロンに酔っぱらって結婚してしまったことを指していますから、「最悪の二日酔い」という訳がふさわしいでしょう。
文脈によっては、例えば上の「冷戦時代」のような文章であれば、「冷戦時代の二日酔いだ」では文章の格が下がってしまう気がするので(笑)、文脈に合わせて、適切な言葉を選びたいところです。
「あなたが申請しないなら、私がするわ」とまで言われたので、ロスはついにレイチェルを説得するのをあきらめます。
立ち去ろうとするロスにレイチェルは、Is there any such thing as an annulment shower? と尋ねていますね。
「婚姻無効シャワーのような、そういうものって何かあるかしら?」みたいな意味になります。
この shower というのは、お祝いごとのある女性に贈り物をするパーティーのことですね。
bridal shower なら「花嫁になる人へ贈り物をするパーティー」のことですし、baby shower なら「出産前の母親にベビー用品を贈るパーティー」になります。
ブログでは解説を飛ばしてしまいましたが、フレンズ4-22 では、出産間近のフィービーのために開いた baby shower のシーンもありました。
LAAD では、
bridal shower also shower : a party for a woman who is going to be married, given by her friends and family
つまり、「結婚する予定の女性に対して、友達や家族によって催されるパーティー」。
annulment は「婚姻無効」という結婚にまつわる出来事なので、bridal shower みたいに、annulment shower っていうのがあったりしないのかしら?とレイチェルは言っているわけですね。
このシーンの初めの部分、つまり、フレンズ6-1その5 で取り上げた部分で、「結婚ギフト登録制度」を使って、レイチェルがお祝いの品を全部とってもいいよ、と言われた時、レイチェルの心が一瞬動いたシーンがありましたね。
そういうレイチェルのことですから、婚姻無効の時にも、そういうシャワーのようなパーティーってないものかしらねぇ?と言って、あわよくばプレゼントをもらおうと画策している、という面白さです。
プレゼントや贈り物が大好きなレイチェルらしいセリフですし、このシーンの最初に、gift registry system の話が出ていたのともうまく繋がる楽しいオチだなと思います。
今は日本でも、「結婚指輪をハンマーを使って二人で叩き割る」のを「二人の”最後の”共同作業にする」とかいう「離婚式」(!)…も行われることがあるそうですし、こういう「婚姻無効」という手段がメジャーになってくると、annulment shower ってのが登場してもおかしくない時代になったりする…のかなぁ…とか。でも、これから別れようとする人に、何をプレゼントしたらいいのか、わからない気もしますが(笑)。
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2011年07月30日
2011年07月28日
お祝いギフトを登録する フレンズ6-1その5
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酔っぱらった勢いで、ベガスでレイチェルと結婚式を挙げてしまったロス。
最初は、婚姻無効の手続きをすると言っていたのですが、「婚姻無効は申請せず、法律上夫婦のままでいても別に問題ないんじゃない?」などとロスが言い出し、レイチェルと口論になります。
それからしばらく後のシーン。
[Scene: Monica and Rachel's, Ross is entering.]
モニカとレイチェルの部屋。ロスが入ってくる。
ロス: Listen. I know you wanted to talk to me, but I have an idea that may make you wanna stay married. (Rachel shakes her head.) We register, and you get to keep all the presents. (ねえ聞いて。君が僕に話をしたいのはわかってるけど、レイチェルに結婚したままでいたいと思わせるようなある考えがあるんだよ。[レイチェルは(そんなの無理だわというように)首を横に振る] 僕たちは結婚祝いの贈り物を登録して、レイチェルがそのプレゼントを全部キープすることができるんだ。)
レイチェル: (thinks about it for a second) No, Ross, come on. No, listen. Look, I've thought a lot about how to tell you this, and the bottom line, Ross, is, we cannot stay married. ([それを少しの間考えて] だめよ、ロス。よしてよ。無理よ。聞いて、ねぇ、あなたにこのことをどう言おうかとよく考えたんだけど、つまりはね、ロス、私たちは結婚したままではいられない、ってことよ。)
ロス: I don't know if that's true-- (それが本当かどうかわからないけど…)
レイチェル: Oh, b-b-but it is! (あぁ、でも、それは本当のことなのよ!)
婚姻無効手続きをしたくないというロスと、絶対に手続きしてもらわないと困るというレイチェル。
二人の意見が分かれた状態のまま、ロスはレイチェルの部屋に入ってきます。
レイチェルがとにかく手続きして欲しいと思っていることはロスにもわかるので、「僕に言いたいことがあるだろうけど、まずは僕の話を聞いてくれ」という感じで、I have an idea that may make you wanna stay married. と言っています。
make は使役動詞で、「君が結婚したままでいたいと思わせるような」、あるアイデア、考えが僕にはあるんだ、という感覚。
register は「登録する」ですが、その後の文でプレゼントの話が出ていることからわかるように、これは「祝いの品を登録する」ことを示しています。
フレンズ1-19その1 でも、元婚約者バリーと友人ミンディの婚約記事が載っているニュースレターの上に、お猿のマルセルがうんちをしてしまった時、以下のセリフを言っていました。
レイチェル: Sorry, Barry. A little engagement gift. (ごめんね、バリー。ちょっとした婚約プレゼントよ。)
I'm sure you didn't register for that. (そんなもの、ギフト登録してないと思うけど。)
その過去記事で詳しく説明してありますが、アメリカには、gift registry system (ギフト登録制度)というシステムがあるのですね。
結婚や出産などのお祝いをもらう立場にいる人が、あらかじめ大型店舗に自分の欲しい商品を登録しておいて、贈り物を贈る側の人が、そのリストの中から商品を選んでプレゼントする、というシステムです。
そうすることで、自分が欲しいと思っているものをもらえる、相手が喜ぶものをプレゼントできる、という双方に利点があるのですね。
過去の記事では、英英辞典の語義までは説明していなかったので、今回改めて、英英辞典の説明を紹介させていただきます。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、registy として、また、bridal registry としても載っています。
registry : a list of gifts that people would like to receive when they get married, usually kept at a store
例) the bridal registry at Robinson's Department Store
つまり、「結婚するときに受け取りたい(欲しい)と思う贈り物のリスト、たいていは店で管理されている」。
例文は、「ロビンソンズ百貨店での結婚ギフト登録リスト」。
bridal registry :
a) a list of things from a particular store that a couple who are getting married would like to receive as gifts
b) the service, provided by the store, of arranging this list
つまり、a) は、「結婚予定のカップルがギフトとして、ある店から受け取りたいと思う品物のリスト」。b) は、「店によって提供される、このリストを用意するサービス」。
すなわち、a) は、リストを指し、b) は、店が提供するサービスを指す、ということですね。
ロスのセリフは、「結婚するとしたら、ある店に結婚祝いのギフト登録をすることになる、その時、君が好きなものを登録して、君がそのプレゼントを全部キープすることになる、全部レイチェルのものにしちゃえるんだよ」と言っていることになります。
普通なら夫と妻が半々?みたいになるのでしょうが、そのギフトの権利を全部、君にあげるよ、と言っているわけで、一瞬それに心が動いたように、少しの間考えているレイチェルがいかにも彼女らしいです。
ですが、ちょっと考えた後、「いくらプレゼントを全部もらえるとしても、やっぱり結婚するわけにはいかないわ」とレイチェルは否定します。
I've thought a lot about how to tell you this という現在完了形は、「あなたにこのことをどう言おうかということについて[あなたにこのことを言う方法について](今までずっと)いっぱい考えたの」という感覚ですね。
the bottom line は「最終結果、結論」「肝心なこと、大事なこと、重要なこと、要点」。
The bottom line is that... の形で、「つまりは、要は、大事なことは…ということだ」のように使います。
フレンズ3-7その25 にも出てきました。
どう言おうかいろいろ悩んだんだけど、結局はこう言うしかないのよ、という感じで、「私たちは結婚したままの状態でいることはできない」と言います。
何がどうなろうと、とにかく結婚したままっていうのは絶対にムリなの、というニュアンスですね。
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酔っぱらった勢いで、ベガスでレイチェルと結婚式を挙げてしまったロス。
最初は、婚姻無効の手続きをすると言っていたのですが、「婚姻無効は申請せず、法律上夫婦のままでいても別に問題ないんじゃない?」などとロスが言い出し、レイチェルと口論になります。
それからしばらく後のシーン。
[Scene: Monica and Rachel's, Ross is entering.]
モニカとレイチェルの部屋。ロスが入ってくる。
ロス: Listen. I know you wanted to talk to me, but I have an idea that may make you wanna stay married. (Rachel shakes her head.) We register, and you get to keep all the presents. (ねえ聞いて。君が僕に話をしたいのはわかってるけど、レイチェルに結婚したままでいたいと思わせるようなある考えがあるんだよ。[レイチェルは(そんなの無理だわというように)首を横に振る] 僕たちは結婚祝いの贈り物を登録して、レイチェルがそのプレゼントを全部キープすることができるんだ。)
レイチェル: (thinks about it for a second) No, Ross, come on. No, listen. Look, I've thought a lot about how to tell you this, and the bottom line, Ross, is, we cannot stay married. ([それを少しの間考えて] だめよ、ロス。よしてよ。無理よ。聞いて、ねぇ、あなたにこのことをどう言おうかとよく考えたんだけど、つまりはね、ロス、私たちは結婚したままではいられない、ってことよ。)
ロス: I don't know if that's true-- (それが本当かどうかわからないけど…)
レイチェル: Oh, b-b-but it is! (あぁ、でも、それは本当のことなのよ!)
婚姻無効手続きをしたくないというロスと、絶対に手続きしてもらわないと困るというレイチェル。
二人の意見が分かれた状態のまま、ロスはレイチェルの部屋に入ってきます。
レイチェルがとにかく手続きして欲しいと思っていることはロスにもわかるので、「僕に言いたいことがあるだろうけど、まずは僕の話を聞いてくれ」という感じで、I have an idea that may make you wanna stay married. と言っています。
make は使役動詞で、「君が結婚したままでいたいと思わせるような」、あるアイデア、考えが僕にはあるんだ、という感覚。
register は「登録する」ですが、その後の文でプレゼントの話が出ていることからわかるように、これは「祝いの品を登録する」ことを示しています。
フレンズ1-19その1 でも、元婚約者バリーと友人ミンディの婚約記事が載っているニュースレターの上に、お猿のマルセルがうんちをしてしまった時、以下のセリフを言っていました。
レイチェル: Sorry, Barry. A little engagement gift. (ごめんね、バリー。ちょっとした婚約プレゼントよ。)
I'm sure you didn't register for that. (そんなもの、ギフト登録してないと思うけど。)
その過去記事で詳しく説明してありますが、アメリカには、gift registry system (ギフト登録制度)というシステムがあるのですね。
結婚や出産などのお祝いをもらう立場にいる人が、あらかじめ大型店舗に自分の欲しい商品を登録しておいて、贈り物を贈る側の人が、そのリストの中から商品を選んでプレゼントする、というシステムです。
そうすることで、自分が欲しいと思っているものをもらえる、相手が喜ぶものをプレゼントできる、という双方に利点があるのですね。
過去の記事では、英英辞典の語義までは説明していなかったので、今回改めて、英英辞典の説明を紹介させていただきます。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、registy として、また、bridal registry としても載っています。
registry : a list of gifts that people would like to receive when they get married, usually kept at a store
例) the bridal registry at Robinson's Department Store
つまり、「結婚するときに受け取りたい(欲しい)と思う贈り物のリスト、たいていは店で管理されている」。
例文は、「ロビンソンズ百貨店での結婚ギフト登録リスト」。
bridal registry :
a) a list of things from a particular store that a couple who are getting married would like to receive as gifts
b) the service, provided by the store, of arranging this list
つまり、a) は、「結婚予定のカップルがギフトとして、ある店から受け取りたいと思う品物のリスト」。b) は、「店によって提供される、このリストを用意するサービス」。
すなわち、a) は、リストを指し、b) は、店が提供するサービスを指す、ということですね。
ロスのセリフは、「結婚するとしたら、ある店に結婚祝いのギフト登録をすることになる、その時、君が好きなものを登録して、君がそのプレゼントを全部キープすることになる、全部レイチェルのものにしちゃえるんだよ」と言っていることになります。
普通なら夫と妻が半々?みたいになるのでしょうが、そのギフトの権利を全部、君にあげるよ、と言っているわけで、一瞬それに心が動いたように、少しの間考えているレイチェルがいかにも彼女らしいです。
ですが、ちょっと考えた後、「いくらプレゼントを全部もらえるとしても、やっぱり結婚するわけにはいかないわ」とレイチェルは否定します。
I've thought a lot about how to tell you this という現在完了形は、「あなたにこのことをどう言おうかということについて[あなたにこのことを言う方法について](今までずっと)いっぱい考えたの」という感覚ですね。
the bottom line は「最終結果、結論」「肝心なこと、大事なこと、重要なこと、要点」。
The bottom line is that... の形で、「つまりは、要は、大事なことは…ということだ」のように使います。
フレンズ3-7その25 にも出てきました。
どう言おうかいろいろ悩んだんだけど、結局はこう言うしかないのよ、という感じで、「私たちは結婚したままの状態でいることはできない」と言います。
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2011年07月26日
誤って思い込んでいた フレンズ6-1その4
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レイチェル: What-wh-what so what, we'll just stay married forever? (な、何、じゃあ、何、私たちはただ永遠に結婚した状態を続けるわけ?)
ロス: Okay, look, how is this gonna affect you, really? I mean, you fill some form out once in a while and instead of checking the box that says "Miss," you check the box that says "Mrs." It's right next to it! (よし、いいかい、このこと(結婚しているということ)が、君にどんな影響を与えるんだ? つまり、たまに、何かの書式に記入する時に、Miss の欄にチェックを入れる代わりに、Mrs. の欄にチェックを入れるだけだ。Mrs. は、Miss のちょうど隣にあるんだよ!)
レイチェル: Ohh, okay, I'm sorry. You're right. Y'know what? We absolutely can stay married, because I was under the impression that the boxes were far away from each other. All right. Look, just please take a moment here and think about what you're asking of me. Okay? (あぁ、わかったわ、ごめんなさい。あなたが正しいわね。ねぇ、私たちは間違いなく結婚した状態のままでいられるわ。だって私はその2つの欄はお互い遠く離れてると思い込んでいたから。いいわ、ねぇ、ただここで少し時間を取って、あなたが私にお願いしていることについて考えてちょうだい、いい?)
ロス: I'm asking you to do me a favor. (僕は君に1つお願いをしてるだけだ。)
レイチェル: You are asking me to be your wife. (あなたは私に、あなたの妻でいてくれとお願いしてるのよ。)
ロス: And, as my wife, I think you should grant me this favor. (そして、僕の妻として、君はこの願いを聞き入れるべき[承諾すべき]だと思うけど。)
婚姻無効の申請をしないことにした、というロス。
「婚姻無効」と認められると、「そもそも婚姻関係が成り立っていなかった」と宣言されることになるため、結婚歴、離婚歴としてカウントされないことになります。
が、それでもやはりロスにとっては、そのような婚姻無効申請をしてしまうと、have three failed marriages 「結婚に3度失敗する」ことになるため、それは避けたいという気持ちが出てきたようです。
法的には「バツ3」扱いにはならなくても、ロスにとってはやはり「バツ3」と同じような意識を持ってしまうということなのでしょうね。
無効申請をしないという話をキツい冗談だと思っていたレイチェルですが、ロスが冗談を言っているのではないと知って、レイチェルはただ驚くばかり。
私たちは、このまま永遠に、stay married 「結婚した状態を維持する」ことになるわけ?と問い返しています。
それに対してロスは、「こうして結婚を続けることで君にどんな影響があるっていうの?」みたいなことを言っています。
affect は「…に影響を及ぼす、影響を与える」ですね。
fill out は「(書類に必要事項を)書き入れる、記入する」。
書類に記入する際に、Miss の欄(ボックス)にチェックする代わりに、Mrs. の欄にチェックを入れるだけだ、ただそれだけの違いじゃないか、みたいなことをロスは言います。
ミセスの欄は、ミスの欄のちょうど隣(right next to)にあるんだし、ちょっとした違いだろ、と言いたいようです。
実際に「すぐ隣に並んでいる」という感じを、手のしぐさで示してもいます。
その話を聞いて、レイチェルは、「ごめんなさい、あなたは正しいわ」と言った後、私たちは結婚した状態のままでいることができるわね、と言いながら、その理由を以下で説明しています。
impression は「印象」ですが、be under the impression that は「…だと(誤って)思い込む」というようなニュアンスになります。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
be under the impression that... : to believe that something is true when it is not true
例) Sorry, I was under the impression that you were the manager.
つまり、「何かを本当だと信じること、それが本当ではない時に」。
例文は、「ごめんなさい、あなたがマネージャーだと(誤って)思い込んでいました。」
誤って思い込んでいました、ということはつまり、「実際には(本当は)あなたはマネージャーではない」ということを指しますね。
上のレイチェルのセリフも、was under the impression that という過去形で述べられているので、「ミスとミセスというその2つの欄は、お互いにずっと遠く離れていると、私は誤って思い込んでいたわ」というニュアンスになり、「実際には、あなたが言うように、すぐ隣で、すごく近くにあるのよね」とロスの発言を認めたようなセリフになっています。
これはもちろんロスの発言に対する大いなる皮肉ですね。
「ミスとミセスなんて大した違いはないよ。記入用紙でもすぐ隣にあるだろ」と言ったロスに対して、「ああ、ほんとにあなたの言う通りね。私はミスとミセスはものすごーく離れたものだと思ってたけど、あなたの言い方だと、その二つの欄は記入用紙ではすぐ隣に位置している、すっごく近いものだったのよね」と皮肉を言って、ミスとミセスという大きな立場の違いを、記入欄の位置の近さの問題にすり替えてごまかそうとしているロスを非難しているわけです。
さきほど、ロスが「すぐ隣に並んでいる」ことを手のしぐさで示したのと対照的に、レイチェルは、away の部分を強調し、両手を山の形に離すことで、離れている感じをしぐさで示しています。
そうして、ロスの言い分が全く通らないことを皮肉っぽく非難した後、お願いだからどうか時間を取って、あなたが私に何を頼んでいるか、何をお願いしようとしているかを考えてみて、と言っています。
何を頼んでいるか?と言われたロスは、I'm asking you to do me a favor. と答えます。
favor は「親切な行為」。
LAAD では、
favor [noun] : HELP
something that you do for someone in order to help them or be kind to them
つまり、「誰かを助けるため、または誰かに親切にするために、その人に対してすること」。
Would you do me a favor? や、I have a favor to ask. は「お願いがあるのですが」という決まり文句ですね。
Would you do me a favor? を直訳すると、「私に(私を助けるための親切な)ある行為をあなたはしてくれますか?」、I have a favor to ask. は、I have a favor to ask you. または、I have a favor to ask of you. ということで、「あなたに(してもらうように)お願いすべき、ある行為があります」というニュアンスになるでしょう。
私に favor をしてくれますか? あなたにお願いする favor があります、ということから、どちらも「お願いがあるのですが」という意味になるのですね。
レイチェルに、「あなたは私に何をお願いしてるかわかってる? よーく考えてみて」と言われたロスは、僕は、a favor をお願いしているだけだ、みたいに答えたわけですが、これは、「ひとつ(ちょっとした)お願いをしているだけだ、ある一つのお願いをしているだけだ」みたいなニュアンスで使っているのでしょう。
a favor のように、「ちょっとした頼みごとを1つ」お願いしているかのように言うロスに対して、レイチェルは、「だってあなたが私にお願いしているのは、「私にあなたの妻でいてくれ」ということなのよ」と返します。
そんな重大なお願いを、a favor のように簡単な1つの願い事、頼みみたいに言うのはやめて、というところでしょう。
grant は「(願いなどを)かなえてやる、承諾する」なので、grant me this favor は「この頼みごとを僕のためにかなえる、僕の頼みごとを聞き入れる」のような感覚。
ロスは、レイチェルの発言の後、and で続ける形で、「僕は君に、僕の妻でいてくれと(確かに)お願いしているけれど、僕の妻として、君は僕の願いを聞き入れるべきだと僕は思うけど」と言っていることになります。
ロスは、「レイチェルと僕は今、結婚している状態で、法律上は君は僕の妻なんだから、「僕の妻でいてくれ」という願いを妻である君は聞き入れてしかるべきだと思う」と言っているわけですね。
法的に妻であることを逆手にとって、「妻なら僕の願いを聞いてくれて当然じゃないか」、あるいは、「すでに僕の妻なんだから、(そのことを受け入れて)僕の妻でいることを(そのまま)承諾してくれていいじゃないか」と言っていることになるでしょう。
屁理屈というか、論理のすり替えみたいになっているわけですが、そういう理屈をこねるところがいかにもロスらしい、という面白さなのでしょうね。
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レイチェル: What-wh-what so what, we'll just stay married forever? (な、何、じゃあ、何、私たちはただ永遠に結婚した状態を続けるわけ?)
ロス: Okay, look, how is this gonna affect you, really? I mean, you fill some form out once in a while and instead of checking the box that says "Miss," you check the box that says "Mrs." It's right next to it! (よし、いいかい、このこと(結婚しているということ)が、君にどんな影響を与えるんだ? つまり、たまに、何かの書式に記入する時に、Miss の欄にチェックを入れる代わりに、Mrs. の欄にチェックを入れるだけだ。Mrs. は、Miss のちょうど隣にあるんだよ!)
レイチェル: Ohh, okay, I'm sorry. You're right. Y'know what? We absolutely can stay married, because I was under the impression that the boxes were far away from each other. All right. Look, just please take a moment here and think about what you're asking of me. Okay? (あぁ、わかったわ、ごめんなさい。あなたが正しいわね。ねぇ、私たちは間違いなく結婚した状態のままでいられるわ。だって私はその2つの欄はお互い遠く離れてると思い込んでいたから。いいわ、ねぇ、ただここで少し時間を取って、あなたが私にお願いしていることについて考えてちょうだい、いい?)
ロス: I'm asking you to do me a favor. (僕は君に1つお願いをしてるだけだ。)
レイチェル: You are asking me to be your wife. (あなたは私に、あなたの妻でいてくれとお願いしてるのよ。)
ロス: And, as my wife, I think you should grant me this favor. (そして、僕の妻として、君はこの願いを聞き入れるべき[承諾すべき]だと思うけど。)
婚姻無効の申請をしないことにした、というロス。
「婚姻無効」と認められると、「そもそも婚姻関係が成り立っていなかった」と宣言されることになるため、結婚歴、離婚歴としてカウントされないことになります。
が、それでもやはりロスにとっては、そのような婚姻無効申請をしてしまうと、have three failed marriages 「結婚に3度失敗する」ことになるため、それは避けたいという気持ちが出てきたようです。
法的には「バツ3」扱いにはならなくても、ロスにとってはやはり「バツ3」と同じような意識を持ってしまうということなのでしょうね。
無効申請をしないという話をキツい冗談だと思っていたレイチェルですが、ロスが冗談を言っているのではないと知って、レイチェルはただ驚くばかり。
私たちは、このまま永遠に、stay married 「結婚した状態を維持する」ことになるわけ?と問い返しています。
それに対してロスは、「こうして結婚を続けることで君にどんな影響があるっていうの?」みたいなことを言っています。
affect は「…に影響を及ぼす、影響を与える」ですね。
fill out は「(書類に必要事項を)書き入れる、記入する」。
書類に記入する際に、Miss の欄(ボックス)にチェックする代わりに、Mrs. の欄にチェックを入れるだけだ、ただそれだけの違いじゃないか、みたいなことをロスは言います。
ミセスの欄は、ミスの欄のちょうど隣(right next to)にあるんだし、ちょっとした違いだろ、と言いたいようです。
実際に「すぐ隣に並んでいる」という感じを、手のしぐさで示してもいます。
その話を聞いて、レイチェルは、「ごめんなさい、あなたは正しいわ」と言った後、私たちは結婚した状態のままでいることができるわね、と言いながら、その理由を以下で説明しています。
impression は「印象」ですが、be under the impression that は「…だと(誤って)思い込む」というようなニュアンスになります。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
be under the impression that... : to believe that something is true when it is not true
例) Sorry, I was under the impression that you were the manager.
つまり、「何かを本当だと信じること、それが本当ではない時に」。
例文は、「ごめんなさい、あなたがマネージャーだと(誤って)思い込んでいました。」
誤って思い込んでいました、ということはつまり、「実際には(本当は)あなたはマネージャーではない」ということを指しますね。
上のレイチェルのセリフも、was under the impression that という過去形で述べられているので、「ミスとミセスというその2つの欄は、お互いにずっと遠く離れていると、私は誤って思い込んでいたわ」というニュアンスになり、「実際には、あなたが言うように、すぐ隣で、すごく近くにあるのよね」とロスの発言を認めたようなセリフになっています。
これはもちろんロスの発言に対する大いなる皮肉ですね。
「ミスとミセスなんて大した違いはないよ。記入用紙でもすぐ隣にあるだろ」と言ったロスに対して、「ああ、ほんとにあなたの言う通りね。私はミスとミセスはものすごーく離れたものだと思ってたけど、あなたの言い方だと、その二つの欄は記入用紙ではすぐ隣に位置している、すっごく近いものだったのよね」と皮肉を言って、ミスとミセスという大きな立場の違いを、記入欄の位置の近さの問題にすり替えてごまかそうとしているロスを非難しているわけです。
さきほど、ロスが「すぐ隣に並んでいる」ことを手のしぐさで示したのと対照的に、レイチェルは、away の部分を強調し、両手を山の形に離すことで、離れている感じをしぐさで示しています。
そうして、ロスの言い分が全く通らないことを皮肉っぽく非難した後、お願いだからどうか時間を取って、あなたが私に何を頼んでいるか、何をお願いしようとしているかを考えてみて、と言っています。
何を頼んでいるか?と言われたロスは、I'm asking you to do me a favor. と答えます。
favor は「親切な行為」。
LAAD では、
favor [noun] : HELP
something that you do for someone in order to help them or be kind to them
つまり、「誰かを助けるため、または誰かに親切にするために、その人に対してすること」。
Would you do me a favor? や、I have a favor to ask. は「お願いがあるのですが」という決まり文句ですね。
Would you do me a favor? を直訳すると、「私に(私を助けるための親切な)ある行為をあなたはしてくれますか?」、I have a favor to ask. は、I have a favor to ask you. または、I have a favor to ask of you. ということで、「あなたに(してもらうように)お願いすべき、ある行為があります」というニュアンスになるでしょう。
私に favor をしてくれますか? あなたにお願いする favor があります、ということから、どちらも「お願いがあるのですが」という意味になるのですね。
レイチェルに、「あなたは私に何をお願いしてるかわかってる? よーく考えてみて」と言われたロスは、僕は、a favor をお願いしているだけだ、みたいに答えたわけですが、これは、「ひとつ(ちょっとした)お願いをしているだけだ、ある一つのお願いをしているだけだ」みたいなニュアンスで使っているのでしょう。
a favor のように、「ちょっとした頼みごとを1つ」お願いしているかのように言うロスに対して、レイチェルは、「だってあなたが私にお願いしているのは、「私にあなたの妻でいてくれ」ということなのよ」と返します。
そんな重大なお願いを、a favor のように簡単な1つの願い事、頼みみたいに言うのはやめて、というところでしょう。
grant は「(願いなどを)かなえてやる、承諾する」なので、grant me this favor は「この頼みごとを僕のためにかなえる、僕の頼みごとを聞き入れる」のような感覚。
ロスは、レイチェルの発言の後、and で続ける形で、「僕は君に、僕の妻でいてくれと(確かに)お願いしているけれど、僕の妻として、君は僕の願いを聞き入れるべきだと僕は思うけど」と言っていることになります。
ロスは、「レイチェルと僕は今、結婚している状態で、法律上は君は僕の妻なんだから、「僕の妻でいてくれ」という願いを妻である君は聞き入れてしかるべきだと思う」と言っているわけですね。
法的に妻であることを逆手にとって、「妻なら僕の願いを聞いてくれて当然じゃないか」、あるいは、「すでに僕の妻なんだから、(そのことを受け入れて)僕の妻でいることを(そのまま)承諾してくれていいじゃないか」と言っていることになるでしょう。
屁理屈というか、論理のすり替えみたいになっているわけですが、そういう理屈をこねるところがいかにもロスらしい、という面白さなのでしょうね。
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2011年07月22日
婚姻無効annulment フレンズ6-1その3
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シーズン5の終わりに、酔っぱらった勢いでベガスの教会で結婚式を挙げてしまったロスとレイチェル。
ベガスではお手軽に結婚できるといっても、それはやはり正式な結婚と認められるため、二人は今、夫婦の関係にあります。
弁護士を使って正式に離婚手続きをしたいと思うレイチェルですが、ロスはここで離婚すると、キャロル、エミリーとの離婚に続いて3回目の離婚となってしまうため、「バツ3の男」になってしまいます。
そこでロスは、"We don't need to get divorced, okay? We're just gonna get an annulment." と言って、離婚するのではなく、婚姻無効(annulment)の手続きをして、結婚そのものが無効であったことにすればいいと提案します。
マンハッタンに帰ってきた後、レイチェルのいるセントラルパークにロスが入ってきます。
ロス: Yeah. Yeah, actually um, I wanted to talk to you about that whole annulment thing? (やあ、やあ。実は、その、例の婚姻無効の件について、君に話したいことがあったんだよ。)
レイチェル: Uh-huh. (ええ。)
ロス: Yeah, I'm not gonna do that. (Rachel glares at him.) (そうなんだ、僕はそれを(婚姻無効手続きを)しないことにするよ。 [レイチェルはロスをにらみつける])
Commercial Break
[Scene: Central Perk, continued from earlier. Rachel starts laughing.]
セントラルパーク。前のシーンからの続き。レイチェルは笑いだす。
レイチェル: Okay! So we'll just stay married! (オッケー! それじゃあ、私たちはただ結婚した状態のままなのね!)
ロス: Yes, exactly. (そう、その通り。)
レイチェル: And I will make everyone call me Mrs. Geller. (そして、私はみんなに、ミセス・ゲラーって呼ばせるのね。)
ロス: Wow, this is so amazing. I uh, I really thought I'd have to talk you into this more. (わぁ、これってすっごく驚きだよ。僕は、ほら、君がこれを認めてくれるようにもっと説き伏せないといけないと本当に思ってたから。)
レイチェル: Okay, see now I'm scared because I don't actually think you're kidding. (あのね、今、私、怖いわ。だって、あなたが冗談を言ってるようには(実際)思えないから。)
ロス: I'm-I'm not kidding. Look, I-I, I can't have three failed marriages. I can't, okay? I-I am not gonna be that guy! (僕は、僕は冗談は言ってないよ。ほら、結婚を3度、失敗するわけにはいかないんだ。そんなことできないんだよ、だろ? 僕はそんな男になるつもりはない!)
まずは、annulment 「婚姻無効(の宣告、判決)」について。
Wikipedia 日本語版: 婚姻の無効 では、以下のようにわかりやすく説明してくれています。
婚姻の無効(こんいんのむこう、Annulment)とは結婚が無効であるということを宣言する法的手順のことである。婚姻の無効は、結婚関係が事後的な事情によって解消される離婚とは異なり、そもそも婚姻関係が成り立っていなかったことを示すものである。
婚姻無効が認められれば、結婚したという事実そのものがなくなり、結婚歴、離婚歴としても残らない、ということですね。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
annul [verb, tranitive often passive] :
(technical) to officially end a marriage or legal agreement so that it is considered to have never existed
annulment noun [countable, uncountable]
つまり、「(専門用語) 婚姻や法的契約を公式に終えること、それが過去に全く存在していなかったとみなされるように」。
Macmillan Dictionary では、
annul [verb, transitive] :
to state officially that something such as a marriage, an agreement, or an election has no legal authority
つまり、「婚姻や契約や選挙などに法的権限がないことを公式に宣言すること」。
つまり、婚姻だけに限らず、他の契約、合意事項にも使われる言葉で、「それが存在していなかった」「法的権限がない」ということを、officially に言う、認めるというのがその語義になるでしょう。
ロスは、I wanted to talk... と言って、その一連の annulment の件でレイチェルに話したいことがあったんだ、と切り出しています。
I'm not gonna do that. は、I'm not gonna get an annulment. ということで、「僕は、婚姻無効の宣告をもらわない、ゲットしない」というような感じになるでしょうか。
法的にこの婚姻は無効であったと宣言してもらうことをしない、婚姻無効の正式な宣言をもらおうと思ってたけど、それはしないことにした、というところです。
ちなみに、上で紹介した Wikipedia 日本語版: 婚姻の無効 の、「ニューヨーク州における婚姻の無効」という項目に、以下の記述があります。
2004年にブリトニー・スピアーズが申請、2005年にはレニー・ゼルウィガーも申請したといわれる。
Wikipedia 日本語版: ブリトニー・スピアーズ の「私生活」という項目には、その婚姻無効の件が以下のようにより詳しく書かれています。
2004年1月、Hollywood News Wireによると1月4日にネバダ州ラスベガスで幼なじみのジェーソン・アレキサンダーと酔った勢いで結婚するも、すぐに思い直して55時間後には婚姻無効を申請し(以下略)
過去記事、ベガスでは簡単に結婚できちゃう フレンズ5-24その6 でも説明しましたが、ブリトニー・スピアーズは、ロスとレイチェルが結婚したのと同じ、A Little White Chapel で結婚式を挙げた有名人の一人でした。
結局、ロスはここで「婚姻無効申請はしないことにする」と言っているわけですが、結婚したチャペルが同じだけではなく、「酔った勢いで結婚するも…婚姻無効を申請し」という部分にも接点があるところが何だか興味深いです。
このフレンズ6-1 の放映は 1999年なので、ブリトニーの婚姻無効よりも、フレンズの婚姻無効うんぬん話の方が時期的には早かったことになります。
「酔った勢いで結婚するも、すぐに婚姻無効申請をした」というブリトニーのニュースを後からフレンズがエピソードに取り込んだわけではない、ということですね。
かと言って、フレンズのエピソードでやっていたのと似たようなことを、ブリトニーが参考にして真似た、ということでもないのでしょう。
経歴に離婚歴を残さないための手段として広く認識されている方法ということなんだろうと思います。
思いがけないことを言うロスをレイチェルがにらんで、コマーシャルブレイクになるのですが、その後、レイチェルは、ニヤニヤして笑い出します。
stay married は、married の状態で stay するわけですから、「結婚している状態が継続する、結婚したままでいる」ということ。
離婚もしないで、婚姻無効の手続きも取らないってことは、私たちはこのまま結婚した状態が続くのね、ということです。
I will make everyone call me Mrs. Geller. のように、使役動詞として make が使われていますが、これは「強制的に(人に)…させる」というニュアンスが感じられますね。
法的には二人は結婚していることになっているけれど、実際に同居して夫婦生活を送っているわけではなく、普段の生活は、前のレイチェル・グリーンのまま。
それなのに、誰かに名前を呼んでもらう場合は、私、実はミセス・ゲラーなんですよ、と説明して、「ゲラー夫人」って呼んでもらわないといけないのね、みたいな感じのことでしょう。
以前と変わらぬレイチェルに対しては、今まで通りのレイチェル・グリーンとみんなが呼ぶところを、あえて無理やり、ミセス・ゲラーと(半ば強制的に)呼ばせないといけないのね、みたいな感覚だと思います。
レイチェルのその話を聞いて、ロスは驚いたように、I really thought I'd have to talk you into this more. と言っています。
talk someone into... は、「人を説得して・説き伏せて…させる、人に…する気にさせる」。
talk someone out of... なら、「人を説得して・説き伏せて…をやめさせる、思いとどまらせる」という逆の意味になります。
into という「何かに入り込む」感じと、out of という「何かから抜け出る」感じから、そういうニュアンスが出るわけですね。
ロスのセリフは、「レイチェルがこうしてくれるようにもっと説得しないといけないだろうと本当に思ってたのに」みたいな感じになります。
こうしてくれること、とは、「婚姻無効申請をやめて、このまま夫婦でいることを受け入れること」を指すでしょう。
stay married ということをレイチェルに納得してもらうようにいろいろと説き伏せないといけないと思って覚悟していたのに、「じゃあ、私たちは stay married で、みんなに「ミセス・ゲラー」って呼ばせるのね」とあっさりそれを認めるような発言をレイチェルがしたので、説き伏せる必要がなかったなんてびっくりだよ、と驚いているわけです。
そのロスの発言を聞いてレイチェルは、see now I'm scared と言っています。
「今、怖い、怖いと思ってる」ということですが、その理由として、「あなたが冗談を言っているとは思えないから」と言っています。
つまり、それまで、「じゃあ、結婚したままで、私はミセス・ゲラーって呼ばれるんだー」と笑いながら言っていたのは、ロスの話をキツい冗談だと思っていたからだということになります。
「今は怖い、あなたが冗談と言っているとは思えないから」→「それまで平気で笑ってたのは、それが冗談だと思ってたから」ということです。
「君を説き伏せないといけないと思ってたのにびっくりだよ」「じゃあそれは冗談じゃなくて本気なわけ、私、今、すごく怖いんだけど」みたいなやり取りなのですね。
ロスは、僕は冗談を言ってるんじゃない、と言います。
I can't have three failed marriages. を直訳すると、「僕は3回の失敗した結婚を持つことはできない」ということで、つまりは、「結婚に3回も失敗するわけにはいかない、もう2回失敗してるんで、3回目の失敗を受け入れることはできない」というようなニュアンスですね。
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シーズン5の終わりに、酔っぱらった勢いでベガスの教会で結婚式を挙げてしまったロスとレイチェル。
ベガスではお手軽に結婚できるといっても、それはやはり正式な結婚と認められるため、二人は今、夫婦の関係にあります。
弁護士を使って正式に離婚手続きをしたいと思うレイチェルですが、ロスはここで離婚すると、キャロル、エミリーとの離婚に続いて3回目の離婚となってしまうため、「バツ3の男」になってしまいます。
そこでロスは、"We don't need to get divorced, okay? We're just gonna get an annulment." と言って、離婚するのではなく、婚姻無効(annulment)の手続きをして、結婚そのものが無効であったことにすればいいと提案します。
マンハッタンに帰ってきた後、レイチェルのいるセントラルパークにロスが入ってきます。
ロス: Yeah. Yeah, actually um, I wanted to talk to you about that whole annulment thing? (やあ、やあ。実は、その、例の婚姻無効の件について、君に話したいことがあったんだよ。)
レイチェル: Uh-huh. (ええ。)
ロス: Yeah, I'm not gonna do that. (Rachel glares at him.) (そうなんだ、僕はそれを(婚姻無効手続きを)しないことにするよ。 [レイチェルはロスをにらみつける])
Commercial Break
[Scene: Central Perk, continued from earlier. Rachel starts laughing.]
セントラルパーク。前のシーンからの続き。レイチェルは笑いだす。
レイチェル: Okay! So we'll just stay married! (オッケー! それじゃあ、私たちはただ結婚した状態のままなのね!)
ロス: Yes, exactly. (そう、その通り。)
レイチェル: And I will make everyone call me Mrs. Geller. (そして、私はみんなに、ミセス・ゲラーって呼ばせるのね。)
ロス: Wow, this is so amazing. I uh, I really thought I'd have to talk you into this more. (わぁ、これってすっごく驚きだよ。僕は、ほら、君がこれを認めてくれるようにもっと説き伏せないといけないと本当に思ってたから。)
レイチェル: Okay, see now I'm scared because I don't actually think you're kidding. (あのね、今、私、怖いわ。だって、あなたが冗談を言ってるようには(実際)思えないから。)
ロス: I'm-I'm not kidding. Look, I-I, I can't have three failed marriages. I can't, okay? I-I am not gonna be that guy! (僕は、僕は冗談は言ってないよ。ほら、結婚を3度、失敗するわけにはいかないんだ。そんなことできないんだよ、だろ? 僕はそんな男になるつもりはない!)
まずは、annulment 「婚姻無効(の宣告、判決)」について。
Wikipedia 日本語版: 婚姻の無効 では、以下のようにわかりやすく説明してくれています。
婚姻の無効(こんいんのむこう、Annulment)とは結婚が無効であるということを宣言する法的手順のことである。婚姻の無効は、結婚関係が事後的な事情によって解消される離婚とは異なり、そもそも婚姻関係が成り立っていなかったことを示すものである。
婚姻無効が認められれば、結婚したという事実そのものがなくなり、結婚歴、離婚歴としても残らない、ということですね。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
annul [verb, tranitive often passive] :
(technical) to officially end a marriage or legal agreement so that it is considered to have never existed
annulment noun [countable, uncountable]
つまり、「(専門用語) 婚姻や法的契約を公式に終えること、それが過去に全く存在していなかったとみなされるように」。
Macmillan Dictionary では、
annul [verb, transitive] :
to state officially that something such as a marriage, an agreement, or an election has no legal authority
つまり、「婚姻や契約や選挙などに法的権限がないことを公式に宣言すること」。
つまり、婚姻だけに限らず、他の契約、合意事項にも使われる言葉で、「それが存在していなかった」「法的権限がない」ということを、officially に言う、認めるというのがその語義になるでしょう。
ロスは、I wanted to talk... と言って、その一連の annulment の件でレイチェルに話したいことがあったんだ、と切り出しています。
I'm not gonna do that. は、I'm not gonna get an annulment. ということで、「僕は、婚姻無効の宣告をもらわない、ゲットしない」というような感じになるでしょうか。
法的にこの婚姻は無効であったと宣言してもらうことをしない、婚姻無効の正式な宣言をもらおうと思ってたけど、それはしないことにした、というところです。
ちなみに、上で紹介した Wikipedia 日本語版: 婚姻の無効 の、「ニューヨーク州における婚姻の無効」という項目に、以下の記述があります。
2004年にブリトニー・スピアーズが申請、2005年にはレニー・ゼルウィガーも申請したといわれる。
Wikipedia 日本語版: ブリトニー・スピアーズ の「私生活」という項目には、その婚姻無効の件が以下のようにより詳しく書かれています。
2004年1月、Hollywood News Wireによると1月4日にネバダ州ラスベガスで幼なじみのジェーソン・アレキサンダーと酔った勢いで結婚するも、すぐに思い直して55時間後には婚姻無効を申請し(以下略)
過去記事、ベガスでは簡単に結婚できちゃう フレンズ5-24その6 でも説明しましたが、ブリトニー・スピアーズは、ロスとレイチェルが結婚したのと同じ、A Little White Chapel で結婚式を挙げた有名人の一人でした。
結局、ロスはここで「婚姻無効申請はしないことにする」と言っているわけですが、結婚したチャペルが同じだけではなく、「酔った勢いで結婚するも…婚姻無効を申請し」という部分にも接点があるところが何だか興味深いです。
このフレンズ6-1 の放映は 1999年なので、ブリトニーの婚姻無効よりも、フレンズの婚姻無効うんぬん話の方が時期的には早かったことになります。
「酔った勢いで結婚するも、すぐに婚姻無効申請をした」というブリトニーのニュースを後からフレンズがエピソードに取り込んだわけではない、ということですね。
かと言って、フレンズのエピソードでやっていたのと似たようなことを、ブリトニーが参考にして真似た、ということでもないのでしょう。
経歴に離婚歴を残さないための手段として広く認識されている方法ということなんだろうと思います。
思いがけないことを言うロスをレイチェルがにらんで、コマーシャルブレイクになるのですが、その後、レイチェルは、ニヤニヤして笑い出します。
stay married は、married の状態で stay するわけですから、「結婚している状態が継続する、結婚したままでいる」ということ。
離婚もしないで、婚姻無効の手続きも取らないってことは、私たちはこのまま結婚した状態が続くのね、ということです。
I will make everyone call me Mrs. Geller. のように、使役動詞として make が使われていますが、これは「強制的に(人に)…させる」というニュアンスが感じられますね。
法的には二人は結婚していることになっているけれど、実際に同居して夫婦生活を送っているわけではなく、普段の生活は、前のレイチェル・グリーンのまま。
それなのに、誰かに名前を呼んでもらう場合は、私、実はミセス・ゲラーなんですよ、と説明して、「ゲラー夫人」って呼んでもらわないといけないのね、みたいな感じのことでしょう。
以前と変わらぬレイチェルに対しては、今まで通りのレイチェル・グリーンとみんなが呼ぶところを、あえて無理やり、ミセス・ゲラーと(半ば強制的に)呼ばせないといけないのね、みたいな感覚だと思います。
レイチェルのその話を聞いて、ロスは驚いたように、I really thought I'd have to talk you into this more. と言っています。
talk someone into... は、「人を説得して・説き伏せて…させる、人に…する気にさせる」。
talk someone out of... なら、「人を説得して・説き伏せて…をやめさせる、思いとどまらせる」という逆の意味になります。
into という「何かに入り込む」感じと、out of という「何かから抜け出る」感じから、そういうニュアンスが出るわけですね。
ロスのセリフは、「レイチェルがこうしてくれるようにもっと説得しないといけないだろうと本当に思ってたのに」みたいな感じになります。
こうしてくれること、とは、「婚姻無効申請をやめて、このまま夫婦でいることを受け入れること」を指すでしょう。
stay married ということをレイチェルに納得してもらうようにいろいろと説き伏せないといけないと思って覚悟していたのに、「じゃあ、私たちは stay married で、みんなに「ミセス・ゲラー」って呼ばせるのね」とあっさりそれを認めるような発言をレイチェルがしたので、説き伏せる必要がなかったなんてびっくりだよ、と驚いているわけです。
そのロスの発言を聞いてレイチェルは、see now I'm scared と言っています。
「今、怖い、怖いと思ってる」ということですが、その理由として、「あなたが冗談を言っているとは思えないから」と言っています。
つまり、それまで、「じゃあ、結婚したままで、私はミセス・ゲラーって呼ばれるんだー」と笑いながら言っていたのは、ロスの話をキツい冗談だと思っていたからだということになります。
「今は怖い、あなたが冗談と言っているとは思えないから」→「それまで平気で笑ってたのは、それが冗談だと思ってたから」ということです。
「君を説き伏せないといけないと思ってたのにびっくりだよ」「じゃあそれは冗談じゃなくて本気なわけ、私、今、すごく怖いんだけど」みたいなやり取りなのですね。
ロスは、僕は冗談を言ってるんじゃない、と言います。
I can't have three failed marriages. を直訳すると、「僕は3回の失敗した結婚を持つことはできない」ということで、つまりは、「結婚に3回も失敗するわけにはいかない、もう2回失敗してるんで、3回目の失敗を受け入れることはできない」というようなニュアンスですね。
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2011年07月19日
主語youで自分の体験を語る フレンズ1-5その7
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フレンズ1-5その1 のコメント欄 でご質問がありました。
その記事内で、
チャンドラー: There's that awkward moment when you've handed her the note. (ジャニスにメモを渡したときは、気まずい空気が流れたよ。)
というセリフについて取り上げているのですが、「ジャニスにメモを渡したのはチャンドラーなのに、どうして主語が I ではなくて、you になっているのでしょうか?」というご質問でした。
そのセリフについて、その記事では解説が不十分であることと、私が当時つけた日本語訳を見ると、今の私が考えるものと少しニュアンスが違っているように思ったので、今回、改めて1つの記事として、修正と解説の追加をしたいと思います。
このような「自分の体験を語る you 」は、フレンズなどの海外ドラマのセリフによく登場するもので、これまでの記事やコメント欄でも何度か説明したことがあります。
ですが、フレンズ1-5 のようなシーズン1の最初の頃のエピソードですでに出てきていた、ということであれば、少しでも早い段階でそういう you のニュアンスを理解していただいていた方が、あとあとの英語学習もスムーズになるだろうとも思いました。
フレンズ1-1 から順番に学んでおられる方のためにも、今回は、フレンズ1-5 の追加記事として改めて書いてみようと思ったということです。
ですから、過去の記事やコメント欄に書いた部分と重複するところも多々あると思いますが、ご了承下さいませ。
フレンズ1-5その1 の記事では、チャンドラーの長いセリフの中の1つの文だけを取り上げていますが、実際のそこでのやり取りは以下のようになっていました。
今の私が考える日本語訳も一緒につけてみます。
モニカ: Chandler, nobody likes breaking up with someone. You just gotta do it. (チャンドラー、人と別れるのが好きな人なんていないわ。ただそうしなくっちゃ[別れなくちゃ]。)
チャンドラー: No, I know. But it's just so hard, you know? I mean, you're sitting there with her. She has no idea what's happening. And then you finally get up the courage to do it. There's the horrible awkward moment when you've handed her the note. (わかってるよ。でもただすごく難しいんだ、わかるだろ? つまりこういうことだ、彼女(ジャニス)とそこに座ってるとする。彼女は何が起ころうとしているのか全くわかっていない。そしてそれからついに別れる勇気を振り絞る。そこで、ものすごく気まずい瞬間があるんだよね、彼女にメモを手渡す時にさ。)
チャンドラーは、ジャニスと別れるのがどれほど難しいかを説明しようとしています。そのチャンドラーのセリフはすべて、主語が you で語られていますね。
これは、最初の部分の、But it's just so hard, you know? I mean... に続く形で、「ジャニスと別れるのがどんなに大変かわかるだろ? 例えばこんな感じなんだよ…」と、相手にジャニスとの場面を想像させて、そのハードさを理解してもらおうというようなニュアンスがあります。
チャンドラーは、「過去にジャニスとの間に実際に起こったこと」(過去の出来事)を説明しているのだと思うのですが、それをリアルに「想像」してもらうために、主語を you にし、現在形を使ってしゃべっているのだと思います。
日本語でも、「ほら、ちょっとそういう状況を想像してみてよ、君がジャニスと座ってるとする。ジャニスはこれから何が起こるのか全然わかってない。それで…」みたいに言うことがありますよね。それと同じような感覚だと思います。
日本語だと、「例えば、君がこういう状況だと想像してみてくれ」みたいに事前に一言、言っておく必要があるようにも思いますが、英語の場合は、「自分の体験を説明する際に、相手に共感してもらえるように、主語に you を使って説明する」ということが一般的かつ自然に行われているため、いきなり、主語の you を使って言っても相手も戸惑わないわけです。
これが、主語が I であって、時制もすべて過去形であったなら、「過去に起こった事実を淡々と述べている感じ」になるでしょうが、相手にその体験を共有してもらって、そのハードさを理解してもらうために、主語が you で現在形が使われている、と考えたらよいと思います。
つまり、チャンドラーは、自分の経験を述べているようですが、「もし君がこういう状況にいたとする、それで彼女はこんな感じで、結局、こういう結果になるんだよ」と、君(相手)に疑似体験を連想させて、相手の共感を得ながら自分の体験を一般論として語る感覚が、この you なのだと思います。
こういう you は、「君が」と訳すべきではないし、また、自分の体験を語っているのであっても、「俺が、私が」のように訳さない方が良いとも思います。
「相手を含めた一般の人の you を使うことによって、自分の体験を相手に共有させる」ニュアンスがあるわけですから、あえて主語を誰とは示さずに訳す方が、この英語の you のニュアンスが出やすい気がするのですね。
また、チャンドラーは、自分の経験を語っていると思われるので、意味としては、私が過去記事で訳したような「ジャニスにメモを渡したときは、気まずい空気が流れたよ」みたいな感じの内容になるとは思いますが、厳密に前から訳すと、「そういう気まずい瞬間があるんだよ、ジャニスにメモを(ちょうど)手渡した時にね[手渡すとね]」みたいになるでしょうか。
また、when 以下が後半に位置しているのは英語ではよくある普通のことですが、このセリフに関して言うと、この部分がジョークのオチ(punchline)になっているような気もします。
ジャニスと別れるのがどれだけ大変か、という話を語っていて、「何もわかってないジャニスに対して、別れを告げようと勇気を振り絞るも、気まずい瞬間があるんだよねぇ…」と来るので、彼女に「別れよう」と口に出して言うのが気まずいのかと思ったら、直接口では言えなくて、メモに書いて手渡す、というオチだった、という面白さがあるのかなぁ、と。
「別れよう」ってメモに書いて渡す?!って、そりゃあ気まずいわっ!(笑)とツッコミを入れたくなる感じもしますし、また、「ばつが悪く、きまりが悪い」と言っていたのは、「別れを告げることそのもの」ではなくて、「メモを使うという行為」を指しているという面白さなのかな、とも思います。
「いやぁ、気まずくてさぁ、メモを渡すと」「え、メモ!?」みたいな感じのやり取りで、勇気を奮い起こした結果が、直接口では言えない、「メモの手渡し」かよっ!という楽しさなのでしょう。
have handed her the note を聞くまでは、「うーん、確かに気まずいわよね…」と共感していただろう聞き手のみんなが、メモのオチを聞いてちょっと拍子抜けする、みたいな感覚なのかなと私は思いました。
ということで、このセリフは、「俺がジャニスにメモを手渡した時、気まずい瞬間があった」という「過去の自分の経験」っぽく訳すよりも、「気まずい瞬間があるんだよね、ジャニスにメモを手渡すとさ」という、「内容を相手の頭の中でイメージさせるような感覚」で訳すのが良いのかな、と思います。
このように、英語では、「自分の経験談を語る時に、主語を you にする」ということがあるわけですが、それについては、辞書、または他の方のわかりやすい説明を引用させていただく形で、そのニュアンスを詳しく見ていきたいと思います。
まず、you には話している相手の「あなた」以外に、「一般の人」を表す意味があります。
それは、英和や英英にもたいていは載っています。
研究社 新英和中辞典では、
you=[総称的に一般の人をさして]人は(だれでも)
(用法)漠然とした人をさすので, 日本語に訳さないほうがよい場合が多い
と説明されています。
また、LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
you [pronoun]: people in general
つまり、「一般の人」という語義で載っています。
その「一般の人」を表す、という意味から、一般の人には当然 I も含まれている、ということで、I の代わりに you を使うことがある、ということになるようです。
you が「一般の人」を指す、というところまでは、とりあえず辞書にも載っているのですが、さらにそれが「I をも含んでいる」、だから、「I の代わりに you を使うことがある」ということまでは、辞書にはなかなか載っていません。
以下にそのニュアンスを非常にわかりやすく説明して下さっている2つの説明をご紹介します。
1つ目は、「週刊ST」内のコラム、2つ目は、マーク・ピーターセンさんの「続 日本人の英語」です。
(この引用は、他の記事でも何度も使わせていただいていますが、「本当にこの説明はわかりやすい!」ので、今回も是非使わせて下さい!)
まずは、ジャパンタイムズ発行の抄訳付き英字新聞「週刊ST」の堀内克明さんと V.E.ジョンソンさんによるコラム「英語Q&A」の記事。
そのコラムでは、このトピックについて2度取り上げられていました。
1回目は、2005年6月10日号の、「一般の人を表す you 」という記事。
読者の方の質問は、「ミュージシャンのインタビューで、明らかに自分が質問されているのに、主語を you にして答える人が多い。この you はどのようなニュアンスなのでしょうか?」というものです。
その時の先生方の回答を以下に引用させていただきますと、
この you は一般の人(person or people in general)を指すもので、特定の「あなた」を指してはいません。つまり、「あなたを含む一般の人」といった意味で、話し相手を抱き込むような親しみを込めています。
従って、会話やインタビューでは、くだけて親しい感じを表わすために you が好んで使われます。
そして、もしインタビューに答える時などに、you 以外の単語を使った場合にはどういうニュアンスになるか、という説明もされていて(これがまた非常にわかりやすくて感動したのですが)、その説明は以下のとおり。
one や a person だと「改まっていて、堅い」感じ。
people は「自分以外の世間一般の人たちを指す」感じ。
we は「われわれ」という自己主張が感じられて、you のように控えめではない。
I だと「自己満足」の感じ。
動名詞を使って「…することは」という文にして主語を省略すると、主語を省略する日本語に近い効果があるが、これはぶっきらぼうな印象を与える。
2回目に取り上げられたのが、同じコラム「英語Q&A」の 2007年1月12日号の「自分のことを指す you 」という記事。
「(インタビュー記事などで)、本人が自分のことを話しているのに、主語が "you" になっているのをよく見ます。I ではいけないのでしょうか?」
という読者の質問に対する先生方の回答を、以下に引用させていただきます。
こういう you は、generic you (総称的な you) または indefinite you (不特定の you)と呼ばれます。
つまり、この you は特定の「あなた」ではなく、「あなた(方)を含む人(たち)」です。これは「人」(one)に近く、結局「われわれ」(we)と同じ意味になります。この we には当然 I が含まれますので、回りまわって you = I に相当します。
要するに、最初から I と言うと自己主張のように聞こえて、客観性がありませんので、相手を含めて you と言うと、一般性のある意見を伝えることができるというわけなのです。
次にご紹介するのは、マーク・ピーターセンさんの 続 日本人の英語 (岩波新書)
p.69 から、
「あなた」ではない You
についての説明があります。
p.71 に、
「英語では、自分の経験から一般論を推定する場合、主語を "you" にすることが実に多い。」
とあります。
こういう you の使い方は、一般日本人には馴染みがないらしく、日本人学生にこの "you" を使うと、たいてい誤解される、という主旨のことも書いてあります。
つまり、自分の経験として「一般論の you」を使って、When you watch... , you can.... と説明すると、I can? と聞き返される、というような「すれ違い」がたびたび起こる、ということですね。
また、日本人はこういう一般論を語る場合に、We を使いたがるが、そういう "we" は、「硬くてやや不自然というだけでなく外国人の相手に少々疎外感さえ与えかねない」とも説明されています。
日本人は、「you=あなた」だと思い込んでいるので、相手が you という単語を使うと、「えっ? 「私」のこと?、私が聞きたい・知りたいのは「あなた」のことなのに」とか思ってしまうんですよね。
そういう日本人が抱きがちな疑問を、「続 日本人の英語」では、上手に説明して下さっています。
この「続 日本人の英語」という本は、その前に出た 日本人の英語 (岩波新書) の続編ですが、2冊とも今でもずっと売れ続けているロングセラーです。
「日本人の英語」を知り尽くしておられる方なだけに、2冊とも目からウロコの解説ばかりなのですが、私はこの続編の「「あなた」ではない You 」の説明に実は一番感動を覚えました。
ネイティブがよく使うにもかかわらず、これを説明している辞書や本が少ない、そのため、この you のニュアンスを知らない日本人英語学習者は結構多いような気がするのですね。
you なんて、中学校で一番最初に習う単語の一つですから、今さらをそれを調べる人もいないだろうし、「you =あなた」と思い込んでしまってそれ以外のニュアンスがあることにも気づかずにスルーしてしまいがちです。
こういう you のニュアンスは、実際に生きた英語でそれに出会った経験がないと、上に引用させていただいたような説明もピンと来ないんですよね。
私は海外ドラマのセリフという生きた英語を学んだおかげで、そういう you に出会ったことがあったため、週刊STやピーターセンさんの説明を読んだ時に、すんなり納得できたのだと思います。
そういえばそういう言い回し、どこかで聞いたことがあったけど、そういうニュアンスだったのかぁ、と「気付く」感覚です。
上にも書きましたように、ピーターセンさんの本は長年売れ続けているベストセラーなわけですから、その「「あなた」ではない You 」を読んだ日本人英語学習者はかなりの人数おられるはず。
それなのに、日本人が英語を話す時に、そういう you を自然に使って話している人をあまり見かけない気がするのですね。
それは、「英語の知識」としてとどまっていて、自分で使えるレベルまで到達していない、ということなのだと思います。
自分で使えるようになるには、そういう知識を「実際に英語が話されている現場」で確認して、「あぁ、こんな風に使うんだ」という感覚を掴む必要がある、ということなのだろうと。
知識と経験を融合させなければ言葉は使えるようにはならない、そういう気がします。
なんだか最後は「英語論」みたいになってしまいましたが(笑)、辞書に普通に書いてあることを改めて別の本で確認してもそれはあまり意味がない気がする…今回引用させていただいた説明のように、辞書や他の本にはなかなか書いていない「ネイティブの感覚」に出会えた時に、いつも私は喜びを感じるのです。
「私がネイティブの人に教えてもらいたいのは、そういうことなんですよっ!」みたいな感動と言いますか。
また、そういう感覚を、実際にセリフで確認できる「海外ドラマのDVDを使った英語学習法」の意義も改めて感じることができる気がしています。
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フレンズ1-5その1 のコメント欄 でご質問がありました。
その記事内で、
チャンドラー: There's that awkward moment when you've handed her the note. (ジャニスにメモを渡したときは、気まずい空気が流れたよ。)
というセリフについて取り上げているのですが、「ジャニスにメモを渡したのはチャンドラーなのに、どうして主語が I ではなくて、you になっているのでしょうか?」というご質問でした。
そのセリフについて、その記事では解説が不十分であることと、私が当時つけた日本語訳を見ると、今の私が考えるものと少しニュアンスが違っているように思ったので、今回、改めて1つの記事として、修正と解説の追加をしたいと思います。
このような「自分の体験を語る you 」は、フレンズなどの海外ドラマのセリフによく登場するもので、これまでの記事やコメント欄でも何度か説明したことがあります。
ですが、フレンズ1-5 のようなシーズン1の最初の頃のエピソードですでに出てきていた、ということであれば、少しでも早い段階でそういう you のニュアンスを理解していただいていた方が、あとあとの英語学習もスムーズになるだろうとも思いました。
フレンズ1-1 から順番に学んでおられる方のためにも、今回は、フレンズ1-5 の追加記事として改めて書いてみようと思ったということです。
ですから、過去の記事やコメント欄に書いた部分と重複するところも多々あると思いますが、ご了承下さいませ。
フレンズ1-5その1 の記事では、チャンドラーの長いセリフの中の1つの文だけを取り上げていますが、実際のそこでのやり取りは以下のようになっていました。
今の私が考える日本語訳も一緒につけてみます。
モニカ: Chandler, nobody likes breaking up with someone. You just gotta do it. (チャンドラー、人と別れるのが好きな人なんていないわ。ただそうしなくっちゃ[別れなくちゃ]。)
チャンドラー: No, I know. But it's just so hard, you know? I mean, you're sitting there with her. She has no idea what's happening. And then you finally get up the courage to do it. There's the horrible awkward moment when you've handed her the note. (わかってるよ。でもただすごく難しいんだ、わかるだろ? つまりこういうことだ、彼女(ジャニス)とそこに座ってるとする。彼女は何が起ころうとしているのか全くわかっていない。そしてそれからついに別れる勇気を振り絞る。そこで、ものすごく気まずい瞬間があるんだよね、彼女にメモを手渡す時にさ。)
チャンドラーは、ジャニスと別れるのがどれほど難しいかを説明しようとしています。そのチャンドラーのセリフはすべて、主語が you で語られていますね。
これは、最初の部分の、But it's just so hard, you know? I mean... に続く形で、「ジャニスと別れるのがどんなに大変かわかるだろ? 例えばこんな感じなんだよ…」と、相手にジャニスとの場面を想像させて、そのハードさを理解してもらおうというようなニュアンスがあります。
チャンドラーは、「過去にジャニスとの間に実際に起こったこと」(過去の出来事)を説明しているのだと思うのですが、それをリアルに「想像」してもらうために、主語を you にし、現在形を使ってしゃべっているのだと思います。
日本語でも、「ほら、ちょっとそういう状況を想像してみてよ、君がジャニスと座ってるとする。ジャニスはこれから何が起こるのか全然わかってない。それで…」みたいに言うことがありますよね。それと同じような感覚だと思います。
日本語だと、「例えば、君がこういう状況だと想像してみてくれ」みたいに事前に一言、言っておく必要があるようにも思いますが、英語の場合は、「自分の体験を説明する際に、相手に共感してもらえるように、主語に you を使って説明する」ということが一般的かつ自然に行われているため、いきなり、主語の you を使って言っても相手も戸惑わないわけです。
これが、主語が I であって、時制もすべて過去形であったなら、「過去に起こった事実を淡々と述べている感じ」になるでしょうが、相手にその体験を共有してもらって、そのハードさを理解してもらうために、主語が you で現在形が使われている、と考えたらよいと思います。
つまり、チャンドラーは、自分の経験を述べているようですが、「もし君がこういう状況にいたとする、それで彼女はこんな感じで、結局、こういう結果になるんだよ」と、君(相手)に疑似体験を連想させて、相手の共感を得ながら自分の体験を一般論として語る感覚が、この you なのだと思います。
こういう you は、「君が」と訳すべきではないし、また、自分の体験を語っているのであっても、「俺が、私が」のように訳さない方が良いとも思います。
「相手を含めた一般の人の you を使うことによって、自分の体験を相手に共有させる」ニュアンスがあるわけですから、あえて主語を誰とは示さずに訳す方が、この英語の you のニュアンスが出やすい気がするのですね。
また、チャンドラーは、自分の経験を語っていると思われるので、意味としては、私が過去記事で訳したような「ジャニスにメモを渡したときは、気まずい空気が流れたよ」みたいな感じの内容になるとは思いますが、厳密に前から訳すと、「そういう気まずい瞬間があるんだよ、ジャニスにメモを(ちょうど)手渡した時にね[手渡すとね]」みたいになるでしょうか。
また、when 以下が後半に位置しているのは英語ではよくある普通のことですが、このセリフに関して言うと、この部分がジョークのオチ(punchline)になっているような気もします。
ジャニスと別れるのがどれだけ大変か、という話を語っていて、「何もわかってないジャニスに対して、別れを告げようと勇気を振り絞るも、気まずい瞬間があるんだよねぇ…」と来るので、彼女に「別れよう」と口に出して言うのが気まずいのかと思ったら、直接口では言えなくて、メモに書いて手渡す、というオチだった、という面白さがあるのかなぁ、と。
「別れよう」ってメモに書いて渡す?!って、そりゃあ気まずいわっ!(笑)とツッコミを入れたくなる感じもしますし、また、「ばつが悪く、きまりが悪い」と言っていたのは、「別れを告げることそのもの」ではなくて、「メモを使うという行為」を指しているという面白さなのかな、とも思います。
「いやぁ、気まずくてさぁ、メモを渡すと」「え、メモ!?」みたいな感じのやり取りで、勇気を奮い起こした結果が、直接口では言えない、「メモの手渡し」かよっ!という楽しさなのでしょう。
have handed her the note を聞くまでは、「うーん、確かに気まずいわよね…」と共感していただろう聞き手のみんなが、メモのオチを聞いてちょっと拍子抜けする、みたいな感覚なのかなと私は思いました。
ということで、このセリフは、「俺がジャニスにメモを手渡した時、気まずい瞬間があった」という「過去の自分の経験」っぽく訳すよりも、「気まずい瞬間があるんだよね、ジャニスにメモを手渡すとさ」という、「内容を相手の頭の中でイメージさせるような感覚」で訳すのが良いのかな、と思います。
このように、英語では、「自分の経験談を語る時に、主語を you にする」ということがあるわけですが、それについては、辞書、または他の方のわかりやすい説明を引用させていただく形で、そのニュアンスを詳しく見ていきたいと思います。
まず、you には話している相手の「あなた」以外に、「一般の人」を表す意味があります。
それは、英和や英英にもたいていは載っています。
研究社 新英和中辞典では、
you=[総称的に一般の人をさして]人は(だれでも)
(用法)漠然とした人をさすので, 日本語に訳さないほうがよい場合が多い
と説明されています。
また、LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
you [pronoun]: people in general
つまり、「一般の人」という語義で載っています。
その「一般の人」を表す、という意味から、一般の人には当然 I も含まれている、ということで、I の代わりに you を使うことがある、ということになるようです。
you が「一般の人」を指す、というところまでは、とりあえず辞書にも載っているのですが、さらにそれが「I をも含んでいる」、だから、「I の代わりに you を使うことがある」ということまでは、辞書にはなかなか載っていません。
以下にそのニュアンスを非常にわかりやすく説明して下さっている2つの説明をご紹介します。
1つ目は、「週刊ST」内のコラム、2つ目は、マーク・ピーターセンさんの「続 日本人の英語」です。
(この引用は、他の記事でも何度も使わせていただいていますが、「本当にこの説明はわかりやすい!」ので、今回も是非使わせて下さい!)
まずは、ジャパンタイムズ発行の抄訳付き英字新聞「週刊ST」の堀内克明さんと V.E.ジョンソンさんによるコラム「英語Q&A」の記事。
そのコラムでは、このトピックについて2度取り上げられていました。
1回目は、2005年6月10日号の、「一般の人を表す you 」という記事。
読者の方の質問は、「ミュージシャンのインタビューで、明らかに自分が質問されているのに、主語を you にして答える人が多い。この you はどのようなニュアンスなのでしょうか?」というものです。
その時の先生方の回答を以下に引用させていただきますと、
この you は一般の人(person or people in general)を指すもので、特定の「あなた」を指してはいません。つまり、「あなたを含む一般の人」といった意味で、話し相手を抱き込むような親しみを込めています。
従って、会話やインタビューでは、くだけて親しい感じを表わすために you が好んで使われます。
そして、もしインタビューに答える時などに、you 以外の単語を使った場合にはどういうニュアンスになるか、という説明もされていて(これがまた非常にわかりやすくて感動したのですが)、その説明は以下のとおり。
one や a person だと「改まっていて、堅い」感じ。
people は「自分以外の世間一般の人たちを指す」感じ。
we は「われわれ」という自己主張が感じられて、you のように控えめではない。
I だと「自己満足」の感じ。
動名詞を使って「…することは」という文にして主語を省略すると、主語を省略する日本語に近い効果があるが、これはぶっきらぼうな印象を与える。
2回目に取り上げられたのが、同じコラム「英語Q&A」の 2007年1月12日号の「自分のことを指す you 」という記事。
「(インタビュー記事などで)、本人が自分のことを話しているのに、主語が "you" になっているのをよく見ます。I ではいけないのでしょうか?」
という読者の質問に対する先生方の回答を、以下に引用させていただきます。
こういう you は、generic you (総称的な you) または indefinite you (不特定の you)と呼ばれます。
つまり、この you は特定の「あなた」ではなく、「あなた(方)を含む人(たち)」です。これは「人」(one)に近く、結局「われわれ」(we)と同じ意味になります。この we には当然 I が含まれますので、回りまわって you = I に相当します。
要するに、最初から I と言うと自己主張のように聞こえて、客観性がありませんので、相手を含めて you と言うと、一般性のある意見を伝えることができるというわけなのです。
次にご紹介するのは、マーク・ピーターセンさんの 続 日本人の英語 (岩波新書)
p.69 から、
「あなた」ではない You
についての説明があります。
p.71 に、
「英語では、自分の経験から一般論を推定する場合、主語を "you" にすることが実に多い。」
とあります。
こういう you の使い方は、一般日本人には馴染みがないらしく、日本人学生にこの "you" を使うと、たいてい誤解される、という主旨のことも書いてあります。
つまり、自分の経験として「一般論の you」を使って、When you watch... , you can.... と説明すると、I can? と聞き返される、というような「すれ違い」がたびたび起こる、ということですね。
また、日本人はこういう一般論を語る場合に、We を使いたがるが、そういう "we" は、「硬くてやや不自然というだけでなく外国人の相手に少々疎外感さえ与えかねない」とも説明されています。
日本人は、「you=あなた」だと思い込んでいるので、相手が you という単語を使うと、「えっ? 「私」のこと?、私が聞きたい・知りたいのは「あなた」のことなのに」とか思ってしまうんですよね。
そういう日本人が抱きがちな疑問を、「続 日本人の英語」では、上手に説明して下さっています。
この「続 日本人の英語」という本は、その前に出た 日本人の英語 (岩波新書) の続編ですが、2冊とも今でもずっと売れ続けているロングセラーです。
「日本人の英語」を知り尽くしておられる方なだけに、2冊とも目からウロコの解説ばかりなのですが、私はこの続編の「「あなた」ではない You 」の説明に実は一番感動を覚えました。
ネイティブがよく使うにもかかわらず、これを説明している辞書や本が少ない、そのため、この you のニュアンスを知らない日本人英語学習者は結構多いような気がするのですね。
you なんて、中学校で一番最初に習う単語の一つですから、今さらをそれを調べる人もいないだろうし、「you =あなた」と思い込んでしまってそれ以外のニュアンスがあることにも気づかずにスルーしてしまいがちです。
こういう you のニュアンスは、実際に生きた英語でそれに出会った経験がないと、上に引用させていただいたような説明もピンと来ないんですよね。
私は海外ドラマのセリフという生きた英語を学んだおかげで、そういう you に出会ったことがあったため、週刊STやピーターセンさんの説明を読んだ時に、すんなり納得できたのだと思います。
そういえばそういう言い回し、どこかで聞いたことがあったけど、そういうニュアンスだったのかぁ、と「気付く」感覚です。
上にも書きましたように、ピーターセンさんの本は長年売れ続けているベストセラーなわけですから、その「「あなた」ではない You 」を読んだ日本人英語学習者はかなりの人数おられるはず。
それなのに、日本人が英語を話す時に、そういう you を自然に使って話している人をあまり見かけない気がするのですね。
それは、「英語の知識」としてとどまっていて、自分で使えるレベルまで到達していない、ということなのだと思います。
自分で使えるようになるには、そういう知識を「実際に英語が話されている現場」で確認して、「あぁ、こんな風に使うんだ」という感覚を掴む必要がある、ということなのだろうと。
知識と経験を融合させなければ言葉は使えるようにはならない、そういう気がします。
なんだか最後は「英語論」みたいになってしまいましたが(笑)、辞書に普通に書いてあることを改めて別の本で確認してもそれはあまり意味がない気がする…今回引用させていただいた説明のように、辞書や他の本にはなかなか書いていない「ネイティブの感覚」に出会えた時に、いつも私は喜びを感じるのです。
「私がネイティブの人に教えてもらいたいのは、そういうことなんですよっ!」みたいな感動と言いますか。
また、そういう感覚を、実際にセリフで確認できる「海外ドラマのDVDを使った英語学習法」の意義も改めて感じることができる気がしています。
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2011年07月14日
メイキングでわかる舞台裏 フレンズ6-1その2
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前回の続きです。
ロスとレイチェルがベガスのチャペルで結婚式を挙げたのを知った後、
モニカ: This is insane! (こんなの、おかしいわ[正気じゃないわ]!)
フィービー: What's the big deal, y''know? It's not like it's a real marriage. (何がそんなに大ごとなの? 本当の結婚ってわけじゃないのに。)
チャンドラー: What? (何だって?)
フィービー: Yeah, if you get married in Vegas, you're only married in Vegas. (そうよ、ベガスで結婚したら、ベガスでだけ結婚してることになるのよ。)
モニカ: What are you talking about? If you get married in Vegas, you're married everywhere. (何言ってるの? ベガスで結婚したら、どこででも結婚してることになるわ。)
フィービー: (shocked) Really? ([ショックを受けて] ほんと?)
モニカ: Yeah! (そうよ!)
フィービー: Oh, my God! Oh, well. (なんてこと! ま、いっか。)
前回も説明しましたが、フィービーは、ものすごく驚いた顔で、Really? Oh, my God! と言った後、しばらく沈黙してから、急に気の抜けたような声で、Oh, well. と軽い調子で言っています。
「ベガスでの結婚が正式な結婚になるとは知らなかった」と驚いた後に、「ま、いっか」と軽く流した感じです。
フィービーのこの驚きようから判断するに、フィービーもお酒の勢いか何かで(笑)、ベガスで結婚式を挙げた経験があるようです。
ベガスでだけ通用する、お遊びの結婚式みたいに思っていたのに、それが正式な結婚と認められると知って驚愕の表情を浮かべている、つまり、自分は誰かと正式に結婚したことになっている、と驚いている様子ですが、それを深く悩むこともせず、軽く流しているのが、今回のセリフということになるでしょう。
このフィービーのセリフですが、フレンズ シーズン6のコレクターズセット Vol.1 に収録されている「メイキング・オブ・フレンズ」という映像特典で取り上げられていました。
その内容がなかなか興味深いものだったので、今日はその「メイキング」の中でのやり取りを見てみたいと思います。
「この、Oh, my God! のセリフの示す意味が観客にわかるかどうか?」について、キャストやスタッフが舞台上で相談しているシーンが、そのメイキングには出てきます。
その映像では、以下のようなやり取りが示されていました。
(観客に呼びかけ口々に質問しているのは、プロデューサーたち)
ナレーション: Marta and David run a very democratic show. There's a question as to whether or not the implications of a joke from Phoebe are understood. So what do they do? They put it to a vote. (マーサ(カウフマン)とデビッド(クレイン)(共にフレンズのプロデューサー)は、非常に民主主義的な番組を運営する。フィービーが言ったジョークの含み(言外の意味、暗示)が理解されたかどうかについての疑問がある。それで彼らはどうするか? それを投票(多数決)で決めるのだ。)
観客に問いかける。
Who did not get it? (わからなかった人は?)
Who did not get the fact... that Phoebe was married in Vegas? (わからなかった人…フィービーがベガスで結婚した(ことがある)という事実がわからなかった人は?)
From that joke. (今のジョークから。)
When she says, "Oh, my God!" (フィービーが「なんてこと!」と言う時に。)
That sometime in the past she was married in Las Vegas. (過去のある時に、フィービーがラスベガスで結婚した、ということが。)
You guys got it? Yes! (わかった? よし!)
You all got it? (みんなわかった?)
They got it? Great. Beautiful. (みんなわかったんだね。最高。素晴らしいよ。)
このメイキングのやり取りではっきり説明されている通り、フィービーが Oh, my God! とものすごく驚くこと=フィービーはベガスでの結婚歴があること、を示すジョークになっているのですね。
いつもこのブログでフレンズのジョークについての解釈を書くときには、「多分、こういう意味のジョークだと思います」のように、あくまでも「自分はそう思った、そう感じた」という私個人の見解を書くことになってしまいます。
また、読者の方から、別の解釈を頂戴した時にも、セリフの意図はそのセリフを書いた脚本家や製作スタッフに聞いてみなければわからないので、どれが正しいとは私には断言できない、みたいなことも言ったりします。
今回のこのフィービーのセリフに関しては、このメイキングのおかげで、脚本の意図の裏がしっかりとれた、という感じがして、とても嬉しいのですね。
このメイキングを見ていると、「観客の反応を確かめながらセリフを書き換えていっている」ということも示されていますが、「観客が意味やジョークを理解できたかどうか確認を取りながら撮影が進められている」というのも非常に面白いと思いました。
それはつまり、「ネイティブでもわかったかどうか微妙なジョークが存在する」ということでもあります。
私は英語ノンネイティブの日本人英語学習者として、フレンズのセリフを理解しようと努めているわけですが、こんな風に観客に「今のジョーク、わかった?」と問いかけている様子を見ると、何だか安心するのですね。
フレンズのジョークは、「もしかしたらわからなかった人がいるかもしれない」というレベルのものだとわかるからです。
the implications of a joke 「ジョークの含み」はあまりミエミエではレベルが低くなってしまいますし、かと言ってあまりにも遠回しだと笑えなくなってしまう、そういう実に微妙なものなのですね。
そういう微妙かつ絶妙なジョークなわけですから、あえて観客に想像の余地を残している場合もあるでしょう。
説明しすぎると却って興醒め(きょうざめ)ということもあるからです。
ですから、ノンネイティブがそのジョークを完璧に理解できなかったからと言って落ち込むことはないんだな、と、そのメイキングを初めて見た時に、私はしみじみ思いました。
このフィービーの驚きようからして、「自分もベガスで挙式したことがあったけど、それはベガスだけのもので正式な結婚じゃないと思ってた、じゃあ私は今でもその人と結婚したことになってるの?!」とフィービーが思っていることが想像されるわけですが、その時の観客の反応から「もしかしたら(ネイティブでも)それがわからなかった人がいるかもしれない」とプロデューサーたちが考え、それを観客に問うている…そのことで、「ジョークを理解するというのは、それほど難しくて微妙なことなんだな」とわかった、ということです。
私がいつも、「ジョークがわからない」と言って落ち込むのではなく、ネイティブをも唸(うな)らせるようなジョークが理解できたとしたら、それを大いに喜びましょう、ネイティブが普通に楽しんでいるエンターテイメント作品なのだから、それが少しずつでもわかるようになってくることを自信にしていきましょう、と言っているのは、このメイキングで観客とのやり取りという舞台裏を見たことが少なからず影響している気がします。
今回の場合も、ネイティブの観客に「今のジョークわかった?」と問うている、そのジョークをノンネイティブの自分も理解できていたとしたら、それは大いに自信を持っていい、ということになると思うわけです。
ガーン!という感じで、その衝撃の事実に驚くフィービーですが、それをいつまでも引きずらず、Oh, well. と軽く流してしまうところもまた、フィービーさ全開で楽しいなと思いました。
過去にベガスで結婚してそのままであれば、今でも「結婚している状態」、つまりフィービーは既婚者ということになるのですが、そんな重大なことを「ま、いっか」と流してしまうのが、コメディであり、メンバーの中でも特に人からズレた感じのフィービーだからこそ、納得できちゃう気がするのですね。
また、余談になりますが、この後、いつものオープニングシーンに続くのですが、今回のエピソードでは、クレジットに出ているメインキャストやスタッフの名前全ての後ろに、ARQUETTE (アークエット)の名前がついています。
これは、モニカ役のコートニー・コックスが、オフシーズン中に俳優のデヴィッド・アークエット(David Arquette)と結婚したことをお祝いしたものです。
エンド・クレジット前には、FOR COURTENEY AND DAVID WHO DID GET MARRIED という文字も出ます。
コートニーが彼の名字もつけた、Courteney Cox Arquette に改名したことから、他のみんなにもそのアークエットをつけてみた、という感じの「お遊び」のクレジットなんですね。
ちなみに、オープニングでフレンズのメインキャスト6人の名前が出る時、いつもはレイチェル役のジェニファー・アニストンが一番最初に登場しますが、今回は、モニカ役のコートニー・コックス・アークエットが一番最初に来ています。
それが最初に来ないと、この「全員アークエット状態」の意味がわかりにくいからでしょうし、また、結婚のお祝いということでコートニーをトップに持ってきた、ということもあるでしょう。
モニカのお相手のデヴィッド・アークエットは、フレンズ3-3 にゲスト出演していたことがあります。
アークエットさんの話 フレンズ3-3その9 で、デヴィッドのことについて、いくつか書いていますので、そちらもお読みいただけると幸いです。
二人は映画「スクリーム」シリーズで共演したことがきっかけとなったようです。
二人の間には、娘さんが一人いますが、最近(2010年頃)、別居報道も流れていました。
今日の記事は何だか「裏話」的なものばかりになってしまいましたね。すみません。
ですが、やはり思うのは、「ジョークの含み」を理解するのは難しいということ。
私もいつも、あーだこーだと持論をご披露していますが、それが必ずしも正解とは限らない、ということを理解していただいた上で、正解かどうか確認が取れなくても、ネイティブと同じようにドラマを楽しむことはできるんだ、ということもわかっていただけたらと思っています。
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ロスとレイチェルがベガスのチャペルで結婚式を挙げたのを知った後、
モニカ: This is insane! (こんなの、おかしいわ[正気じゃないわ]!)
フィービー: What's the big deal, y''know? It's not like it's a real marriage. (何がそんなに大ごとなの? 本当の結婚ってわけじゃないのに。)
チャンドラー: What? (何だって?)
フィービー: Yeah, if you get married in Vegas, you're only married in Vegas. (そうよ、ベガスで結婚したら、ベガスでだけ結婚してることになるのよ。)
モニカ: What are you talking about? If you get married in Vegas, you're married everywhere. (何言ってるの? ベガスで結婚したら、どこででも結婚してることになるわ。)
フィービー: (shocked) Really? ([ショックを受けて] ほんと?)
モニカ: Yeah! (そうよ!)
フィービー: Oh, my God! Oh, well. (なんてこと! ま、いっか。)
前回も説明しましたが、フィービーは、ものすごく驚いた顔で、Really? Oh, my God! と言った後、しばらく沈黙してから、急に気の抜けたような声で、Oh, well. と軽い調子で言っています。
「ベガスでの結婚が正式な結婚になるとは知らなかった」と驚いた後に、「ま、いっか」と軽く流した感じです。
フィービーのこの驚きようから判断するに、フィービーもお酒の勢いか何かで(笑)、ベガスで結婚式を挙げた経験があるようです。
ベガスでだけ通用する、お遊びの結婚式みたいに思っていたのに、それが正式な結婚と認められると知って驚愕の表情を浮かべている、つまり、自分は誰かと正式に結婚したことになっている、と驚いている様子ですが、それを深く悩むこともせず、軽く流しているのが、今回のセリフということになるでしょう。
このフィービーのセリフですが、フレンズ シーズン6のコレクターズセット Vol.1 に収録されている「メイキング・オブ・フレンズ」という映像特典で取り上げられていました。
その内容がなかなか興味深いものだったので、今日はその「メイキング」の中でのやり取りを見てみたいと思います。
「この、Oh, my God! のセリフの示す意味が観客にわかるかどうか?」について、キャストやスタッフが舞台上で相談しているシーンが、そのメイキングには出てきます。
その映像では、以下のようなやり取りが示されていました。
(観客に呼びかけ口々に質問しているのは、プロデューサーたち)
ナレーション: Marta and David run a very democratic show. There's a question as to whether or not the implications of a joke from Phoebe are understood. So what do they do? They put it to a vote. (マーサ(カウフマン)とデビッド(クレイン)(共にフレンズのプロデューサー)は、非常に民主主義的な番組を運営する。フィービーが言ったジョークの含み(言外の意味、暗示)が理解されたかどうかについての疑問がある。それで彼らはどうするか? それを投票(多数決)で決めるのだ。)
観客に問いかける。
Who did not get it? (わからなかった人は?)
Who did not get the fact... that Phoebe was married in Vegas? (わからなかった人…フィービーがベガスで結婚した(ことがある)という事実がわからなかった人は?)
From that joke. (今のジョークから。)
When she says, "Oh, my God!" (フィービーが「なんてこと!」と言う時に。)
That sometime in the past she was married in Las Vegas. (過去のある時に、フィービーがラスベガスで結婚した、ということが。)
You guys got it? Yes! (わかった? よし!)
You all got it? (みんなわかった?)
They got it? Great. Beautiful. (みんなわかったんだね。最高。素晴らしいよ。)
このメイキングのやり取りではっきり説明されている通り、フィービーが Oh, my God! とものすごく驚くこと=フィービーはベガスでの結婚歴があること、を示すジョークになっているのですね。
いつもこのブログでフレンズのジョークについての解釈を書くときには、「多分、こういう意味のジョークだと思います」のように、あくまでも「自分はそう思った、そう感じた」という私個人の見解を書くことになってしまいます。
また、読者の方から、別の解釈を頂戴した時にも、セリフの意図はそのセリフを書いた脚本家や製作スタッフに聞いてみなければわからないので、どれが正しいとは私には断言できない、みたいなことも言ったりします。
今回のこのフィービーのセリフに関しては、このメイキングのおかげで、脚本の意図の裏がしっかりとれた、という感じがして、とても嬉しいのですね。
このメイキングを見ていると、「観客の反応を確かめながらセリフを書き換えていっている」ということも示されていますが、「観客が意味やジョークを理解できたかどうか確認を取りながら撮影が進められている」というのも非常に面白いと思いました。
それはつまり、「ネイティブでもわかったかどうか微妙なジョークが存在する」ということでもあります。
私は英語ノンネイティブの日本人英語学習者として、フレンズのセリフを理解しようと努めているわけですが、こんな風に観客に「今のジョーク、わかった?」と問いかけている様子を見ると、何だか安心するのですね。
フレンズのジョークは、「もしかしたらわからなかった人がいるかもしれない」というレベルのものだとわかるからです。
the implications of a joke 「ジョークの含み」はあまりミエミエではレベルが低くなってしまいますし、かと言ってあまりにも遠回しだと笑えなくなってしまう、そういう実に微妙なものなのですね。
そういう微妙かつ絶妙なジョークなわけですから、あえて観客に想像の余地を残している場合もあるでしょう。
説明しすぎると却って興醒め(きょうざめ)ということもあるからです。
ですから、ノンネイティブがそのジョークを完璧に理解できなかったからと言って落ち込むことはないんだな、と、そのメイキングを初めて見た時に、私はしみじみ思いました。
このフィービーの驚きようからして、「自分もベガスで挙式したことがあったけど、それはベガスだけのもので正式な結婚じゃないと思ってた、じゃあ私は今でもその人と結婚したことになってるの?!」とフィービーが思っていることが想像されるわけですが、その時の観客の反応から「もしかしたら(ネイティブでも)それがわからなかった人がいるかもしれない」とプロデューサーたちが考え、それを観客に問うている…そのことで、「ジョークを理解するというのは、それほど難しくて微妙なことなんだな」とわかった、ということです。
私がいつも、「ジョークがわからない」と言って落ち込むのではなく、ネイティブをも唸(うな)らせるようなジョークが理解できたとしたら、それを大いに喜びましょう、ネイティブが普通に楽しんでいるエンターテイメント作品なのだから、それが少しずつでもわかるようになってくることを自信にしていきましょう、と言っているのは、このメイキングで観客とのやり取りという舞台裏を見たことが少なからず影響している気がします。
今回の場合も、ネイティブの観客に「今のジョークわかった?」と問うている、そのジョークをノンネイティブの自分も理解できていたとしたら、それは大いに自信を持っていい、ということになると思うわけです。
ガーン!という感じで、その衝撃の事実に驚くフィービーですが、それをいつまでも引きずらず、Oh, well. と軽く流してしまうところもまた、フィービーさ全開で楽しいなと思いました。
過去にベガスで結婚してそのままであれば、今でも「結婚している状態」、つまりフィービーは既婚者ということになるのですが、そんな重大なことを「ま、いっか」と流してしまうのが、コメディであり、メンバーの中でも特に人からズレた感じのフィービーだからこそ、納得できちゃう気がするのですね。
また、余談になりますが、この後、いつものオープニングシーンに続くのですが、今回のエピソードでは、クレジットに出ているメインキャストやスタッフの名前全ての後ろに、ARQUETTE (アークエット)の名前がついています。
これは、モニカ役のコートニー・コックスが、オフシーズン中に俳優のデヴィッド・アークエット(David Arquette)と結婚したことをお祝いしたものです。
エンド・クレジット前には、FOR COURTENEY AND DAVID WHO DID GET MARRIED という文字も出ます。
コートニーが彼の名字もつけた、Courteney Cox Arquette に改名したことから、他のみんなにもそのアークエットをつけてみた、という感じの「お遊び」のクレジットなんですね。
ちなみに、オープニングでフレンズのメインキャスト6人の名前が出る時、いつもはレイチェル役のジェニファー・アニストンが一番最初に登場しますが、今回は、モニカ役のコートニー・コックス・アークエットが一番最初に来ています。
それが最初に来ないと、この「全員アークエット状態」の意味がわかりにくいからでしょうし、また、結婚のお祝いということでコートニーをトップに持ってきた、ということもあるでしょう。
モニカのお相手のデヴィッド・アークエットは、フレンズ3-3 にゲスト出演していたことがあります。
アークエットさんの話 フレンズ3-3その9 で、デヴィッドのことについて、いくつか書いていますので、そちらもお読みいただけると幸いです。
二人は映画「スクリーム」シリーズで共演したことがきっかけとなったようです。
二人の間には、娘さんが一人いますが、最近(2010年頃)、別居報道も流れていました。
今日の記事は何だか「裏話」的なものばかりになってしまいましたね。すみません。
ですが、やはり思うのは、「ジョークの含み」を理解するのは難しいということ。
私もいつも、あーだこーだと持論をご披露していますが、それが必ずしも正解とは限らない、ということを理解していただいた上で、正解かどうか確認が取れなくても、ネイティブと同じようにドラマを楽しむことはできるんだ、ということもわかっていただけたらと思っています。
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2011年07月12日
シーズン6に突入! フレンズ6-1その1
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今日からシーズン6に入ります!
シーズン6 第1話
The One After Vegas (ベガスの夜が明けて…)
原題は「ベガスの後の話」
シーズン5の最後となる前回のエピソードで、ベガスで結婚式を挙げようとしたチャンドラーとモニカはチャペルにやってきます。
そのチャペルには先客がいたのですが、それがロスとレイチェルだったので、二人はびっくり。
酔っぱらったまま結婚式を挙げたらしいロスとレイチェルが出て行った直後に、今後は、ジョーイとフィービーがチャペルに走りこんできます。
それを見てまたもやショックを受けたチャンドラーとモニカは、
チャンドラー: Oh, my God! Is everybody getting married? (なんてこった! みんな結婚するのか?)
(Phoebe and Joey run back out and head towards the street.)
フィービーとジョーイは(いったん入ったチャペルを)走り出てきて、通りに向かう。
受付係: (scolding them) N-No running in the chapel! ([二人を叱って] チャペルの中では走らないで!)
フィービー: (to her) Hey, don't you give me any of your-- Hey! (Sees Chandler and Monica standing there.) ([その受付係に] ちょっと、私にそんなこと言わないで… あら! [チャンドラーとモニカがそこに立っているのを見る])
チャンドラー: Hey! (やあ!)
ジョーイ: Hey! (やあ!)
モニカ: What are you guys doing here? (あなたたち、ここで何してるの?)
ジョーイ: Ross and Rachel left us a message saying they were getting married! Isn't that why you guys are here? (ロスとレイチェルが俺たちに、二人は結婚するってメッセージを残してたんだ。君らがここにいる理由もそれじゃないのか?)
チャンドラー: Yes! Well, that-yes. (そうだ! ほら、それ、そうだよ。)
モニカ: Why else would we be here? (他にどんな理由でここにいるっていうの?)
ジョーイ: Well! What happened?! Did we miss it? (で、何が起こったの? 俺たち見逃しちゃった?)
チャンドラー: We actually missed it. (実際、俺たちは見逃しちゃったよ。)
フィービー: Well, maybe you wouldn't have if you (turns to the attendant) could run in the chapel! (そうね、多分、見逃さなかったでしょうね、もし[受付係の方を向いて] チャペルの中で走ることができたなら!)
モニカ: This is insane! (こんなの、おかしいわ[正気じゃないわ]!)
フィービー: What's the big deal, y'know? It's not like it's a real marriage. (何がそんなに大ごとなの? 本当の結婚ってわけじゃないのに。)
チャンドラー: What? (何だって?)
フィービー: Yeah, if you get married in Vegas, you're only married in Vegas. (そうよ、ベガスで結婚したら、ベガスでだけ結婚してることになるのよ。)
モニカ: What are you talking about? If you get married in Vegas, you're married everywhere. (何言ってるの? ベガスで結婚したら、どこででも結婚してることになるわ。)
フィービー: (shocked) Really? ([ショックを受けて] ほんと?)
モニカ: Yeah! (そうよ!)
フィービー: Oh, my God! ...Oh, well. (なんてこと! …ま、いっか。)
ロスとレイチェルだけではなく、今度はジョーイとフィービーまでもがチャペルに入って行ったので、誰もかれもが結婚するのか?とチャンドラーは驚いています。
no running という no+動名詞は、「走ることは、なし」という感覚で、掲示物で、NO RUNNING 「走るな」という表示も見かけますね。
NO SMOKING なら「禁煙」という掲示です。
「チャペルの中では走るな」みたいな感じの強い口調で言われたので、フィービーは受付係に逆ギレしたように怒っています。
憎々しげな感じで、Don't YOU give me any of your-- と you を強く発音していますが、否定命令文に you をつけて倒置にして強調した形ですね。
your の後が省略されていますが、「そんな風に私に命令しないで」なら、any of your orders などになるでしょうか。
最後まで言い終わらないうちに、受付係の隣にチャンドラーとモニカがいるのを発見したフィービーは、それまで怒っていたのを忘れたかのように急に柔らかい口調になって、Hey! と二人に声を掛けています。
どうしてチャペルにいるのかを聞かれたジョーイたちは、「ロスとレイチェルがメッセージを残してたから」と説明しています。
leave someone a message は文字通り「人にメッセージを残す」で、その後に、saying という分詞を続ける形で、メッセージの内容を説明しています。
二人は俺たちにあるメッセージを残した、そのメッセージは…だと言っている、というような感覚ですね。
最初に、誰が(誰に)何をした、と説明しておいて、その後、詳しい説明を付け足しの形で補足する、という英語の構造がよくわかる文章だと思います。
Isn't that why you guys are here? は、「それ(ロスとレイチェルが結婚すること、もしくは結婚するという情報を聞いたこと)が、君らがここにいる理由じゃないのか?」ということ。
何してるの?って、君らも俺たちと同じ理由でここにいるんじゃないのか?、それがここにいる理由だろ?と逆に問い返しているわけです。
ジョーイたちは、二人も見物に来たんだろ?と言っているわけで、まさかチャンドラーとモニカが結婚しようとしていたとは夢にも思っていないことがこのセリフでわかります。
チャンドラーたちもこの状況で、「いや、俺たちも結婚しようとしてて…」とも言えず、「そうそう、俺たちもロスとレイチェルの結婚を見に来たんだ」と認めるしかありません。
Why else would we be here? は、「他にどんな理由があって、ここにいるというのだろう?」という感覚でしょう。
それ以外の理由でここにいる必要なんてないじゃない、というところです。
Did we miss it? の miss は「見逃す、見損ねる」。
テレビなどでよく聞く、Don't miss it! は、「お見逃しなく!」ですよね。
it は、「ロスとレイチェルの結婚式、二人が結婚するところ」ですね。
チャンドラーは、We actually missed it. と答えていますが、この we は、ここにいる4人全員を指すでしょう。
式はすでに終了してしまっていて、今入ってきた君らも、そして俺たちもその式を見逃してしまったんだ、という感覚です。
到着が遅くなって、見逃しちゃった、という話から、フィービーはさきほど「走るな」と注意していた受付係をにらみながら、仮定法過去完了を使ったセリフを叫んでいます。
この仮定法過去完了は、「もしチャペルの中を走ることができたら、多分、見逃すことはなかっただろうに(実際は見逃してしまったわ)」というニュアンスになります。
この仮定法過去完了で使われている you は、相手を含めた「一般の人」を指す you で、回り回って自分自身をも指す you の感覚でしょう。
フィービーは「私がもしチャペルの中を走ることができたら、見逃すことはなかった」と自分の経験を語って、走るなと言った受付係を非難しているわけですが、私(I)とは言わず 一般の人を表す you を使うことで、聞き手に共感を持たせる、という効果があるということでしょう。
私に限らず、ここにいる友達を含めた誰もが、走ることを許されれば間に合ったのに、と、自分一人に限定せずに一般論として語っている感覚だと思います。
チャペルに走り込んで来た時にはもう、ロスとレイチェルは出て行ってしまった後でしたし、「走るな」という注意も、ロスたちがいないのをフィービーたちが確認してチャペルから出てきた後でしたので、そこには何の因果関係もない(走れなかったから見られなかったわけではない)のですが、キツい調子で注意されたことと、結婚式を見逃してしまったこととで、その受付係に「あんたのせいよ!」と八つ当たりしている感覚でしょう。
モニカが「ロスとレイチェルがこんな風に式を挙げちゃったことは正気じゃないわ」みたいな発言をするのを聞いて、フィービーは、そんなの大ごとじゃない、大したことじゃない、みたいに言っています。
リアル・マリッジ、つまり、本当の結婚じゃないのに、みたいなことですね。
それを聞いた他のフレンズたちは、「フィービーは何を言ってるの?」みたいに驚いた顔をしています。
if you get married in Vegas, you're only married in Vegas. も、相手及び自分も含めた「一般の人」を指す you ですね。
「もしあなたがベガスで結婚したら」と聞き手である「あなた」に限定した話ではなくて、「(あなたも私も含めて)人がベガスで結婚したとすると」みたいな感覚になります。
フィービーの言っているのは、「ベガスで結婚したら、ベガスでだけ married の状態になる」、つまり、「ベガスにいる間だけ、結婚(している)状態になる、ベガスでのみ既婚者になる」みたいなことですね。
ベガスで結婚式を挙げたら、その結婚はベガスにいる間だけ有効である、と言っていることになります。
モニカは、「フィービー、何言ってるの?」と驚いて、同じように、If you get married in Vegas を使って、「ベガスで結婚したら、ベガスだけじゃなくて、どこでも(everywhere)結婚してることになる」と説明しています。
ベガスでのみ有効なんじゃなくて、ここで結婚したら、全国的に認められる形で正式に結婚したことになるのよ、と言っているわけですね。
それを聞いたフィービーは、ものすごく驚いた顔で、Really? Oh, my God! と言っていますが、その後、しばらく沈黙してから、急に気の抜けたような声で、Oh, well. と軽い調子で言っています。
これはつまり、「ベガスで結婚したら、ベガスでだけ有効だと思ってたけど、それはどの場所でも正式な結婚と認められちゃうわけ?」といったんは驚いた後、「ま、別にいっか」と軽く流した感じですね。
この最後のフィービーのセリフに関しては、フレンズ シーズン6のコレクターズセット Vol.1 に収録されている「メイキング・オブ・フレンズ」という映像特典で取り上げられています。
(廉価版のソフトシェル版には、残念ながら、この映像特典は収録されていないようですが…)
この映像特典はいわゆる「メイキング」で、番組制作の舞台裏を追ったドキュメンタリーのようなものです。
その中でのキャストやスタッフのやりとりに、この「フレンズ」という作品の本質が垣間見える気がしたので、次回の記事「その2」では、この「メイキング・オブ・フレンズ」について、もう少し語ってみたいと思います。
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今日からシーズン6に入ります!
シーズン6 第1話
The One After Vegas (ベガスの夜が明けて…)
原題は「ベガスの後の話」
シーズン5の最後となる前回のエピソードで、ベガスで結婚式を挙げようとしたチャンドラーとモニカはチャペルにやってきます。
そのチャペルには先客がいたのですが、それがロスとレイチェルだったので、二人はびっくり。
酔っぱらったまま結婚式を挙げたらしいロスとレイチェルが出て行った直後に、今後は、ジョーイとフィービーがチャペルに走りこんできます。
それを見てまたもやショックを受けたチャンドラーとモニカは、
チャンドラー: Oh, my God! Is everybody getting married? (なんてこった! みんな結婚するのか?)
(Phoebe and Joey run back out and head towards the street.)
フィービーとジョーイは(いったん入ったチャペルを)走り出てきて、通りに向かう。
受付係: (scolding them) N-No running in the chapel! ([二人を叱って] チャペルの中では走らないで!)
フィービー: (to her) Hey, don't you give me any of your-- Hey! (Sees Chandler and Monica standing there.) ([その受付係に] ちょっと、私にそんなこと言わないで… あら! [チャンドラーとモニカがそこに立っているのを見る])
チャンドラー: Hey! (やあ!)
ジョーイ: Hey! (やあ!)
モニカ: What are you guys doing here? (あなたたち、ここで何してるの?)
ジョーイ: Ross and Rachel left us a message saying they were getting married! Isn't that why you guys are here? (ロスとレイチェルが俺たちに、二人は結婚するってメッセージを残してたんだ。君らがここにいる理由もそれじゃないのか?)
チャンドラー: Yes! Well, that-yes. (そうだ! ほら、それ、そうだよ。)
モニカ: Why else would we be here? (他にどんな理由でここにいるっていうの?)
ジョーイ: Well! What happened?! Did we miss it? (で、何が起こったの? 俺たち見逃しちゃった?)
チャンドラー: We actually missed it. (実際、俺たちは見逃しちゃったよ。)
フィービー: Well, maybe you wouldn't have if you (turns to the attendant) could run in the chapel! (そうね、多分、見逃さなかったでしょうね、もし[受付係の方を向いて] チャペルの中で走ることができたなら!)
モニカ: This is insane! (こんなの、おかしいわ[正気じゃないわ]!)
フィービー: What's the big deal, y'know? It's not like it's a real marriage. (何がそんなに大ごとなの? 本当の結婚ってわけじゃないのに。)
チャンドラー: What? (何だって?)
フィービー: Yeah, if you get married in Vegas, you're only married in Vegas. (そうよ、ベガスで結婚したら、ベガスでだけ結婚してることになるのよ。)
モニカ: What are you talking about? If you get married in Vegas, you're married everywhere. (何言ってるの? ベガスで結婚したら、どこででも結婚してることになるわ。)
フィービー: (shocked) Really? ([ショックを受けて] ほんと?)
モニカ: Yeah! (そうよ!)
フィービー: Oh, my God! ...Oh, well. (なんてこと! …ま、いっか。)
ロスとレイチェルだけではなく、今度はジョーイとフィービーまでもがチャペルに入って行ったので、誰もかれもが結婚するのか?とチャンドラーは驚いています。
no running という no+動名詞は、「走ることは、なし」という感覚で、掲示物で、NO RUNNING 「走るな」という表示も見かけますね。
NO SMOKING なら「禁煙」という掲示です。
「チャペルの中では走るな」みたいな感じの強い口調で言われたので、フィービーは受付係に逆ギレしたように怒っています。
憎々しげな感じで、Don't YOU give me any of your-- と you を強く発音していますが、否定命令文に you をつけて倒置にして強調した形ですね。
your の後が省略されていますが、「そんな風に私に命令しないで」なら、any of your orders などになるでしょうか。
最後まで言い終わらないうちに、受付係の隣にチャンドラーとモニカがいるのを発見したフィービーは、それまで怒っていたのを忘れたかのように急に柔らかい口調になって、Hey! と二人に声を掛けています。
どうしてチャペルにいるのかを聞かれたジョーイたちは、「ロスとレイチェルがメッセージを残してたから」と説明しています。
leave someone a message は文字通り「人にメッセージを残す」で、その後に、saying という分詞を続ける形で、メッセージの内容を説明しています。
二人は俺たちにあるメッセージを残した、そのメッセージは…だと言っている、というような感覚ですね。
最初に、誰が(誰に)何をした、と説明しておいて、その後、詳しい説明を付け足しの形で補足する、という英語の構造がよくわかる文章だと思います。
Isn't that why you guys are here? は、「それ(ロスとレイチェルが結婚すること、もしくは結婚するという情報を聞いたこと)が、君らがここにいる理由じゃないのか?」ということ。
何してるの?って、君らも俺たちと同じ理由でここにいるんじゃないのか?、それがここにいる理由だろ?と逆に問い返しているわけです。
ジョーイたちは、二人も見物に来たんだろ?と言っているわけで、まさかチャンドラーとモニカが結婚しようとしていたとは夢にも思っていないことがこのセリフでわかります。
チャンドラーたちもこの状況で、「いや、俺たちも結婚しようとしてて…」とも言えず、「そうそう、俺たちもロスとレイチェルの結婚を見に来たんだ」と認めるしかありません。
Why else would we be here? は、「他にどんな理由があって、ここにいるというのだろう?」という感覚でしょう。
それ以外の理由でここにいる必要なんてないじゃない、というところです。
Did we miss it? の miss は「見逃す、見損ねる」。
テレビなどでよく聞く、Don't miss it! は、「お見逃しなく!」ですよね。
it は、「ロスとレイチェルの結婚式、二人が結婚するところ」ですね。
チャンドラーは、We actually missed it. と答えていますが、この we は、ここにいる4人全員を指すでしょう。
式はすでに終了してしまっていて、今入ってきた君らも、そして俺たちもその式を見逃してしまったんだ、という感覚です。
到着が遅くなって、見逃しちゃった、という話から、フィービーはさきほど「走るな」と注意していた受付係をにらみながら、仮定法過去完了を使ったセリフを叫んでいます。
この仮定法過去完了は、「もしチャペルの中を走ることができたら、多分、見逃すことはなかっただろうに(実際は見逃してしまったわ)」というニュアンスになります。
この仮定法過去完了で使われている you は、相手を含めた「一般の人」を指す you で、回り回って自分自身をも指す you の感覚でしょう。
フィービーは「私がもしチャペルの中を走ることができたら、見逃すことはなかった」と自分の経験を語って、走るなと言った受付係を非難しているわけですが、私(I)とは言わず 一般の人を表す you を使うことで、聞き手に共感を持たせる、という効果があるということでしょう。
私に限らず、ここにいる友達を含めた誰もが、走ることを許されれば間に合ったのに、と、自分一人に限定せずに一般論として語っている感覚だと思います。
チャペルに走り込んで来た時にはもう、ロスとレイチェルは出て行ってしまった後でしたし、「走るな」という注意も、ロスたちがいないのをフィービーたちが確認してチャペルから出てきた後でしたので、そこには何の因果関係もない(走れなかったから見られなかったわけではない)のですが、キツい調子で注意されたことと、結婚式を見逃してしまったこととで、その受付係に「あんたのせいよ!」と八つ当たりしている感覚でしょう。
モニカが「ロスとレイチェルがこんな風に式を挙げちゃったことは正気じゃないわ」みたいな発言をするのを聞いて、フィービーは、そんなの大ごとじゃない、大したことじゃない、みたいに言っています。
リアル・マリッジ、つまり、本当の結婚じゃないのに、みたいなことですね。
それを聞いた他のフレンズたちは、「フィービーは何を言ってるの?」みたいに驚いた顔をしています。
if you get married in Vegas, you're only married in Vegas. も、相手及び自分も含めた「一般の人」を指す you ですね。
「もしあなたがベガスで結婚したら」と聞き手である「あなた」に限定した話ではなくて、「(あなたも私も含めて)人がベガスで結婚したとすると」みたいな感覚になります。
フィービーの言っているのは、「ベガスで結婚したら、ベガスでだけ married の状態になる」、つまり、「ベガスにいる間だけ、結婚(している)状態になる、ベガスでのみ既婚者になる」みたいなことですね。
ベガスで結婚式を挙げたら、その結婚はベガスにいる間だけ有効である、と言っていることになります。
モニカは、「フィービー、何言ってるの?」と驚いて、同じように、If you get married in Vegas を使って、「ベガスで結婚したら、ベガスだけじゃなくて、どこでも(everywhere)結婚してることになる」と説明しています。
ベガスでのみ有効なんじゃなくて、ここで結婚したら、全国的に認められる形で正式に結婚したことになるのよ、と言っているわけですね。
それを聞いたフィービーは、ものすごく驚いた顔で、Really? Oh, my God! と言っていますが、その後、しばらく沈黙してから、急に気の抜けたような声で、Oh, well. と軽い調子で言っています。
これはつまり、「ベガスで結婚したら、ベガスでだけ有効だと思ってたけど、それはどの場所でも正式な結婚と認められちゃうわけ?」といったんは驚いた後、「ま、別にいっか」と軽く流した感じですね。
この最後のフィービーのセリフに関しては、フレンズ シーズン6のコレクターズセット Vol.1 に収録されている「メイキング・オブ・フレンズ」という映像特典で取り上げられています。
(廉価版のソフトシェル版には、残念ながら、この映像特典は収録されていないようですが…)
この映像特典はいわゆる「メイキング」で、番組制作の舞台裏を追ったドキュメンタリーのようなものです。
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2011年07月08日
ベガスでは簡単に結婚できちゃう フレンズ5-24その6
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チャンドラーとモニカは、今夜ここで結婚することを決心します。
[Scene: A Little White Chapel, Chandler and Monica are entering.]
ア・リトル・ホワイト・チャペル。チャンドラーとモニカが入ってくる。
チャンドラー: Hello! One marriage, please. (ハロー! 結婚を1つ、お願い。)
モニカ: Yep, we wanna get married! (そうなの、私たち、結婚したいの!)
接客係(The Attendant): Well, there's a service in progress. Have a seat. (あのー、式が1つ進行中なんです。席にかけて(お待ち)下さい。)
チャンドラーとモニカ: All right. (了解。)
(They both sit down.)
二人とも座る。
チャンドラー: (singing) Dum! Dum-dum-dum! Dum! Dum! Dum! Dum-dum-dum! ([歌いながら] ♪ダーン! ダダダン、ダーン! ダーン! ダーン! ダダダン、ダーン♪)
モニカ: What are you doing? (何やってるの?[それは何?])
チャンドラー: Oh, that's the "Wedding March." Does, does that freak you out? (あぁ、今のは「結婚行進曲」だよ。今の曲でモニカはパニクる?)
モニカ: No, only because that's the graduation song. (いいえ(パニクらないわ)、だって、それはただ、卒業式の曲だから。)
(The real Wedding March begins playing from behind the closed doors of the chapel.)
閉じたチャペルのドアの後ろから、本物の結婚行進曲が流れ始める。
チャンドラー: Okay! (Stands up and claps his hands) This is it! We're gonna get married! (よし![立ち上がり、手を叩く] いよいよだ! 俺たちは結婚するぞ!)
モニカ: Are you sure you wanna do this? (結婚したいっていう気持ちは確かなの?)
(Suddenly the doors burst open, and ROSS AND RACHEL COME OUT ARM-IN-ARM!!!!! And Rachel's carrying a bouquet!!! THEY GOT MARRIED!!!!)
突然、ドアが勢いよくパッと開いて、ロスとレイチェルが腕を組んで出てくる!! そして、レイチェルはブーケを持っている!! 二人は結婚したのだ!!)
ロス: Well, hello, Mrs. Ross! (Throws some rice.) (あぁ、ハロー、ミセス・ロス[ロス夫人]! [ライスを投げる])
レイチェル: Well, hello, Mr. Rachel! (Throws some more rice.) (あぁ、ハロー、ミセス・レイチェル[レイチェル氏]! [さらにライスを投げる])
(They storm out into the street.)
二人は(教会の外の)道に勢いよく飛び出す。
レイチェル: Wait. (Gets her bearings) Okay. (待って。[方向を確かめて] よし。)
サイコロでハード8の目が出たため、宣言通り、今夜ここで結婚することにしたチャンドラーとモニカ。
ト書きにもあるように、A Little White Chapel というチャペルが画面に映りますが、これはラスベガスに実在する有名なチャペルです。
公式サイトはこちら。
A Little White Wedding Chapel, Las Vegas, Nevada
ウィキペディアもあります。
Wikipedia 英語版: The Little White Wedding Chapel
そのウィキペディアでは、このチャペルについて、最初にこう説明されています。
... has been the site of many "quickie" celebrity weddings. It is noted for its Drive-Thru Tunnel of Vows.
つまり、「(そのチャペルは)、多くの「急ごしらえの(急ぎの)」セレブの結婚式の場所となってきた。その「誓いのドライブスルー・トンネル」で有名である。」
その説明の横に、その「ドライブスルー・トンネル」の写真も出ています。
また、少し後の説明には、そこで結婚式を挙げた有名人として、フランク・シナトラ、ブリトニー・スピアーズ、ブルース・ウィリス&デミ・ムーアなどの名前が挙げられています。
また、テレビ番組にもよく使われる例として、「フレンズ」の名前が出ているのも、嬉しいところですね。
quickie と説明されていたように、「簡単に、すぐに結婚できちゃう」というのがこのチャペルのウリのようです。
その「すぐに」が究極の形になったのが、「ドライブスルー」なんですねぇ。
「ドライブスルーで結婚式?!」と普通は驚いてしまうところですが、このチャペル、日本のテレビ番組でも取り上げられていたことがあります。
その番組は、2010年10月31日に放映された「世界の果てまでイッテQ!」。
その時の放映内容が、以下のサイトで紹介されています。
世界の果てまでイッテQ! 放送内容 珍獣ハンターイモトワールドツアー 〜アメリカ横断ツアー〜
内容をスクロールしていくと、6番目に出てくる写真、それが今回フレンズに出てきた、「ア・リトル・ホワイト・チャペル」です。
私はこの番組を生で見ていたのですが、「あ、これって、フレンズに出てきたチャペルだ!」と気づいて、すごく嬉しかったのを覚えています。
その「イッテQ!」の説明にもあるように、「ラスベガスには結婚式場が多い」「ラスベガスのあるネバダ州は身分証明書さえあれば簡単に結婚ができ、法的にも認められる」のですね。
「イッテQ!」では実際に、イモトさんがその「ドライブスルー結婚式」を再現していました。
オープンカーのリムジンに乗ってきた新郎新婦が窓口の前に車を止めると、牧師さんが窓から身を乗り出して「永遠の愛を誓いますか?」と語りかける…みたいな感じでした。
その番組では、「式の費用は今ならなんと、8,000円ポッキリ」(笑)と説明されていましたので、ほんとにお手軽なんですね。
ちょっと、このチャペルの説明が長くなってしまいましたが、そのようにベガスには結婚式場がたくさんあって、他の州に比べるとものすごく簡単に結婚できてしまう、ということが意識の中にあるために、チャンドラーも、「今度、ハード8の目が出たら、今晩ここで結婚しよう」ということを言ってしまったわけですね。
で、実際に結婚するぞ、となった時に、登場したのがこの quickie で有名な、ア・リトル・ホワイト・チャペルだった、というのも自然な流れになるわけです。
チャンドラーがチャペルに入ってきた時、"One marriage, please." のように、まるでファストフードでメニューを注文するみたいに気軽な感じで言っているのも、「お手軽で早い」のがウリのチャペルに合わせて言ってみたセリフなのでしょう。
there's a service in progress の service は「(礼拝の)式、儀式」。
memorial service なら「告別式、追悼式」ですね。
in progress は「進行中で」なので、「進行中の式が1つあります、式が1つ進行中です」ということになります。
今、別の人が挙式中なので、座って待ってて下さい、ということです。
チャンドラーは、ダーン♪と言いながら、ある曲を歌っています。
「何それ?」と聞かれたチャンドラーは、「結婚行進曲だよ。そんなのを俺が歌うと、モニカはビビっちゃうかな?」と、余裕のある発言をしていますが、モニカは No. と否定して「ううん、ビビったりしないわよ」と言った後、only because that's the graduation song と言っています。
only because は「ただ…だから、ただ…という理由で」。
ビビらないのは、結婚するのにまだ躊躇する気持ちがあるとかないとかの問題じゃなくて、あなたが今歌ったのが、結婚行進曲じゃなくて、卒業式の曲だからよ、と言っていることになります。
モニカの言う通り、チャンドラーが歌っていたのは、卒業式で使われる、エルガー作曲の「威風堂々」(Pomp and Circumstance)ですね。
この曲は、過去記事、アメリカの卒業式の曲 フレンズ3-10その32 にも出てきました。
レイチェルがウェイトレスを卒業する最後の仕事の時に、フレンズたちがこの曲をハミングしていたんでしたね。
その記事でこの曲についてもう少し詳しく説明してありますので、興味のある方は合わせてご覧下さい。
チャンドラーは自分が余裕なところを見せようと、結婚行進曲を歌ったつもりが、実はそれは卒業式の曲だった、というオチなわけです。
私も聞いた瞬間、「それは卒業式の曲やろっ!」とツッコミを入れそうになりましたので(笑)、この曲を知っている人にとっては比較的わかりやすいジョークだったと言えそうです。
チャンドラーが歌うはずだった結婚行進曲が厳か(おごそか)に流れてきて、This is it! 「いよいよだ!」と立ち上がるチャンドラー。
コミットメント恐怖症のかけらも見えないチャンドラーに、モニカは最後の確認として、Are you sure you wanna do this? と聞いています。
「あなたがこれをしたい[こんな風に結婚式を挙げたい]と思っているのは自分で確かだと思う?」みたいなことですね。
ほんとにこんな風に結婚したいと思ってるの?、大丈夫?、本気なの?という確認です。
それに対してチャンドラーが何かを答える前に、式場のドアがバーンと開いて(まさに、burst open という形容がふさわしい)、何と、ロスとレイチェルの二人が登場します。
それも腕を組んで、レイチェルはブーケまで持って!
この状況を見れば明らかに「ここで今、結婚式を挙げたばかりの二人」であることは明白ですね。
ト書きを書いた方も興奮気味に大文字で書いておられますが、まさに観客も、チャンドラー&モニカもびっくりの展開になっています。
二人はお互いを、Mrs. Ross, Mr. Rachel などとトンチンカンな名前で呼び合い、結婚式で恒例のライスシャワーをお互いにかけあっています。
そのままチャペルのドアを開けて、一瞬、我に返ったように静かになった後、二人は左右別々の方向に歩いていってしまいます。
今回のエピソードでは、ロスとレイチェルがかなりのお酒を飲んでいましたので、その酔っぱらった状態がまだ続いていることがこの行動からわかりますね。
さあ、結婚するぞ!と意気込んでいたはずのチャンドラーとモニカは、思いがけない先客に、声も出ない様子で茫然としています。
エルビス・プレスリーの、Viva Las Vegas が流れ、二人の驚いた顔を映しながら、シーズン5は終了します。
結婚しようとしていたチャンドラーとモニカはこの後どうするの?、酔っぱらった勢いで結婚してしまったらしいロスとレイチェルはどうなるの?というクリフハンガー状態で、シーズン6へと続きます。
チャンドラーとモニカが結婚を決意するという話もびっくりでしたが、ロスとレイチェルがそれより先に式を挙げてしまっていたのも、「簡単に結婚できる」ベガスならではのお話ですね。
ア・リトル・ホワイト・チャペルが象徴する、そういうベガスのイメージが、シーズン5のラストにうまく結びつき、次のシーズンへと続く盛り上がりを生んでいる…。シーズン終わりの舞台をベガスに設定したことで出来た、効果的な演出だと思いました。
今日でシーズン5は終わりです。
来週からは、シーズン6に突入します。
1つのシーズンが終了し、次のシーズンに突入できる時、いつもとても幸せな気持ちになれます。
読んで下さる読者の皆様がおられるからこそ、こうして続けていくことができます。
これからもどうぞよろしくお願いいたします!
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チャンドラーとモニカは、今夜ここで結婚することを決心します。
[Scene: A Little White Chapel, Chandler and Monica are entering.]
ア・リトル・ホワイト・チャペル。チャンドラーとモニカが入ってくる。
チャンドラー: Hello! One marriage, please. (ハロー! 結婚を1つ、お願い。)
モニカ: Yep, we wanna get married! (そうなの、私たち、結婚したいの!)
接客係(The Attendant): Well, there's a service in progress. Have a seat. (あのー、式が1つ進行中なんです。席にかけて(お待ち)下さい。)
チャンドラーとモニカ: All right. (了解。)
(They both sit down.)
二人とも座る。
チャンドラー: (singing) Dum! Dum-dum-dum! Dum! Dum! Dum! Dum-dum-dum! ([歌いながら] ♪ダーン! ダダダン、ダーン! ダーン! ダーン! ダダダン、ダーン♪)
モニカ: What are you doing? (何やってるの?[それは何?])
チャンドラー: Oh, that's the "Wedding March." Does, does that freak you out? (あぁ、今のは「結婚行進曲」だよ。今の曲でモニカはパニクる?)
モニカ: No, only because that's the graduation song. (いいえ(パニクらないわ)、だって、それはただ、卒業式の曲だから。)
(The real Wedding March begins playing from behind the closed doors of the chapel.)
閉じたチャペルのドアの後ろから、本物の結婚行進曲が流れ始める。
チャンドラー: Okay! (Stands up and claps his hands) This is it! We're gonna get married! (よし![立ち上がり、手を叩く] いよいよだ! 俺たちは結婚するぞ!)
モニカ: Are you sure you wanna do this? (結婚したいっていう気持ちは確かなの?)
(Suddenly the doors burst open, and ROSS AND RACHEL COME OUT ARM-IN-ARM!!!!! And Rachel's carrying a bouquet!!! THEY GOT MARRIED!!!!)
突然、ドアが勢いよくパッと開いて、ロスとレイチェルが腕を組んで出てくる!! そして、レイチェルはブーケを持っている!! 二人は結婚したのだ!!)
ロス: Well, hello, Mrs. Ross! (Throws some rice.) (あぁ、ハロー、ミセス・ロス[ロス夫人]! [ライスを投げる])
レイチェル: Well, hello, Mr. Rachel! (Throws some more rice.) (あぁ、ハロー、ミセス・レイチェル[レイチェル氏]! [さらにライスを投げる])
(They storm out into the street.)
二人は(教会の外の)道に勢いよく飛び出す。
レイチェル: Wait. (Gets her bearings) Okay. (待って。[方向を確かめて] よし。)
サイコロでハード8の目が出たため、宣言通り、今夜ここで結婚することにしたチャンドラーとモニカ。
ト書きにもあるように、A Little White Chapel というチャペルが画面に映りますが、これはラスベガスに実在する有名なチャペルです。
公式サイトはこちら。
A Little White Wedding Chapel, Las Vegas, Nevada
ウィキペディアもあります。
Wikipedia 英語版: The Little White Wedding Chapel
そのウィキペディアでは、このチャペルについて、最初にこう説明されています。
... has been the site of many "quickie" celebrity weddings. It is noted for its Drive-Thru Tunnel of Vows.
つまり、「(そのチャペルは)、多くの「急ごしらえの(急ぎの)」セレブの結婚式の場所となってきた。その「誓いのドライブスルー・トンネル」で有名である。」
その説明の横に、その「ドライブスルー・トンネル」の写真も出ています。
また、少し後の説明には、そこで結婚式を挙げた有名人として、フランク・シナトラ、ブリトニー・スピアーズ、ブルース・ウィリス&デミ・ムーアなどの名前が挙げられています。
また、テレビ番組にもよく使われる例として、「フレンズ」の名前が出ているのも、嬉しいところですね。
quickie と説明されていたように、「簡単に、すぐに結婚できちゃう」というのがこのチャペルのウリのようです。
その「すぐに」が究極の形になったのが、「ドライブスルー」なんですねぇ。
「ドライブスルーで結婚式?!」と普通は驚いてしまうところですが、このチャペル、日本のテレビ番組でも取り上げられていたことがあります。
その番組は、2010年10月31日に放映された「世界の果てまでイッテQ!」。
その時の放映内容が、以下のサイトで紹介されています。
世界の果てまでイッテQ! 放送内容 珍獣ハンターイモトワールドツアー 〜アメリカ横断ツアー〜
内容をスクロールしていくと、6番目に出てくる写真、それが今回フレンズに出てきた、「ア・リトル・ホワイト・チャペル」です。
私はこの番組を生で見ていたのですが、「あ、これって、フレンズに出てきたチャペルだ!」と気づいて、すごく嬉しかったのを覚えています。
その「イッテQ!」の説明にもあるように、「ラスベガスには結婚式場が多い」「ラスベガスのあるネバダ州は身分証明書さえあれば簡単に結婚ができ、法的にも認められる」のですね。
「イッテQ!」では実際に、イモトさんがその「ドライブスルー結婚式」を再現していました。
オープンカーのリムジンに乗ってきた新郎新婦が窓口の前に車を止めると、牧師さんが窓から身を乗り出して「永遠の愛を誓いますか?」と語りかける…みたいな感じでした。
その番組では、「式の費用は今ならなんと、8,000円ポッキリ」(笑)と説明されていましたので、ほんとにお手軽なんですね。
ちょっと、このチャペルの説明が長くなってしまいましたが、そのようにベガスには結婚式場がたくさんあって、他の州に比べるとものすごく簡単に結婚できてしまう、ということが意識の中にあるために、チャンドラーも、「今度、ハード8の目が出たら、今晩ここで結婚しよう」ということを言ってしまったわけですね。
で、実際に結婚するぞ、となった時に、登場したのがこの quickie で有名な、ア・リトル・ホワイト・チャペルだった、というのも自然な流れになるわけです。
チャンドラーがチャペルに入ってきた時、"One marriage, please." のように、まるでファストフードでメニューを注文するみたいに気軽な感じで言っているのも、「お手軽で早い」のがウリのチャペルに合わせて言ってみたセリフなのでしょう。
there's a service in progress の service は「(礼拝の)式、儀式」。
memorial service なら「告別式、追悼式」ですね。
in progress は「進行中で」なので、「進行中の式が1つあります、式が1つ進行中です」ということになります。
今、別の人が挙式中なので、座って待ってて下さい、ということです。
チャンドラーは、ダーン♪と言いながら、ある曲を歌っています。
「何それ?」と聞かれたチャンドラーは、「結婚行進曲だよ。そんなのを俺が歌うと、モニカはビビっちゃうかな?」と、余裕のある発言をしていますが、モニカは No. と否定して「ううん、ビビったりしないわよ」と言った後、only because that's the graduation song と言っています。
only because は「ただ…だから、ただ…という理由で」。
ビビらないのは、結婚するのにまだ躊躇する気持ちがあるとかないとかの問題じゃなくて、あなたが今歌ったのが、結婚行進曲じゃなくて、卒業式の曲だからよ、と言っていることになります。
モニカの言う通り、チャンドラーが歌っていたのは、卒業式で使われる、エルガー作曲の「威風堂々」(Pomp and Circumstance)ですね。
この曲は、過去記事、アメリカの卒業式の曲 フレンズ3-10その32 にも出てきました。
レイチェルがウェイトレスを卒業する最後の仕事の時に、フレンズたちがこの曲をハミングしていたんでしたね。
その記事でこの曲についてもう少し詳しく説明してありますので、興味のある方は合わせてご覧下さい。
チャンドラーは自分が余裕なところを見せようと、結婚行進曲を歌ったつもりが、実はそれは卒業式の曲だった、というオチなわけです。
私も聞いた瞬間、「それは卒業式の曲やろっ!」とツッコミを入れそうになりましたので(笑)、この曲を知っている人にとっては比較的わかりやすいジョークだったと言えそうです。
チャンドラーが歌うはずだった結婚行進曲が厳か(おごそか)に流れてきて、This is it! 「いよいよだ!」と立ち上がるチャンドラー。
コミットメント恐怖症のかけらも見えないチャンドラーに、モニカは最後の確認として、Are you sure you wanna do this? と聞いています。
「あなたがこれをしたい[こんな風に結婚式を挙げたい]と思っているのは自分で確かだと思う?」みたいなことですね。
ほんとにこんな風に結婚したいと思ってるの?、大丈夫?、本気なの?という確認です。
それに対してチャンドラーが何かを答える前に、式場のドアがバーンと開いて(まさに、burst open という形容がふさわしい)、何と、ロスとレイチェルの二人が登場します。
それも腕を組んで、レイチェルはブーケまで持って!
この状況を見れば明らかに「ここで今、結婚式を挙げたばかりの二人」であることは明白ですね。
ト書きを書いた方も興奮気味に大文字で書いておられますが、まさに観客も、チャンドラー&モニカもびっくりの展開になっています。
二人はお互いを、Mrs. Ross, Mr. Rachel などとトンチンカンな名前で呼び合い、結婚式で恒例のライスシャワーをお互いにかけあっています。
そのままチャペルのドアを開けて、一瞬、我に返ったように静かになった後、二人は左右別々の方向に歩いていってしまいます。
今回のエピソードでは、ロスとレイチェルがかなりのお酒を飲んでいましたので、その酔っぱらった状態がまだ続いていることがこの行動からわかりますね。
さあ、結婚するぞ!と意気込んでいたはずのチャンドラーとモニカは、思いがけない先客に、声も出ない様子で茫然としています。
エルビス・プレスリーの、Viva Las Vegas が流れ、二人の驚いた顔を映しながら、シーズン5は終了します。
結婚しようとしていたチャンドラーとモニカはこの後どうするの?、酔っぱらった勢いで結婚してしまったらしいロスとレイチェルはどうなるの?というクリフハンガー状態で、シーズン6へと続きます。
チャンドラーとモニカが結婚を決意するという話もびっくりでしたが、ロスとレイチェルがそれより先に式を挙げてしまっていたのも、「簡単に結婚できる」ベガスならではのお話ですね。
ア・リトル・ホワイト・チャペルが象徴する、そういうベガスのイメージが、シーズン5のラストにうまく結びつき、次のシーズンへと続く盛り上がりを生んでいる…。シーズン終わりの舞台をベガスに設定したことで出来た、効果的な演出だと思いました。
今日でシーズン5は終わりです。
来週からは、シーズン6に突入します。
1つのシーズンが終了し、次のシーズンに突入できる時、いつもとても幸せな気持ちになれます。
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2011年07月06日
あなたが決めて フレンズ5-24その5
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次にハード8(2つのサイコロで4のぞろ目)が出たら、今夜ここで結婚しよう!と言ったチャンドラー。
モニカはびっくりしながらも、チャンドラーが本気でそう言っていると知り、次のサイコロを投げます。
(She rolls the dice, but one bounces out of the table.)
モニカはサイコロを転がす、が、一つはテーブルの外に飛び出る。
チャンドラー: (spots one) Okay! That's a four! And where-where's the other one? ([1つ目を見つけて] よし! それは4だ! で、もう1つのはどこ?)
酔っ払いギャンブラー: It went under the table. (テーブルの下に行ったぞ。)
モニカ: Nobody move! (To Chandler) Okay, you look that way, I look this way! (誰も動かないで! [チャンドラーに] いいわ、あなたはそっちを見て、私はこっちを見る!)
チャンドラー: All right! (わかった!)
(He searches to his right; she searches to her left. They're both on their hands and knees when they spot the die. It's propped up against the table leg, and it's not lying flat. Both the four and the five are showing.)
チャンドラーは右側を捜し、モニカは左側を捜す。二人ともサイコロを見つけるのに、四つん這い(よつんばい)になっている。そのサイコロはテーブルの脚に寄りかかっていて平らになっていない。4の面と5の面の両方が見えている。
チャンドラー: Here it is! Here it is! (ここだ! ここにある!)
モニカ: That could be a four or a five.... It's your call. (それだと4にも見えるし、5にも見えるわ…。あなたが決めて。)
(Pause.)
しばしの間(沈黙)。
チャンドラー: It's a four. (4だ。)
モニカ: I think so too. (私もそう思うわ。)
ト書きの spot は「…を見つける」ですね。名詞では「場所、地点」という意味なので、ある地点に何かがあるのを見つける、という感覚です。
1つは4で、もう1つは机の下に転がったと知り、二人はそのサイコロを捜します。
Nobody Move! と手を広げて叫んだり、「あなたはそっちを見て、私はこっちを見るから」のようにチャンドラーに指図している様子が、いかにもモニカ、な感じですね。
こういう場合にモニカが仕切り、チャンドラーがそれに従う、というのが、このカップルらしいところなのでしょう。
二人が机の下を捜して、サイコロがどんな状態になっているかを書いているネットスクリプトのト書き、こういう文章は参考になる部分が多いですね。
on their hands and knees というのは「手と膝をついて」ということですから、つまりは「四つん這いになって」ということ。
It's propped up against the table leg の prop は「〜を(…で)(倒れないように)支える、つっかい棒をする」「〜を(…に)立てかける、寄りかからせる、もたせかける、支える」。
研究社 新英和中辞典には、
He propped his bicycle (up) against the wall. 「彼は自転車を壁に立てかけた」
という例文が出ています。
壁にもたれる、壁で支える形にして、自転車が倒れないように立てている感覚ですね。
It's propped up against the table leg. は、受動態の形になっていて、「それ(2つ目のサイコロ)は、テーブルの脚に寄りかかる形で支えられていた」のような意味になるでしょう。
今回のエピソードでは、フレンズ5-24その2 にも、この be propped という表現が以下のト書きに出てきました。
He's propped up with his hand on a statute of a naked guy.
そのト書きの日本語訳を、私は「チャンドラーは、裸体の男性像の上に手を置いて自分の体を支える」と書きましたが、厳密に訳すと、「チャンドラーは裸体の男性像の上に[像に接触する形で]自分の手で支えられている」となるでしょうか。
前から意味を取っていくと、「彼はどこかに寄りかかり支えられていて、それは自分の手を使って支えられていて、接触している対象物は裸体の男性像である」という流れになるでしょう。
TOEIC Part 1 の写真問題で「(はしごなどが)(ビルなどに)立てかけられている、寄りかかっている」という場合に、lean against (be leaning against) というフレーズがよく出てくるように思います。
lean は基本的に「もたれる、もたれかかる、寄りかかる」という自動詞で使われるので lean agasint という能動態の形、prop は「〜を支える、…を寄りかからせる」という他動詞なので、be propped up against という受動態の形になる、という違いにも注意したいところです。
lie flat は「平らに横たわる」ですから、it's not lying flat は、通常のサイコロのように、1面が下になってその反対面が真上を向く形になっていないことを指します。
つまり、平らな状態ではなくて、テーブルの脚にもたれたように斜めになっていた、ということですね。
斜めになっているために、4の面と5の面の両方が見えている、ということになります。
そのサイコロの状態を映像で見ていれば、このト書きの意味はすんなり理解できますが、逆にこのサイコロの状態を英語で表現しろと言われて、be propped up against や lie flat を使ったこういう文章がすっと出てくるかと言われると、ノンネイティブにはなかなか難しいような気がします。
「ト書き」は、映像で見えている状態や動作を文字として的確に表現してくれているわけですから、そういうものも積極的に自分の表現として取り入れていけるといいですね。
That could be a four or a five. は、「それは4の面にもなりうるし、5の面にもなりうる」というような感覚。どちらにとることも可能だ、というようなニュアンスです。
It's your call. は「あなたが決めて」。It's your choice. や、It's up to you. と同じような意味です。
元々は、スポーツでの「(審判員の)判定、決定」という意味から、「それはあなたの判定よ、あなたが決めることよ」→「あなたが決めて」というニュアンスになるわけですね。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
call [noun] :
DECISION
a) a decision made by a referee (= judge) in a sport game
b) (informal) a decision
例) "Where should we eat tonight?" "I don't know, it's your call."
a hard/easy call (= a difficult or easy decision)
例) This is not an easy call.
Guilty or innocent? You make the call (= decide).
つまり、a) は、「スポーツの試合で、審判(レフェリー、ジャッジ)によってなされる決定」
b) は、「(インフォーマル) 決定」
例文は、「今夜はどこで食べたらいいかな?」「わからないわ、あなたが決めて」
a hard/easy call は、「難しい決定、簡単な決定」
例文は、「これは簡単に決められることではない」
「有罪か無罪か? 君が決めてくれ」
4とも5ともとれるこの目を、4だと言えばハード8になり、今夜ここで結婚、5だと言えば合計8ではなくなるため、結婚しない、ということになります。
結婚するかしないかの判断がチャンドラーに委(ゆだ)ねられたわけですが、チャンドラーは優しく微笑みながら、「4だ」と断言します。
男女の深く真剣な付き合いに対して尻込みしてしまう「コミットメント恐怖症」だったチャンドラーが、自分の判断でそう宣言したことで、モニカはうっとりした顔になり、観客もおぉ!とどよめいています。
ドラマならではの出来過ぎた演出ではありますが、いつもはモニカが何もかも仕切っている形になっていても、ここぞという時は「モニカがそう言うなら…」という他人任せではなく、チャンドラー自身が判断し決めて欲しいというモニカの女心が感じられ、微笑ましく幸せなシーンだなと思いました。
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次にハード8(2つのサイコロで4のぞろ目)が出たら、今夜ここで結婚しよう!と言ったチャンドラー。
モニカはびっくりしながらも、チャンドラーが本気でそう言っていると知り、次のサイコロを投げます。
(She rolls the dice, but one bounces out of the table.)
モニカはサイコロを転がす、が、一つはテーブルの外に飛び出る。
チャンドラー: (spots one) Okay! That's a four! And where-where's the other one? ([1つ目を見つけて] よし! それは4だ! で、もう1つのはどこ?)
酔っ払いギャンブラー: It went under the table. (テーブルの下に行ったぞ。)
モニカ: Nobody move! (To Chandler) Okay, you look that way, I look this way! (誰も動かないで! [チャンドラーに] いいわ、あなたはそっちを見て、私はこっちを見る!)
チャンドラー: All right! (わかった!)
(He searches to his right; she searches to her left. They're both on their hands and knees when they spot the die. It's propped up against the table leg, and it's not lying flat. Both the four and the five are showing.)
チャンドラーは右側を捜し、モニカは左側を捜す。二人ともサイコロを見つけるのに、四つん這い(よつんばい)になっている。そのサイコロはテーブルの脚に寄りかかっていて平らになっていない。4の面と5の面の両方が見えている。
チャンドラー: Here it is! Here it is! (ここだ! ここにある!)
モニカ: That could be a four or a five.... It's your call. (それだと4にも見えるし、5にも見えるわ…。あなたが決めて。)
(Pause.)
しばしの間(沈黙)。
チャンドラー: It's a four. (4だ。)
モニカ: I think so too. (私もそう思うわ。)
ト書きの spot は「…を見つける」ですね。名詞では「場所、地点」という意味なので、ある地点に何かがあるのを見つける、という感覚です。
1つは4で、もう1つは机の下に転がったと知り、二人はそのサイコロを捜します。
Nobody Move! と手を広げて叫んだり、「あなたはそっちを見て、私はこっちを見るから」のようにチャンドラーに指図している様子が、いかにもモニカ、な感じですね。
こういう場合にモニカが仕切り、チャンドラーがそれに従う、というのが、このカップルらしいところなのでしょう。
二人が机の下を捜して、サイコロがどんな状態になっているかを書いているネットスクリプトのト書き、こういう文章は参考になる部分が多いですね。
on their hands and knees というのは「手と膝をついて」ということですから、つまりは「四つん這いになって」ということ。
It's propped up against the table leg の prop は「〜を(…で)(倒れないように)支える、つっかい棒をする」「〜を(…に)立てかける、寄りかからせる、もたせかける、支える」。
研究社 新英和中辞典には、
He propped his bicycle (up) against the wall. 「彼は自転車を壁に立てかけた」
という例文が出ています。
壁にもたれる、壁で支える形にして、自転車が倒れないように立てている感覚ですね。
It's propped up against the table leg. は、受動態の形になっていて、「それ(2つ目のサイコロ)は、テーブルの脚に寄りかかる形で支えられていた」のような意味になるでしょう。
今回のエピソードでは、フレンズ5-24その2 にも、この be propped という表現が以下のト書きに出てきました。
He's propped up with his hand on a statute of a naked guy.
そのト書きの日本語訳を、私は「チャンドラーは、裸体の男性像の上に手を置いて自分の体を支える」と書きましたが、厳密に訳すと、「チャンドラーは裸体の男性像の上に[像に接触する形で]自分の手で支えられている」となるでしょうか。
前から意味を取っていくと、「彼はどこかに寄りかかり支えられていて、それは自分の手を使って支えられていて、接触している対象物は裸体の男性像である」という流れになるでしょう。
TOEIC Part 1 の写真問題で「(はしごなどが)(ビルなどに)立てかけられている、寄りかかっている」という場合に、lean against (be leaning against) というフレーズがよく出てくるように思います。
lean は基本的に「もたれる、もたれかかる、寄りかかる」という自動詞で使われるので lean agasint という能動態の形、prop は「〜を支える、…を寄りかからせる」という他動詞なので、be propped up against という受動態の形になる、という違いにも注意したいところです。
lie flat は「平らに横たわる」ですから、it's not lying flat は、通常のサイコロのように、1面が下になってその反対面が真上を向く形になっていないことを指します。
つまり、平らな状態ではなくて、テーブルの脚にもたれたように斜めになっていた、ということですね。
斜めになっているために、4の面と5の面の両方が見えている、ということになります。
そのサイコロの状態を映像で見ていれば、このト書きの意味はすんなり理解できますが、逆にこのサイコロの状態を英語で表現しろと言われて、be propped up against や lie flat を使ったこういう文章がすっと出てくるかと言われると、ノンネイティブにはなかなか難しいような気がします。
「ト書き」は、映像で見えている状態や動作を文字として的確に表現してくれているわけですから、そういうものも積極的に自分の表現として取り入れていけるといいですね。
That could be a four or a five. は、「それは4の面にもなりうるし、5の面にもなりうる」というような感覚。どちらにとることも可能だ、というようなニュアンスです。
It's your call. は「あなたが決めて」。It's your choice. や、It's up to you. と同じような意味です。
元々は、スポーツでの「(審判員の)判定、決定」という意味から、「それはあなたの判定よ、あなたが決めることよ」→「あなたが決めて」というニュアンスになるわけですね。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
call [noun] :
DECISION
a) a decision made by a referee (= judge) in a sport game
b) (informal) a decision
例) "Where should we eat tonight?" "I don't know, it's your call."
a hard/easy call (= a difficult or easy decision)
例) This is not an easy call.
Guilty or innocent? You make the call (= decide).
つまり、a) は、「スポーツの試合で、審判(レフェリー、ジャッジ)によってなされる決定」
b) は、「(インフォーマル) 決定」
例文は、「今夜はどこで食べたらいいかな?」「わからないわ、あなたが決めて」
a hard/easy call は、「難しい決定、簡単な決定」
例文は、「これは簡単に決められることではない」
「有罪か無罪か? 君が決めてくれ」
4とも5ともとれるこの目を、4だと言えばハード8になり、今夜ここで結婚、5だと言えば合計8ではなくなるため、結婚しない、ということになります。
結婚するかしないかの判断がチャンドラーに委(ゆだ)ねられたわけですが、チャンドラーは優しく微笑みながら、「4だ」と断言します。
男女の深く真剣な付き合いに対して尻込みしてしまう「コミットメント恐怖症」だったチャンドラーが、自分の判断でそう宣言したことで、モニカはうっとりした顔になり、観客もおぉ!とどよめいています。
ドラマならではの出来過ぎた演出ではありますが、いつもはモニカが何もかも仕切っている形になっていても、ここぞという時は「モニカがそう言うなら…」という他人任せではなく、チャンドラー自身が判断し決めて欲しいというモニカの女心が感じられ、微笑ましく幸せなシーンだなと思いました。
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2011年07月04日
ハードエイトとイージーエイト フレンズ5-24その4
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クラップス(サイコロ2つの目を当てるゲーム)で絶好調のモニカ。隣にはチャンドラーがついていて、二人の周りには人だかりができています。
モニカ: Okay, good. Okay, what do I want now? (オッケー。それでいいわ。で、今度は何(の目)が欲しい?)
チャンドラー: Ahh, ooh, try a hard eight. (あー、うー、ハード8(エイト)でどう?[ハード8でやってみて])
モニカ: What? (何?)
チャンドラー: Two fours. (4が2つだよ。)
モニカ: Okay. (Rolls the dice) (わかった。[サイコロを転がす])
賭博の胴元(The Croupier): Eight! (8です!)
酔っ払いのギャンブラー(A Drunken Gambler): (To Chandler) Don't you let her go. You're a lucky guy! ([チャンドラーに] 彼女を手放すなよ。お前はラッキーな男だ!)
チャンドラー: Thank you, Mr. Drunken Gambler! Okay, you get this and uh, we get the biggest suite in the place! (Everyone cheers) Wait-wait-wait-wait! We (motions to Monica and him.) get the biggest suite in the place. (ありがとう、ミスター・酔っ払いギャンブラー! よし、モニカがこれをゲットしたら[これに成功したら]、俺たちはこの場所で一番大きなスイート(ルーム)をとるぞ! [みんなは歓声を上げる] 待って待って待って待って! 俺たち[チャンドラーは、モニカとチャンドラー(自身)を身振りで示す]が、この場所で一番大きなスイートをとるんだ!)
モニカ: All right. The biggest suite in the place. Come on! (Rolls the dice.) (わかった。この場所で一番大きなスイートね。来い! [サイコロを転がす])
チャンドラー: (sees the roll) Yes!! I love you! I can't even remember what we were fighting about! ([サイコロの振りを見て] よし! 愛してるよ! 俺たちが何のことで喧嘩してたのか思い出すことすらできないよ!)
モニカ: Oh, that's because I had lunch with Rich-- Me neither! Okay, what do I want now? (あぁ、それは私がランチを食べたからよ、リチャ…。私も思い出せないわ! よし、今度は何の目が欲しい?)
チャンドラー: Another hard eight. (もう1回、ハード8だ。)
モニカ: Hard eight? Let's call it easy eight! (ハード8? イージー8って呼びましょうよ!)
チャンドラー: Okay, okay, I'll tell you what. You roll another hard eight... (pause) and we get married here tonight. (オッケー、オッケー。ねぇ、こういうのはどうかな。モニカがもう一度、ハード8を出したら… [しばしの間] 俺たちは今夜ここで結婚するぞ。)
酔っ払いのギャンブラー: Go! Come on! Roll! (行け! やれ! 転がせ!)
みんな: Roll-roll! (転がせ、転がせ!)
モニカ: Shut up! It just got interesting! (黙って! ちょうど面白くなってきたところなのよ!)
仲直りしたチャンドラーが隣にいる状態で、モニカはサイコロを転がしています。
what do I want now? は、モニカが次はどんな目を出すかを、自分で決めないで隣のチャンドラーに決めてもらっている感覚ですね。
「今度は私は何の目が欲しい?」ということで、これから投げるのにどの目を狙って投げたらいいかなぁ?とチャンドラーに尋ねている感じになるでしょう。
チャンドラーは、hard eight にトライしてみて、と言っています。
モニカは一瞬、何?と聞き返していますが、チャンドラーは4が2つだと説明してくれていますね。
彼の説明によると、2つのサイコロを転がして合計8になる、それも4が2つのぞろ目で8になることを「ハード8(エイト)」と呼ぶようです。
その後、実際に転がして、2つのサイコロの目の合計が8になり、そばで見ていた酔っ払いのおじさんが「彼女を手放すなよ」みたいなことを言っています。
Don't you let her go. は、Don't you...? という否定疑問文ではなく、Don't を使った否定命令文の強い形ですね。
Don't let her go. 「彼女を(どこかへ)行かせるな」→「彼女を手放すな」を強調する形で、省略されている主語 you をつけたものが、You don't let her go. となり、それを倒置にしてさらに強調したのが、Don't you let her go. の形になります。
チャンドラーは、you get... we get の形を使って、「モニカが…をゲットしたら、俺たちは…をゲットする」のように言います。
get は非常に幅広く使える単語なので、その後に続く目的語によって、いろいろな日本語の動詞を当てはめることができます。
そのため、日本語に訳そうとする場合、どういう単語にしようかと一瞬迷ってしまうところですが、逆にその汎用性を利用して、とにかく何かを「ゲットする」んだ、というくらいの大きな広いイメージで捉えていた方が、そういう迷いがない分、タイムラグなしにニュアンスをすんなり理解できる気がします。
英語を英語のままで理解する場合には、get の基本的な語義である「得る、手に入れる」というイメージをきちんと理解できていればそれで問題ない、ということになるでしょう。
今回のセリフも、モニカが get this するというのは、あえて日本語で言うと「これを取る」という感じ、今から投げようとしているサイコロの勝負に勝つことを意味します。
get the biggest suite は、「一番大きなスイート(ホテルのスイートルーム)をとる」、つまり、「部屋をとる、予約する、そこに泊まる」ことを示します。
the biggest suite in the place は、「この場所で最大のスイート」、つまり、このホテルで一番大きなスイートということ。
「次のゲームも当てたら、一番大きなスイートをとるぞー!」と言った後、周りで見ていた観客も歓声を上げていますが、チャンドラーは「みんなは誤解してるようだけど、we っていうのは、ここにいるみんなのことじゃなくて、俺たち二人のことだからね」としぐさで示しています。
みんなでその部屋でどんちゃん騒ぎをするとかじゃないからね、と釘を刺している感じでしょう。
ト書きの see the roll の roll は「(サイコロの)ころがし、一振り」という感覚。
サイコロがころがって、その結果の目を見る、というのが、see the roll のニュアンスでしょう。
またもや、目が当たり、大喜びのチャンドラーは、「俺たちが何のことについて喧嘩していたのか、思い出すことすらできないよ!」と叫んでいます。
モニカは、「それは私が…したからよ」と正確な理由を言おうとしますが、せっかく仲直りしたのに、またその喧嘩の原因を思い出させるようなことを言うこともない、と気づいて、Richard という名前の途中で言うのをやめ、「私も思い出せないわ」と言ってごまかします。
I had lunch with Rich-- のように、途中で言うのをやめた英語を、そのニュアンスを出して日本語に直すのは難しいですね。
日英では文章の構造が異なるので、自然な日本語では「私がリチャードとランチを食べた」のように、どうしても、「リチャードと」が「ランチを食べた」の前に来てしまいます。
「リチャードと」と言いかけて途中でやめた「リチャ…」みたいなニュアンスを日本語に出そうとすると、「私がリチャ…とランチを食べた」ではおかしいし、「私があの人とランチを食べたからよね、ほら、リチャ…」みたいに言うと、ものすごくわざとらしいセリフになってしまいます。
英語の構造が、「私はランチを食べた、リチャードと」という形であるために、with Rich-- で絶句するのが自然になるわけですが、日本語の場合はその with 「…と一緒に」が前に来ることもありませんから、「あぁ、それは私がリチャ…」くらいで絶句することになり、「誰かとランチを食べたけど、その相手が問題だった」というニュアンスを日本語に出すのがどうしても難しくなる、ということです。
次の目をチャンドラーに相談するモニカ。チャンドラーはまた、ハード8だと答えます。
チャンドラーが何度も hard eight だと言うのを聞いて、モニカは、hard eight って言うけど、easy eight って呼びましょうよ、みたいに言っています。
これは、hard と easy を、「難しい」と「簡単な」のニュアンスで使っているようですね。
合計が8になるにしても、それが4のぞろ目だとより確率が低くなる、だから、4の目2つの8をハード8と呼んでいるのでしょうが、モニカは今、絶好調で、ハード8を出すのがそんなにハードな(難しい)気がしない、だから、「こんなのはハード8じゃなくて、私にとってはイージー(簡単な)8よ、だからイージー8って呼んで」と言っている、自信満々の強気なセリフなのかなと思いました。
この hard eight のニュアンスについては、以下の Urban Dictionary の説明が詳しいです。
Urban Dictonary : hard eight
その説明によると、2つのサイコロの合計が8になる組み合わせ(combination)のうち、6と2、3と5は、the easy way で、4と4の組み合わせが、the hard way であるとのこと。
やはり、そのように数が同じ「ぞろ目」の組み合わせを、hard numbers と呼ぶようです。
その語義にも、easy と hard が使われていることからも、ツキまくりのモニカにとっては、4と4の組み合わせさえ、hard じゃなくて、easy だわ、と言っていることになるでしょう。
ちなみに、ウィキペディアで hard eight を調べると、
Wikipedia 英語版: Hard Eight
Hard eight describes a dice roll in the game of craps wherein each of two dice land on "four."
と出ています。
つまり、「ハードエイトは、クラップスのゲームで、2つのサイコロのそれぞれが4で着地する[4の目が出て止まる]というサイコロのころがしを意味する」。
また、その説明の後に、
The term may also refer to: として、Hard Eight (film) や Hard Eight (novel) が存在することも示されています。
allcinema : 映画「ハードエイト」 によると、1996年のアメリカ映画のようですが、日本では劇場未公開のようです。
やはり、ギャンブラーやカジノにまつわるお話のようですね。
それまでも次が当たりだったらこうする…みたいにいろいろ言っていたチャンドラーですが、ここで、ものすごい提案をしています。
次にもう1回、ハードエイトを転がしたら、つまり、ハードエイトの目を出したら、俺たちは今夜ここで結婚する!という宣言です。
観客からもオー!という声が上がっていますし、モニカはチャンドラーを見つめて固まっています。
ゲームを見ている人たちは、「やれ、転がせ!」とはやし立てますが、モニカは Shut up! と言ってみんなが騒ぐのを制していますね。
get interesting は「興味深くなる、面白くなる、面白くなってくる」ですから、It just got interesting! は「ちょうど面白くなってきたわ、面白くなってきたところなのよ!」という感じでしょう。
みんなは茶化すように騒ぐけど、こちらは人生がかかった真剣な話なのよ、それまでのお遊びのゲームじゃなくて、話がにわかに興味深いものになってきたんだから、他人はちょっとの間、黙ってて!みたいな気持ちなのでしょうね。
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クラップス(サイコロ2つの目を当てるゲーム)で絶好調のモニカ。隣にはチャンドラーがついていて、二人の周りには人だかりができています。
モニカ: Okay, good. Okay, what do I want now? (オッケー。それでいいわ。で、今度は何(の目)が欲しい?)
チャンドラー: Ahh, ooh, try a hard eight. (あー、うー、ハード8(エイト)でどう?[ハード8でやってみて])
モニカ: What? (何?)
チャンドラー: Two fours. (4が2つだよ。)
モニカ: Okay. (Rolls the dice) (わかった。[サイコロを転がす])
賭博の胴元(The Croupier): Eight! (8です!)
酔っ払いのギャンブラー(A Drunken Gambler): (To Chandler) Don't you let her go. You're a lucky guy! ([チャンドラーに] 彼女を手放すなよ。お前はラッキーな男だ!)
チャンドラー: Thank you, Mr. Drunken Gambler! Okay, you get this and uh, we get the biggest suite in the place! (Everyone cheers) Wait-wait-wait-wait! We (motions to Monica and him.) get the biggest suite in the place. (ありがとう、ミスター・酔っ払いギャンブラー! よし、モニカがこれをゲットしたら[これに成功したら]、俺たちはこの場所で一番大きなスイート(ルーム)をとるぞ! [みんなは歓声を上げる] 待って待って待って待って! 俺たち[チャンドラーは、モニカとチャンドラー(自身)を身振りで示す]が、この場所で一番大きなスイートをとるんだ!)
モニカ: All right. The biggest suite in the place. Come on! (Rolls the dice.) (わかった。この場所で一番大きなスイートね。来い! [サイコロを転がす])
チャンドラー: (sees the roll) Yes!! I love you! I can't even remember what we were fighting about! ([サイコロの振りを見て] よし! 愛してるよ! 俺たちが何のことで喧嘩してたのか思い出すことすらできないよ!)
モニカ: Oh, that's because I had lunch with Rich-- Me neither! Okay, what do I want now? (あぁ、それは私がランチを食べたからよ、リチャ…。私も思い出せないわ! よし、今度は何の目が欲しい?)
チャンドラー: Another hard eight. (もう1回、ハード8だ。)
モニカ: Hard eight? Let's call it easy eight! (ハード8? イージー8って呼びましょうよ!)
チャンドラー: Okay, okay, I'll tell you what. You roll another hard eight... (pause) and we get married here tonight. (オッケー、オッケー。ねぇ、こういうのはどうかな。モニカがもう一度、ハード8を出したら… [しばしの間] 俺たちは今夜ここで結婚するぞ。)
酔っ払いのギャンブラー: Go! Come on! Roll! (行け! やれ! 転がせ!)
みんな: Roll-roll! (転がせ、転がせ!)
モニカ: Shut up! It just got interesting! (黙って! ちょうど面白くなってきたところなのよ!)
仲直りしたチャンドラーが隣にいる状態で、モニカはサイコロを転がしています。
what do I want now? は、モニカが次はどんな目を出すかを、自分で決めないで隣のチャンドラーに決めてもらっている感覚ですね。
「今度は私は何の目が欲しい?」ということで、これから投げるのにどの目を狙って投げたらいいかなぁ?とチャンドラーに尋ねている感じになるでしょう。
チャンドラーは、hard eight にトライしてみて、と言っています。
モニカは一瞬、何?と聞き返していますが、チャンドラーは4が2つだと説明してくれていますね。
彼の説明によると、2つのサイコロを転がして合計8になる、それも4が2つのぞろ目で8になることを「ハード8(エイト)」と呼ぶようです。
その後、実際に転がして、2つのサイコロの目の合計が8になり、そばで見ていた酔っ払いのおじさんが「彼女を手放すなよ」みたいなことを言っています。
Don't you let her go. は、Don't you...? という否定疑問文ではなく、Don't を使った否定命令文の強い形ですね。
Don't let her go. 「彼女を(どこかへ)行かせるな」→「彼女を手放すな」を強調する形で、省略されている主語 you をつけたものが、You don't let her go. となり、それを倒置にしてさらに強調したのが、Don't you let her go. の形になります。
チャンドラーは、you get... we get の形を使って、「モニカが…をゲットしたら、俺たちは…をゲットする」のように言います。
get は非常に幅広く使える単語なので、その後に続く目的語によって、いろいろな日本語の動詞を当てはめることができます。
そのため、日本語に訳そうとする場合、どういう単語にしようかと一瞬迷ってしまうところですが、逆にその汎用性を利用して、とにかく何かを「ゲットする」んだ、というくらいの大きな広いイメージで捉えていた方が、そういう迷いがない分、タイムラグなしにニュアンスをすんなり理解できる気がします。
英語を英語のままで理解する場合には、get の基本的な語義である「得る、手に入れる」というイメージをきちんと理解できていればそれで問題ない、ということになるでしょう。
今回のセリフも、モニカが get this するというのは、あえて日本語で言うと「これを取る」という感じ、今から投げようとしているサイコロの勝負に勝つことを意味します。
get the biggest suite は、「一番大きなスイート(ホテルのスイートルーム)をとる」、つまり、「部屋をとる、予約する、そこに泊まる」ことを示します。
the biggest suite in the place は、「この場所で最大のスイート」、つまり、このホテルで一番大きなスイートということ。
「次のゲームも当てたら、一番大きなスイートをとるぞー!」と言った後、周りで見ていた観客も歓声を上げていますが、チャンドラーは「みんなは誤解してるようだけど、we っていうのは、ここにいるみんなのことじゃなくて、俺たち二人のことだからね」としぐさで示しています。
みんなでその部屋でどんちゃん騒ぎをするとかじゃないからね、と釘を刺している感じでしょう。
ト書きの see the roll の roll は「(サイコロの)ころがし、一振り」という感覚。
サイコロがころがって、その結果の目を見る、というのが、see the roll のニュアンスでしょう。
またもや、目が当たり、大喜びのチャンドラーは、「俺たちが何のことについて喧嘩していたのか、思い出すことすらできないよ!」と叫んでいます。
モニカは、「それは私が…したからよ」と正確な理由を言おうとしますが、せっかく仲直りしたのに、またその喧嘩の原因を思い出させるようなことを言うこともない、と気づいて、Richard という名前の途中で言うのをやめ、「私も思い出せないわ」と言ってごまかします。
I had lunch with Rich-- のように、途中で言うのをやめた英語を、そのニュアンスを出して日本語に直すのは難しいですね。
日英では文章の構造が異なるので、自然な日本語では「私がリチャードとランチを食べた」のように、どうしても、「リチャードと」が「ランチを食べた」の前に来てしまいます。
「リチャードと」と言いかけて途中でやめた「リチャ…」みたいなニュアンスを日本語に出そうとすると、「私がリチャ…とランチを食べた」ではおかしいし、「私があの人とランチを食べたからよね、ほら、リチャ…」みたいに言うと、ものすごくわざとらしいセリフになってしまいます。
英語の構造が、「私はランチを食べた、リチャードと」という形であるために、with Rich-- で絶句するのが自然になるわけですが、日本語の場合はその with 「…と一緒に」が前に来ることもありませんから、「あぁ、それは私がリチャ…」くらいで絶句することになり、「誰かとランチを食べたけど、その相手が問題だった」というニュアンスを日本語に出すのがどうしても難しくなる、ということです。
次の目をチャンドラーに相談するモニカ。チャンドラーはまた、ハード8だと答えます。
チャンドラーが何度も hard eight だと言うのを聞いて、モニカは、hard eight って言うけど、easy eight って呼びましょうよ、みたいに言っています。
これは、hard と easy を、「難しい」と「簡単な」のニュアンスで使っているようですね。
合計が8になるにしても、それが4のぞろ目だとより確率が低くなる、だから、4の目2つの8をハード8と呼んでいるのでしょうが、モニカは今、絶好調で、ハード8を出すのがそんなにハードな(難しい)気がしない、だから、「こんなのはハード8じゃなくて、私にとってはイージー(簡単な)8よ、だからイージー8って呼んで」と言っている、自信満々の強気なセリフなのかなと思いました。
この hard eight のニュアンスについては、以下の Urban Dictionary の説明が詳しいです。
Urban Dictonary : hard eight
その説明によると、2つのサイコロの合計が8になる組み合わせ(combination)のうち、6と2、3と5は、the easy way で、4と4の組み合わせが、the hard way であるとのこと。
やはり、そのように数が同じ「ぞろ目」の組み合わせを、hard numbers と呼ぶようです。
その語義にも、easy と hard が使われていることからも、ツキまくりのモニカにとっては、4と4の組み合わせさえ、hard じゃなくて、easy だわ、と言っていることになるでしょう。
ちなみに、ウィキペディアで hard eight を調べると、
Wikipedia 英語版: Hard Eight
Hard eight describes a dice roll in the game of craps wherein each of two dice land on "four."
と出ています。
つまり、「ハードエイトは、クラップスのゲームで、2つのサイコロのそれぞれが4で着地する[4の目が出て止まる]というサイコロのころがしを意味する」。
また、その説明の後に、
The term may also refer to: として、Hard Eight (film) や Hard Eight (novel) が存在することも示されています。
allcinema : 映画「ハードエイト」 によると、1996年のアメリカ映画のようですが、日本では劇場未公開のようです。
やはり、ギャンブラーやカジノにまつわるお話のようですね。
それまでも次が当たりだったらこうする…みたいにいろいろ言っていたチャンドラーですが、ここで、ものすごい提案をしています。
次にもう1回、ハードエイトを転がしたら、つまり、ハードエイトの目を出したら、俺たちは今夜ここで結婚する!という宣言です。
観客からもオー!という声が上がっていますし、モニカはチャンドラーを見つめて固まっています。
ゲームを見ている人たちは、「やれ、転がせ!」とはやし立てますが、モニカは Shut up! と言ってみんなが騒ぐのを制していますね。
get interesting は「興味深くなる、面白くなる、面白くなってくる」ですから、It just got interesting! は「ちょうど面白くなってきたわ、面白くなってきたところなのよ!」という感じでしょう。
みんなは茶化すように騒ぐけど、こちらは人生がかかった真剣な話なのよ、それまでのお遊びのゲームじゃなくて、話がにわかに興味深いものになってきたんだから、他人はちょっとの間、黙ってて!みたいな気持ちなのでしょうね。
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