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モニカの部屋を出て、自分が住む部屋を探さないといけないレイチェルに、ロスは自分の同僚が部屋をまた貸し(sublet)したがっている話を伝えます。
レイチェルが電話でその部屋を借りる交渉をしに行った間に、フィービーはロスに、「あなたは、またレイチェルを愛してる。You re-love her! (レイチェルを再び愛してる・愛し直してる)」と指摘します。そういう心境の変化に自分自身でも気付いているロスですが、フィービーに対しては言葉でそれを否定します。
ロスの同僚と電話で話してきたレイチェルは、すでにその部屋は借り手が決まってしまっていた、私にはどこにも住む家がない、と嘆いています。
悲しむレイチェルに、思わず You can live with me. 「僕と一緒に住めばいい」と言ってしまうロス。
レイチェルはその提案に感謝し、ロスとの同居を決めるのですが、その後、レイチェルがロスの部屋に来て、「チャンドラーとモニカは部屋のことで喧嘩して、同居はなくなったみたい」というニュースを伝えます。
その直後のシーン。
[Scene: Monica and Rachel's, Ross is entering, dragging Chandler, to mediate the argument between Chandler and Monica.]
モニカとレイチェルの部屋。ロスは、チャンドラーを引っ張りながら入ってきて、チャンドラーとモニカ間の口論を仲裁しようとする。
ロス: What's all this about you guys fighting? Is this really over a room? I mean, that is so silly! (君らの喧嘩のことは一体どういうことなんだよ? これはほんとに1つの部屋をめぐっての喧嘩なのか? つまり、そんなのすっごくばかげてるよ!)
モニカ: Ross, we can handle this. (ロス、この件は私たち(二人)で対処できるわ。)
ロス: Well, apparently not. And I can't just stand by and watch two people I care about so much be hurt by something that is so silly. I mean, enough of the silliness! (うーん、どうやら無理みたいだね。そして、僕はただそれを傍観することはできないんだ、僕がとても大切に思っている2人の人間がそんなばかげた何かに傷つくのをね。つまり、ばかげたことはもうたくさんなんだよ。)
チャンドラー: Well, why don't you tell her to stop being silly! (Monica mocks him and he joins in.) (そうだな、ばかなことをするのはやめろって、モニカに言ったらどう? [モニカはチャンドラーをばかにしたように彼の真似をし、チャンドラーもそれに加わる])
ロス: (stopping them) Okay, okay! Two very good points. Look, I've known you both a long time. And I've never seen either of you one-millionth as happy as you've been since you got together. Do you really want to throw that all away over a room? That is so silly. Now wh-what is more important, love... or silliness? ([二人を止めて] わかった、わかった! 二人ともいい点をついてるよ。ねぇ、僕は君たち二人を長い間知ってる。そして、二人が付き合ってからこれまでの様子と比較すると、その 100万分の1の幸せも、それまでには見たことがなかったよ[付き合ってからの君たちは、これまでの 100万倍幸せに見えるよ]。君らは、1つの部屋のことで、それを全部捨ててしまいたいと本当に思ってるの? そんなのすごくばかげてるよ。今、大切なのはどっち? 愛?…それともばかげてること?)
レイチェルを愛している自分の気持ちに気付いてしまったロスは、レイチェルとの同居がとりやめになってしまうのは絶対に避けたいところ。
そこで、チャンドラーとモニカの喧嘩の仲裁を始めます。
Is this really over a room? の over は、fight over 「…のことで、…をめぐって争う」の over のニュアンスですね。
over a room、つまり、「たった1つの部屋のことをめぐって」、今回の喧嘩は争われてるの?という感覚です。
1つの部屋のことで、同居を取りやめるとかどうとかなんて、silly 「ばかげている、ばかばかしい」とも言っています。
モニカは、「こんな風にあなたに仲裁してもらわなくても、二人の問題だから私たち二人で対処できるわ」と言うのですが、ロスはまだ仲裁をやめようとはしません。
stand by and watch を直訳すると、「そばにいて、見る」ということですから、まさに日本語の「(直接関わらず)傍観する」のニュアンスですね。
このセリフの基本構造は、
I can't stand by and watch people be hurt by something. 「人が何かに傷つくのを傍観することはできない」
で、people には、I care about so much 「僕がとても大切に思っている、僕がとても気にかけている(人たち)」、something には、that is so silly 「とてもばかげた(何か)」という言葉が後ろについて、それぞれの言葉を補足説明する形になっています。
ただ、「人が傷つくのを傍観することはできない」と言っているだけではなくて、その人というのは、僕がとっても大切に思っている人たちだし、何に傷ついているかというと、すっごくばかげたことだし、そういうのを見てるのが僕には耐えられないんだよ、だから傍観できなくて、こうして介入せざるを得ないんだよ、という感じでしょう。
enough of the silliness の、enough of は、「…はもうたくさん」のニュアンス。
もうこれ以上は我慢できない、という感覚です。
Enough! や、Enough is enough! も「もうたくさんだ、もういい加減にして」という意味でよく使われますね。
ロスは仲裁を始めてから、この時点ですでに、silly を2回、そして silliness という名詞形も使っています。
今回の二人の喧嘩は「ばかげたものだ、ばかばかしいものだ」ということを何度も強調して、そんなくだらない喧嘩はさっさとやめてくれよ、と言いたい気持ちが出ています。
ロスの説得のキーワードみたいになっているわけですね。
silly って言うけど、じゃあ、その silly なのをやめるようにモニカに言ったら?みたいにチャンドラーは答えています。
つまり、バカげたことを言ってるのはモニカの方で、俺の意見はまっとうだ、まともだ、と言いたいようです。
それを聞いたモニカは、いやそうな顔をして、ミミミ…みたいな声で、チャンドラーのイントネーションを真似ています。
「何かこの人、意味不明のことゴチャゴチャ言ってるわ〜」みたいに相手をばかにする言い方です。
今度はチャンドラーも、そのモニカの真似をして、二人で、ミミミミ言い合っているのにも笑えます。
その二人の子供じみた言い合いを制して、ロスは、Two very good points. と言っています。
Good point. だと「いい点を突いてるね」と相手の意見や指摘を褒める表現ですね。
今回のセリフは、「2つのとても良い点(を突いてる)」みたいに言っていることになり、要はロスは、チャンドラーとモニカの二人の言い分は、どちらも良い点を突いてるよ、とそれぞれの意見を認めていることになります。
しかし、good points とは言っても、実際のチャンドラーとモニカは、ミミミミ…と意味不明の罵(ののし)り合いみたいなことを言い合っていただけですから、そういう「意味不明の言葉」に対して、「わかった、二人ともいい点を突いてるよ」と言っているところが面白い、ということでしょう。
この不毛な言い合いを止めるために、とりあえずそう言ってやめさせた、という感じです。
その後、ロスは、I've known you both a long time. And I've never seen either of you... 「僕は君ら二人を長年知っているけど、…なのは見たことがない」のように、現在完了形を使って説得を試みています。
I've never seen either of you one-millionth as happy as you've been since you got together. というセリフを、音で聞いただけで意味を瞬時に理解するのはかなり難しいなと思いました。
ですからここは、文法的に解析するなどのアプローチで、このセリフの構造をじっくり見てみたいと思います。
このセリフをもう少しシンプルな形にすると、I've never seen (someone) 分数 as happy as ... という形にできるでしょう。
one-millionth は、「100万分の1(の)」という分数ですね。
数字に -th が付いた形は、序数「(第)100万番目の」という意味にもなりますが、このように分数を表す場合にも使います。
序数(順序を表す数)と分数は同じ単語を用いるので、例えば、one third なら「3分の1」で、two thirds なら、「3分の1が2つ」、すなわち、「3分の2」になります。
as 〜 as ... は、「…と同じくらいに〜」ですが、それを倍数で表現する場合、「2倍」なら twice as 〜 as、「3倍」なら three times as 〜 as、半分なら half as 〜 as になりますので、one-millionth as happy as は「100万分の1幸せ、幸せの度合いが 100万分の1」だと言っていることになります。
ここでさらにやっかいなのは、この as 〜 as の倍数表現に、I've never seen 「見たことない」という現在完了形の経験の否定文が使われている点です。
get together は「一緒になる」で、男女間の話で言うと、「付き合う、結ばれる」ことを指すでしょう。
フレンズ2-16その17 で、
モニカ: You said you've never seen Richard happier. (パパも言ってたわよ、リチャードがこんなに幸せそうにしてるところは見たことがないって。)
というセリフがありましたが、これは「(今)より幸せなリチャードを今まで見たことがない」→「今のリチャードがこれまでで一番幸せに見える」という意味ですね。
比較級で「それより〜なのを見たことがない」と表現することで、「これまで見たことないほど最高に〜である」ことを示唆することになるわけです。
今回のセリフは比較級ではなく、as as を使った倍数表現ですが、これもこの比較級のパターンと同様に考えてみると、「二人が付き合ってからの幸せと比較して、その幸せの100万分の1の幸せな二人を(どちらも)今まで見たことがない」→「今の、付き合ってからの二人は、これまでの100万倍幸せに見える」と言っていることになるように思います。
セリフの流れを考えながら、どうしてそういう意味になるのかを考えてみると…
モニカは妹、チャンドラーは大学時代の友人なので、二人とは長い付き合いになる。これまでにそれぞれの幸せな様子を何度か見てきたけれど、二人が付き合ってからこれまでの happy の度合いと比較すると、そのたった 100万分の1 に当たるくらいの幸せな様子すら見たことがない、二人が一緒になってからの幸せと比較すると、それ以前の幸せなんて、その100万分の1にも値しない、と言っていることになり、つまりは、「付き合い出してからの二人は、それまでに各々が経験してきた幸せと比較すると、100万倍幸せそうに見える」と言っているセリフになるだろうと考えられる、ということです。
そもそも、million 「100万」という数字は、英語の誇張表現でよく使われますね。
これもそういう誇張表現の一種で、「君ら二人をよく知ってるけれど、二人が一緒になる前の幸せなんて、その 100万分の1にも満たないんだ、それくらい、付き合い出してからの二人はラブラブで超幸せなんだよ、今までの100万倍幸せなんだよ」と言いたいのだと思います。
その流れを受けて、Do you really want to throw that all away over a room? と言っているわけですが、that はそういう「これまでの人生とは比較にならないほどの 100万倍幸せな状態」を指し、それを throw (all) away 「(全部)捨てる」ことを君らは本当に望んでるわけ? (それも) over a room 「たった1つの部屋のことで?」と言っていることになります。
このセリフだけを見てみても、「たった1つの部屋をめぐって、それをほんとに全部捨てちゃいたいの?」と言っていることから、that が指している、1つ前のロスのセリフの内容が、「二人は今、最高に幸せである」と言っていることが想像できます。
ですからやはり、「その 100万分の1も見たことがない」→「今はこれまでの 100万倍、幸せである」という内容になるはずだと思うのです。
one-millionth as happy as you are のように、2つ目の as の後ろが you are 「今の、現在の君たち」であれば、もう少しわかりやすかったのでしょうが、「付き合い出してから今までの君たち」を意味する現在完了形になっているために、1つの文の中に2つの現在完了形が存在することになり、余計に構造が複雑に見えるところもまた、解釈がややこしくなる原因の一つでしょう。
そのため、since you got together がどちらの現在完了形とセットになっているのかがわかりにくいと言えるのかもしれません。
が、最初の I've never seen と結び付くにしては離れすぎていますし、逆に、as you've been だけでは期間が漠然としすぎていて、何と比較しているのかわかりにくいため、"as you've been since you got together" をひとまとまりと考えるのが自然でしょう。
付き合い出してから今までそういう超幸せな期間が存在した、そういう日々を、1つの部屋にまつわるたった1つの喧嘩であっさり捨てちゃうの?と言いたいがために、比較の対象として、(as) you've been since you got together という現在完了形を使った、ということだと思います。
正直、これを音だけで瞬時に意味を取ることは難しいので、わからなくてもちっとも気にすることはないですし、初めて見た時は「構造がよくわかんないな…」と「理解するのをとりあえずはあきらめる」ことも構わない表現だとも言えそうです。
が、もし時間が許せば、そして、何とかもう少し食らいついてみたいと思うのであれば、まずは前後の文脈から、「多分こういう意味になるはず」だと類推し、そういう意味に解釈可能かどうかを文法的なアプローチを使って解析する、という作業を進めていけばいいのでは、と思います。
それが、「英語を学ぶ」ということだろうと。
そのように「前後の文脈から意味を理解し、英文の構造を把握する力」を磨けば、読解力を高めることができます。
自分の経験から言わせていただくと、難しいと言われている英検1級のリーディングにも対応できる力がついたのは、ブログでセリフの解説を書くにあたり、こういう作業を繰り返してきた結果だと思っています。
いくら難しい単語をたくさん覚えているつもりでも、英単語を訳語の日本語に置き換えるだけでは、英語の文の持つ細かいニュアンスまではとても捉え切れません。
このフレーズは何を修飾していて、この副詞節はどこにかかっているのか…というような「構造」が理解できない限りは、その英文が理解できたとは言えない…私はそう思います。
ロスは、幸せを1つの部屋のことで捨てちゃうなんて…と言った後、また、silly や silliness という単語を使っていますね。
「まだ、その言葉を使いますかっ?!」みたいなくらい、しつこく使い続けていますが、とにかくロスは、「部屋1つのことで、同居をやめるなんて、まったくばかげてる!」というのを自分の説得の一番のポイントにおいている、彼の論拠・論点はそこにある、ということで、その執拗さがロスらしくて笑える、ということでしょうね。
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