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自分の都合で引っ越すチャンドラーは、ジョーイの生活費の負担を減らそうと援助を申し出ますが、ジョーイに「施しはいらない」と拒まれてしまいます。
そこでチャンドラーは、Cups 「カップス」というゲームをでっちあげ、どんなカードが出ても常にジョーイが勝ちになるようにして、当面必要な生活費分(1,500ドル)をカップスで勝たせてあげることに成功したのですが…。
その後、「カップスをロスとやって、1,500ドル負けた」と言いながらジョーイが帰ってきます。
負けたのなら、またもう一度俺とカップスをやろう、とチャンドラーが提案しているところ。
チャンドラー:All right, let's play one more hand! Just one more hand! (よし、もう1回やろう! あともう1回だけやろう!)
ジョーイ: No, no, no more! I cannot lose another dime! I'm serious this time. In, in fact, look. There's a, I wanna give you something, okay? And let me give it to you before I pawn it for Cups money. (He rolls the big white dog over) Now, I want you to have the big, white dog as a kinda of a, y'know, like a thank-you for being such a great roommate. (いや、もうこれ以上はいいよ! もう一文たりとも負けられないんだ! 俺は今度はマジだぞ。実際、ほら、俺はお前に渡したいものがあるんだ、いいか? 俺がカップスの金のためにそれを質に入れる前にお前にそれを渡させてくれ。[ジョーイは大きな白い犬を運んでくる] さあ、俺はお前にその大きな白い犬を持っていてもらいたい。ほら、そんなに素敵なルームメイトでいてくれたお礼としてさ。)
チャンドラー: I can't take the big, white dog! You love it! (その大きな白い犬はもらえないよ! お前はそれが大好きだろ!)
ジョーイ: It's "him." Not "it." (「彼」だよ。「それ」じゃなくて。)
チャンドラー: No, but wait, what if I bought it from you, y'know? And your nice gesture would be giving it to me at a reasonable price. Say (Gets choked up) $1,500? (いや、でも待ってくれ。もし俺がそれをお前から買ったとしたらどうなる? お前の素敵な意思表示が、それを俺にリーズナブルな値段で譲ってくれるだろう[お前の気持ち次第で、リーズナブルな値段で譲ってもらえることになるんだ]。ほら、[のどを詰まらせて] 1,500ドルとか?)
ジョーイ: Wait a second. I see what you're trying to do here! You, you're trying to give me money again! (ちょっと待てよ。(今)ここでお前がやろうとしてることがわかったぞ。お前は俺にまた金を渡そうとしてるんだな!)
チャンドラー: When did I try to give you money? (いつ、俺がお前に金を渡そうとした?)
ジョーイ: Before over there! (Points to the couch) With the bills! You tried to give me charity, I said no, you dropped it. Okay? Then we had a nice last night together. We had some fun, we gambled, nobody tried to give anybody any money! Now out of the blue, you start with the charity thing again! (前に、あそこでだよ! [カウチを指差す] 請求書を持ってた時に! お前は俺に施しをしようとして、俺はノーと言って、お前はそれをやめた。だろ? それから、俺たちは素敵な最後の晩を一緒に過ごした。いろいろと楽しんで、ギャンブルして、誰も、誰かに金なんか渡そうともしなかった! 今、出し抜けに、お前はまた、施しの件を言い出してる。)
チャンドラー: I'm just trying to help you out! Okay? I wanna make sure that you're okay. (俺はお前を助けてやりたいんだよ、いいか? お前が間違いなく大丈夫であるようにしたいんだ。)
ジョーイ: I will be okay! Look, Chandler, you gotta get it out of your head that I can't take care of myself. Okay? Look, I'm not gonna miss you helping me out with money. The only thing that I'm gonna miss... is you. And now the dog. (俺は大丈夫だよ! なぁ、チャンドラー、俺が一人ではやってけない、って考えるのはよせ。いいか? なぁ、俺は、お前が金のことで助けてくれなくなるのを残念に思ったりしない。俺がなくなって寂しいと思うのは…お前だよ。それと今は、その犬だ。)
dime は「10セント貨」ですから、I cannot lose another dime! を直訳すると、「あともう10セント失うことはできない」になるでしょう。
ドルよりも小さいお金の単位から「ごくわずかの金額」を指すことになり、あとほんの少しの金額も負けられない、負けて失うわけにはいかない、ということですね。
日本語でも「一銭ももうからない」とか「びた一文まけるわけにはいかない」などと言いますので、その感覚は同じですね。
それよりもお前に渡したいものがある、とジョーイは言っています。
pawn は「質(しち)」。put something in pawn なら「…を質に入れる」。
ここでは「(もの)を質に入れる」という他動詞で使われています。
カップスをする金を作るために質に入れてしまう前に、お前に渡しておきたいんだ、ということですね。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
pawn : [verb] [transitive] : to leave something valuable with a pawnbroker in order to borrow money from them (SYN: hock)
つまり、「質屋に価値のあるものを残すこと、質屋から金を借りるために」。
次の、I want you to have the big, white dog... というセリフの構造をシンプルにすると、I want you to have something as a thank-you for being... になるでしょう。
「being 以下の状態でいてくれたことへの感謝として、(もの)をお前に持っていて欲しい」ということになります。
「私の感謝のしるしとして」と言いたい場合に、as a token of my appreciation という表現もありますが、今回の、as a thank-you for... の方がシンプルで覚えやすい気はします。
日本語でも、「これはお前に持っていて欲しいんだ」みたいな言い回しがありますから、それと同じ感じの素敵なセリフだと言えるでしょう。
そう言われて、「それはもらえないよ、受け取れないよ。それはお前が大切にしてるものじゃないか」みたいに言うのも日本語の感覚と同じですね。こういう場合は、I can't take... のように take を使えばいいんだな、ということもわかります。
そんな風に感動的なやり取りをしながらも、ジョーイは細かい指摘をしています。
チャンドラーが、the big, white dog を it と表現したことに対して、その犬は、it じゃなくて、him と呼べ、と訂正しているわけですね。
アメリカでは自分のペットのことを it という代名詞で呼ばれると嫌がる飼い主が多く、he/she で呼んだ方がいいようです。
ジョーイはやはりこの犬がお気に入りなようで、まるで自分のペットのように、him と呼べ、と怒っているのですね。
犬を渡そうとするジョーイに、チャンドラーは、what if... 「もし…したらどうなる?」を使って、別の提案をしています。
your nice gesture would be giving it to me at a reasonable price. は無生物主語で、直訳すると、「お前のナイスなジェスチャー(意思表示)が、その犬を俺に、リーズナブルな(手ごろな、お値打ち価格で)譲ってくれるだろう」みたいになるでしょうか。
つまり、俺はその犬を買い取ろうと思うけど、お前が好意的な意思表示をしてくれたら、俺はぼったくりのようなムチャな値段じゃなくて、お得な価格で買い取ることができるだろう、みたいなことでしょう。
そう言った後、自分から、1,500ドルという金額を提示するチャンドラー。
お手頃価格みたいに言いながら、そんな高額を示したチャンドラーを見て、ジョーイは何かに気づいたようです。
わかったぞ、お前はまた俺に金を渡そうとしてるんだな?と言っていますね。
again 「また」という言葉から、カップスというニセのゲームを使ってジョーイにお金を渡そうとしていたこともバレたか…と思ったチャンドラーは、「また、って言ったけど、じゃあ、前はいつ俺が金を渡そうとした?」と尋ねています。
ジョーイは怒った顔で、「カウチのところで、請求書を持ちながら話してた時のことだよ」と言っています。
つまりジョーイは、チャンドラーが、生活費は当分俺が担当するよ、と最初に言い出した時の話を言っているのですね。
援助を申し出たのをジョーイが拒んで、チャンドラーはその話はもうやめて(drop)、その後、一緒に最後の晩を、キャンブル(つまりカップスというゲーム)をして楽しく過ごした、とも言っています。
nobody tried to give anybody any money! というセリフに「ジョーイはチャンドラーの意図に全然気づいていない」ことがよく表れています。
主語が nobody 「誰も…しない」という否定文になっていて、その否定の no が、anybody や any money にもかかる感覚で、「誰にも渡そうとしていない」「少しの金も渡そうとしていない」という意味になります。
「ゲームして楽しく過ごしていた時は、誰も金を渡すとかの施し話はしなかった」と言っているわけですが、その「ゲーム」が実は施しの隠れ蓑だったことをジョーイは全く気付いていないわけです。
out of the blue は「突然、出し抜けに」。
過去記事 フレンズ2-19その11 でも、チャンドラーに出て行けと言われた同居人のエディーが that's kind of out of the blue と言っていました。
この時も、チャンドラーはありとあらゆる手を使ってエディーに出て行くように言っていたのに、それにまるで気づかなかったかのようにトボけているセリフでした。
今回のジョーイのセリフは、カップスを楽しくやっている間はそんな気配さえ見せなかったのに、またその「施し」ってやつを始める気かよ、という感じですね。
out of the blue という言葉にも「ジョーイは全然気付いてない」感が出ています。
「普通は気付くやろっ!」とツッコミたくなるようなこの状況で、「全く気付いてない」部分を必要以上にこれでもかとセリフに盛り込んでいるところが、いかにもコメディー、なわけですね。
ジョーイを助けたいというチャンドラーに、ジョーイは、I can't take care of myself ってことを、頭から追い出せ(get it out of your head)みたいに言っています。
ジョーイは助けなしにはやってけない、って決めつけるのはやめて、そんな考えは捨て去ってくれよ、というところでしょう。
ジョーイは、I'm not gonna miss you helping... と言っています。
you は helping という動名詞の意味上の主語で、口語ではこのように、所有格の your ではなくて、目的格の you を使うことが多いですね。
miss は I miss you. 「あなたがいなくてさびしい」のように、「…がない・いないので寂しく思う」という意味でよく使われます。
この場合は目的語が「お前が俺を金で助けること」なので、「…がなくて残念だ」くらいの意味でしょう。
それを not で否定しているので、「お前が俺を金で助けてくれることがなくなる、それを残念だと思うわけじゃない」みたいなことですね。
その後、じゃあ、何を miss 、つまり「何がないことを寂しく、残念に思うか」を語るわけですが、それを普通に、I'm gonna miss... you. と言うのではなくて、The only thing that I'm gonna miss... is you. と言うところに、「生きたセリフ」が感じられる気がします。
「俺が miss することになる唯一のこと…それはお前だ」という感覚で、日本語で倒置にするのと同じような強調のニュアンスが出ます。
「お前が金を出してくれなくなることを残念に思うんじゃない、唯一寂しく思うこと、それはお前がいなくなることなんだ」という、ルームメイトとして感動的なセリフですね。
そのようなセリフを述べた後に、おまけのように「そして、今は、その犬も」みたいに付け加えるのがフレンズっぽいオチとも言えるでしょう。
感謝のしるしにお前が持っていてくれ、とか言いながら、やっぱりあげちゃうのは惜しいのね、みたいな面白さですね。
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