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前回の続きです。
「ラルフ・ローレンがコピー室で誰かとキスしてた」という話をレイチェルから聞いた上司のキムは、独自の調査(笑)で、その時間帯にコピー室にいた人物がレイチェルであったことがわかった、とレイチェル本人に告げます。
ラルフとキスしたのが自分だと疑われたと知って、レイチェルは必死に否定するのですが、
キム: Listen to me. If you think sleeping with Ralph is gonna get you my job, you are sadly mistaken. (私の話をよく聞いて。ラルフと寝ることであなたに仕事がもらえると思ってるのなら、あなたは(嘆かわしいくらいに)ひどく間違ってるわ。)
レイチェル: I, I don't want your job. I, I don't. Ohh, this is such a mistake. I did not make out with him. Nobody made out with him. I did not use my keycard yesterday. I don't even know how to use my keycard. (The elevator stops. Ralph steps on.) (私はあなたの仕事を奪いたいわけじゃありません。そんなことありません。あぁ、これは間違いなんです。私は彼といちゃついたりしてません。誰も彼といちゃつかなかったんです。私は昨日、自分のキーカードを使いませんでした。キーカードの使い方さえ知らないんです。[エレベーターが止まる。ラルフが乗り込んでくる])
キム: Hi, Ralph. (はい、ラルフ。)
ラルフ・ローレン: Hi, Kim. (Dead silence until Ralph gets off the elevator.) (やあ、キム。[ラルフがエレベーターを降りるまで、完全な静寂が続く])
キム: Yeah. Nothing happened. You could cut the sexual tension in here with a knife. (そうね。何も起こらなかったのね。(でも)ここでの性的緊張感は、ナイフで切れそうなくらいだった[それくらい張りつめていた]わ。)
If you think sleeping... の文は、文の構造を簡単にすると、If you think..., you are mistaken. 「もし…だと思っているのなら、あなたは間違ってる」ということになります。
何を思っているかということが、sleeping 以下で語られているわけですが、sleeping with Ralph は動名詞で「ラルフと寝ること」、get someone something は「人にものをもたらす、持ってくる」。
「ラルフと寝ることがあなたに私の仕事をもたらすことになるだろう」、つまり、「ラルフと寝ることで、私の仕事があなたの手に渡るだろう」みたいなことですね。
ラルフといい仲になって、そういう関係を結ぶことで、上司の私の仕事があなたのものになると思ってるとしたら…と上司であるキムは言いたいわけです。
sadly は「悲しいことには、残念ながら」という意味ですが、このように be mistaken と結びつくと、「嘆かわしいほど(間違っている)、ひどく・とんでもなく(間違っている)」という感覚になります。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
sadly [adverb] :
3. very or very much
例) They're sadly mistaken if they think they're going to win.
つまり、意味としては「非常に、とても」で、例文は、「自分たちが勝つと思っているのなら、彼らはひどく間違っている」。
この例文も、今回のセリフと同じように、if A think B is going to do something, A is sadly mistaken. の形になっていることから、このような構文や文脈で、be sadly mistaken はよく使われる、ということがわかります。
「彼と寝ることで、上司の仕事がゲットできると思ってるとしたら、大間違いよ」と、「その愚かさ加減を嘆く」ニュアンスが sadly には込められている気がします。
ちなみに、mistake という単語についてもう少し見てみます。
「あなたが間違えている」というニュアンスで、be mistaken という形が使われていますね。
mistake がよく使われるのは、まずは名詞の、make a mistake 「誤りを犯す、間違える」でしょう。
そして、mistake には動詞としての意味もあって、その場合は「…を間違える」という他動詞で、例えば、mistake A for B なら、「A と B を間違える、取り違える、思い違いをする」という意味になります。
そして、mistake を過去分詞にした形の mistaken は、「間違えて」という意味の形容詞として使われます。
ですから、「君が間違っている」と言いたい場合は、You mistake. ではなく、You are mistaken. の形になります。
そのため、今回のセリフでも、You sadly mistake. ではなくて、You are sadly mistaken. という「be動詞+(過去分詞形の)形容詞」の形が使われているのですね。
LAAD では、
mistaken [adjective]
1. [not before noun] if you are mistaken, you are wrong about something you thought you knew or saw
例)I had thought the job was done, but I was sadly mistaken.
There's mint in this sauce, if I'm not mistaken.
つまり、「(名詞の前にはつかない) もし人が be mistaken だとしたら、自分が知っている、または見たと思った何かについて間違っている、ということ」。
例文は、「その仕事は終わったと私は思っていたが、私は完全に間違っていた」。
「このソースにはミントが入っている、もし私が間違っていなければ」。
ちなみに、LAAD の mistaken の語義説明の例文にも(sadly の語義の例文と同様に)、be sadly mistaken というフレーズが登場していますので、be sadly mistaken というコロケーションで覚えるのが効果的であることがさらによくわかると思います。
mistake について少し長めに説明しましたが、You are wrong. 「君は間違ってる」と同じようなニュアンスで mistake という単語を使おうとする場合、日本人だと何となく、You mistake. と言いたくなってしまいそうだけれど、実際は、You are mistaken. のように過去分詞形を形容詞として使う形が用いられる、ということを再確認していただきたかったと言うことです。
そういう be mistaken という形を忘れないためにも、You are sadly mistaken. や I was sadly mistaken. という一言フレーズで丸ごと覚えておいた方が、間違えにくいし、とっさに口から出てくるようにもなる、ということですね。
仕事が欲しくてラルフといちゃついた、かのように誤解されていることがわかって、レイチェルは必死にそれを否定しています。
昨日は自分のキーカードを使わなかった、と言った後、even 「…さえ」という単語を使って、「自分のカードの使い方を知ってさえいない」とも付け加えていますね。
使ったとか言われても、そもそもそのキーカードの使い方すら知らないんです、ということです。
疑われないために「カードの使い方も知らない」と言っている感じもしますが、レイチェルのキャラを考えた場合に(コピーしたい時には、誰か他の人に頼んじゃいそうな雰囲気があるため)ほんとに使い方を知らないかもしれない…と思えてしまうところもまた、笑いどころなのかもしれません。
そんな会話をしていると、止まった階で、ラルフ・ローレンご本人がエレベーターに乗り込んできます。
ラルフがキムに軽く挨拶した後、エレベーターは沈黙に包まれ、別の階でラルフは降りて行きます。
彼が出て行った後に、キムは、Nothing happened. 「何も起こらなかった」と過去形で言った後、the sexual tension の話をしています。
sexual tension は文字通り「性的緊張」。
could cut は「切ろうと思えば切れる」というようなニュアンスでしょう。
つまり、キムは、ラルフ、キム、レイチェルが一緒にエレベーターの中にいた時に、その中ではものすごい性的緊張が走っていて、それはまるでナイフで切れそうな感じだった、それくらい、「ピリピリして、ピンと張り詰めた」緊張感が漂っていた、と言いたいようですね。
そのように、ピンと張った感じがナイフで切れそうなほど、というのは、日本語の「張り詰める」「緊張する」という言葉ともなじむ気がします。
LAAD では、
tension : NERVOUS FEELING [uncountable] a nervous, worried, or excited feeling that makes it impossible for you to relax
つまり、「神経質な(ナーバスな)、心配した、または興奮した気持ちで、人がリラックスするのを不可能にする気持ち」。
この最後の部分のセリフで、キムはまず、「何も起こらなかった」と言っていますが、これは恐らく、「ラルフとレイチェルの間には何も起こらなかった」と言っているレイチェルの意見を、いったんは認めたような発言をしている気がします。
「今の様子を見ていると、あなたたち二人の間には本当に何も起こらなかったようねぇ」とレイチェルの言い分を理解したかのように言っておいて、その直後に、「(でも)さっきの空気には、ナイフで切れそうなほどの性的緊張感が漂っていたけどね」と言ってみせて、「お互い素知らぬ顔をしていたけれど、二人の間に妙な空気が流れていたのを私はちゃんと感じ取ったわよ」と言いたいのだろうと思いました。
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