2012年03月30日

nature's way of doing フレンズ6-15その4

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「もしもあの時…だったら、こうなっていた可能性もある」という「もしもの世界」で話が進行しています。
その世界では、フィービーはメリルリンチで働くバリキャリになっているのですが、株取引で大損を出したショックで、心臓発作を起こしてしまい入院中。
[Scene: A hospital, Phoebe is recovering from her heart attack as Ross, Monica, and Chandler are there to comfort and support her.]
病院、フィービーが心臓発作から回復しているところ、フィービーを慰め、サポートするために、ロス、モニカ、チャンドラーがそこにいる。
ロス: Come on, Pheebs, it's not that bad! Y'know most people would be excited if they didn't have to work for a couple of weeks. (ねぇ、フィービー、そんなに悪いことじゃないよ! ほら、たいていの人なら、2、3週間働かないで済むとしたら、大喜びだよ。)
フィービー: Most people don't like their jobs. I love my job! I've been not working for three hours, and I'm already going crazy. I miss Joan. (たいていの人は自分の仕事が嫌いなのよ。私は自分の仕事が大好きなの! 私は(もう)3時間も働いてない状態で、すでに頭がおかしくなりそう。ジョアンに会いたいわ。)
モニカ: Honey, having a heart attack is nature's way of telling you to slow it down. (ハニー、心臓発作が起きるのは、自然が、あなたにのんびりするようにって言って[告げて]くれてるのよ。)
チャンドラー: I always thought having a heart attack was nature's way of telling you to die! (Phoebe glares at him.) But you're not gonna die. I mean, you are going to die, but you're not gonna die today. I wish I was dead. (心臓発作が起きるのは、自然がその人に死ぬって言ってるんだって、俺はいつも思ってたけど。 [フィービーはチャンドラーをにらむ] でも君は死なないよ。ほら、君は(いつかは)死ぬけど、今日は死なない。[いたたまれなくなって] 俺、死んじゃいたい。)

most people would be excited if they didn't... の文は、仮定法過去。
たいていの人、多くの人は、もし2、3週間働かないで済むとしたら、わくわくするだろう、大喜びするだろう、ということですね。
2、3週間も仕事を休める、ということは(よほどの理由がない限り)現実的にはあり得ないので、仮定法を使っているわけです。
普通は、たいていは、大手を振って仕事を休めるなら大喜びするもんだ、だから、今の状態ってそんなに悪くないだろ、とロスは励ましているのですね。

それに反発したフィービーは、Most people... I... という対比を使って、「たいていの人は…だけど、私は〜なの!」と、自分はそういう大勢の人たちとは考え・感覚が違うと主張しています。
みんなは自分の仕事が嫌いだから、休めると嬉しいけれど、私は自分の仕事が大好きだから、ちっとも嬉しくなんかないのよ!ということですね。

I've been not working for three hours は、継続を表す現在完了進行形。3時間、not work の状態がずっと続いている、という感覚。
3時間働いていないだけで、すでにクレイジーになりかけてる、と言っています。

I miss Joan. の Joan は、メリルリンチでのフィービーの部下の名前ですが、この人物に関しては、エピソードの前半で以下のセリフがありました。

携帯が鳴るのですが、フィービーは、まずはタバコに火をつけてから電話に出ます。
フィービー: Hang on! Hang on! Hang on! (Answering the phone.) Go!! Who's this? (Listens) Oh okay, you're gonna like working for me. What's your name? (Listens) What kind of name is Brendy? I... Whatever... Stop talking! All right, from now on your name is Joan. You can pick your own last name. (ちょっと待って! ちょっと待って! [電話に出る] ゴー! これは誰? [電話を聞いて] あぁ、わかった、あなたは私の下で働きたいのね。あなたの名前は何? [電話を聞いて] ブレンディってどんな名前よ? 私は…何でもいいわ。話すのをやめて! いいわ、今からあなたの名前はジョアンよ。名字はあなたが選んでいいわ。)

つまり、この人の本当の名前は Brendy なのですが、フィービーはその名前が気に入らなかったらしく(笑)、勝手にその人の名前を Joan にしてしまったのですね。
そういうセリフが先に出ていたために、ここで「あぁ、Joan がいなくて寂しい、Joan に会いたい」と言われても、「それは、フィービーが勝手につけた名前だろっ」とツッコミを入れたくなってしまう、という仕組みです。
忘れた頃にその話題が再登場する、というお笑いの王道ですね。
もしもの世界のフィービーは、忙しいビジネスパーソンになっているので、携帯がよく鳴るのですが、そのたびに、なぜかまずはタバコに火をつけて、さぁ、話せるわよ、という時には必ず、Go!! と言うのには笑ってしまいます。

モニカは友人らしく、フィービーをなだめるようなことを言っています。
having a heart attack is nature's way of telling you to slow it down を直訳すると、「心臓発作になるのは、あなたにのんびりするようにと nature が言う方法だ」みたいになるでしょうか。
「心臓発作が起こるのは、nature があなたに slow it donw しなさい、って言ってるのよ」みたいなことですね。

この nature's way of doing というのは決まり文句のようで、LAAD (Longman Advanced American Dictionary) にも出ています。
LAAD では、
something is nature's way of doing something : used to say that something is a natural process that achieves a particular result
例) Disease is nature's way of keeping the population down.

つまり、「何かが特定の結果を達成する自然な過程・成り行きである、と言うために用いられる」。例文は、「病気は人口を低く抑えるための自然の方法・過程である」

主語が自然にそのような結果を引き起こす、という感覚でしょう。

また、nature つながりの表現として、the call of nature という言葉もあります。これは「生理的要求、尿意」のことですね。
LAAD では、
the call of nature : (informal) a need to urinate (= pass liquid from your body)
つまり、「(インフォーマル) 小便をしたいという(生理的)要求」

どうして、the call of nature も同時に説明したかと言うと、nature's way of telling you to... には、「(尿意などと同じような)肉体的・生理的要求があなたにそう言っている」という感覚も感じられる気がしたからです。

心臓発作を起こしたのは、心臓が赤信号を出している、心臓がちょっと休ませてと言っている証拠よ、みたいな感覚で、身体の機能という nature が、あなたにそう教えてくれているの、と言っているニュアンスを感じられるように思うのです。
自然、というのは、緑がいっぱいの自然、というよりも、「自然の摂理」とか「人が生物として生きている仕組み」みたいな感覚に近いのでしょうね。
今回は特に、nature's way of telling you to という形なので、「自然の摂理がそうしろと言っている」、つまり、「自然のお告げ」みたいなニュアンスなんだろうと思います。

nature's way of doing something というお決まりフレーズを使って、モニカはフィービーのワーカホリック状態をいさめるのですが、チャンドラーは同じフレーズで、別のことを言っています。
「モニカはそう言うけど、俺はずっと、心臓発作は、nature が、お前は死ぬよと言っているんだと思ってた」みたいな感覚ですね。
nature が教えてくれる兆候、サインだと言うならば、心臓発作は心臓がもうすぐ止まるってサインじゃないのか?みたいな、ブラックなジョークですね。
今は元気にしゃべっているとは言え、心臓発作を起こした直後の人間に言う言葉ではありませんから、フィービーはチャンドラーをにらんでいます。
それにビビったチャンドラーは、何とかフォローしようとしますが、どんどん深みにハマっていく様子がチャンドラーらしくて面白いです。
「心臓発作は、もうすぐ死ぬっていう自然のお告げだろ」みたいに言ってしまったので、「いや、別に俺はフィービーが死ぬって言ってるわけじゃないぞ、フィービーは死なないよ」と慌ててフォローしたのですが、「死なないって言っても、不死身の身体じゃないから、やっぱりいつかは死ぬんだけどね」と言い直し、「いつかは死ぬけど、今日は死なない、って言ってるんだ」と付け加えます。
いろいろ表現を言い変えてみたところで、die という言葉を連発するのは、心臓発作後の患者には不適切な発言ですから、どんどん泥沼にはまっていく感じです。
die という単語を何度も言って、もうこれ以上フォローできないとわかった後に、I wish I was dead. と言うのがチャンドラーらしいです。
これも仮定法で、「現在の事実に反する願望」ですね。
今自分はピンピンしているけれど、不適切発言をしちゃって窮地に立たされてる、俺、死にたい、死んじゃいたい…みたいな感覚です。

フレンズ1-2その1 でも、I wish I wad dead. というフレーズが出ていました。
紙を丸めてその辺に捨てたことを冗談交じりに説明していたら、親が来るのでピリピリしているモニカが激怒したので、最後には、I wish I was dead. と言うしかなかった、みたいなセリフでした。

どちらの場合も、みんなの視線が冷たくて居心地が悪いので、「もう、俺、消えちゃいたい」みたいな感じですね。


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posted by Rach at 18:39| Comment(2) | フレンズ シーズン6 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月27日

もしもの世界を押韻で語る フレンズ6-15その3

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前回の続きです。
自分の顧客に「株の才覚がある」と言われたのに、そういう仕事に就かなかった理由を問われたフィービーは、その理由を説明します。
フィービー: Because at that time, you see, I thought everything that rhymed was true. So I thought y'know that if I'd work with stocks, I'd have to live in a box, and only eat lox and have a pet fox. (だってその時は、ほら、韻を踏むもの全てが真実だと思っていたから。だから私は思ったの、もし私が株(ストックス)の仕事をしたら、箱(ボックス)に住んで、スモークサーモン(ロックス)だけを食べて、ペットのキツネ(フォックス)を買わないといけないだろう、って。)
ロス: Hey, do you guys think if all those things happened, we'd still hang out? (ねぇ、今言ったこと全部がもし起こったら、僕たちはまだ(こうやって)一緒に過ごしてるかな?)

理由を問われたフィービーは、Because を使ってその理由を説明しています。
長いセリフが続きますが、それを聞いた後のチャンドラーが、「は? なんじゃそりゃ?」と言いたそうに、眉をひそめて怪訝な顔でフィービーを見ていますので、いつもの「フィービーっぽい、よくわからない理由」だと言うこともわかります。
フィービー自身が言っているように、フィービーの語る言葉が韻を踏んでいます。
「あの当時は、韻を踏む(rhyme)もの全てが真実だと思っていた」と言って、その後、stocks, box, lox, fox という、最後が、-ks 「クス」の発音で終わる言葉を4つ使っていますね。
脚本的には、株(ストックス)繋がりで、クスのつく言葉を探して文章を作ってみた、という感じですが、その単語で「住むところ、食べるもの、飼っているペット」を言い表したのはお見事と言えるでしょう。
「衣食住」と完全に一致しているとは言い切れませんが、ほぼそれに当たるような事柄を全部、押韻させたところが、なかなかやるじゃん!という感じで、観客にとっては、大爆笑というよりは、ほぉ〜、なるほどぉ〜、うまくまとめたね、みたいに感心させるタイプのセリフになるように思います。

ちなみにこの中で日本人に知名度が低い(?)単語は、lox でしょうね。
lox は「鮭の燻製、スモーク・サーモン」。
LAAD では、
lox [noun] [uncountable] : salmon that has been treated with smoke in order to preserve it
つまり、「保存するために、煙で処理された鮭(サーモン)」。

辞書にあるように不可算名詞なので、eat lox のように不定冠詞 a をつけずに使われているわけですね。
a box, a pet fox がそれぞれ a がついているのと比べてみると、よりそれがはっきりするように思います。
鮭・サーモンを表す salmon という単語は、可算名詞 a salmon だと「鮭(という魚1匹)」を指し、無冠詞 salmon で使うと、「(食用としての)鮭(の肉)」という意味になります。
lox は「食用として燻製したサーモン」なので、食用の salmon としての意味しかない(魚という生物としての個体を表す意味がない)ので、常に不可算名詞扱い、ということなのでしょう。
フレンズ2-23その14 でも、lox という単語が出てきたのですが、その時も、pox という単語との押韻で使われていました。

ロスは「もし…なら、僕たちは〜だと思う?」とみんなに尋ねています。
if all those things happened の all those things は、フレンズのメンバーそれぞれが「もし自分があの時…したなら」と仮定した事柄のこと。
hang out はフレンズ頻出フレーズで、「(…と一緒に)時間を過ごす」。
大人の彼らが友人たちと一緒に遊んで時間を過ごす、という感覚です。
そういう仮定がすべて現実に起こったとして、僕たちは今でもこんな風に hang out してると思う?という問いかけですね。
どうなってるだろう?と顔を見合わせるフレンズを映して、オープニングシーンに突入します。

今回のオープニングクレジットは非常に珍しいパターンで、いつもの噴水の前にいるフレンズのメンバーは今回のテーマとなる「もしも…だったら」の世界の姿をしています。
劇太りのモニカを筆頭に、それぞれの違った姿が見られるのが楽しいですし、噴水以外のシーンも、「もしも」の姿の映像が次々と映ります。
今回のエピソードのタイトルは、The One That Could Have Been ですが、この、could have been も、「もしも(あの時)…だったら、〜だったこともありえただろう、〜だったという可能性もあっただろう」というニュアンスですね。
SFで言うと、枝分かれしたパラレルワールドでの、もう一つの現実、みたいな感じになるでしょう。
オープニング後は「もう1つのありえた世界」の話が始まります。
このエピソードは2話連続になっていますが、ドラえもんの「もしもボックス」を連想させるような、こういう「もしも」ネタはやはりファンには人気が高いようですね。


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posted by Rach at 18:02| Comment(1) | フレンズ シーズン6 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月23日

もしも〜だったらどうなってただろう フレンズ6-15その2

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元婚約者のバリーが離婚するというニュースを持ってきたレイチェルは、「もし私がバリーと結婚していたら、私の人生はどれくらい違っていたかしら?」と言います。
それに応えるように、フレンズのメンバーそれぞれが、「もし自分が…していたら」という話を始めます。
チャンドラー: What if I had had the guts to quit my job? I'd probably be writing for the New Yorker, being paid to be funny. But my job's fun too. I mean, tomorrow, I-I don't have to wear a tie. (もしも俺に自分の仕事を辞めるガッツがあったならどうなってたかな? 俺は多分、ニューヨーカーに(記事を)書いているところだろうね、面白いということで給料をもらいながら。でも、俺の(今の)仕事も楽しいよ。ほら、明日、俺はネクタイを締めなくていいんだ。)
フィービー: What if I'd taken that job at Merrill Lynch? (もしも私がメリルリンチのあの仕事に就いていたらどうなっていたかしら?)
ロス: What?! (何だって?)
レイチェル: Merrill Lynch? (メリルリンチ?)
フィービー: Yeah, I had a massage client who worked there and-and he said I had a knack for stocks. (ええ、私のマッサージのお客さんにそこで働いている人がいて、彼は言ったのよ、私には株の才覚があるって。)
レイチェル: Well, why didn't you take the job? (じゃあ、どうしてあなたはその仕事に就かなかったの?)

have the guts to は「…する勇気・根性・ガッツがある」。これは日本語でも「ガッツ」と言うのでわかりやすいですね。
New Yorker は雑誌の名前。
Wikipedia 日本語版: ザ・ニューヨーカー
Wikipedia 英語版: The New Yorker

write for the New Yorker は、その雑誌のために記事を書くライターの仕事をする、という感覚になります。
後半の being paid to be funny は分詞構文で、直訳すると、「funny であることにお金を支払われながら」という感じでしょう。
つまり、面白いことで給料がもらえる、金儲けができちゃう、みたいなことですね。
ジョークや面白いことが好きなチャンドラーとしては、雑誌に記事を書くという職業は、面白いということでお金が稼げちゃう、最高に楽しい仕事のように感じるということです。

その後、「まぁ、俺の今の仕事も楽しいんだけどね」と言って、その仕事の内容を説明するのですが、それが「明日、俺はネクタイをつける必要がない」。
明日はオフィスがノーネクタイデーで、ネクタイをしなくていい日なんだ、ということですが、楽しいことってそれ?みたいに聞いている方は思いますよね。
ノーネクタイデーが楽しいと思えるくらいに、実に面白くない職場であり仕事であると言っていることになるでしょう。

ちなみに、チャンドラーのセリフの時制に注目してみましょう。
What if は「もし…だとしたらどうなるだろうか?」という頻出フレーズで、ここでは、What if I had had the guts のように、「had+過去分詞形」が使われています。
これは「過去の事実に反対の仮定」を示す、「仮定法過去完了」ですね。
「もしも(過去に実際に起こった事実に反して)あの時、…だった/…していたなら」という仮定になります。
仮定法過去完了の典型的な形としては、
条件節 If I had+過去分詞 「もしあの時…だったなら」
帰結節 I would have+過去分詞 「…しただろうに」
の形が挙げられます。
その場合は、「(過去に)…だったなら、(その過去では)…しただろう」と言っていることになりますが、今回のチャンドラーのセリフは、「過去に仕事を辞めるガッツがあったなら、今頃俺は…しているだろうね」というように、「"過去が"今とは違っていたら、"現在は・今は"こういうことをしているだろう」という、条件節と帰結節の間に時制のずれがあります。
そのため、条件節は、If I had+過去分詞の「仮定法過去完了」、帰結節は、I would (be writing) の「仮定法過去」が使われている、という仕組みです。
その後のフィービーのセリフの、What if I'd taken that job も、'd は、had の略、つまり、if I had taken という「仮定法過去完了」だということですね。

チャンドラーの「もしも…だったなら」の言葉を受けて、フィービーも自分の話をしています。
take a job は「仕事を(引き)受ける、仕事に就く、就職する」。
フィービーが「メリルリンチのあの仕事に就いてたら…」と言うので、みんなはびっくりして、「メリルリンチですって?」みたいに聞き返しています。
今はマッサージ師をしているフィービーと、そういう金融業界との接点が見当たらない、金融業に携わっているフィービーがイメージできないからでしょうね。

knack は「こつ、技巧、要領、才覚」。
have a knack for で、「…のこつ・要領を心得ている」という意味になります。

LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
knack [noun] [singular] (informal) : a natural skill or ability that you have to do something well
a knack for (doing) something
例) a knack for languages
例) Keller has a knack for explaining technical concepts simply.

つまり、「何かをうまく行なうために持っている生まれながらの技能または能力」。
例は、「言語の才覚」。「ケラーは専門的概念をシンプルに説明するこつを心得ている」。

自分のマッサージの顧客にメリルリンチの社員がいて、その彼が「フィービーは株のこつを心得ている、株に才覚がある」と言ってくれたとフィービーは説明します。
ちなみに、Why didn't you take the job? は「どうしてその仕事に就職しなかったの?」と理由を尋ねる文章ですが、これが現在形の Why don't you take the job? だと「その仕事に就職したらどう?」と「提案」する文章になる、ということも思い出しておきたいところです。
その後、フィービーが理由を説明するのですが、続きは次回にいたします。


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posted by Rach at 10:06| Comment(5) | フレンズ シーズン6 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月20日

もう少しで結婚するところだった人 フレンズ6-15その1

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シーズン6 第15話
The One That Could Have Been Part 1 (空想世界でつかまえて Part 1)
原題は「こうだったこともありえた話 パート1」


[Scene: Central Perk, everyone is there as Rachel enters.]
セントラルパーク。フレンズたちがそこにいると、レイチェルが入ってくる。
レイチェル: Hey, you guys. Guess what? Barry and Mindy are getting a divorce. (ねぇ、みんな。何だと思う? バリーとミンディーが離婚するのよ。)
モニカ: Oh, my God! (まあ、なんてこと。)
フィービー: Wow! (わぉ。)
ジョーイ: (To Ross) What is the matter with you?! ([ロスに] お前は一体どうしたんだよ?)
フィービー: No! Barry and Mindy. (違うわ! バリーとミンディーよ。)
ジョーイ: Oh, sorry. I hear "divorce," I immediately go to Ross. (To Rachel) Who-who's Barry and Mindy? (あぁ、ごめん。「離婚」って聞くと、すぐにロスに行っちゃうんだ[意識が向かっちゃうんだ]。 [レイチェルに]バリーとミンディーって誰?)
レイチェル: Barry was the guy that I almost married and Mindy was my best friend. (バリーは私がもう少しで結婚するところだった人で、ミンディーは私の親友だった人よ。)
ジョーイ: Ohh-oh, wasn't he cheating on you with her? (あぁ、彼は君を裏切って彼女と浮気してたんじゃなかったっけ?)
レイチェル: Yeah, but that just means that he was falling asleep on top of her instead of me. (ええ、でもそれはただ、私の代わりに彼女の上で眠り込んでいたってだけのことよ。)

レイチェルがニュースを持って、セントラルパークに入ってきます。
Barry and Mindy are getting a divorce. の「現在進行形」は、「すでに決定していて確実な予定」を表すニュアンスですね。
「バリーとミンディーが離婚する」と聞いた途端、ジョーイはロスに、What is the matter with you? と怒った顔で言っています。
フィービーに指摘され、謝るジョーイですが、「離婚と聞くと、またロスのことかと思っちゃって」という理由がフレンズっぽくて面白いですね。
I hear "divorce," I immediately go to Ross. を直訳すると、「俺が「離婚」(という言葉)を聞く、俺は即座にロスに行く・向かう」みたいな感じになるでしょうか。
「離婚」という言葉を聞いた途端、ロスに意識が向く、ロスのことだと考えてしまう、みたいな感覚でしょう。

バリーとミンディーって誰?と尋ねるジョーイに、レイチェルは説明をします。
the guy that I almost married は「私がもう少しで結婚するところだった人」。
これまでのフレンズでも何度か出てきましたが、almost+過去形で、「もう少しで…するところだった」(実際には…しなかったけれど、その直前までいっていた)という意味になるんでしたね。

Wasn't he cheating on you with her? について。
cheat on A with B は「A を裏切って、B と浮気する」。
A が妻や正式な(?)彼女で、B が浮気相手になります。
つまり、「彼は、あなたを裏切って、彼女と浮気していた人?」と尋ねていることになるのですね。
ジョーイは、バリーとミンディーって誰だっけ?と名前をすっかり忘れているわりには、過去の人間関係はしっかり覚えていたようで(笑)、「結婚寸前まで行った人と、親友」と聞いて、「あぁ、元婚約者が親友と浮気して結婚したっていうあのカップルか」とピンと来たようです。
レイチェルは、「親友と浮気された」ということをあまり言いたくなかったので、わざと「浮気」の部分は言わずにただ「彼女は親友」と表現したのでしょうが、その「浮気」の部分をダイレクトに聞き返されてしまった、ということですね。

かと言って、そういうことを言われたから、ショックを受けたり悲しんだりしている様子もなく、レイチェルはさばさばした感じで、「私を裏切って彼女と浮気した、っていうのは確かにそうだけど、それはただこういうことを意味しているだけよ」みたいに言っています。
それが何を意味するかは、その後、語られていますが、「彼(バリー)が私の代わりに彼女の上で fall asleep していた」ってことを意味するだけ、みたいな発言をしていますね。
fall asleep は「眠り込む、寝入る、寝てしまう」で、asleep 「眠っている」+fall 「状態になる、陥る(おちいる)」という感覚。
ちなみに、sleep 「寝る、眠る」という動詞は、sleep with someone = have sex with someone のように、「エッチする」という意味で使われますよね。
ですから、ここでレイチェルが、He was sleeping with her./He slept with her. と表現したのなら、まさに「彼は彼女とエッチしていた/エッチした」と言ったことになるのですが、レイチェルはそこをわざと、he was falling asleep と表現することで、「彼ってエッチの後、すぐに女の子の身体の上で、グーグー眠り込んじゃうのよね」と言いたかったのかな、と思います。
親友とエッチされていやだった、とかの意識は今のレイチェルにはあまりなく、「私の上でグーグー寝るか、彼女の上でグーグー寝るかの違いだけよ」みたいに、エッチの後の余韻やその後の雰囲気を楽しむこともなく、あっという間に(それも自分の身体の上で)疲れて寝てしまうバリーのことを、「ことが済むやいなやとっとと寝てしまう、ロマンティックのかけらもない人だったのよね」みたいに、ちょっとバカにしたような発言をしているように感じました。


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posted by Rach at 08:55| Comment(0) | フレンズ シーズン6 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月14日

絶対に起こらないと知るのはいやだ フレンズ6-14その6

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レイチェルの妹ジルは、ロスとデートするのですが、やはり元カノのレイチェルはそのことに耐えられず、ロスに「妹ジルとはもうデートしないで」と頼みます。
そのことを知ったジルは、「私はレイチェルの指図は受けないわ」と言って、レイチェルへの当てつけにロスを誘惑しようとします。
「私への仕返しに、ジルはあなたを利用してるのよ」とレイチェルは電話でロスに警告するのですが、その直後、ジルがロスにキスしてきて…。
そこで起こったことを、ロスはレイチェルに語っています。
ロス: Look, I uh, I tried not to kiss her, okay? (ねぇ、僕はジルにキスしないように(努力)したんだよ、いいかい?)
レイチェル: Well, it doesn't sound like it! I mean, it's pretty easy not to kiss someone. You just don't kiss them! See, look at us right now, not kissing! (まぁ、そんな風には思えないわ! だって、誰かにキスしないってことはすっごく簡単なんだもの。ただその人にキスしなければいいだけよ! ほら、今の私たちを見て、キスしてないわ!)
ロス: Let me finish, okay? She started kissing me and-and I didn't stop it. I guess I-I just wasn't thinking. (最後まで言わせてよ、いい? ジルが僕にキスし始めて、それで僕はそれを止めなかった。多分、僕はただ何も考えてなかったんだ。)
レイチェル: Yeah, that's right, you weren't thinking! Y'know what? Let me give you something to think about! (She pulls up her sleeves and steps towards him.) (ええ、その通りよ、あなたは何も考えてなかったのよ! いい? 何か考えるべきことを私があなたに与えてあげるわ! [レイチェルは袖をまくり上げ、ロスに一歩、歩み寄る])
ロス: Oh wait, hold on! But then I started thinking and I stopped the kissing. (あー、待って、待ってよ! でもそれから僕は考え始めて、キスするのをやめたんだ。)
レイチェル: Oh, well, thank you for taking your tongue out of my sister's mouth long enough to tell me that. (あら、そう。私の妹の口から舌を取り出してくれてありがとう。今のことを私に話せるほど長い時間をかけて。)
ロス: Look I-I realized if anything were to happen with me and Jill then nothing could ever happen with us! (ねぇ、僕は気づいたんだ、もし僕とジルとの間に何かが起これば、そしたら、僕たちにはこれから何も起こらないだろうってことに!)
レイチェル: What? (何ですって?)
ロス: No, I mean, look, I don't know if anything is ever going to happen with us, again, ever. But I don't want to know that it-it never could. So I stopped it and she got mad and broke my projector. (違うよ、僕が言いたいのは、これから僕たちにまた、何かが起こるかどうかはわからないけど、それが絶対に起こらないということを知りたくないんだ[絶対にそれが起こらないと知るのはいやだ]。だから、僕はキスをやめたんだ。で、ジルは怒って、僕のプロジェクターを壊した。)
レイチェル: Wow. I, I don't even know what to say. Thank you. (Gently kicks him.) (まぁ。何て言ったらいいかわからないわ。ありがとう。[優しくロスを蹴る])
ロス: You're welcome. (Gently kicks her back.) (どういたしまして。 [優しくレイチェルを蹴り返す])

ジルが自分にキスしてきた…とその時の様子を語るロスですが、驚くレイチェルに対して、I tried not to kiss her. 「僕は彼女にキスしないようにした、キスしないように努力した」と言っています。
彼女がキスしてきたのを、そのまますっと受け入れたわけじゃなくて、本格的なキス状態にならないように努めた、みたいな感じでしょう。

sound like は「…のように聞こえる」なので、「その話を聞いていると…であるように思える」という感じ。
ですから、It doesn't sound like it! は、「あなたの話を聞いていると、あなたが説明したように、「キスしないようにトライした」ようには聞こえないけど?」と言っていることになります。
「人がキスしないってことはすっごく簡単なことよ、ほら、私たちも今、キスしてないわけだし!」みたいに怒るレイチェル。
実際にキスすることになったのは、あなたの方もその気があるからそうなったに決まってる、キスに至る前に止めることもできたはず、と言いたげな感じですね。

そのように抗議されたので、ロスは「僕の説明を最後まで言わせて」と、Let me finish. と言った後、「その時の僕は彼女がしてきたキスを止めようとしなかった。多分、何も考えてなかったんだと思う」と説明します。
「何も考えてなかったから、拒む行動を起こさなかった」みたいな話を聞いて、レイチェルはロスを殴ろうかというように、両腕をまくってロスに迫り、「何も考えてなかったのなら、今から考えるべきことをあげましょうか?」みたいに言います。
痛い思いをさせて、そのボーッとしている頭を覚ましてあげましょうか?みたいなことでしょうかねぇ?

ロスは、「キスされた時は何も考えていなかった、考えられなかったけれど、その後、考え始めて、キスをやめた」と言います。
それに対して、レイチェルは、「まぁ、私の妹の口からあなたの舌を取り出してくれてありがとう」みたいに皮肉を言っていますが、このセリフにある long のニュアンスを和訳に出すのがちょっと難しいなと感じました。
long enough to tell me that を直訳すると、「そのこと(今ロスが語った話)を私に言うのに十分なほど長く、そのことを私に言えるほど長く」みたいになるでしょうか。
そして、その long は、take your tongue out of my sister's mouth long のように、take という動作を修飾する副詞になるわけですね。
long には、「長さが長い」と「時間が長い」の意味が考えられますが、「そのことを私に話すことができるほど長く」ということだとやはり「時間」の方だと考えるのが妥当でしょう。
take A out of B 「B から A を取り出す」という動詞と、long 「長く」という副詞とが、なんとなく「合わない」気もするのですが、長い時間をかけてその動作をする、というような意味で使っているのかなぁ、と。

「まぁ、キスするのをやめてくれてありがとう」というのも結構な皮肉だと思うのですが、その後に、long enough to tell me that を付け加えることで、「キスされてから、キスをやめるまでの話が結構長かったけど、それだけの時間をかけて、やっとキスをやめてくれて、ありがとう」→「私に語るそういう経過を経て、やっとキスをやめたってわけ? キスをやめるまでに時間がかかりすぎじゃないの!」と非難している気持ちを込めているのかなと思います。

レイチェルは恐らく、You took a long time to stop the kissing. 「そのキスをやめるのに、ずいぶん時間がかかったわね」みたいなことを言いたかったのかなぁ、と。
それを、stop the kissing と言う代わりに、わざと「”私の妹の”口から、あなたの舌を取り出す」みたいにリアルで生々しい(笑)表現を使って、舌を入れたディープキス(French kiss)をやっとそこでやめてくれたわけね、みたいに言っているわけでしょう。
こんな風に、ジルとキスしたことをネチネチしつこく責めているのは、まさに「カノジョのヤキモチ」みたいな感じで、レイチェルのロスに対する気持ちがよく出ているなぁ、と思います。

その後、ロスは、あることに気付いた、と言っています。
「もし何かが僕とジルの間に起これば、僕たち(僕と君の間)には何も起こらないだろう」みたいな仮定ですね。
妹と恋愛関係になってしまったら、もうレイチェルと元の関係に戻ることはない、ということです。
ロスはさらに説明を付け加えて、「これから僕たちに何が起こるかはわからないけど、そういうことが絶対に起こらないって思いたくないんだ」みたいに言っています。
レイチェルと今すぐ復縁したい、とかそういうんじゃないし、いつかきっとよりが戻ると思ってるわけでもないけど、その可能性を残しておきたい、その可能性をゼロにするようなことはしたくない、と言っていることになります。

ロスに対しては複雑な気持ちを抱いているレイチェルも、その言葉にはホロリとしたようですね。
I don't (even) know what to say. 「何を言うべきかわからない、何と言ったらいいかわからない」は、まさに、自分の気持ちをどう表現したらいいかわからない、という感覚。
感動して言葉もない、という場合に使うことも多いですね。


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posted by Rach at 17:14| Comment(20) | フレンズ シーズン6 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月12日

今のは本気で言ってなかったの? フレンズ6-14その5

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前回の続きです。
泣けないことを気にするチャンドラーに、モニカは「私たちに子供ができた時、子供が巣立って行った時、そんな時にたとえあなたが泣かなかったとしても、私は気にしないわ」と言います。
それを聞いて安心したらしいチャンドラー。
チャンドラー: Okay. Well, I won't uh, worry about this anymore then. (よーし、それじゃあ、俺はこの件についてはもうこれ以上悩まないことにするぞ。)
モニカ: And then, you know, if I die... from a long illness... and you're writing out my eulogy and you open a desk drawer and you find a note from me that says: "I will always be with you" and you still can't shed one tiny tear? I know you'll be crying a river inside. (そして、それから、ほら、もし私が死んだら…長い間わずらっていた病気で死んで…あなたは私への賛辞の言葉(弔辞)を書いていて、机の引き出しを開けると私からの手紙を発見するの。そこにはこう書いてあるわ。「私はずっとあなたのそばにいる」。そして、それでもあなたはわずかな一粒の涙も流すことができないのね? あなたが心の中で川のような涙を流しているってことはわかってるわ。)
チャンドラー: Aww, I love you so.... (あー、君をすごく愛してるよ…)
モニカ: What is wrong with you?! (あなた、どこかおかしいんじゃないの?)
チャンドラー: What?! (何?)
モニカ: What?! You can't shed a tear for your dead wife? Now, I left you a note from the beyond! (何、ですって? あなたは死んだ妻のために一粒の涙も流せないの? ほら、私はあの世からの手紙をあなたに残したのに!)
チャンドラー: So you didn't mean any of that? (それじゃあ、今までのはどれも、本気で言ってなかったの?)
モニカ: No, you robot! (本気じゃないわ、このロボットめ!)

「あなたが泣かなくても構わない」と言い切ったモニカの発言を聞いて、チャンドラーはやっと安心したようで、「モニカがそこまで言ってくれるなら、俺はもう安心した。今後は”泣けない俺”のことは気にしないことにするぞ」と言って、これで一件落着かと思いきや、モニカはさらに、別の例を挙げています。
こういうところが、「いかにもモニカらしい」ところで、笑ってしまいますね。
if I die と言う時に、モニカは真剣な目つきでチャンドラーを見ています、「じゃあ、これならどうかしら? あなたはこれでも泣かないって言うつもり?!」みたいな挑戦的な様子が感じられる顔つきです。
「あなたが泣かなくても、私は平気よ、だって愛してるもん」などと、しおらしいことを言っていたのは、やはりただのポーズだった、ということが、ここで観客にはわかったようですね。
「あなたはあなたのままでいいのよ、ハニー」みたいに言いながら、これでもか、これでもか、と泣ける未来図をあれこれ挙げて、「やっぱり、そういうのを想像すると泣けちゃうね」と言わそうとしているわけです。

die from a long illness は、「長い病気がもとで死ぬ」ということですから、長い闘病生活が続いた後に、看病もむなしく亡くなってしまった、という感覚。
eulogy は「賛辞」。この場合は、お葬式の弔辞のニュアンスでしょうね。

LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
eulogy : a speech or piece of writing in which you praise someone or something very much, especially at a funeral
つまり、「誰かや何かを非常に賞賛するスピーチや文書、特に葬式での」。

和英で「弔辞」を調べると、a message of condolence, a memorial address, a funeral address などが出ていて、eulogy は載っていなかったのですが、上のロングマンの「特に葬式においての」という説明からも、「弔辞」と訳して問題ないと思います。

チャンドラーがモニカへの想い、モニカとの日々を綴っている時に、ふと引き出しを開けると、そこにはモニカからの手紙が入っている…という状況ですね。
shed は -ed で終わっているので過去形みたいに見えますが、このセリフの場合は、can't の後に続いていることからもわかるように、shed は原形で、動詞の活用は、shed - shed - shed と全部同じ形になります。
shed は「(涙・血など)を流す、こぼす」という意味で、shed tears で「涙を流す」。

I will always be with you. 「私はこれからもいつもあなたと一緒にいるわ」というメッセージが書いてあるのを見た時、still 「それでもなお」 あなたは、小さな1粒の涙さえ流さない…のね? と問いかけています。
cry a river はイメージが湧きやすいですが、「川ができるほど泣く」という感覚。
顔を見ていると、涙はこぼれてないけれど、inside つまり、あなたの心の中では、涙が川のようになってるって、私にはわかってるわ、みたいなことを言っているわけです。

そこまで「泣かせよう、泣かせよう」としているのに、まだ涙を見せず、「愛してるよ」と言おうとしたチャンドラーに、ついにモニカがブチギレて、「あなた、どっかおかしいんじゃないの?」みたいなことまで言っています。
驚いたチャンドラーに、「あなたは死んだ妻のためにも涙を流せないの?」と言って、I left you a note from the beyond! とも言っていますね。
beyond は「…を越えて、…の向こうに」という前置詞としてよく使われますが、今回は the がついているように名詞として使われています。
「向こう」という感覚からもわかるように、the beyond は「あの世、来世」ですね。

LAAD では、
beyond
the beyond : (literary) whatever comes after this life

つまり、「この世の後に来るもの」。

ちなみに、beyond と言うと、映画「トイ・ストーリー」で、バズ・ライトイヤーの決め台詞が、"To infinity and beyond!" 「無限のかなたへ!」だったのを思い出したりもします…。

死んだ妻が、あの世からあなたに手紙を残したというのに、それでもあなたは涙一つもこぼせないってわけ?みたいにモニカは怒っているのですね。
もちろん、モニカが実際に死んだわけではないので、そんなことでブチギレられているチャンドラーに同情したくなりますが(笑)、モニカはそういう状況をリアルに想像させて、それでも涙を流さないチャンドラーにいらだっているわけです。
少し前までは、「こんな時、あんな時に、あなたが泣けなくても私は全然気にしない」と言っていたのですが、ここでやっとチャンドラーは、それがモニカの本心ではないと悟ったようで(遅い!…笑)、「それじゃあ、今までの言葉はどれも、本気で言ってたんじゃなかったの?」と驚いた顔で尋ねています。
mean は「意味する」で、この場合は「本気で言っている、心からそう思って言っている」という感覚ですね。
何かを言った後に、I mean it! 「ただ、言葉だけ、口先だけでそう言ってるんじゃなくて、本気で、心底そう思って言ってるんだよ」と、自分の言ったことを強調するフレーズもよく使われますよね。

モニカの、No, は、No, I didn't mean any of that, of course! みたいな感じで、「もちろん、どれも本気で言ってなかったわよ」みたいな意味になります。
そして、チャンドラーのことを、ロボットとまで言っていますね。
前回、チャンドラーが自分のことを、「オズの魔法使」のブリキ男(Tin Man)に例えて自虐的なセリフを言った時にはチャンドラーを慰めていたモニカが、最後には「そうよ、あなたはほんとにブリキ男みたいな、心のないロボットだわ!」と捨て台詞を吐くのが、このカップルらしくて面白いなと思いました。


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posted by Rach at 16:11| Comment(2) | フレンズ シーズン6 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月09日

俺の空っぽのブリキの胸 フレンズ6-14その4

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映画の悲しいシーンを見ても泣くことができないチャンドラーを見て、ジョーイは、"You're dead inside!!" 「お前は心が死んでいる」と言います。
そこまで言われたチャンドラーは、泣ける本を読んでみたりもしています。
それで泣けたら、心が死んでるとか思われないで済むし、と言うチャンドラーに、
モニカ: Oh, that's so sweet! Look, Chandler, I don't care if you can't cry. I love you. (まぁ、かわいいこと言うのね! ねぇ、チャンドラー、あなたが泣けなくても私は気にしないわ。愛してる。)
チャンドラー: Oh, that makes me feel so warm in my hollow tin chest. (おぉ、その言葉は俺の空っぽのブリキの胸をすごく温かくしてくれるね。)
モニカ: Stop it! (やめてよ。)
チャンドラー: No, I mean, come on, seriously think about it. We get married, I'm up at the altar and I'm like this: (Makes a bored face.) (いや、だってさ、ほら、真剣に考えてみてくれよ。俺たちが結婚する。俺は(結婚式の)祭壇にいる、そして俺はこんな感じなんだよ。[退屈そうな顔をする])
モニカ: I won't care. Because I know that you will be feeling it all in here. (Points to her heart.) (私は気にしないわ。だって私にはわかってるもの、あなたがここでそのことを感じてるってことが。 [自分の胸を指す])
チャンドラー: Yeah? (そう?)
モニカ: Yeah! And if, and if we have a baby one day, and the doctor hands it to you in the delivery room and you don't cry, so what? And-and-and, and if we take him to college and come home and see his empty room for the first time, and you got nothing? It won't matter to me. (そうよ! そしてもし、もし、いつか私たちに子供ができて、分娩室でお医者さんがその子をあなたに手渡して、あなたが泣かないとしたら、それが何だっていうの? そして、そして、もしその子を大学に送って行って、家に帰って、初めて彼の空っぽの部屋を見て、あなたが何も感じなかったら? そんなの私にとっては大したことじゃないわ。)

心が死んでると言われたらいやだから、何とか泣こうと頑張ってみてるんだ、と言うチャンドラーに、モニカは、「たとえあなたが泣けなくても私は気にしない。愛してるわ」と彼女らしい優しい言葉をかけています。
ですが、チャンドラーはその言葉を喜んで素直には受け取らず、少々皮肉交じりの表現で返します。
that makes me feel so warm in my hollow tin chest は、「その今の(優しい)モニカの言葉は、俺の hollow tin chest の中をすごく温かく感じさせてくれる」という感覚。
hollow は「空洞の、中空の」、つまり、「中身が空っぽ」のニュアンス。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
hollow : having an empty space inside
つまり、「内部に空っぽの空間・スペースがあること」。

また、tin は「スズ」「ブリキ」、chest は「胸」ですね。
tin can だと「缶詰の缶、空き缶」という意味になります。

このような hollow tin chest というフレーズのイメージは、映画「オズの魔法使」(原題:The Wizard of Oz)に登場する「ブリキ男」(Tin Man)から来ています。
ドロシーがブリキ男に出会った時の彼のセリフは以下のようなものでした。

ブリキ男: Perfect? Bang on my chest if you think I'm perfect. Go ahead, bang on it. Beautiful. What an echo. (完璧? もし君が僕を完璧だと思うのなら、僕の胸を叩いてくれよ。さあ、叩いて。 [空洞の音がして] 美しい。何て素敵なエコー(こだま)なんだ。)
It's empty. The tinsmith forgot to give me a heart. No heart. All hollow. (空っぽなんだ。ブリキ職人が僕に心をくれるのを忘れた[心を入れ忘れた]んだよ。心(ハート)がない。全くの空っぽ。)
If only had a heart, I'd be tender, I'd be gentle. (もし僕に心がありさえすれば、僕は優しくなれるのに。)

胸(chest)が all hollow (全くの空っぽ)な Tin Man (ブリキ男)であることが、彼自身のセリフからわかるので、それを踏まえてチャンドラーは、自分も彼と同じような心がない人間なんだよ、と自虐的に言っているわけですね。
君の優しい言葉が、俺のこの「ブリキ男みたいに心がない胸」を温かくしてくれるよ、と言ってみせて、「どうせ俺の心は空っぽだから、そんな言葉すら響かないんだ、俺に優しい言葉をかけるだけ無駄だよ」みたいに言ってみせている感覚でしょう。
どうせ俺は心がない人間ですよーだ!みたいに、ひねくれている感じです。

そんな風に皮肉っぽく返してきたので、「そんな自虐的なことばっかり言わないでよ」と Stop it! と言うモニカですが、チャンドラーは「別にジョークで茶化そうとしてるわけじゃなくて、モニカもちょっと真剣に考えてみてよ」みたいなことを言います。

結婚して、祭壇に立っている俺はこんな感じなんだ、と説明した後、感情が何ら表情に出ていない、という全くの無表情を作ってみせるチャンドラー。
そういう感動の日に、こんな顔をしているかもしれない人間なんだよ、それでもモニカは構わない、って言うつもり?ということですね。
そういう例を出されても、モニカは「もしそんなことになっても、私は気にしないわ」と答えます。
表情には出なくても、ここで気持ちを感じてるもの、と言って、胸を指すモニカ。
さらにモニカは、今後の人生に起こるであろう、別のイベントも次々と例に挙げていきます。
まずは、赤ちゃんが生まれる時の話。
「赤ちゃんが生まれて、分娩室でお医者さんがあなたにその赤ちゃんを手渡して、それでもあなたは泣かない、でも、それがどうしたって言うの?」みたいなことをモニカは語っています。
次は、ずいぶんと時が経ってからの話ですが、子供が大学に行く頃の様子をイメージして話していますね。

ちなみに、ここで、赤ちゃん時と大学時の代名詞の違いについて見てみましょう。
生まれた時の赤ちゃんの代名詞には、it が使われています。
このように、性別がわからない場合の赤ちゃんは、it という代名詞で表されるのが普通ですね。そういう場合は、it と呼んでも、別に失礼ではない、決して「モノ」扱いしているわけではない、という感覚です。
ただ、大学生になった時のイメージでは、その it と表現されていた子供は、him や his などの代名詞で表現されています。
モニカの頭の中には、大学生となり、りりしくなった「息子」のイメージが浮かんでいた、ということでしょう。
大学生となった子供のことを語る場合には、まだ今は生まれていない子供で、実際にはどちらの性別になるかわからないとしても、そこで it という代名詞を使うことはあり得ない、ということでしょう。
あくまでイメージであり、仮定の話ですから、そういう場合はとっさに、男か女かどちらかの人称代名詞を使えばいい、ということですし、そういうモニカのセリフから、「第一子は男の子になると想像している」というモニカの潜在意識が垣間見られる、とも言える気がします。

we take him to college は「彼(子供)を大学に連れて行く」という感覚でしょうが、これは、その息子が、親元を離れて、大学の寮、もしくは大学のそばに住むことになるというイメージから来ているのかなと思います。
大学が始まる時に、彼をそこに送り届けて(大学まで見送って)、そして家に帰った後、彼の部屋が空っぽなのを初めて見た時に…という仮定ですね。
いつも息子がいたその部屋がガランとなっているのを見たらどんなに寂しいかしら…ということをイメージしているわけですが、そこでも you got nothing つまり、チャンドラーは何も感じることがない、それに対して何の反応もない状態だったら…?と仮定して、それでも私にとってはそんなことは重要ではない、大したことじゃない、と言い切ります。

これ以降、もう少し二人の会話が続くのですが、それは次回といたします。


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posted by Rach at 17:09| Comment(4) | フレンズ シーズン6 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月07日

バフィー恋する十字架のパロディータイトル フレンズ6-14その3

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ジョーイは、フィービーの大ファンだという男性と少し話をするのですが、その彼が、「フィービーは the porn star (ポルノ女優)だ」と言うのでびっくり。
そのことをガンターに話すと、ガンターもフィービーが出演した作品を見たことあるとのこと(笑)。
そんなやり取りがあった後、モニカとチャンドラーの部屋に、気まずい顔をしたジョーイとロスが入ってきます。
モニカ: Guys, what's going on? (二人とも、一体どうしたの?)
ジョーイ: (holds up the movie) Phoebe's a porn star! ([映画(のビデオ)を上に掲げて] フィービーはポルノ女優なんだ!)
みんな: What?!! (何だって?!)
レイチェル: What are you talking about? (何言ってるの?)
(They all run over to Joey and Ross, Chandler grabs the movie and reads the title.)
みんながジョーイとロスのところに走ってくる。チャンドラーはビデオをひっつかみ、タイトルを読む。
チャンドラー: "Phoebe Buffay in Buffay The Vampire Layer." (「フィービー・ブッフェのブッフェ〜恋する十字架〜 [or 吸血キラー 聖少女ブッフェ]」。)
レイチェル: Oh, my God! (まあ、なんてこと!)
モニカ: That's Phoebe! Where did you get that? (それはフィービーだわ! あなたたち、どこでそれを手に入れたの?)
ジョーイ: Well, down at the adult video place down on Bleecker. (えーっと、ブリーカー通りにあるアダルトビデオ店で。)
ロス: And-and I, and I saw Joey was about to go in, so I ran in ahead of him to-to surprise him and, and then I pretended that I didn't know he was in there. (They all kinda look at him.) (それで僕は、ジョーイがその店に入ろうとしているのを見たんだ。だから、彼より先に走って店に入ったんだよ、彼を驚かすためにね。それから、僕はジョーイがそこにいるのを知らないふりをしたんだよ。 [みんながロスを見る])

ジョーイとロスが持っていたのは、フィービーが出演しているというAVでした。
"Phoebe's a porn star!" と言いながら、そのジャケットをみんなに見せたので、フレンズたちは驚いて駆け寄ってきます。
チャンドラーが読み上げたその作品のタイトル、"Phoebe Buffay in Buffay The Vampire Layer" は、ある作品名をもじった題名になっています。
タイトルの元になった作品は、サラ・ミシェル・ゲラー主演のアメリカドラマ「バフィー 〜恋する十字架〜」(原題:Buffy the Vampire Slayer)。
また、そのドラマの元になった映画「バッフィ・ザ・バンパイアキラー」の原題も、Buffy the Vampire Slayer といいます。
詳しくは、以下のウィキペディアで。
Wikipedia 日本語版: バフィー 〜恋する十字架〜

ウィキペディアの説明にもあるように、日本で放映された際には、ケーブルテレビでは「バフィー 〜恋する十字架〜」、地上波では「吸血キラー 聖少女バフィー」という邦題がつけられたようですね。
そのように邦題でもバフィーという名前(主人公の名前:バフィー・アン・サマーズ)が出ていることから、その作品を知っている人ならピンと来たかもしれませんが、Phoebe Buffay (フィービー・ブッフェ)の苗字 Buffay と、バフィー(Buffy)の綴りが似ているので( a があるかないかだけの違いなので)、こんなパロディータイトルが生まれたということです。

そのように、固有名詞 Buffy を Buffay に置き換えた面白さの他にも、AVのタイトルっぽいもじりも存在します。それが、layer という単語。
上にも書いたように、元々の原題は、the Vampire Slayer で、slay とは「…を殺害する」という動詞。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
slay : a word meaning "to kill someone violently," used especially in newspapers or old stories (SYN: murder)
つまり、「『誰かを乱暴に殺す』という意味の単語で、特に新聞や古い物語で用いられる。同義語 murder」。

ですから、the Vampire Slayer は、「吸血鬼を殺す者」なので、邦題で「バンパイアキラー」とか「吸血キラー」のように「キラー」(Killer)とつけられているのですね。(日本人には、スレイヤー=殺す者、のイメージがわきにくい、などの理由があったのでしょう。)
今回のフィービーのAVでは、その slayer が、layer に置き換わっています。
layer は名詞だと「層」という意味がありますが、この場合は、他動詞 lay に人を表す接尾辞 -er がついたものだと理解すべきでしょう。
他動詞 lay は「…を横たえる」という意味で、俗語の get laid は、have sex の意味になります。
「横たえられる、寝かされる」ことから、エッチする、という意味になるのですね。
the Vampire Slayer が「吸血鬼を殺す者」だとすると、the Vampire Layer は「吸血鬼を横たえる・寝かせる人」、すなわち、バンパイアとエッチする人、という意味になるでしょう。
ここでもまた、さきほどの、Buffy & Buffay と同じく、slayer の s- を取るだけの違いです。
それだけで急にポルノっぽいタイトルになってしまう面白さがあるわけです。
このタイトルをチャンドラーが読み上げた後、観客は大喜びし歓声を上げていますが、元のタイトルをちょこっと変えただけで、「いかにもそれっぽい」タイトルになってしまう見事さに観客も大ウケしている、ということでしょうね。

ちなみに、Wikipedia 英語版 : Buffy the Vampire Slayer in popular culture の Series television の項目の一番最初に、今回のフレンズでタイトルがパロディーとして使われたことも記載されています。

ブリーカー通り(Bleecker Street)のAVショップで見つけたんだ、とジョーイが言った後、ロスは何やら事情を長々と説明しています。
わざとらしく笑いながら、ジョーイとその店で出会った顛末を話していますが、その様子から、ロスはそんな店にいたことをジョーイに発見されてバツが悪かったようですね。
ロスもたまたまそのAVショップにいたから、二人はこうして一緒に帰ってきたわけですが、ロスは必死に、「僕はジョーイが店に入ろうとするのを見て、驚かそうと先回りしたんだ」みたいな言い訳をしています。
「先に店に入って、ジョーイがそこにいることは知らなかった、ってふりをしたんだよ」と言っていますが、その説明から、その店でジョーイがロスを発見して声を掛けた時、ロスはものすごくびっくりした様子を見せたんだろうな、ということが想像できます。
「あの時、僕はジョーイに発見されてすごく驚いたふりをしたけど、あれは演技なんだよ、だって僕はジョーイが店に入るのを知ってて先回りして待ってたわけだからね」みたいに、どう聞いても無理のある説明を懸命にしているのがロスっぽいと言えそうですね。


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posted by Rach at 16:14| Comment(4) | フレンズ シーズン6 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月05日

大ファンだからそう言ってるだけよ フレンズ6-14その2

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セントラル・パーク。フィービーが自分のギターを片づけていると、ある男性が近づいてきます。
男性: Are you Phoebe Buffay? (あなたは、フィービー・ブッフェさんですか?)
フィービー: Yeah. (ええ。)
男性: Can-can I get your autograph? I'm your biggest fan. (Holds out a napkin and a pen.) (あなたのサインをもらえますか? 僕、あなたの大大大ファンなんです。 [ナプキンとペンを差し出す])
フィービー: Oh, you're my biggest fan? I've always wanted to meet you! Hi! (Shakes his hand.) Sure! Yeah! (Signs the autograph) (まぁ、あなたは私の大ファンなの? いつもあなたに会いたいと思ってたわ! はーい! [彼と握手する] もちろん! いいわ! [サインを書く])
ファンの男性: Wow! Wow, thanks a lot! I just wanna say I think you're really talented. (わぉ、わぉ! ほんとにありがとう! これだけは言わせて、君はほんとに才能があると僕は思ってるんだ。)
フィービー: You're just saying that because you're my biggest fan. (The fan leaves and Joey approaches.) (To Joey) Joey, listen, take good care of that guy, okay? (Points) He's a fan. (To the fan as she's leaving) Bye! (Exits) (あなたは私の大ファンだから、そう言ってるだけだわ。[そのファンは去り、(ウェイターをしている)ジョーイが近づいてくる] [ジョーイに] ジョーイ、聞いて、今の男性によくしてあげて[良いサービスをしてあげて]ね、いい? [指差して] 彼はファンなのよ。[フィービーが立ち去る時にそのファンに向かって] じゃあね! [フィービーは出て行く])
ジョーイ: (to the fan) So, you saw me on Days Of Our Lives, huh? Want me to, want me to do a little Dr. Drake Remoray for ya? ([そのファンに向かって] それじゃあ、君は「デイズ・オブ・アワ・ライブズ」に出ている俺を見たんだな? 君のために、ちょっぴり、ドクター・ドレイク・ラモレーをやって欲しい?)
ファンの男性: I have no idea what you're talking about. But I, but I just got Phoebe Buffay's autograph! (君が何を言ってるのかわからないけど。でも、僕は、さっきフィービー・ブッフェのサインをもらったんだ!)
ジョーイ: Oh. You're Phoebe's fan! (あぁ、君はフィービーのファンなのか!)

フィービーのそばに近づいてきた男性は、「サインをもらえますか? 僕はあなたの大ファンなんです」と言います。
このように、「ファンなので、サインを下さい」の場合のサインは、autograph という単語を使いますね。
荷物の受け取りや、書類の署名の場合のサインは、名詞では signature 、動詞では、sign になります。
フレンズ2-18その9 では、配達された台本の受け取りのサインをしなければならない時に、
配達係: Could you sign? (受け取りのサインをして下さい。)
ジョーイ: No! No way! I'm not signing that! (いやだ! 絶対にいやだ! そんなのにサインしないぞ!)
というやり取りもありました。

「私はあなたの大ファンです」と言う場合は、通常、I'm a big fan of yours. のように、a big fan of+独立所有格、の形(a friend of mine と同じような形)で表現されることが一般的だと思うのですが、I'm your biggest fan. みたいな表現も「アリ」なんですねぇ。

英英辞典の用例を見てみると、
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
He's a big fan of Elvis Presley. 「彼はエルヴィス・プレスリーの大ファンだ」
Macmillan Dictionary では、
I'm big fan of Madonna. 「私はマドンナの大ファンだ」
という例文が出ていて、やはり、「私は〜の大ファンだ」という場合は、a big fan of の形を使うのが一般的、という印象を受けます。
(ちなみに、 a big fan of yours の流れで言うと、固有名詞の場合でも、a big fan of Elvis Presley's のような形にするのが文法的には正しいことになるでしょうが、特に固有名詞の場合は、わざわざ -'s までつけなくても問題ない、ということでしょう。)

そもそも、a big fan of yours の形になっているのは、a という不定冠詞と、your という所有格の併用が不可だから、ですね(例えば、a your fan のように、a と your を同時に前に付けることはできない、という意味)。
今回のセリフの場合は、a big fan of yours ではなく、最上級の the biggest fan of yours という意味で言っているために、the biggest fan of yours を、your biggest fan と表現することが可能だった、ということになるのかな、と思います。
過去のフレンズでも、"Joey's your best friend." のようなセリフがあったように、 所有格と最上級の組み合わせは「アリ」なので、biggest の場合だと、your biggest fan とシンプルに表現することが可能だったということでしょう。

biggest fan という最上級を使って、「あなたの最大のファン、あなたのファンの中でも一番のファン」みたいに言われたので、フィービーはゴキゲンです。
I've always wanted to meet you! と言って握手するのが面白いですね。
I've always wanted to... という現在完了形で、「いつもずっと…したかった、望んでいた」感が出ています。
「自分の最大のファン、っていう人にいつか会えるのをずっと楽しみにしてたのよ、やっと、私の最高のファンって人に会えて嬉しいっ!」みたいな感じですね。

I just wanna say I think you're really talented. を前から順番にイメージしていくと、「僕はただこう言いたいんだ、僕は思う、君はほんとうに才能がある、って」みたいな感じになるでしょう。
You're just saying that because... は、「…だから(…という理由で)あなたはただそう言ってるだけ」というニュアンス。
あなたは私のファンだから、そんな風に良いように思ってくれてるだけよ…という感じの謙遜ですが、フィービーの顔には、やはりそんな風に言ってもらえて嬉しい様子がありありと出ていますね。

take care of は「…の世話をする、面倒を見る」で、それをさらに「大切に、大事に、より良く」世話する感覚が、take good care of ですね。
ウェイターのジョーイが、お客さんを通常世話する以上に、もっと大事に、彼によくしてあげてね、という感じでしょう。
フィービーは、"He's a fan." 「彼はファンなの」と説明した後、店を出て行きます。
ジョーイはそのファンの男性に近づいて、「それじゃあ、君は、デイズ・オブ・アワ・ライブズに出ている俺を見たんだな?」と言った後、君のために、俺がちょこっと、ドクター・ラモレーをやる、演じるのを見たいかい?みたいに尋ねています。
その後、気まずい沈黙が流れ、彼は「君が言っていることがよくわからないけど、僕は今、フィービー・ブッフェのサインをもらったところなんだ!」と自慢します。
それを聞いてジョーイはやっと、a fan が、a fan of Joey ではなく、a fan of Phoebe であることに気付いたわけですね。

振り返ってみると、この男性がフィービーに声を掛けてきた時から、your/my biggest fan というフレーズが3回も繰り返されているのに、フィービーはジョーイに言う時にだけ、あっさり、He's a fan. と言っています。
ここでも同じように、He's my biggest fan. と説明していれば、ジョーイが「そうか、彼は俺のファンなのか」と誤解することもなかったわけですが、今回はわざとフィービーに、He's a fan. というセリフを(台本上)「言わせる」ことで、ジョーイが誤解するシーンを作り出すことができた、ということになるでしょう。
また、さすがのフィービーも、ジョーイに対して、He's my biggest fan. と自慢するのはもしかしたら恥ずかしくて、「彼、ファンなのよ」みたいにさらっと言ったという風に考えることも可能かな、とは思います。
フィービーとしては、a fan と言えば当然、a fan of mine だとわかってもらえると思って、of mine を省略したわけでしょう。
ですが、ドクター・ラモレーとしての過去の栄光(笑)をいつまでもひきずっているジョーイは、「彼によくしてあげてね、彼はファンだから」と言われれば、自分のファンだと思い込んでしまうのも無理のないことかもしれません。
そういう「ズレ」がフレンズらしくて面白いなと思いました。


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posted by Rach at 16:44| Comment(0) | フレンズ シーズン6 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする