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護身術のクラスを受講して、すっかり安心しているレイチェルとフィービーに対して、不意の攻撃にも対処できないと意味がない、と説くロス。
ロスは、空手には、日本語で言うところの「ウナギ」という概念があるんだ…と説明するのですが、「それってスシネタ、淡水魚のウナギのことでしょ?とバカにされてしまいます。
ロス: Y'know, fine, get attacked. I don't even care. (ほら、もういいよ。襲われなよ。僕は構わないし。)
フィービー: (deadpan) Come on, Ross, we're sorry. Please tell us what it is. ([無表情で] お願いよ、ロス。ごめんなさい。それ[ウナギ]が何なのかを、どうか話して。)
ロス: Unagi is a state of total awareness. Okay? Only by achieving true unagi can you be prepared for any danger that may befall you! (ウナギは、完全な認識した状態(完全な気づき、の状態)のことだ。いいかい? 真のウナギを獲得することによってのみ、降りかかるかもしれないどんな危険に対しても、心構えできるんだ。)
フィービー: You mean in case someone is trying to steal your bamboo sleeping mat or your kettle of fish? (つまり、誰かが、ござとか、魚料理の調理容器(or それとは全く別のもの)を盗もうとする場合に、ってこと?)
(Rachel laughs and Ross mocks her.)
レイチェルは笑い、ロスはレイチェルの笑い声をばかにしたように真似る。
ウナギという言葉を使ったせいで、スシネタでからかわれてしまったロスは、すっかりすねてしまい、Fine. 「(それなら別に)いいよ」と言って、Get attacked. とも言っています。
get attacked は、「攻撃される(という状態になる)」という感覚で、それを命令形として使うことで、「(攻撃されたけりゃ)攻撃されてなよ、攻撃されちゃえよ」みたいなニュアンスで使っているのですね。
I don't even care. は「僕は構いさえしない」ですから、「君らが誰かに攻撃されても、僕は別に構わないし、どうでもいいし」みたいな感じです。
僕がせっかく有用なアドバイスをしてあげようとしてるのに、それを聞こうとしないなら、簡単に攻撃されちゃうよ、そうなっても僕は知らないからね、みたいなニュアンスでしょう。
そういう投げやりな言葉を返しているロスが、見るからに機嫌を損ねてすねている様子なので、フィービーは、「ごめんなさい、お願いだから、そのウナギっていうのが何なのかを話してちょうだい」と言っています。
言葉ではそのように「丁寧なお願い」を言っているのですが、ただ、ト書きに deadpan とあるように、「無表情で」そう言っているので、彼女たちの本音としては、「別に聞きたくはないけど、しょうがないから形だけ聞いてあげるわ」という気持ちが入っていることもわかります。
フィービーたちの表情や態度から、「ウナギ」にそんなに興味がないのはミエミエなのですが、ロスは、少しの間があってから、「そうか、そんなに聞きたいなら教えてあげる」みたいに身を乗り出して話し始めます。
こういうところが、いかにもロスらしいですね。
ロスの説明によると、Unagi is a state of total awareness. だそうです(笑)。
aware は「…に気づいている、知っている、承知している」、その名詞形の awareness は「意識、認識、自覚、気づいていること」という感覚ですね。
完全に何かに気づき、知っている、という状態、みたいなニュアンスでしょう。
「何もかもわかっている状態」みたいな感覚ですね。
Only by achieving true unagi can you be prepared for... という文章について。
文頭の、only by doing は「…することによってのみ」という意味ですね。
その後の文章が、can you be prepared for という語順になっていますが、これは「倒置」のようです。
間違った方と友達になっちまった フレンズ6-13その2 で、
"Boy, did we make friends with the wrong sister." (なんてこった、俺たちは(姉妹のうち)間違った方と友達になっちまったよ。)
というセリフが出てきた時にも説明させていただきましたが、大西泰斗先生の ハートで感じる英文法(会話編) の「倒置の呼吸」で語られている「感情を乗せる倒置」に近いものかな、と思います。
今回のロスのセリフの場合は、「…することによって」という副詞句を前に出し、さらに後の文を倒置にすることで、「より強調のニュアンスを出している」ということかなぁ、と。
ロスはここで、「概念」の話をしているので、「通常とは違う形」を取ることで、もったいつけたような感じを出しつつ、その概念に重みや高尚さを感じさせようとしているのかな、という気がしました。
その倒置になっている部分について。
be prepared for は「…に対して準備・用意ができている、心構えができている」、befall は「(災い・災難などが)(人)に起こる、降りかかる」。
つまり、「自分に降りかかるかもしれないどんな危険にも準備可能となる、心構えができる」ということになります。
大真面目に「ウナギ」の概念を語るロスに、フィービーはまた、からかうようなセリフを言っています。
You mean in case someone is trying to... は、「つまり、あなたが言う危険、っていうのは、誰かが…しようとするような場合のこと?」という感覚。
誰かが何をしようとしているかの例として、 steal your bamboo sleeping mat or your kettle of fish というフレーズが続いています。
まずは前半の bamboo sleeping mat は、「竹の眠る(睡眠用)マット」なので、日本の「ござ」のイメージのようです。
「ござ」は、竹製ではないですが、「竹」と付けることで、日本風、和風のニュアンスがより出るからそう言っている、という気がします。
そして、後半の (your) kettle of fish について。
kettle は一般的には「ケトル、やかん」なので、直訳すると「魚のやかん」みたいな意味になるのですが…。
ちょっとここから話が長くなるのですが、実は、kettle of fish というイディオムが存在します。
先に簡単に(私なりの)結論を言っておくと、レイチェルはそういうイディオムがあるのを踏まえた上で、そのイディオムとちょっぴり「かけてみた」感覚で、文字通りの kettle of fish という意味で使っている、という気がします。
まずはイディオム kettle of fish の話から。
研究社 新英和中辞典には、以下の意味が載っています。
a different kettle of fish=《口語》 別問題、別の事柄
a pretty [fine, nice] kettle of fish=《口語》 困った事、いざこざ、紛糾 (注:pretty, fine, nice は反語)
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
a different/another kettle of fish : (informal) used to say that a situation is very different from one that you have just mentioned
つまり、a different/another kettle of fish は、「(インフォーマル) 人がたった今言及したばかりのこととは、状況が非常に異なることを言うために用いられる」。
Macmillan Dictionary では、
a different kettle of fish : (INFORMAL) a situation or subject that is not related to the one you are talking about
例) Of course their economic policy is a different kettle of fish altogether.
つまり、「その人が話していることとは関係ない、状況または話題」。
例文は、「もちろん、彼らの経済政策は、全く関係ないことだ」。
そういう形で使われるイディオムがあると頭に隅に置いた状態で、今度は、kettle の意味をもう少し詳しく見てみます。
上にも書いたように、日本語となっている「ケトル」、つまり、「やかん」の意味があるのですが、それ以外にも、「鍋、釜」みたいな意味もあるようですね。
LAAD では、
kettle : a large pot, used especially for making soup
つまり、「大きな鍋、特にスープを作るのに使われる」。
Macmillan Dictionary では、
kettle : a metal container, usually with a cover, used for cooking
例) a fish kettle
つまり、「金属の容器で、たいていは蓋付きで、料理に使われる」。
例は「フィッシュ・ケトル」。
上のマクミランの例に、a kettle of fish とよく似たニュアンスの、a fish kettle が登場していますね。
英辞郎には、
fish kettle=長円形の魚鍋
と出ています。
Wikipedia 英語版: Kettle の Similar devices の項目に、以下の説明があります。
A fish kettle is a long slim metal cooking vessel with a tight fitting lid to enable cooking of whole large fish such as salmon.
つまり、「フィッシュ・ケトルは、サーモンのような大きな魚全体を料理するために、かたくフィットする蓋の付いた、長い金属の料理容器」。
実際、fish kettle で「Google 画像検索」をしてみると、そういう金属製の蓋付き容器の画像がたくさんヒットします。
ということで、a different kettle of fish 「(話している内容とは)全く別の事柄」というイディオムがあることと、a fish kettle という「サーモンなどを丸ごと一匹調理するための金属製蓋付き容器」が存在するという2つのことを頭に置いて、再度、フィービーのセリフを見てみます。
different という単語はついていないものの、a kettle of fish が、a different kettle of fish の形でよく使われることを考えると、聞いた瞬間にそういうイディオムを頭に浮かべることを想定して、steal your bamboo sleeping mat or another stuff of yours 「あなたのござ、またはそれとは全く別のもの」という感じで使っている可能性もあるのかなぁ、と。
そして、そのイディオムには fish という言葉が使われているので、a kettle of fish と同じイメージの a fish kettle はそういう「サーモンなどを丸ごと調理するための料理器具」なので、そこでまた「魚ネタ」を出して、ロスをからかっている、ということなのかなぁ、と思ったのですね。
もしかすると、a (different) kettle of fish というイディオムはここでは全く関係なく、純粋に「魚用調理器具」の話をしているだけなのかもしれません。
ただ、どの辞書にもそのイディオムが載っていることから、ネイティブにはおなじみのフレーズだと言うことで、多少はそのイディオムの意味も「乗っけて」使っているような気が個人的にはするわけです。
イディオムの意味もかけている、込めているのかどうかは確信は持てませんが、いずれにしろ、「降りかかるかもしれないいかなる危険でも対処できる」みたいに大袈裟に言ったロスに対して、「その危険ってのは、(日本製の)ござを盗まれる、とか、魚の調理器具を盗まれるとか、そういう危険なのかしらねぇ」と言ってみせることで、「日本」「魚」をことさら強調し、「日本産の魚であるウナギ」ネタで、ロスが言う「ウナギ」という概念をここでもまたバカにしている、ということなんだと思いました。
また、仮にそのイディオムは今回のセリフに関係なかったとしても、英和にも英英にも載っている、a different kettle of fish というイディオムをこのタイミングで覚えておくことも、英語学習においては無駄ではない、という気がします(ので、しつこく説明させていただきました…笑)。
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