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[Scene: Joey and Rachel's, Paul is still crying as Chandler enters.]
ジョーイとレイチェルの家。ポールはまだ泣いていて、そこにチャンドラーが入ってくる。
ポール: Rachel? (レイチェル?)
チャンドラー: No. How are ya, Paul? (Starts to look for his credit card.) (違うよ[レイチェルじゃないよ]。元気、ポール? [自分のクレジットカードを捜し始める])
ポール: (acting manly to try and cover up his crying) Okay. Chandler, did your dad ever hug you? ([自分が泣いていたのを隠そうとするために男らしく振る舞いながら] なぁ、チャンドラー、君のパパは(かつて、これまでに)君をハグした(ことがある)?)
チャンドラー: No. Did he hug you?! (いいや(ハグしなかった)。俺のパパが君をハグしたのか?!)
ポール: No! No! It's just that, my dad never did. I miss my dad. (いや、そうじゃない! 違うよ! ただ、僕のパパはこれまで僕をハグしなかった、ってだけのことなんだ。パパが恋しいよ。)
チャンドラー: Well, you can see my dad in Vegas kissing other dads. (うーんと、ベガスで俺のパパが他のパパたちにキスしてるとこは見られるよ。)
ポール: Hey, Chandler? (なぁ、チャンドラー?)
チャンドラー: Yeah? (ん?)
ポール: Would you.... Would you hug me? (俺をハグしてくれる?)
チャンドラー: I'm a little busy here, Paul. (俺は(今ここで)ちょっと忙しいんだよ、ポール。)
ポール: That's exactly what my dad used to say! (Starts to breakdown again.) (それは俺のパパがよく言っていたことと全く同じ(セリフ)だ! [また泣き出しそうになる])
レイチェルに子供の頃の思い出話をした後、泣き始めたポール。
レイチェルが買い物に行っている間も、一人でずっと泣いています。
ドアの音がしたので、「レイチェル?」と尋ねるのですが、入ってきたのはチャンドラー。
それまでしくしく泣いていたポールは、チャンドラーにはそんな様子は見せまいと、姿勢や歩き方に男らしさを出していますが、ハグについての質問をしています。
Did your dad ever hug you? は、「君のパパは君をハグしたか?(これまでに・過去に、君をハグしたことがあるか?)」ということですね。
それに対して、チャンドラーは、No. と答えています。
これは、No, he didn't. つまり、My dad didn't ever hug me. 「いいや、俺のパパは俺をハグしなかった」と言っていることになります。
今度はチャンドラーが、ポールに同じような質問を返していますが、Did he hug you?! については、その he が誰を指すか、ということに注目したいと思います。
この he が誰を指すか、という件については、「英語の仕組みを考えると、やはりそういう結論にならざるを得ない」ということなのですが、あくまで「私はこう解釈しました」という話であって、100%絶対そうだ!と断言するつもりはありません。
そういうことを踏まえて、お読みいただけると幸いです。
その二人のやり取りを、何となく雰囲気で意味を捉えてしまうと、
ポール:君のパパは君をハグしたか?
チャンドラー:いいや(しなかった)。君のパパは君をハグしたか?
のように解釈してしまいそうになりますが、Did he hug you?! の he は、直前に出て来た男性を指す代名詞ですから、he = (ポールが言うところの) your dad、すなわち、「チャンドラーのパパ」を指すはずです。
日本語で「彼は君をハグしたの?」と訳すと、日本語の「彼」は英語の he に比べて、対象が漠然としているために、「父と子という関係を相手に置き換えた形で同じ質問をしている」ように解釈することも可能な気がしますが、英語でこの文脈で he が出てきた場合は、直前のポールのセリフに出てきた your dad、すなわち、チャンドラーのパパを指していることになると私は思うのですね。
過去記事、フレンズ3-11その35 のコメント欄 で、So do I. に関する、興味深いご意見をいただいたことがありました。
概要をお話しますと、ある人 (A) が、"I kiss my wife every morning." と言った後に、別の人 (B) が「自分も同じことをする(私も自分の妻に毎朝キスをする)」と言おうとして、So do I. と言ってしまうと、英語では、"I kiss her[his wife] every morning, too." という意味になってしまう…という内容でした。
so というのは、kiss my wife every morning (my wife は、A にとっての「私の妻」すなわち「A の妻」という意味)を省略しているのであって、B が主語を I にして話しても、目的語が自動的に my wife (つまり、「B の妻」)に置き換わるわけではない、ということですね。
日本語で「うちもそうです。私もそうです」と言った場合には、主語が「私」に置き換わると、所有格も「私の」に置き換わる感覚がありますが、英語では「省略されている単語」は明白であり、「私の」に置き換えたい場合は、はっきりそう明示する必要がある、ということになるでしょう。
この So do I. の感覚に通じるものが、今回の Did he hug you?! にもあるように私は思うわけです。
話の流れだと、「君の場合はどうなのか?」を尋ねているように思えても、he が自動的に、your dad に置き換わるわけではなく、やはり、he = Chandler's dad という関係は崩れないはずだと思うわけです。
ですから、もしチャンドラーが、「俺のパパは俺をハグしなかったけど、君のパパは君をハグしたのか?」と尋ねたいなら、No. Did your dad hug you? のように、はっきり、your dad と表現しないといけないことになるはずだと思います。
その後に続くセリフでは、もう he という言葉は使われず、それぞれが、my dad という言葉で自分の父親を表現しています。
それぞれの父親の話が出てきた後に he を使うと、どちらの父親を指すかがわからなくなるからですね。
そういう紛らわしい場合には、毎回、my dad と表現せざるを得ないわけです。
チャンドラーのパパの話が出た直後(で、なおかつ、ポールのパパの話が出る前)の he であれば、それはチャンドラーのパパを指すことが明白なので、その時だけは、he で言い換えることができた、ということになるでしょう。
つまり、「俺のパパは俺をハグしなかったけど、その彼(俺のパパ)は君をハグしたのか?」というのが、チャンドラーのセリフの意味だと私は解釈しました。
ですから、ポールは、「違う、違う、(君のパパが僕をハグしたとか)そういうことじゃなくて、ただ、「僕のパパ」がこれまで(決して)僕をハグしなかった、ってだけなんだ」と、言っているわけですね。
No, it's just that... というのは、「いや、ただ…ってだけなんだ」のように、何か相手が誤解しているらしいことを訂正するニュアンスのフレーズですよね。
「彼(君のパパ)の話じゃなくて、僕のパパのことなんだ」という感じで、It's not that he/your dad hugged me. It's just that my dad never did. (=never hugged me.) と言っていることになるでしょう。
普通は、唐突に誰かが「君のパパは君をハグしたことある?」みたいに尋ねてきたら、「この人は自分の父親にハグされたことなくて、だから人にそういうことを尋ねているのかな?」と思いますよね。
チャンドラーもそれはわかっていたはずですが、わざとそれに気づかないふりをして、「俺はパパにハグされたことないけど、そんなこと聞くってことは、もしかして俺のパパが君をハグしたわけ?」みたいに、ちょっとゲイのジョークを込めて返したのだと思います(「ゲイのジョーク」については、後にもう少し語ります)。
チャンドラーのセリフ、Did he hug you?! は、HUG の部分が強く発音されていますが、それも「俺のパパが君を”ハグ”したのか?!」と、ハグという行為に驚いている感じが出ているように思います。
自分の父親にハグされたことないんだ、と告白した後、パパが恋しい、パパに会いたい、みたいなことをポールは言っています。
チャンドラーはまた、自分のパパの話を持ち出して、「(君のパパに会う方法は俺は知らないけど)俺のパパなら、ベガスで他のパパにキスしてるところを見ることができる」と言っています。
これまでのエピソードでも何度か語られていたように、チャンドラーのパパは、ベガスでゲイのショーに出ているような人なのですね。
そういう設定があるために、「パパが誰かをハグした」という話になると、父と子の親子のハグではなくて、「俺のパパがどこかの男性をハグした」というゲイの人にありがちな話だとチャンドラーが受け止めるのが、ある程度、自然に(?)思えるわけですね。
チャンドラー自身がよくゲイだと間違えられる、パパがベガスでゲイのショーをしている、という、ファンには周知の設定があるために、チャンドラーの、Did he hug you?! という驚いたような返しが、ゲイを彷彿とさせるジョークとして成立するわけでしょう。
ですがポールは、チャンドラーのパパがゲイである、という話に食いつく様子もなく(多分、ポールは自分の幼少時代の辛い記憶で頭がいっぱいなのでしょうね)、言いにくそうに「俺をハグしてくれる?」みたいに言っています。
チャンドラーは、「俺は今ちょっと忙しいんだけど」と言って、その依頼を断ろうとします。
実際、チャンドラーは指輪を買うためのクレジットカードを取りに戻ってきただけで、カードが見つかったらさっさと店に戻るつもりだったのも事実です。
ですが、その言葉を聞いたポールは、「(君が今言った)その言葉は、俺のパパがよく言っていたのと全く同じだ!」と言って、また泣きそうになってしまいます。
小さい頃、パパにぎゅっと抱きしめてもらいたいと思っても、パパはいつも忙しそうにしていて、「今は忙しいからダメだ」みたいに拒まれた…そういう記憶がチャンドラーの言葉でよみがえってしまったようですね。
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