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他人が赤ちゃんを出産するビデオを見て茫然となってしまったチャンドラーとモニカ。
今日はバレンタインデーなので、二人はキスしようとするのですが、そのビデオの衝撃的な映像がどうしても頭から離れないらしく、ビクビクしてぎこちないキスしかできずにいます。
そこにノックの音がしたので、「助かった」と言ってホッとした様子を見せる二人。
ノックの主はレイチェルでした。
ロスはレイチェルと同居しているのですが、ロスはそのことを恋人モナに言いそびれて、それを言おうとした寸前にレイチェルの発言からそれがバレてしまう、、という修羅場になっていました。
レイチェル: (entering) Hi! I'm so sorry to barge in on your Valentine's, but I had to get away from all the yelling. Mona is dumping Ross. ([部屋に入ってきて] はーい! 二人のバレンタインデーを邪魔しちゃってごめんね。でもあの叫び声から逃げ出さないといけなかったの。モナがロスを振ってるとこなのよ。)
モニカ: Oh, my God. (なんてこと。)
チャンドラー: Poor Ross. (かわいそうなロス。)
(Monica and Chandler both look at each other and run over to the window to watch the action in Ross' apartment)
モニカとチャンドラーの二人は、お互いを見てから、窓に走って行く。ロスのアパートメントでの活動(振る舞い)を見るために。
チャンドラー: Oh, great. We have to watch him do yoga in his underwear, but for this he closes the drapes! (あぁ、最高だよ。俺たちはロスが下着姿でヨガをするのを見ないといけないってのに、こんな時にはロスはカーテンを閉めてるよ。)
モニカ: Rach, you know that birthing tape you wanted to see? It's here. (レイチェル、ほら、あなたが見たがってた出産ビデオなんだけど。ここにあるわ。)
チャンドラー: Oh, and we should warn you before you watch it. Don't watch it. (あぁ、で、レイチェルがそれを見る前に警告しとかなきゃな。それを見るな。)
レイチェル: Why? You saw it? Is it scary? (どうして? あなたちは見たの? 怖いの?)
チャンドラー: Well, let's just say it's ironic how footage of someone being born can make you want to kill yourself. (そうだな、誰かが生まれる映像がどんな風に人を自殺したい気持ちにさせるかってのは皮肉だな、と言っておこう。)
レイチェルは「バレンタインデーなのにごめんね」と言いながら、部屋に入ってきます。
barge in は「荒々しく入り込む、押し入る、乱入する」というニュアンス。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
barge in also barge into something [phrasal verb] : to enter or rush in rudely
つまり、「乱暴に入る、または突入する」。
その句動詞と並んで、以下の barge in on の形も載っていました。
barge in on somebody/something [phrasal verb]
to interrupt someone rudely, especially by coming in while they are doing something
例) She just barged in on Duncan and Jessica.
つまり、「誰かを乱暴に邪魔する、特に誰かが何かをしている最中に来ることで」。
例文は、「彼女はダンカンとジェシカの邪魔をした(ダンカンとジェシカがいるところに突然入ってきた)」。
今回のレイチェルのニュアンスは、barge in on の「突然入ってきて、邪魔をする」に近い気がしますね。
your Valentine's は、your Valentine's Day ということですから、on your Valentine's は、on Monday 「月曜日に」のような「曜日、日の前につく on 」だと捉えることも可能ですが、「あなたたちのバレンタインデーという日に、barge in 「乱入して」ごめんなさい」というよりも、「あなたたちがバレンタインデーを楽しんでいる真っ最中にお邪魔しちゃってごめんなさい」の方が近い気がするわけです。
部屋に入ってきて、バレンタインデーというイベントを台無しにしちゃってごめんなさい、みたいな感覚なんだろうなぁ、と。
この on は「不利益を表す on」のニュアンスだと思います。
それについては、過去記事、不利益を表すon フレンズ6-6その1 で解説したことがあるのですが、その記事で例に挙げた、move out on 「〜を残して引っ越す、引っ越して出て行く」、walk out on 「妻を置いて出て行く」、cheat on someone 「配偶者などに隠れて浮気する」などの on と同じ感覚の on になるだろうと思うわけですね。
ちなみに、barge という名詞には、「平底の荷船、はしけ」という意味もあり、ウィジャボードという霊感ボードゲーム フレンズ3-14その6 では、
You never run on a barge! (バージの上を走っちゃいけないのよ!)
などのセリフで登場していました。
I had to get away from all the yelling. を直訳すると、「あの叫び全てから逃げ出さなければならなかった」。
dump は「投げ捨てる」ですが、恋愛の話だと「(相手を)ふる」ですね。
モナが今、ロスをふっている最中、もしくはロスをふろうとしているところ、みたいな感覚になるでしょう。
それを考えると、all the yelling は、「元カノと同居して、それを私に黙ってたなんて信じられない」的なことを、怒りにまかせてたくさん叫んでいた、そういういろんなわめき声、叫び声ということで、それから逃げ出さなきゃいけなくて、悪いとは思ったけど、ここに来ちゃったのよ、ということですね。
チャンドラーは、Poor Ross. 「かわいそうなロス」と言って同情する様子を見せながらも、すぐにロスの部屋が見える窓に行って、中の様子をうかがっています。
友人の心配をしているのかと思いきや、ただのやじうまみたいになっている、という面白さです。
チャンドラーは、Oh, great. と言っていますが、その言い方や、その後の発言から、それは文字通りの、「あぁ、最高」という意味ではなく、「全くもう、最低、最悪だよ」的なニュアンスで皮肉っぽく使っていることがわかります。
We have to watch him do yoga in his underwear は、「ロスが下着(姿)で、ヨガをしているのを見なければならない」、but for this he closes the drapes! は、「でも、このために、ロスはドレープ(厚地のカーテン)を閉じている」になりますね。
つまり、「普段は、ロスの部屋に目をやると、”下着姿でヨガしてるロス”なんていう見たくもないものを見さされるはめになるのに、今回みたいに俺たちが見たいと思う時に限って、あんな風にドレープを閉じてやがるんだ」みたいに言っていることになります。
モニカは、「あなたが見たがってた出産ビデオがここにあるわ」と言うのですが、その後のチャンドラーのセリフが面白いですね。
we should warn you before you watch it. Don't watch it. は、「君がそれを見る前に俺たちは警告すべきだな(警告しないといけないな)。それを見るな」と言っていることになります。
「見る前に一言、言っとく。絶対に見るな」と言っているわけで、そのセリフを聞いている観客も、「見る前に警告しとく」と言うから、心構えしとけよ(Be prepared.)的なことを言うのかと思っていたら、もっとシンプルな「とにかく見ちゃだめだ」と続くところに笑ってしまうわけですね。
「見るな」という発言から、雰囲気を察したらしいレイチェルは、「見たの? 怖いの?」と尋ねています。
Well, let's just say it's ironic how footage of someone being born can make you want to kill yourself. について。
let's just say は、「〜だと言っておこう」という感覚。
ここでの footage は「(フィルム)映像、撮影場面」という意味。
LAAD では、
footage [noun, uncountable] : flim that shows a particular event
of
例) black-and-white footage of the 1936 Olympics
つまり、「あるイベントを示すフィルム」。例文は、「1936年のオリンピックの白黒映像」。
ちなみに、footage には「フィート数、長さ」という意味もあり、船頭多くして船山に上る フレンズ7-2その1 では、square footage 「平方フィート」「(平方フィート表示された)面積」という意味で出て来ていました。
it's ironic how... の文章の基本的な構造は、it's ironic how A can make you want to... ということですね。
「A がどんな風に(どのように)、人を…したい気持ちにさせることができるかっていうのは皮肉なことだよね」という感じ。
この how を that にして、it's ironic that A can make you want to... と表現することも可能ですが、that よりも how を使う方が、より口語チックな感じですね。
フレンズでも、You know that SV とほぼ同じ意味で、You know how SV が使われることがよくあります。
thatの代わりにhowを使うと フレンズ5-14その2 で、そのような how について解説しています。
「アナと雪の女王」(原題: Frozen)のテーマソング Let It Go (英語版)の歌詞に、
It's funny how some distance makes everything seem small
という部分がありますが、この how が、今回のチャンドラーのセリフと同じ how ですね。
チャンドラーのセリフ: It's ironic how A can make you want to...
レリゴー(笑)の歌詞: It's funny how A makes everything seem small
のように比較すると、使役動詞 make の使われ方も含めて、構造がよく似ていることがわかります。
(内容は全然違いますがw)
レリゴーの方は、「(いくらかの)距離が、どのように、全てを小さく見せるかということは面白いわね」→「距離が、物事全てを小さく見せるって、おかしいわね」→「離れたら、物事全てが小さく見えちゃうのね、笑っちゃうわ」みたいになるでしょう。
It's funny that A makes everything のように that を使って、「Sが〜するということは funny である」と表現しても、内容的にはあまり違いはないですが、that 「SがVすること」と表現するよりも、how 「Sがどんな風にVするか」と表現した方が、より口語チックだと言うことです。
footage of someone being born は、「誰か(人)が生まれる映像」、make you want to kill yourself は、「自殺したいという気にさせる」ですね。
チャンドラーは、あまりに映像が壮絶なものだったので、人生に絶望してしまいそうになる、と言いたいようです。
「人が生まれる映像を見て、死にたいって気持ちになるなんて皮肉だね」と言いたいわけですね。
「そこまで言うか」的な大げさな表現ですが、「出産ビデオ」が想像以上にショッキングだったことを、「生まれる」の反対の「死ぬ」という言葉を使って表現しているのが、チャンドラーのジョークっぽいな、という気がしました。
(Rach からのお知らせ)
前回の記事、スクリーンセーバーにできる フレンズ8-15その4 の、do tequila shots off という表現についての情報をいただきましたので、その記事に追記の形で、訂正と追加説明をさせていただいています。併せてお読みいただけると幸いです。
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