2014年08月01日

二重否定でも否定の意味 フレンズ8-17その5

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紅茶占いで「素敵な男性に会える」という結果が出たフィービーは、行く先々で見かける男性ジム・ネルソンと仲良くなります。
[Scene: A restaurant, Phoebe and Jim are on their date.]
レストラン。フィービーとジムはデート中。
フィービー: Isn't it funny how we kept running into each other? It's as if someone really wants us to be together. (私たちがばったり出くわしてばかりなのって面白くない?[面白いわよね?] まるで誰かが私たちを一緒にしたがってるみたい。)
ジム: Someone does. Me. (誰かがそうしたがってるよ。(それは)僕。)
フィービー: Oh, witty banter. Well done. Good. (まぁ、しゃれた冗談ね。よくできました。グッドよ。)
ジム: So, tell me a little bit about yourself. (それで、君のこと、ちょっと教えてよ。)
フィービー: Oh okay, well I'm a masseuse. And I used to work at this place-- (えぇ、いいわ。そうね、私はマッサージ師なの。それから、私は以前、ここで働いてたんだけど…)
ジム: Do you like to party? (盛り上がって騒ぐの、好き?)
フィービー: I-I-I like, I like parties. (私、私はパーティーは好きよ。)
ジム: You're wild, aren't ya? (君ってワイルドなんだろ?)
フィービー: Yeah I guess. A little. (えぇ、そうね。ちょっとはね。)
ジム: Ain't no thing. I'm wild too. (いいんだよ。僕もワイルドだ。)
フィービー: (a little freaked out) So! Umm, anyway I-I, I've lived in New York, somewhat wildly, I guess, for umm-Well since I was fourteen. ([ちょっとビビって] それで! うーん、とにかく、私はずっとニューヨークに住んでるの、いくらか、ワイルドにね、そう、私が14歳の頃から。)
ジム: I'm sorry. I'm staring. It's just that you have the most beautiful eyes. (ごめんね。僕、見つめてたんだ。ただ君が、一番きれいな目をしてるから。)
フィービー: Oh, stop it. (まぁ、やめてよ。)
ジム: And your breasts! Hmm!!! (それに君の胸! んー!)

まず最初に、セリフとは関係のない話なのですが、ジム・ネルソンを演じている俳優さんは、
James LeGros(ジェームズ・レグロス)という人で、この俳優さんは、アリーmy Love(原題:Ally McBeal)で、マーク・アルバート役で28エピソードに登場していました。
いわば、準レギュラーですね。
アリーへの出演が、2000年から2001年にかけてで、今回のフレンズは2002年放映ですから、アリーに出演していたわりとすぐ後に、フレンズにゲスト出演した感じになるでしょう。
過去記事、きれいな歯 アリー3-17+フレンズ1-1その4 で、マーク・アルバートとアリーの会話を取り上げたこともあったので、アリーとマークをご存知の方は、その過去記事も併せてお読みいただけると幸いです。

run into は「ばったり出くわす、偶然出会う」という感覚なので、「私たちがお互いにばったり出くわしてばかりなのって面白くない?(面白いわよね?)」と言っているニュアンスになります。
そして、「まるで誰かが私たちを一緒にしたがってるみたい」とも言っていますね。
それに対してジムは、Someone does. Me. と言っていますが、それは、「確かに誰かが、僕たち(君と僕)を一緒にしたがってるよ。その誰かっていうのは僕だ」と言っていることになります。
フィービーは、「誰かが私たちを一緒にさせるために、何度も出会うように仕向けている」のような言い方をしていて、運命が、もしくは神様が、私たち二人を一緒にさせたがってるみたいね、と言ってみせたわけですが、ジムはそれを「二人が一緒になってほしいと願っているのは、この僕自身なんだよ」と言って、フィービーと一緒にいたい、一緒にいると嬉しいということを表現していることになります。
それを聞いたフィービーは嬉しそうに、witty banter と言っていますね。
witty は wit 「ウィット」の形容詞形で、「ウィット(機知)に富んだ、気の利いた、しゃれた」という意味。
banter は「(悪意のない、才気のある)冗談」。
Macmillan Dictionary では、
banter: friendly conversation in which people tell jokes and laugh at eath other
つまり、「人が冗談を言い、お互い笑い合うような会話」。

ジムが「ちょっと君のこと教えてよ」というので、フィービーは自分のことを話しています。
I used to work at this place-- と言っていますが、そう言いながら、左手で店の奥の方を指さすようなしぐさをしているように思います。
なので、この at this place は、文字通り、「この場所で、この店で」という意味のようですね。
自分の体験を物語調に語る時に、a の意味で this を使うことがあるのですが、今回の場合は、「ある場所」ではなく、「この場所」を指しているような気がした、ということです。
今フィービーがいるのはレストランなので、「私はマッサージ師で、かつてはこの店でウェイトレス(など)として働いていたこともある」みたいなことを言いたかったんだろうと思いました。

ジムは、話をさえぎるようにして、Do you like to party? と尋ねています。
ちょっと口をゆがめて、何となくいやらしい感じ(笑)でそう言っているので、観客からも笑い声(ラフトラック)が起きています。
ジムは、Do you like to party? と質問し、フィービーはその質問に戸惑ったように、I-I-I like, I like parties. と答えていますが、この質問と答えでは、party の品詞が違っていることに注目しましょう。
ジムの方は、like to party なので、party が動詞として使われていて、フィービーの方は普通にパーティーという名詞になっています。
party を動詞として使うと、文字通り「パーティーをする or パーティーへ出かける」という意味になるのですが、それ以外にも、「(パーティーなどで)盛り上がる、騒ぐ」という意味でも使われます。
唐突に「パーティーで騒ぐの好き?」みたいに言われたので、「盛り上がって騒ぐの大好きよ」と答えるのではなく、「パーティー? ええ、パーティーは好きよ」とわざと名詞で普通のパーティーっぽく答えたことになるでしょう。
さらにジムが、「君はワイルドなんだろ?」(ワイルド、、って、スギちゃんみたいですが^^)とも尋ねるので、フィービーもちょっと質問が変な方向に行っているのを感じたのでしょうね、「ええ、そうね。少しはね」と、軽くかわす感じの返事をしています。

Ain't no thing. の ain't は、am not, aren't などさまざまな否定形の非標準用法ですが、ここでは、(It) isn't no thing. ということになるでしょう。
「えぇ、まあ(ワイルドよ)。ちょっとだけね」と言った後に、「僕もワイルドだ」と言っていることから、この Ain't no thing. は「大したことはない、問題ない、気にすることはない」的な意味だと想像できるわけですが、この英文を直訳しようとすると、「no thing ではない」と言っている、つまり、「否定の否定」で肯定の意味として「thing である」と言っていることになりそうなのですが、、、。

これはラフな会話で使われる二重否定で、not と no のように2つ否定語を使っているけれども、その二つが「否定×否定」で打ち消し合って「肯定」になるわけではなく、「否定を強調」した感覚になります。
「否定の意味になる二重否定」は、「フレンズ」ではあまり出て来ませんが、映画「インデペンデンス・デイ」(ID4)では、グランド・キャニオンでのエイリアンとのチェイスシーンで、
0:58:57 They ain't got nothin' for us! (字幕:追いつかれるな!)
1:00:24 You can't hit nothin'! (字幕:当たってねえぞ!)
というセリフも出てきました。
どちらも、ウィル・スミス演じるスティーブン・ヒラー大尉のセリフでした。

このような「二重否定で否定を強調」するニュアンスは、黒人英語でよく使われる用法のようです。
私がそのことを初めて知ったのは、ジャパンタイムズの「週刊ST 2002年5月17日号」の「STシネ倶楽部」で、映画「アリ」(原題: Ali)のセリフをとりあげている記事を読んだ時。
「アリ」は、ボクサー「モハメド・アリ」のことで、アリを演じていたのはウィル・スミス。(上でとりあげた ID4 のセリフも、ウィル・スミスのものでしたね^^)

私はその映画そのものは見ていなかったのですが、翻訳家の岡山徹さんが解説されているその記事の中で、以下の興味深い記述がありました。
英語難易度は☆3つ。ain't の連発、二重、三重否定は当たり前のかなり文法無視の黒人英語と、文化背景がやや複雑。
そこで紹介されていたセリフは以下のようなものでした。
I ain't never shot nothing in my life. 俺は生まれてこの方、鉄砲のテの字も撃ったことはないね。
I ain't got no quarrel with them Vietcong. 俺はべトコンに別に恨みは持っちゃいないね。

上のセリフは、ain't, never, nothing の三重否定、下のセリフは、ain't, no で二重否定になりますね。
どちらも否定の意味で、否定語を二重、三重と重ねることで、否定を強調していることになります。
今回のジムの Ain't no thing. は、アリの下のセリフに似た感じだと言えるでしょう。

上の例に出したのは、たまたまどちらも、ウィル・スミスが演じる役のセリフになってしまいましたが、「ウィル・スミスみたいな感じのキャラクターが使いそうな言い回し」だと言うこともできそうですね。
そういう英語には「ラフな感じ」が漂っていますが、今回のフレンズでも、変な質問ばかりしてニヤニヤしているジムのセリフとして、「ラフでワイルドな感じ」を出すために、ain't no という二重否定が(脚本上)使われているのだろうと思いました。

フィービーは、ジムのおかしな様子にビビりながらも、14歳の頃からニューヨークに住んでるの、と言っています。
さきほどのワイルドの話も、lived in New York, somewhat wildly のように、ちょっと盛り込んでみせているのが面白いですね。

話を聞いていなかった様子のジムは、「ごめん、見つめてたんだ。君が一番きれいな目をしてるから」みたいに言っています。
それまでちょっとビビっていたフィービーも、「一番きれいな目を持つ人」みたいに言われるとやはり嬉しいようで(笑)、「やめてよ」と言いながらも嬉しそうな顔をしていますね。
それで終わっていたら良かったのですが、その後、「それに君の(その)胸!」みたいに言って、「もーぉ、たまんない!」みたいな表情と声で、Hmm!!! と言うので、またフィービーはヒイてしまうことになります。

このジムの「変な人ぶり」は、映像を見ているだけでよくわかりますが、セリフも含めて、「わぁ、この人、ちょっとヤバそう」とわかるといい感じですね。
特に最後の「目と胸」のセリフのギャップが英語で聞き取れると、より楽しめると思います。


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posted by Rach at 17:30| Comment(2) | フレンズ シーズン8 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする