2015年10月30日

これで残された選択肢は〜になる フレンズ9-22その6

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チャンドラーは、精子ドナーの候補として、同僚のザックを家の夕食に招待し、モニカに彼のことを知るチャンスを与えようとします。
いろいろ質問攻めにされたザックが帰った後、「ザックに精子ドナーの件を頼もうか?」と言ったチャンドラーに、モニカははっきり「いいえ」と返事し、「もしあなたとの子供を妊娠できないのなら、彼とか他の誰かによって妊娠したくはない」と言います。
チャンドラー: (sighs with relief) Oh. Thank God, because I don't wanna do this either. You know, I was just doing it because I thought that was what you wanted to do. You know, I'm the husband. I'm supposed to... bring the sperm. ([安心したようにため息をついて] あぁ、良かった。だって俺もこんなことはしたくなかったから。ほら、俺はただ、それが君のしたいことだと思ってたから、そうしただけなんだ。ほら、俺は夫だろ。夫は精子を運んでくることになってるからさ。)
モニカ: That is so sweet. I love you. (they kiss) (それってとっても優しいわ。愛してる。[二人はキスする])
チャンドラー: So you know this leaves us with.... (それじゃあ、これで俺たちに残されたのは…)
モニカ: Adoption. (養子ね。)
チャンドラー: How do you feel about that? (それについてはどう思う?)
モニカ: I think I feel okay about it. Actually, I think I feel really good about it. (それについては問題ないと思うわ。実際、それってすごくいい感じだと思うの。)
チャンドラー: Me too. I wanna find a baby that needs a home, and I wanna raise it with you. And I wanna mess it up in our own specific way. (俺もだよ。家が必要な赤ちゃんを見つけたいし、そしてその子を君と一緒に育てたい。それから俺ら独自のやり方で、その子をいじくり回したいよ。)
モニカ: So this is it? We're really gonna adopt? (じゃあ、これで決まりね? 私たち本当に養子を迎えるのね?)
チャンドラー: (smiling) Yeah. ([微笑みながら] あぁ。)
モニカ: (excitedly) Oh, my God! We're gonna be parents! ([興奮して] なんてこと! 私たち、親になるのよ!)
チャンドラー: We are gonna be great parents. (俺たちは素晴らしい親になるよ。)
モニカ: And it could be soon. I mean, think about it. Right now, somewhere out there (they go look through the window) our baby could be being conceived. (それに、それはすぐかもしれないわ。ほら、考えてみて。たった今、世界のどこかで [窓越しに外を見る] 私たちの赤ちゃんがみごもられている最中かもしれないわよ。)
チャンドラー: Wait. If we're lucky, and we're really, really, really quiet, we may be able to hear the sound of a condom breaking! (待って。もし俺たちに運があって、本当に本当に本当に静かにしていたら、聞こえるかもしれないよ、コンドームの破れる音が。)
(they hug)
二人はハグする。

精子ドナーの候補として、ザックを推薦することにばかり気を取られていたチャンドラーでしたが、モニカがはっきり「あなたとの子供でなければ、妊娠したくない」と言ったので、チャンドラーはモニカの本心にようやく気付いた様子で、「あぁ良かった(ありがたい)、だって俺もこんなことはしたくなかったから」と言っています。
続いて、「したくなかったけれど、そうした理由」について語っていますね。
その理由は、「それが君のしたいこと(望むこと)だと俺は思っていたから(俺はただそうしただけだ)」。
その後も、「俺は夫だ。夫である俺は精子を運んでくることになっているから」と続けます。
DVDの日本語訳では、
(字幕)夫として精子を調達した/(音声)だって、夫のつとめだろ。精子を運ぶのは。
と訳されていましたが、まさにそういうニュアンスですね。
本来、妊娠のために夫は精子を提供するけれど、俺は自ら提供できないとわかったので、他から調達できるように夫として頑張った、みたいなことを、ちょっと冗談めかして言っていることになります。

「俺はこんなことしたくなかったけど、君が望んでいるんだと思ってそうした」「調達するのが夫のつとめだと思った」という発言は(冗談めかしているものの)彼の正直な気持ちだったのでしょうね。
チャンドラーが必死にザックを推薦し、モニカが前向きではない態度を見せると、「俺より彼の方がずっといいじゃん!」という自虐的発言までして、彼をプッシュし続けたのも、「子供が欲しいというモニカの望みを叶えたかった」一心なのだろうと思います。
「彼(ザック)はあなたじゃないもの」というモニカの発言の意図に気づくことなく、「俺よりザックの方がいいって!」と彼を推薦し続けた、という描写も(もちろんコメディとしての面白さを出す目的もあるでしょうが)、「チャンドラーはモニカの願いを叶えてあげたくて必死だった」部分が出ていた気がします。

「精子を運ぶのは夫のつとめ」などとジョークにしながらも、自分の気持ちや考えを伝えたチャンドラーに、モニカは「それってとっても優しいわ。愛してる」と言ってキスします。
ザックを紹介し、推薦するという一連の行動は、コメディとしてところどころで笑いのポイントになっていましたが、その根底に流れる「モニカのためにやった」という部分を、モニカがしっかり理解し、それに対して感謝の言葉を述べたということですね。

チャンドラーとモニカは、"So you know this leaves us with...." "Adoption." と言っていますが、モニカが Adoption と言うことで、文章が完成した形ですね。
leave A with B の形で、「A(人)に B(もの)を残す」という意味になります。
leave A B のように、前置詞なしで「A に B を残す」という形でも使えるのですが、今回のような with B という形も可能です。
これについては、研究社 新英和中辞典に、以下のように出ています。

leave
(3) 〔+目+目 / +目+for+【(代)名】〕〈人に〉〈…を〉残す
He left her nothing.=He left nothing for her. 彼は彼女に何も残さなかった。
I was left no choice.=No choice was left (for) me. 私には選ぶべき道が残されていなかった。
(5) 〔+目+with+【(代)名】〕〈人に〉〔ものを〕残す
The payment left me with only one dollar. 支払ったら1ドルしか残らなかった。
They were left with nothing to eat. 彼らには食べ物は何も残されていなかった。


今回のセリフは、this leaves us with adoption なので、「これ(このこと=精子ドナーの方法は採用しないこと)が、俺たちに養子(という方法)を残す」と言っていることになります。
つまり、「これで俺たちに残されたのは…」「養子ね(養子ってことになるわね)」と二人で言っているわけですね。

「養子という方法について、どう感じる? どう思う?」と聞かれて、モニカは、I think I feel okay about it. Actually, I think I feel really good about it. と言っています。
どちらも feel 〜 で、「〜だと感じる・思う」と言っているのですが、前半で okay と言った後、後半で、okay というよりも、really good ね、と言い直している感覚ですね。
feel okay の方は、「オーケーと思う」ですから、「悪くないと思う、問題ないと思う」というところでしょう。
そう言った後、「でもよく考えてみたら、実際にはこっちね」という感じで、「養子については、すっごくいいなと感じると思う」と言い直したことになります。
他に方法がないから、それでいいんじゃない? のような消極的な賛成ではなく、「養子って方法は、実はすごくいい方法なんじゃないかしら」と言ったわけですね。

チャンドラーもそれに同意して、I wanna という言葉を3回連続して使って、「あれもしたい、これもしたい、それもしたい」と、あれこれしたいことを挙げることになります。
I wanna find a baby that needs a home は、「家(家庭)が必要な赤ちゃんを見つけたい」、I wanna raise it with you は、「その赤ちゃんを君と育てたい」ですね。
親に事情があって子供を育てられない場合に、他の夫婦の養子として養子縁組を行うことになるので、それを「自分を育ててくれる家庭を求めている赤ちゃんを探したい。自分たちがその子を受け入れる家庭になりたい」と言っていることになります。
raise は「持ち上げる」「高める」という他動詞ですが、子供の話だと、「子供を育てる、養う」という意味になります。
raise it の it = a baby ですが、この場合は、その養子となる赤ちゃんの性別がわからないので、中性の代名詞である it を使っていることになりますね。
性別がわかった時点で、him/her などの人称代名詞を使うことになりますが、わからない間は it を使う、ということになります。
mess up は「めちゃめちゃにする」というニュアンス。
チャンドラーのセリフを直訳すると、「俺たち独自のやり方で、その子をめちゃくちゃにしたいよ」と言っていることになりますが、これは「破壊する、傷つける」タイプのめちゃくちゃにする、ということではなく、かわいらしい赤ちゃんにいろいろちょっかいかけて、こねくり回していじくり回して、、ってしてみたいな、と言っている感覚になるでしょう。
よその子だったら、好き放題にいじくれないけれど、うちの子になったら自分たちの好きなようにできちゃうよね、というのを、mess up という表現を使って言っていることになるでしょう。

So this is it? We're really gonna adopt? の So this is it? は、自然な日本語にすると、「それじゃあ、これで決まりね?」が一番しっくり来るでしょうか。
this は「養子を迎えること」で、it は「自分たちが求めているもの、自分たちが頭の中でイメージしているもの」という感覚です。
待ちに待っていたものがついにやってきた、という場合にも、This is it! 「いよいよだ!」と言ったりしますが、「これが、自分(たち)が望んでいたもの、求めていたものである」という感覚が、this is it なわけですね。

「私たち、本当に養子を迎えることになるのね?」と嬉しそうにモニカが言い、チャンドラーも優しく微笑みながら、それに同意しています。
モニカが興奮気味に、We're gonna be parents! と言うと、チャンドラーは、それに great を付け足して、We are gonna be great parents. と言っていますね。
直訳すると、「私たちは親になる!」「俺たちは素晴らしい親になる」ということですが、もう少し、ドラマティックな感じにすると、「私たちは親になる!」「あぁ、それも素晴らしい親にね」という感じになるでしょう。
モニカとほぼ同じセリフを言っているのですが、great を強調して強めに発音することで、「ただ、親になるだけじゃない、俺たちは”素晴らしい親”になるんだよ」と言っていることになりますね。
俺たちならきっといい親になれるさ、だからこれから二人で頑張って行こう、という気持ちから出た言葉でしょう。

it could be soon は「間もなく、という可能性もある」ということですから、「私たちが親になるのは、もうすぐかもしれない」ということ。
「だってほら、考えてみて。たった今、(外の、この世界の)どこかで」と言いながら、二人で窓の方へ行き、our baby could be being conceived. と言っています。
conceive は「考える、思う」という動詞ですが、妊娠出産関係では「子をはらむ、宿す、みごもる」という意味で使われます。
could は「可能性」を表わし、be being conceived は、be being の部分が「be動詞+ -ing 形」の「進行形」で、be conceived は「be動詞+過去分詞」で「受動態」を表わしていることになります。
つまり、be being conceived は「(私たちの赤ちゃんが)みごもられているところである、みごもられている最中である」という「受動態の進行形」(〜されているところである)になりますね。
赤ちゃんがみごもられているところである、というのは、カップルが赤ちゃんができるような行為をしているところである、ということで、要はエッチしているところ、ということですが、そのカップルではなく、赤ちゃんの方にモニカの意識は向いていますので、赤ちゃんを主語にした「受動態の進行形」が使われたことになります。
ダイレクトに言ってしまえば「今、どこかのカップルが、私たちの子供を作っている最中かもしれないわ」という内容を、赤ちゃんを主語にして、conceive 「みごもる」という言葉を受身形にして使っているという表現の面白さになるでしょう。

それを聞いたチャンドラーは、「待って。もし俺たちがラッキーで、俺たちがすっごくすっごく静かにしていたら、〜の音が聞こえるかもしれないよ」と言っています。
「静かにしていたら、聞こえるかもしれない」ということなので、これがクリスマスであれば、「サンタさんのソリの鈴(sleigh bells)の音が遠くからかすかに聞こえる」と続きそうなロマンティックな雰囲気なのですが、最後まで聞いてみると、その音とは、the sound of a condom breaking 「コンドームの破れる音」のことだった、というオチですね。

「ついに私たちは親になるのね。子供が持てるのね!」と喜び合っている時に、ロマンティックとは言い難いリアルな話のオチですが、それもまた、フレンズっぽいところなんだろうなと思います。
日本のドラマでは、「妊娠したこととコンドームとの関係」などが言及されることはあまりなく、「妊娠した=避妊していなかった(コンドームを使っていなかった)」ということが暗黙の了解みたいになっていて、劇中でわざわざその部分が説明されることなどありませんが、アメリカのドラマでは(性教育上も使用を促すことが必要だからでしょう)コンドームなどの避妊の話がはっきり出てきます。
レイチェルが、ロスとの間の娘エマを妊娠した時、ロスは「僕たち、コンドームを使ったのに、どうして妊娠したの?」と大騒ぎしていました。レイチェルに「コンドームが有効なのは 97% くらい」と言われ、さらに大騒ぎしていましたね。
ロスから 97% の話を聞いたジョーイは、その注意書きを確かめるために、ポケットから大量のコンドームを取り出していましたが、「プレイボーイのジョーイだからこそ、常に携帯している」みたいな描写をするところも、アメリカ的だな、と思うわけです。
養子に迎えることになる赤ちゃんは、実の親に事情があって育てられない環境にあるわけで、「予期せぬ妊娠」だった場合が多いわけですね。
そういう意味でも、「コンドームを使用していたが、それが破れてしまった」というのは、「妊娠しないようにしていたが、子供ができてしまった」という予期せぬ妊娠と大きく関連しているわけで、わざわざ「コンドームが破れた」と言及することで、「そういう行為をする場合は、普通はコンドームを使っているはず」という大前提が存在することを示唆している気がします。
日本のドラマだと、避妊方法うんぬんの話をするのはリアル過ぎる、ということで敬遠されるのでしょうが、アメリカではそういう部分をはっきり言いますし、今回のセリフもその一環だと感じました。


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posted by Rach at 14:57| Comment(0) | フレンズ シーズン9 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月28日

確かに完璧に見えるわね フレンズ9-22その5

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チャンドラーとモニカは、精子提供者としてザックが適切かどうかを知るため、健康に関する細かいことを、あれこれザックに尋ねて質問攻めにします。
それにうんざりしたザックが逃げるように帰った後、
チャンドラー: I think we found our sperm! (俺たちの精子を見つけたよね。)
モニカ: He does seem pretty perfect. (確かに彼はかなり完璧(パーフェクト)に見えるわね。)
チャンドラー: Yeah? You think so? Well? Should I ask him? (そうだろ? 君もそう思う? で? 彼に頼もうか?)
モニカ: (pause) No. ([間があって] いいえ。)
チャンドラー: Why not? Just because his great-grandmother was obese? Our kids are gonna get that from you anyway! (どうしてノーなの? ただ彼のひいおばあちゃんが肥満だったから? どのみち、君に似て、俺たちの子供はそんな風になるよ!)
モニカ: No, that's not it. It's just that when we were asking him all those questions before, I just... I just realized I don't care if he is the most perfect guy in the world. He's not you. (いいえ、そういうことじゃないの。ただ、さっき私たちが、彼にああいう質問をしていた時、私はただわかったの、彼が世界中で最も完璧な男性かどうかなんて関係ない、って。彼はあなたじゃないもの。)
チャンドラー: Yeah, he's better! (あぁ、彼は俺よりいいよ。)
モニカ: No, he's not. And if I can't get pregnant with you, then I don't want to get pregnant by... him or anyone else. (いいえ、そんなことないわ。それにもし私があなたとの子供を妊娠できないのなら、彼とか他の誰かによって妊娠したくはないの。)
チャンドラー: Really? Are you sure? (ほんとに? 本気なの?)
モニカ: Yeah, I'm sure. (えぇ、本気よ。)

ザックが帰った後、チャンドラーはモニカに、「俺たちの精子を見つけた、って思うよ」と言います。
それに対してモニカは、He does seem pretty perfect. と返します。
does は seem を強調していて、「彼はかなり完璧に見える、思える」の「そう見える、そう思える」というところを強調していることになります。
seem については、研究社 新英和中辞典に、以下のような言葉で説明されています。
seem は通例話し手の推量をこめた見方・判断を示す語
seem は通例話し手の主観的判断を表わす

He is pretty perfect. 「彼はかなり完璧ね」のように be動詞を使うのではなく、あえて seem を使うことで、「実際にそうであるかどうかではなく、とりあえず、私の目にはそう見える」のように、「見たところ、思うに、彼は完璧みたいね」と言った感覚になるわけですね。

seem を使い、さらにはそれを強調する does まで加えているので、「確かにそう見えるわね」という部分を強調していることになり、また、それを言っているモニカの言い方や表情が、嬉しそうなチャンドラーとは対照的に、どこか冷静であることも、このセリフのポイントとなるでしょう。
「確かにそう見える」という何だか含みのある言い回しを使っていますが、彼に対する評価が悪くないことは明らかなので、チャンドラーは、「君もそう思うよね? 俺が彼に(ドナーの件を)頼もうか?」と言っています。

それに対してモニカは、非常に真剣な顔をして、しばらく間を置いてから、No. としっかり否定します。
Why not? は文字通り、「どうして not なの? どうしてダメなの?」ということですね。
Just because his great-grandmother was obese? の obese は「太った、太りすぎの、肥満した」という形容詞で、名詞形は obesity 「肥満」になります。
Just because...? は、「それってただ、〜(という理由)だから?」と問い返す感覚ですね。
つまり、「彼をドナーにすることを拒否する理由は、彼のひいおばあちゃんが肥満だったから?」と言っていることになります。
ザックが精子ドナーとして最適かどうかを確認するのに、彼の家系の人の病歴などを尋ねまくっていたシーンがこの前にあったので、その流れで「そんな縁遠い人の肥満がどうのこうの」と言っている面白さになるでしょう。

Our kids are gonna get that from you anyway! を直訳すると、「俺たちの子供は、どのみち(どうせ、いずれにしても)、君から受け継いで(from you)、そうなる(get that、肥満になる)ことになる」というところですね。

「ザックが精子提供者となった場合でも、卵子を提供するのは君(モニカ)だから、ザックのひいおばあちゃんの肥満歴があるなしにかかわらず、どうせ君の遺伝子を受け継いで、その子(俺たちの子)は肥満になっちゃうんだから」→「相手が誰であっても、君の子なんだから太るに決まってる」と言っているわけで、それで観客からも、「それを言っちゃうかぁ〜?」みたいな歓声が起こっているわけですね。
「君の子供は肥満になると約束されてる」みたいに言われたモニカは、本来ならば少し怒っても良いところですが、今回はそれを聞いて何だか嬉しそうに笑っています。
「もし彼の家系の肥満の遺伝子を気にしてるんだとしたら、そんなの気にする必要ないよ」みたいなことを、チャンドラーらしいジョークで言ってみせたのが、何だか微笑ましいと感じた、というような笑顔ですね。

その後、モニカは、「そういうことじゃないの。ただこういうことなの」と言って、モニカが感じている正直な気持ちを語り始めることになるのですが、最初の No, that's not it. という表現が、とてもネイティブっぽいなと感じました。
that はその前にチャンドラーが言った内容を指しており、it は「今、話者の頭の中で、重要なポイント・焦点となっている事柄」を指します。
「あなたが言った内容は、私が言おうとしたことじゃない」「私が言いたかったのは、私が思っているのは、そういうこと(あなたが言ったようなこと)じゃない」という感覚ですね。
このような、that や it が何を指すかという感覚については、(宣伝になって申し訳ないのですが)拙著「読むだけ なるほど! 英文法」の p.69 This is it. That's it. の部分で詳しく説明しています。

次のセリフ、It's just that... は長い文章ですが、シンプルな構造にすると、It's just that when..., I (just) realized 〜 「ただ、…した時に、私は〜だと気づいた(わかった)というだけのことなの」になるでしょう。
それぞれの内容を詳しく見ていくと、when 以下は、「さっき私たちが彼(ザック)にああいう(全ての)質問をしていた時」、そして、「〜だと気づいた」内容は、「彼が世界で一番完璧な男性かどうかなんて関係ない(どうでもいい)」ということ。
その後、「彼はあなたじゃないもの」とも言っています。

ここで、「彼が世界で一番(最も)完璧な男性であるかどうかなんかどうでもいい」と表現していることで、少し前の He does seem pretty perfect. という意味ありげな言い回しをした理由がわかった気がしますね。
モニカがわざわざ、「確かにかなり完璧に見えるわね」というように、「彼が実際にパーフェクトかどうか」ではなく、「そんなふうに確かに見える、思える」という主観的な意見を述べたのは、「見たところはそんな風に見えるけれど、実際のところはわからないし、実際に彼が完璧であるかどうかは私にとっては重要ではない」という意識が、その時にすでにあったから、ということになるでしょう。
ザックをベタ褒めしているチャンドラーに話を合わせる形で「確かに完璧に見えるわね」と言っただけで、「実際に、本質的にそうであるかどうかはモニカにとっては興味のないことである」ということが、does seem という持って回った言い回しに出ていた、ということになると思うわけです。

「彼がどんなに素敵な人であっても、そんなことはどうでもいい。彼はあなたじゃないんだもの」というのは、「私にはあなたじゃなきゃだめなの」と言いたい感じが滲み出ていて、普通なら聞いている方もそのニュアンスを察しても良さそうなところですが、とにかくここでのチャンドラーは「俺の連れてきた友達が、ドナーとして最適かどうか」で頭がいっぱいらしく、「ドナーとして彼が否定されないように、されないように」と説得することに必死の様子。
「彼はあなたじゃない、あなたとは違う」みたいに言われたのを受けて、「あぁ、彼は俺と同じなんかじゃない。彼の方が(男性として)いいよ(ベターだよ)!」とまで言っています。
「俺なんかより、彼の方がずっといいじゃん!」という自虐的なことまで言って、ザックの「男性としての良さ」をアピールしているわけですね。

次のモニカの、No, he's not. は、その前のチャンドラーの発言、he's better を受けてのものなので、No, he's not better. 「いいえ、彼はあなたよりベターなんかじゃない」と言っていることになるでしょう。
「俺より彼の方がいい男だよ」みたいに言った自虐的発言を、「そんなことないわ。あなたの方が素敵よ」と、妻としてまずは訂正してあげた感じですね。

その次のモニカのセリフ、And if I can't get pregnant with you, then I don't want to get pregnant by... him or anyone else. について。
これも構造をシンプルにしてみると、if I can't... I don't want to〜 「もし…できないのなら、私は〜したくない」になりますね。
get pregnant 「妊娠する」という表現が出ていますが、前半の文では、get pregnant with で、後半の文では、get pregnant by のように、前置詞が異なっているところもポイントになると思います。
with と by の違いをあまり意識しないで、まずは大意を取ってみると、「もしあなたと妊娠できないのなら、彼(ザック)や他の誰かとも妊娠したくはない」という感じになるでしょう。
つまりは、「あなたとの間の子供を妊娠することができないのなら、他の人との間の子供を妊娠したくない」ということですね。
「あなた以外の人との子供なら要らない」と言っているわけですが、「妊娠して子供ができる」ことを get pregnant という言葉で表現する際、チャンドラーとの間の子供を妊娠する場合には、get pregnant with you と表現し、他の人の場合は、get pregnant by him/anyone else と表現しています。
with の方は、「あなたと一緒に、あなたの子供を二人で作って妊娠する」という共同作業的ニュアンス、「あなたと私の間にできた子供」という感覚が感じられますが、get pregnant by him のように by が使われた場合は、「彼によって妊娠するという状態になる、彼によって妊娠させられる」という感じが出て、by 以下の人物が、モニカが妊娠するという結果をもたらしたわけだけれど、そこには「その人との間の子供」というニュアンスは感じられない気がします。
with の場合は、二人の子供を作りたいと願う相手で、by の場合は、子供を作るのに必要な男性、という感覚の違いに思えます。

子供が欲しいということで、精子ドナーの件を考えてみたけれど、「とにかく子供を作りたい」ということであれば、by him で妊娠できるけど、「私はあなたとの間の子供が欲しかった(with you)」ので、with you が不可能であれば、by him という手段は選びたくない、と言っていることになるでしょう。
妊娠すること、子供を身ごもることがまずは先決、みたいになってしまっていたけれど、自分が望んでいたことは何だったか? に今になって気づいた、ということなのだろうと思います。
チャンドラーとの間に子供ができることと、ドナーの男性の助けを借りて子供ができることの違いを、with/by という前置詞の違いで表現した、ということですね。


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posted by Rach at 15:09| Comment(0) | フレンズ シーズン9 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月26日

跡を付けたくないからコースターを フレンズ9-22その4

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[Scene: Monica's apartment, Chandler walks in with a friend of his while Monica is putting fruit in a bowl.]
モニカのアパートメント。チャンドラーは自分の友人と一緒に入ってくる。その時、モニカはボウルにフルーツを入れている。
モニカ: Hi, honey! (はい、ハニー!)
チャンドラー: Hey! Look, I brought a friend home for dinner. This is Zack from work! (やあ! ねぇ、夕食のために[夕食に誘おうと]、家に友達を連れて帰ってきたんだ。こちらは職場のザックだ!)
モニカ: Oh, of course. It's so nice to see you again, Zack! (あぁ、もちろん(そうよね)。またお会いできて本当に嬉しいわ、ザック!)
ザック: (shaking Monica's hand) You too. ([モニカと握手して] こちらこそ。)
チャンドラー: You guys haven't actually met before. But, boy! You're both polite! (pause) Go to have a seat, Zack. I'll get you a beer. (君らは実際には前に会ったことないよな。でもさ! 二人とも礼儀をわきまえてるね! [間があって] 席に着いてくれ、ザック。君にビールを持ってくるよ。)
モニカ: I got it. (私が取るわ。)
ザック: Thanks. (ありがと。)
チャンドラー: (to Mon) So Zack's pretty nice, huh? ([モニカに] それでザックはなかなかナイス(いい)だろ、な?)
モニカ: Yeah, I guess. (えぇ、そう思うわ。)
チャンドラー: So how would you like to have a baby that's half yours and half his! (それで、君が半分、彼が半分の赤ちゃんを持つことについてどう思う?)
モニカ: (turns around and she's quite shocked) Excuse me? ([見回して、かなりショックを受けて] なんですって?)
チャンドラー: Well, we're talking about sperm donors, and Zack may be the guy! I mean, look. He's intelligent, he's healthy, he's athletic. I mean, he's sperm-tastic! (うーんと、俺たちは精子提供者について話してただろ。で、ザックがその男(提供者)かもしれないんだ! つまり、ほら、彼は知的だし、彼は健康だし、彼は運動神経がいいし。つまり、彼はスパームタスティックなんだよ[精子の点で素晴らしいんだよ]!)
モニカ: Chandler, this is crazy! What did you even say to him! "Come up. Meet my wife! Give us your sperm!" (チャンドラー、こんなのクレイジーよ! 彼に何て言ったのよ? 「うちに来てよ! 妻に会ってよ! 俺たちに君の精子をくれよ!」)
チャンドラー: No, I invited him to dinner so you could get a chance to get to know him! You know? I mean, if we go through a sperm bank, you never meet the guy, get to check him out. (いいや、彼をディナーに招待したのは、君が彼を知るチャンスを持てるようにだよ! ね? つまり、もし俺たちが精子バンクを調べるとしたら、君はその相手に決して会うことはできないし、その相手をよく調べることもできないだろ。)
モニカ: Chandler! (チャンドラー!)
チャンドラー: I'm telling you, he's great! I mean, even if my sperm worked fine, I'd think he'd be the way to go! (つまりだな、彼は最高なんだよ! ほら、もし俺の精子が正常に[機能通り]働くとしても、彼が進むべき道だ[彼を選ぶべきだ]と俺は思うだろうな。)
モニカ: I'm not going to be a part of this! You can't just bring some random guy home and expect him to be our sperm donor! (こんなこと(話)に私は乗りたくないわ! ただ、適当な男性を家に連れてきて、その人が私たちの精子提供者になることを期待するなんて、できっこないわよ!)
チャンドラー: Okay! (わかったよ!)
モニカ: Uh! (あぁ。)
チャンドラー: (bringing the beer to Zack) Zack! ([ザックにビールを持ってくる] ザック!)
ザック: Thanks! Do you have a coaster? I don't wanna make a ring. (ありがと! コースターあるかな? 輪(の跡)をつけたくないんだ。)
(Monica hears that and is suddenly very interested in Zack)
モニカはそれを聞いて、突然、ザックに非常に興味を持つ。
モニカ: Tell me about yourself, Zack! (あなたのこと聞かせて、ザック!)

チャンドラーは家に人を連れてきて、「夕食に友達を連れてきた」と言い、「職場のザックだ」と説明しています。
このザックを演じているのは、ジョン・ステイモス、シットコム「フルハウス」のジェシーを演じている俳優さんですね。
過去記事、Have mercy! フレンズ9-20その6 で、フルハウスのジェシーの口癖である、Have mercy! という言葉が出てきた時に、「フレンズ9-22 に、ジェシー役のジョン・ステイモスがゲスト出演する」と書いたのですが、今回がそのゲスト出演になります。

ザックを紹介されたモニカが「またお会いできて嬉しいわ」と言うと、ザックも「こちらこそ」と言って、二人は握手するのですが、それを見たチャンドラーのセリフが面白いですね。
最初の部分は、「君たち二人は実際には以前に会ったことがない」。
But, boy! は「でも、すごいよ!」みたいなニュアンスですね。
You're both polite! の polite は「礼儀正しい、礼儀をわきまえている」という意味なので、「(でも)二人とも礼儀をわきまえてるよね!」と言っていることになります。
それは、「実際には二人は初対面なのに、以前に会ったことあるかのように親しげな挨拶をしている」ことを指しているわけですね。
DVDの日本語音声(吹替)では、「あれ、君たちが会うの、初めてだけど、二人とも大人だね」と訳されていましたが、まさにそういう感じですね。
「以前にお会いしたことありましたっけ?」などと不粋(無粋・ぶすい)なこと、野暮(やぼ)なことは言わず、ただの最初の挨拶に過ぎないんだからと、「以前に会ったことある風で、挨拶を交わしている」様子を、polite と表現していることになります。

ザックを席に着かせて、チャンドラーとモニカはビールを取りに冷蔵庫の方に行きます。
「ザックはなかなかナイス(な男)だろ?」と言うので、そうね、と普通に返事するモニカですが、その後、チャンドラーがものすごいことを言うので、モニカは驚きの声を上げています。
そのチャンドラーのセリフを前から順番にイメージすると、「それで、(ある)赤ちゃんを持つことについて君はどう思う? (その赤ちゃんというのは)半分が君のもので半分が彼のものなんだけど」という感じになるでしょう。
「半分がモニカで半分がザックの赤ちゃん」というのは、モニカとザックの間の子供、という意味なので、モニカはびっくりしたわけです。

チャンドラーは、「ほら、俺たち、精子提供者について話してたろ? 彼がその提供者(になる)かもしれないんだ!」と言っています。
その後、彼の長所となる「知的で、健康で、運動神経がよい」という項目を挙げた後、he's sperm-tastic! と言っています。
音を聞いているとわかりますが、これは、fantastic 「素晴らしい」と sperm 「精子」を合体させた、チャンドラーの造語ですね。
「精子の観点から見て素晴らしい」みたいなことを、そういう造語で表現してみせたわけです。

そんな衝撃的な話をさらりと言うチャンドラーに、モニカは「こんなのクレイジーよ」と言っています。
そんな理由で家に誘うなんて、一体彼に何て言ったのよ? とモニカは尋ねています。
「家に来い! 妻に会え! 俺たちに君の精子をくれ!」って言ったわけ? そんなの絶対クレイジーよ、とモニカは言いたいわけですね。

チャンドラーは「そんなことは言ってない」と否定した後、彼をディナーに招待した理由を述べています。
so you could get... がその理由で、「君が彼のことを知るようになるチャンスを持つことができるように(俺は彼をディナーに招待したんだ)」ということですね。
その後、それとの比較として、精子バンクの話を持ち出します。
go through は「検討する、(細かく)調べる」ですから、「(最適なドナーを求めて)精子バンクを調べるとしても、決してその相手に会うことはない」ということですね。
その次の、get to check him out の部分ですが、これは恐らく、前の文章の you never の続きで、you never get to check him out という意味で言っているのだろうと思います。(つまり、him = the guy)
その場合だと、「精子バンクなら、その相手に会うことができない(し)、その人物をよく調べることができるようにもならない」になるでしょうか。
get to は、先ほど出てきた、get to know him 「彼を知るようになる」のように「〜するようになる」という意味で使われますが、それ以外にも、「(許可を得て)〜できるようになる、〜できる機会・チャンスを得る」という意味でも使われます。
このセリフが、never get to check him out なら、「彼をよく調べることができるようにはならない」→「彼を調べる機会・チャンスがない」ということになるでしょう。

「精子バンクでは相手に会うことができないから、(今、目の前にいる)彼(ザック)を(今、君が)よくチェックしてみてよ!」のような解釈も流れ的には可能な気がしたのですが(つまり、him = Zack)、その場合だと、... you never meet the guy, so check him out! のように表現するように思うのですね。
「(だから)君が彼をチェックアウトしてよ(彼をよく調べてよ)」という命令文なら、「〜するようになる、〜できるようになる」という意味の get to は使わない、get to は不要である、という気がするのです。

精子ドナーを探す場合には、精子バンクという方法があるけれど、その場合は相手の男性に実際に会えないから、(さらにその先の)その人をよく調べたり吟味したりするところまで行きつかない、という意味で、「会えない、(だから) check him out するという状況にならない」のように、get to を使っているように思うわけです。

あきれた様子のモニカに対して、チャンドラーはさらに説得を続け、「つまり、彼は最高なんだよ!」と言った後、仮定法を使って説明しています。
even if my sperm worked fine は、「もし俺の精子がよく(機能通りに)働く[活動する]としても」。
the way to go は「進むべき道」ということですから、I'd think he'd be the way to go! は、「彼が進むべき道だろうと(彼を選ぶべきだろうと)俺は思うだろう」になります。
if ... worked, I would think というのは典型的な仮定法過去ですね。
チャンドラーの精子は実際には、work fine ではないため、このようにドナーの話をしているのですが、仮に俺のが正常に機能していた場合であっても、俺は彼をオススメするよ、と言っていることになるでしょう。

I'm not going to be a part of this! を直訳すると、「私はこんなことの一部になるつもりはない」ですから、「こんなことには関わりたくない、こんな話には乗りたくない」と、this という事柄に巻き込まれたくない、関係したくない、と言っていることになります。

random は日本語にもなっている「ランダム」で、「無作為の、適当な、でまかせの、任意の」という意味ですから、「どこかの適当に選んだ男性を家に連れてきて、その人に自分たちのドナーになってもらうことを期待することなんかできない」と言っていることになります。
You can't は、モニカのセリフの相手であるチャンドラーのことではなく、「人は、人間は、そんなことできない」という一般論を語っていることになるでしょう。

「適当に男性を連れてきて、その人をドナーにしよう! だなんて、そんなのできっこないわ!」とはっきり拒絶されて、チャンドラーは「あぁ、そうかい!」みたいに怒り、モニカも不満そうな顔をしています。
お互いに、「イーッ! だ!」とむくれている感じですね。

その後、チャンドラーがザックに緑のビール瓶を渡すと、ザックは、ありがとうと受け取った後、「コースターあるかな? リングを作りたくないんだ」と言っています。
make a ring は漠然とした表現ですが、その前にコースターの話をしていたことを考えると、「ビール瓶を直接テーブルに置くと、輪の跡がついてしまう」ということを、make a ring と表現していると想像できますね。

ザックのそのセリフを聞いたモニカが、ト書きにあるように突然、ザックに興味を示した風で、「あなたのこと、聞かせて、ザック!」と寄ってくるのが、このシーンのオチになります。

「テーブルに瓶の跡を付けたくないからコースターを使う」というところが、モニカの波長に合った、ということですね。
これについては、過去記事、フレンズ1-6その3 で、似たようなセリフが出ていました。
モニカ自身は否定しているものの、他の人が「どれほどモニカが神経質で几帳面か」という話をしている流れで、
チャンドラー: Someone's left a glass on the coffee table. There's no coaster. It's a cold drink. It's a hot day. Little beads of condensation are inching their way closer and closer to the surface of the wood.... (誰かがコーヒーテーブルにグラスを置き忘れる。コースターはない。冷たいドリンクだ。暑い日だ。水滴が木の表面に少しずつ近づいてくる…)
モニカ: Stop it! (やめて!)
という会話でした。
「コースターなしのグラスの水滴が垂れてきて、それが木のテーブルに…」だなんて、想像しただけで、やめて! と言いたくなる、ということで、モニカの神経質さがよく表れたやりとりとなっていました。
シーズン1の最初の頃の話なので、きっとファンの印象も強かったでしょう。
直前まで、「よく知りもしない人にドナーを頼むなんてありえない!」と言っていたのに、ザックが「コースターある?」と言ったことで、モニカが手の平を返したように、急にザックに興味を持ち始める、という流れも、この フレンズ1-6 のコースターのことが記憶にあれば、ものすごく納得できる言動だと思えますね。

上でリンクした、フレンズ1-6その3 は、2005年7月(ブログを開始して1か月くらいの頃)に書いたものですが、その記事の中で私は、
『ずっと後のエピソードで、モニカの部屋で「コースターが欲しいんだけど?」と聞いた男性のことを、モニカが一瞬で気に入ってしまうという話もありました。』
と書いています。その「ずっと後のエピソード」というのが、今回の「フレンズ9-22」のことでした。
ブログ開始当初は、シーズン9なんて行けるはずない、そんなにブログが続いているはずない、と思っていましたので、10年後の 2015年に、こうして「あの時言っていたのは、今回のエピソードのことでした」と言えるのは、私としては非常に感慨深いです。
こんなことが書けるのも、私にブログを続ける原動力を与えて続けて下さった読者の皆様のおかげです。本当にありがとうございます!

私の中では「フレンズ」で「コースター」と言えば、まず、フレンズ1-6 が浮かび、そのモニカの性格を踏まえた上での今回の フレンズ9-22 のザックのセリフへと繋がります。
「そういえば、似たようなセリフ、あったよね!」という「繋がり」が、シリーズものを見続ける楽しさであり、それに気づいて笑えるのが、見続けた者へのご褒美という気もしています。
これからもそういう「繋がり」をいろいろご紹介して、皆さんとシェアできるのを楽しみにしています♪


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posted by Rach at 14:51| Comment(2) | フレンズ シーズン9 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月23日

除外するなら知らなくていいよな? フレンズ9-22その3

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男性陣3人だけがセントラルパークにいるシーン。
チャンドラー: (sitting down on the couch) Ok. ([カウチに座りながら] よし。)
ジョーイ: All right. So how did it go at the fertility clinic? (よし。それで、不妊治療クリニックではどうだった?)
チャンドラー: Not as much fun as last time. Apparently, you only get porn if you're giving a sperm sample. (こないだほどには楽しくなかったよ。どうやら、精子サンプルを提供する場合のみ、ポルノが見られるようなんだよね。)
ロス: So-so what did the doctor say? (で、それで、医者は何て言ってたの?)
チャンドラー: Well, there's surrogacy, but Monica's dreamt her whole life of carrying a child, and she just felt that watching a surrogate would be... too hard for her. (うーん、代理母(っていう選択肢)があるんだけど、でも、モニカは(人生)ずっと、子供を身ごもることを夢見てきたから、代理母を見ていることはその…自分にとってあまりにも辛すぎるだろうってモニカは感じたんだ。)
ジョーイ: So you're ruling out surrogacy? (じゃあ、surrogacy(代理母)は除外するんだな?)
チャンドラー: Yeah. (あぁ。)
ジョーイ: So I don't have to learn what that means? (それじゃあ、それ(その言葉)がどんな意味かを俺は知る[学ぶ]必要はないな?)
チャンドラー: Aside from adoption, the only other choice is insemination, so... we're talking about sperm donors. (養子は別として、他の唯一の選択肢は(人工)授精なんだ。それで…俺たちは、精子提供者について話し合ってるんだよ。)
ジョーイ: Enough said. I'm there for you, man. Where is she, upstairs? (十分わかった。お前らのために俺はいるんだぞ。彼女はどこだ? 上の階か?)
チャンドラー: (stopping Joey) ah-ha! ([ジョーイを止めながら] ちょっと!)
ロス: How do you feel about all this? (この件に関してはどんな気持ちなの?)
チャンドラー: I wish there was an easier way for us to have a child, but I don't think there is one. (俺たちが子供を持つ、もっと簡単が方法があればいいのに、って思うよ。でも、(そういうものは)1つもないだろうって思うんだ。)
ジョーイ: Come on, Ross, be a good guy. Step up and do it! (おい、ロス、いい男になれよ! 一段階進んで、行動を起こせ!)
ロス: (puzzled) What? ([困惑した様子で] 何?)
(Joey moves close to Ross and whispers something in his ear)
ジョーイはロスに近づいて、何かを彼の耳にささやく。
ロス: (looking astonished) What? NO! I'm not gonna give them Ben! ([非常に驚いた様子で] 何だって? ダメだよ! 二人にベンはあげないよ!)

So how did it go at the fertility clinic? は、「不妊治療クリニックでは、どうだった?」と、クリニックでの様子を尋ねる感覚ですね。
how did it go at...? を直訳すると、「(その場所)では、状況はどのように進んだか?」と言っていることになりますので、そこでどのようなことが起こったかを尋ねる質問になるわけです。
俳優であるジョーイに対して、"How did the audition go?" 「オーディションはどうだった?」と尋ねるセリフもよくありますが、そのバリエーションということになります。

Not as much fun as last time. は、not as ... as 「同じほど〜ではない」ということですから、「こないだの(一番最近の)時と同じほどの fun (楽しみ、楽しいこと)ではなかった」、つまり、「今回は、前回ほど、楽しくなかったな」と言っていることになります。
何がどのように楽しくなかったかを、続いて説明していますが、その内容は、「どうやら、精子サンプルを提供する予定の場合のみ、ポルノがゲットできる、ということらしい」ということですね。
前回のエピソードでは(ブログ解説では飛ばしてしまったのですが)、クリニックで鉢合わせしたジャニスのセリフに以下のものがありました。
ジャニス: Oh! Sid is still in his room. I don't allow porn at home, so this is like a vacation for him. (まぁ! シド(ジャニスの夫)はまだ彼の部屋にいるわ。私は家でポルノを禁止してるから、彼にとってはこれは休暇みたいなものね。)
そのジャニスのセリフも、「彼はまだ部屋から出てこないけど、ポルノ鑑賞に夢中なんじゃないかしら。うちでは見ることができないから」と言っているわけですが、そんな風に、不妊治療クリニックに行くとポルノなどが見られたりする、ということは、こんな風にエッチ系のジョークとして使われることも多いですね。

「医者は何て言ってたの?」と聞かれたチャンドラーは、自分たち夫婦の状況を語り始めます。
「代理母(という方法)はあるんだけど」と言った後の、チャンドラーのセリフが何だかとても切ないですね。
前から順番に意味を見ていくと、Monica's dreamt her whole life of (doing) の has dreamt は、dream の現在完了形で、「彼女は、これまでの人生(の間じゅう)ずっと、〜することを夢見てきた」という「完了形の継続」の意味になります。
carry a child は「(女性が)子をはらむ、みごもる」なので、「モニカは今までずっと、子供をみごもることを夢見続けていた」ということですね。

she just felt that は「彼女はただこう(that 以下だと)感じた、思った」。
watching a surrogate の a surrogate は、a surrogate mother ということで、このように、mother をつけなくても、a surrogate という名詞形で「代理母」という意味で使うことができます。
代理母に関する名詞では、上に出てきた surrogacy もありますが、それは「代理母をする・行うということ(役割)」などの「事柄」を示す言葉であり、a surrogate は、a surrogate mother のことですから、まさに赤ちゃんをお腹に抱えている「みごもった女性」という「人」を示す言葉になります。
watch は、他の「見る」の意味である、see や look との違いとして、「動いているものを観察する」というニュアンスがありますので、watching a surrogate をくどく訳すと、「代理母(をしている女性)が動いている様子を見る・観察する」といった感覚になるでしょう。
too hard for her は「彼女(モニカ)にとって、あまりに辛すぎる」ですから、「代理母の姿を見ることは、自分にとってあまりにも辛すぎるだろうと、モニカはただ感じた」と言っていることになりますね。
自分の子供がその人のお腹にいると思えば、見ないではいられない、でも、私のお腹で育てたかった、という思いが強いので、代理母のお腹が日々大きくなっていく様子をずっと見ている(watch)のはきっと辛いだろうと今想像するだけでもわかる、と言っていることになるわけで、非常に切ないセリフになっていると思います。

So you're ruling out surrogacy? の rule out は「除外する」なので、「モニカがそう思ってるんだったら、いろいろな選択肢の中で、surrogacy っていうのは除外するんだな? 選択肢から外すつもりなんだな?」と尋ねていることになります。
そのジョーイの質問は、この話の流れからすると自然なものなのですが、その後の So I don't have to learn what that means? がここでのオチとなっています。
「それじゃあ、俺はそれ(その surrogacy という言葉)がどんな意味かを学ぶ(知る)必要はないんだな?」ということで、そのセリフから、「その言葉の意味を知らなかったんだけど、選択肢の候補から外れたんなら、これ以降の話にも出てこないだろうし、俺はその意味を知らないままでも構わないよな」と言ったことになります。

チャンドラーは選択肢の話を続けて、「養子は別にすると、(代理母の案が消えたので)他の唯一の選択肢が人工授精となる。それで俺たちは精子提供者について話し合ってるんだ」と言います。
精子提供者の話が出たところで、ジョーイはチャンドラーの話を遮るように、Enough said. と言っています。
直訳すると、「十分に言われた」ということですから、「もう何も言わなくていい。もう十分だ。よくわかった」という意味になりますね。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
enough said : used to say that there is no need to say any more because you understand everything
例) "Of course he got the job. His father's a Senetor." "Enough said."

つまり、「全てを理解したので、それ以上言う必要がない、ということを言うために使われる」。例文は、「もちろん彼はその仕事をゲットしたさ。彼の父親は上院議員だぜ」「よくわかった(それ以上は何も言わなくていい)」。

その後、ジョーイは、I'm there for you, man. Where is she, upstairs? と言っています。
前半を直訳すると、「俺はお前(たち)のために(そこに)いるんだぞ」というところですね。
there というのは具体的な場所を指すよりも漠然なニュアンスで、フレンズのオープニングの I'll Be There For You のように、「君のために、そっちに(君のそばに、君の近くに、君の方に、君のところに)いてあげるよ」という感覚になるでしょう。

「お前(ら)のために俺はいるんだぜ」と言った直後に、「モニカはどこだ? この上(階上)か?」と尋ねており、要は、「モニカは今、上の自分の家にいるのか?」と聞いたことになります。
そうやって、モニカの部屋に向かおうとするジョーイを、チャンドラーが止めていますね。
ジョーイは、「精子提供者が必要だってことだから、俺にそれを提供してくれ、って言いたいんだな?」と勝手に勘違いし、ジョーイは直接(笑)それを提供するために、つまり、モニカとエッチをするために、部屋に向かおうとした、ということですね。
すぐ、「そっち系」の方向に早合点してしまうところが、ジョーイらしいセリフになっていると思います。

ロスは「この件に関しては、どういう気持ちなの?」と尋ねています。
その質問に、チャンドラーは、I wish there was... というセリフで答えます。
I wish there was というのは、I wish I were a bird. 「私が鳥だったらなぁ」などで説明される典型的な仮定法過去ですね。
訳すと、「俺たちが子供を持つための、(ある)もっと簡単な方法があればいいのに」となります。
今、チャンドラーとモニカには、限られた選択肢しかなく、そのどれもが簡単な方法ではありません。
「今、医者から言われているよりも、もっと簡単な方法」は、現実には存在しないため、「現実には不可能な願望を表す」 I wish there was という仮定法が使われていることになります。
普通は、「もっと簡単な方法があればいいのに」という仮定法で表現されていれば、実際にはそんな方法はないことが十分示唆されるのですが、今回のセリフでは、その後、はっきりと「(実際には)そういう方法はないと思う」と言っています。
日本語でも、「もっと簡単な方法があればいいのに、、」という形で文章を切ると、実際にはそんな方法はないらしいことが示唆されますが、それをさらに強めるように、「そういう方法があるとは思えないんだ、そういう方法はないと思うんだ」ということを、わざわざ付け足した形になるでしょう。
本当にそんな方法があったらいいのに! と思っているけれど、実際にはない、ということを、自分自身に言い聞かせるために言ったのかもしれない、という気もしますし、また、フレンズの脚本の流れ的に言うと、この後、「それより簡単な方法なんてないよね」を受ける形で、ジョーイがロスに話を振るので、その流れをスムーズにするための一文だったのかな、という気もします。

「簡単な方法なんてない」というチャンドラーの話を聞いたジョーイは、ロスに向かって、「おい、ロス。いい男になれよ」と言った後、Step up and do it! と言っています。
step up は「ステップアップ」というカタカナのイメージがあるように、「上がる、登る」というのが基本語義で、そこから「強める、強化する」というような意味にもなります。
今回は、一段上の段階に上がって、それをしろ、という感覚かなと思いました。
今までしなかったようなことにトライしてみろ、やってみろ、みたいなことかなぁ、と。
そう言われたロスは困惑した表情で、「何のこと?」と尋ね、ジョーイはロスの耳に何やらささやいています。
ジョーイが言った内容は聞こえないのですが、その後のロスのセリフで、ジョーイが言ったことがわかる、という仕組みですね。
ロスのセリフは、「何だって? ダメだよ! 僕は(自分の息子の)ベンを彼ら(チャンドラーとモニカ)にあげたりしない!」と言っているので、ジョーイが、「お前の息子のベンを、二人にあげたら?」などと提案したことがわかるわけですね。

フレンズはコメディなので、こんなシリアスな話題でもところどころでジョークが入ってきますが、それが「深刻な話が重苦しくなりすぎるのを避ける」効果となっているんだろうなぁ、と思いました。


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posted by Rach at 15:20| Comment(0) | フレンズ シーズン9 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月21日

居心地悪い環境とはまさにこのこと フレンズ9-22その2

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不妊治療クリニックで、チャンドラーとモニカが担当医から話を聞いているところ。
ドクター・コネリー: Ok, given your situation, the options with the greatest chances for success would be surrogacy or insemination using a sperm donor. (で、君たちの状況を考えると、成功の可能性が最も高い選択肢は、代理母か、精子提供者を使う(人工)授精だ。)
モニカ: (long pause) Okay. ([長い間があって] わかりました。)
ドクター・コネリー: And, of course, if you feel that neither of those is right for you, you could always adopt. (それから、もちろん、それらのうちのどちらも君たちには適切ではないと君たちが感じるのならば、いつでも養子をとることもできるよ。)
チャンドラー: Is that a hint? Because we love you, Doctor Connelly, but we don't think we want you to be our child! (Dr. Connelly glares at him) Wow! Talk about an inhospitable environment! (それって何かのヒントですか? というのは、僕らはあなたのことが大好きですよ、コネリー先生、でも、あなたを僕らの子供にしたいとは思いません! [ドクター・コネリーは彼をにらむ] わぉ! 居心地悪い環境、とはまさにこのことですね!)

given your situation の given は「〜を考えると、〜を前提とすると」という接続詞のニュアンスになります。
この場合は、「君たちの状況を考えると、the options would be... (選択肢は…だろう)」と言っていることになりますね。
the options には、もう少し説明の言葉が付け加えられていて、「成功のために最も大きな(高い)可能性を持つ選択肢」という意味になります。
surrogacy は「代理母(という任務)を務めること」を指し、子宮を提供する女性である「代理母」のことは、surrogate mother になります。
insemination は「授精」。
生物学において「じゅせい」という場合には、「受精卵」の「受精」の漢字が先に浮かぶと思うのですが、「じゅせい」という用語には「受精」「授精」という2種類の漢字があり、今回の insemination は「授精」の方になります(受精は、fertilization となります)。
その違いについては、Wikipedia 日本語版: 人工授精 の『「授精」と「受精」』の項目で説明されていますので、ご興味のある方はそちらをご覧下さい。

insemination が「授精」で、artificial insemination が「人工授精」という意味になりますが、今回は、a sperm donor 「精子提供者を使った授精」のことなので、あえて、artificial 「人工の」という言葉を使わなくても人工授精だとわかる、ということになるでしょう。
上でご紹介したウィキペディアの中に、非配偶者間人工授精(AID:Artificial Insemination by Donor)という用語も出てくるのですが、それがつまり、ドクター・コネリーが言っている insemination using a sperm donor のことですね。
参考までに、英英辞典の語義を見てみると、LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
inseminate : (BIOLOGY) to put sperm into a woman or female animal in order to make her have a baby
つまり、「(生物学)子供ができるように、女性または動物の雌に精子を入れること」。
artificial insemination : (BIOLOGY) the process of making a woman or female animal pregnant using a piece of equipment, rather than naturally
つまり、「自然によりもむしろ、装置を使って、女性または動物の雌を妊娠させる過程(プロセス)」。

自然妊娠の可能性が非常に低いという結果から、ドクターは2つの選択肢を示したわけですが、それが「代理母」か「精子提供者による人工授精」だとわかったので、モニカは、かなり長い間を置いてから、静かに、Okay. 「わかりました」と言っています。
「自然妊娠の可能性が低い」と言われたことから、ある程度、予期された選択肢だとは言え、やはり実際にその言葉を聞くと、それを Okay. と受け止めるのに時間が必要だった、という描写なのでしょう。
その後、ドクター・コネリーは、And, of course, if you... というセリフを言っていますが、構造をシンプルにすると、And, of course, if you..., you could〜 「そしてもちろん、君たちが…なら、君たちは〜することができる[〜することが可能だ]」ということですね。
前回と今回のシーンでは、「医者が患者に状況や選択肢を説明する」セリフが何度も出てきますが、そのどれもが、「相手にショックを与えないように、相手の気持ちが少しでも楽になるように、それでいて説明すべきことはもれなく説明してある」という内容のセリフになっているように感じます。
厳しい事実を冷静に告げる中でも、さまざまな挿入句や前振りのフレーズで、ワンクッション置いた感じになっているように思うわけですね。
お医者さんのセリフだと、どうしてもいかつい医学用語が頻出してしまい、私も先ほどそういう用語について解説したばかりですが、そういう難しい単語を調べて意味がわかったと安心してしまうのではなく、お医者さんの患者さんに対する「言い回し」のようなものから「話術」を学ぶ方が、英語学習者的には大いに意味があると思いました。

if you feel that neither of those is right for you は、「それら(代理母、精子提供者による人工授精)のどちらもが、君たちにとって適切(right)ではないと君たちが感じるのならば」ということですね。
この場合の right は、「正しいか間違っているか」の「正しい」というよりは、自分たちにとって「良い、適した、適切な、ふさわしい」という感覚になるでしょう。
「その選択肢がしっくりこない、自分たちに合っていると思えない場合は」というニュアンスですね。
you could always adopt の could は「君たちがその気になれば、できる」という感覚になるでしょう。
adopt は「採用する、採択する」というのが基本語義で、「(人を)養子にする、養子をとる・もらう」という意味にもなります。
always がついていることから、「君たちがその気になれば、いつでも養子を迎えることができるよ」と言っていることになりますね。

3番目の選択肢として「養子縁組」を挙げたドクターに対して、チャンドラーは、「それって(何かの)ヒントですか?」みたいに尋ねています。
Because... 以下は、「それってヒントですか?」と尋ねた理由を、「なぜ僕がそんなことを言ったかというと…」と表現している感覚になるでしょう。
Because 以下を訳すと、「僕らはあなたのことが大好きですよ、コネリー先生、でも、僕らは、あなたを僕らの子供にしたいとは思いません」になるでしょうか。
養子の話を持ち出したドクターに対して、「それは”私を養子に迎えてはどうですか?”っていう自己アピールですか? 先生のことは大好きですけど、先生を子供にするつもりはないですよ」みたいに言ったことになります。
そのジョークにニコリともせず、冷たい顔でチャンドラーをにらむドクター・コネリー。
その気迫に押されたように、チャンドラーは、Wow! Talk about an inhospitable environment! と言っています。
ネットスクリプトでは、Talking about と表記されていましたが、正しくは Talk about で、DVD英語字幕でも Talk about と表記されています。
この Talk about...! というのは、お決まり表現で、「まさに・実に・すごい…である」「…とはまさにこのことである」という意味になります。
過去記事、まさにこのこと トークアバウト フレンズ4-15その3 では、
ジャニス: I mean, talk about "meant to be." (つまり、まさに「運命づけられてる」っていうのはこのことね。)
という形で出てきました。

LAAD では、
talk about rich/funny/stupid etc. : used to emphasize that the person or thing you are talking about is very rich, funny stupid etc.
例) Talk about lucky. That's the second time he's won this week!

つまり、「自分が話している(内容の)人やものが、非常に、rich/funny/stupid などであることを強調するために使われる」。
例文は、「ラッキーとはまさにこのことだ。あれは今週彼が勝ったのの二度目だよ!(今週彼が勝利したのはもう二度目になるんだよ!)」。
たまたま、rich/funny/stupid などの例が挙げられていますが、要は、「ある人・あるものが、非常に〜である」という話をしている時に、そのことを強調するために使われるフレーズ、ということですね。

Macmillan Dictionary では、
talk about... : [phrase, spoken] used for emphasizing something
例1) Talk about cold - I was freezing!
例2) Talk about being lazy - she wouldn't move an inch!

つまり、「何かを強調するために使われる」。例文1は「寒いとはまさにこのことだ。凍えそうだったよ!」。例文2は「怠惰であるとはまさにこのことだ。彼女は1インチも動こうとしなかったんだ!」

an inhospitable environment というのは、不妊検査の結果として知らされた、「モニカの子宮は、(精子にとって)居心地の悪い環境である」で使われたフレーズですね。
医者がまじめな話をしているのに、チャンドラーがついいつものようにジョークで茶化してしまい、きまずーい雰囲気になっている今の状態を、そのキーワードのフレーズを使って、「今のこの状態は、まさに”居心地悪い環境”ですよね。”居心地悪い環境”っていうのは、まさにこのことですよね!」と、さらにジョークで逃げた感じになるでしょう。


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posted by Rach at 13:51| Comment(0) | フレンズ シーズン9 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月19日

しばらくしたら気に留めなくなる フレンズ9-22その1

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シーズン9 第22話
The One With The Donor (求む! 精子提供者)
原題は「ドナー(提供者)の話」


[Scene: Doctor Connelly's office]
ドクター・コネリーのオフィス。
チャンドラー: (looking at the picture of the female reproductive system) Wow! Fortunately, she has a very pretty face! ([女性生殖器系の図を見ながら] わぉ! 幸運なことに、この子(子宮の中の赤ちゃん)はすごく可愛い顔してるね!)
モニカ: Oh, I still can't believe this! My uterus is an inhospitable environment? I've always tried so hard to be a good hostess! (あぁ、こんなこと、私にはまだ信じられないわ! 私の子宮が居心地悪い(もてなしの悪い)環境ですって? 私は良いホステス(もてなし上手)になろうと、ずっと一生懸命、頑張ってきたのに!)
チャンドラー: Oh, I can't believe my sperm have low motility because, let me tell you, when I was growing up, they sure seemed to be in a hurry to get places!! (あぁ、俺の精子の動きが悪いなんて信じられないよ、だって、俺が成長期の頃には、そいつら(精子)は、場所に到着しようと急いでいるように確かに見えたよ!)
ドクター・コネリー(Doctor Connelly): (entering) Hi there. ([入ってきて] やあ、こんにちは。)
チャンドラー: Hi. (こんにちは。)
モニカ: Hi. (こんにちは。)
ドクター・コネリー: I'm sorry there wasn't better news from your tests last week but I wanted to talk to you about your options. (残念ながら、先週の君たちの検査から、より良い知らせ(情報)はなかった。でも、君たちの選択肢について、君たちに話したいと思ったのでね。)
モニカ: Okay. (はい。)
ドクター・コネリー: Well, first of all, even though your chances of conceiving through natural means aren't great, you never know, so keep having sex on a regular basis. (あぁ、まず最初に、自然な方法を通じて妊娠する可能性はあまりないとしても、どうなるかはわからないからね、だから、定期的に性交渉は続けるように。)
チャンドラー: Oh, DAMN IT! (あぁ、くそっ!(なんてこった!))
(Dr. Connelly glares at Chandler)
ドクター・コネリーはチャンドラーをにらむ。
モニカ: Don't worry. After a while, you'll tune it out. (ご心配なく。しばらくすれば、気に留めなくなりますよ。)

医院のオフィスで先生が来るのを待っている間、チャンドラーは壁に貼ってある女性生殖器の仕組みが書かれた図を見て、子宮の中で丸まっている胎児を手で指しながら、「幸運なことに、この子はすごく可愛い顔してるね。この子はすごく可愛い顔をしててラッキーだね」みたいなことを言っています。
図をまじまじ見ていて、述べた意見がそれ? みたいな面白さになるでしょう。

モニカは、「このことが、まだ私には信じられないわ。私の子宮がもてなしの悪い(居心地の悪い)環境ですって?」と言った後、I've always tried so hard to be a good hostess! と続けます。
hostess は「ホステス、女主人」のことですが、これは「客をもてなす女主人」というニュアンスですね。
モニカは、パーティーを開き、プロのシェフとしておいしい料理をふるまうなど、客をもてなすのが好きな女性なので、「うちに来て喜んでもらえるような、もてなし上手な女主人になるように、これまでものすごく頑張ってきたのに、そんな私の子宮が”もてなし下手、居心地悪い”って言われちゃうなんて、、」とがっかりしていることになります。

チャンドラーも自分の診断結果を信じられないと思っているようで、「俺も精子の運動性が悪いなんて信じられない」と言った後、because 以下でその理由を述べています。
let me tell you は「俺に言わせてくれ」ということですから、「ちょっとこれだけは言わせて、これだけは聞いて」みたいな挿入句ですね。
they sure seemed to be in a hurry to get places. は、they = my sperm で、get places は「場所に到達する」ですから、「俺が成長していた頃には(俺の成長期には)、俺の精子は場所に到達しようと急いでいるように確かに見えた」と言っていることになるでしょう。
DVDの日本語音声(吹替)では、「成長期の頃は、あいつら、競い合って飛び出してきた、っていうのにさぁ」と訳されていましたが、まさにそういうことでしょうね。

そんな話をしているところに、担当医のドクター・コネリーが入ってきます。
I'm sorry there wasn't better news from your tests last week を直訳すると、「残念ながら、先週の君たちの検査から、より良い知らせ(情報)はなかった」になるでしょうか。
better という比較級が使われているのは、恐らく、前回のエピソードの終わりでコネリーが電話連絡をした結果よりも良い結果がその後出た、ということはなかった、という意味だろうと思います。
こうやってわざわざ来てもらったけれど、この前伝えた結果よりも何か良い結果が新たに出たわけではないんだけれどね、と言っている感覚になるでしょう。
そう言った後、「でも君たちの選択肢について君たちに話をしたかったんだ」と続けます。
「残念ながら、こないだ伝えたよりも何かより良い結果が出たわけではないけれど、その結果を踏まえて、今後の選択肢について君たちに話しておきたいと思ったから君たちを呼んだ」のように、今回の話し合いのテーマを言っていることになるでしょう。

first of all... 以下のセリフは少し長めですが、大きな流れを言うと、even though SV, you never know, so keep doing... という構造になりますね。
you never know は「決してわからない」ということですから、「先のことは誰にも分からない、何とも言えない、どうなるかわからない」という意味。
ですから、「例え〜だとしても、どうなるかはわからない、だから…を続けなさい」と言っていることになります。
それぞれの項目を細かく見ていくと、means は「手段、方法」なので、through natural means は「自然な方法を通じて」、conceive は「思う、考える」と訳されることが多いですが、この場合は「子供を宿す、妊娠する」という意味。
ですから、your chances of conceiving through natural means aren't great は、「自然な方法で子供ができる可能性は大きくはない」→「可能性は少ない」と言っていることになります。
検査結果は、自然妊娠の可能性は少ないと出たけれど、と言った上で、「でも先のことは誰にもわからないからね。それが絶対とは言えないからね」という意味で you never know を挿入して、「だから、on a regular basis (定期的なベースで、定期的に)、性交渉を続けなさい」とアドバイスしていることになります。

自然妊娠の可能性が低いとわかった夫婦に対して、「無理と決まったわけじゃないから、これまで通り、行為は続けていいよ」と言ってあげた感じですが、それに対してチャンドラーは、少し大きな声で、Oh, DAMN IT! と言っています。
Damn it! は「くそっ!」と悔しがる、残念がる時に発する言葉ですから、文字通りの意味だと、「性交渉を続けていい」と言われたことに対して、「せっかくやめられると思ったのに、まだ続けないといけないの?」みたいに、モニカとそういう行為をすることをいやがっているかのように言っているセリフとなります。
それを言った後、チャンドラーは少しニヤっと笑っている(俺、今、面白いこと言ったよね、というような顔をしている)ので、それが本心ではなく冗談であることもわかるのですが、先生としては気落ちしているだろう二人に希望を持たせる発言をしたのに、そんな風にいきなりジョークで返されたので、無言でチャンドラーをにらんでいます。

その後、夫の発言に動じる様子もなく、Don't worry. After a while, you'll tune it out. と言っているのも、こういうことに慣れているモニカらしいですね。
you'll tune it out の部分、ネットスクリプトでは、he'll tune it out となっていましたが、正しくは you'll tune it out のように主語が you となります(DVD字幕では you'll となっていますし、実際の音声も you'll と発音されています)。
「ご心配なく。しばらくすれば[経てば]、あなたは tune it out するでしょう[しますよ]」と言っていることになりますが、tune out は、研究社 新英和中辞典では、以下のように出ています。
tune out 《【他】+【副】》
(1) 〈雑音などを〉(ダイヤルを調整して)聞こえなくする
(2) 《米俗》〈…に〉関心を示さなくなる、〈…を〉無視する

動詞の tune は「調子を合わせる」「周波数を合わせる」という意味ですから、「out になるように合わせる」ということから、上の語義にあるように「ダイヤルを調節して聞こえなくする」という意味になり、そこから「対象となるものを(自分で調節して)聞こえなくする」→「〜に関心を示さなくなる、〜を無視する」という意味としても使われるわけですね。

LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
tune out [phrasal verb] (informal) : to ignore or stop listening to someone or something
tune somebody/something ⇔ out
例) Liz didn't like what we were talking about, so she tuned us out.

つまり、「誰かや何かを無視する、または聞くのをやめる」。例文は、「リズは我々の話していること(内容・話題)が好きではなかったので、我々を無視した」。

Macmillan Dictionary では、
tune out [phrasal verb] (informal) : to stop paying attention
例) I just tune out and let Chrissie take over.

つまり、「注意を払う[気に留める]ことをやめること」。例文は、「私はただ気に留めず、クリッシーに引き継ぎさせた[任せた]」。

チャンドラーのこのジョークを聞いて、最初はいちいち反応してしまいたくなるかもしれませんが、こういうことが続くうちに、ジョークにいちいち関心を示さなくなりますよ、無視できるようになりますよ、気に留めなく(気にならなく)なりますよ、と言っているわけですね。


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2015年10月15日

安楽椅子から離れようとしない フレンズ9-21その6

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クリニックでの不妊検査が終わり、今は、チャンドラー一人が自宅にいるシーン。
[Scene: Monica and Chandler's. Chandler is sitting on the sofa, reading the newspaper.]
モニカとチャンドラーの家。チャンドラーはソファに座って、新聞を読んでいる。
チャンドラー: (picking up a plastic cup similar to the one he deposited his specimen in) It is not okay that I'm aroused by this now. ([(クリニックで)検体を入れたものに似ているプラスチックのカップを手に取り] 今、これに欲情してるのって、よくないよね。)
(phone rings)
電話が鳴る。
チャンドラー: Hello? Oh. Hi, Dr. Connelly. (pause) No. Well, she's not here but, you know, I can tell her. Should I be sitting down for this? (his smile fades as he hears the answer) Oh. (pause) Well, so, what does that mean? (pause) Okay. Okay, thank you. Thanks. (hangs up) (もしもし? あぁ、こんにちは。ドクター・コネリー。[間があって] いえ、彼女はここにはいませんが、僕が彼女に伝えます。この(話をする)ために僕は座ってるべきですかね? [答えを聞くとチャンドラーの笑みが消える] あぁ。[間があって] で、それはどういうことですか? [間] わかりました、ありがとう。ありがとう。[電話を切る])
(Monica walks in)
モニカが入ってくる。
モニカ: Hey, sweetie. (はーい、スウィーティ。)
チャンドラー: Dr. Connelly just called. (たった今、ドクター・コネリーが電話してきた。)
モニカ: With good news? (very quickly and wringing hands) Of course it's not good news. You just said, (deadpan) "Dr. Connelly just called." If it was good news, you would have said, (excitedly) "Dr. Connelly just called! " But, so, what is it? Is it...? Is there a problem? Is there a problem with me, or with you? (良いニュース? [非常に早口で、(動揺して)手を揉みながら] もちろん良いニュースじゃないわよね。あなたはただこう言ったもの [無表情で] 「ドクター・コネリーが電話してきた」って。もしそれが良いニュースなら、あなたはこう言ったでしょうね [興奮して] 「ドクター・コネリーが電話してきた!」って。でも、そうなら、何なの? 問題でもあるの? 私に問題が? それともあなたに?)
チャンドラー: Actually, it's both of us. (実は、俺たち二人ともなんだ。)
モニカ: What? (何ですって?)
チャンドラー: Apparently, my sperm have low motility and you have an inhospitable environment. (どうやら、俺の精子は運動性が悪くて、君は快適ではない(もてなしの悪い、居心地の悪い)環境を持ってるんだって。)
モニカ: Oh.... Well, what does that mean? (あぁ… あの、それってどういう意味?)
チャンドラー: It means that my guys won't get off their Barcaloungers and you have a uterus that is prepared to kill the ones that do. (pause) It means-- (つまり、俺のやつらはバーカラウンジャー(安楽椅子)から離れようとしなくて、君はそうする(安楽椅子から離れる)やつらを殺す準備をしている子宮を持ってる、ってことだ。[間があって] つまり…)
モニカ: Wait, Chandler? (待って、チャンドラー? [半泣きで、そんな冗談言わないで、という顔で])
チャンドラー: (seriously) It means that we can keep trying, but there's a good chance this may never happen for us. ([真剣に] つまり、俺たちはトライを続けることはできるけど、でも、これ(子供ができること)が俺たちに起こることはないって可能性が高い。)
モニカ: (weeping) Oh, my God! ([すすり泣いて] なんてこと!)
チャンドラー: I'm sorry. (ごめんよ。)
モニカ: I'm sorry too. (私もごめんなさい。)
(they hug)
二人はハグする。
チャンドラー: Well... we're gonna... we're gonna figure this out. (あぁ… 俺たちは、俺たちはこのことをよく考えないとね。)
モニカ: (still weeping) I know. ([まだ泣いたままで] そうね。)

チャンドラーは、テーブルの上に置いてある、プラスチックのカップを手に取り、It is not okay... のセリフを言っています。
arouse は「人を(眠りから)起こす、目を覚まさせる」「刺激する」という意味で、ここでは「性的に刺激する、欲情させる」というようなことですね。
ト書きにあるように、「クリニックの不妊検査で、検体を入れたものに似ているカップ」ということなので、このカップを「相手」にそういう行為をしたことを踏まえて、「カップを見てまたその時みたいな気持ちになっちゃだめだぞ、俺」と、冗談っぽく言ってみせたことになるでしょう。

そこに電話が鳴り、チャンドラーの応答から、相手がドクター・コネリーだということがわかります。
「モニカは今いませんが、僕から伝えます」という内容で、医者、つまり、不妊検査を行ったクリニックの医者が結果を電話で知らせてきた、ということもわかりますね。
Should I be sitting down for this? は、「これに対して、僕は座っているべきですか?」ということですから、「これから先生の話を聞くに当たり、俺は座ってじっくり話を聞いた方がいいですかね?」と尋ねたことになります。
そのセリフをチャンドラーは少し笑いながら言っていて、「座って聞いた方がいいような深刻な話ですかねぇ〜?」みたいに、冗談っぽい感じで言った様子だったのですが、ト書きにあるように、「その(先生からの)答えを聞いた時、彼の笑みが(次第に、徐々に)消える」という表情を見せ、その後も、先生が言うことに対して、深刻な顔で相槌を打つ姿が続きます。

先生がひとしきり説明した後、「つまりはそれはどういうことですか?」のようにチャンドラーが尋ね、その内容を理解した様子で、「ありがとう」と言ってチャンドラーは電話を切ります。
その少し後に、モニカが帰って来て、挨拶すると、チャンドラーはすぐに、「たった今、ドクター・コネリーが電話してきた」ということを伝えます。

それを聞いたモニカは、With good news? と言っていますが、この with は、Dr. Connelly called with good news? ということで、with のニュアンスを無理やり出して訳すと、「ドクター・コネリーが電話してきた? 良いニュースを持って? 伴って?」みたいな感覚になるでしょう。
その電話の内容には、良いニュースが含まれてた? 彼は良いニュースを伝えてくれた? みたいなことですね。

その後、ト書きに very quickly and wringing hands と書いてありますが、これは、Of course 以下のモニカのセリフに対する描写で、very quickly は「非常に早口で話す」様子を指しています。
実際にこのシーンを見てみるとよくわかるのですが、普段から早口のモニカが、さらに早口になっています。
wringing hands の wring は「絞る(しぼる)」「ねじる」という動詞で、wring hands については、以下の研究社 新英和中辞典に、以下の意味が出ていました。
wring one's hands=(悲痛・絶望などのしぐさとして自分の)手をもむ、絞るようにする

LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
wring your hands : to rub and twist your hands together because you are worried and upset
つまり、「心配している、または動揺しているという理由で、自分の手をこすり合わせる、ねじり合わせること」。

この時のモニカは、早口でしゃべりながら、時々、手振りも入れていますが、それ以外の時は自分の不安や動揺を抑えるような気持ちで、手を揉むように握っている、そのことをト書きでは、wringing hands と表現しているわけですね。

その後のセリフが、モニカの動揺している気持ちを大変よく表していると思います。
「良いニュース?」と聞いた後、チャンドラーの返事も待たずに、「もちろん良いニュースじゃないわよね」と言って、あなたはこんな顔でこう言ったもの、というように、無表情(deadpan)の顔で「ドクターが電話してきた」と言い、さっきのチャンドラーの姿を真似ています。
もし良いニュースなら、あなたはきっとこう言ったでしょうね、と言って、今度は嬉しそうな顔をして、「ドクターが電話してきた!」と言ってみせます。
If it was good news, you would have said は、典型的な仮定法ですね。
if 節(条件節)は「もしそれが良いニュースなら」、帰結節は「あなたは(さっき)こう言っただろうに」となり、条件節と帰結節に時制のずれがあるパターンになります。
仮定法を使っているところからも、「ドクターの電話は良い知らせではなかった」ということをチャンドラーの態度からモニカが確信していることがわかりますね。

「ドクターから電話があった」と言われ、反射的に「良いニュース?」と尋ねたけれど、チャンドラーの態度を見たら、良いニュースじゃないことくらいすぐにわかる、それを説明するのに、「良いニュースなら、あなたはもっと嬉しそうな顔でそう言うはずなのに、さっきのあなたは無表情だったもの。それなのに、良いニュース? って聞いたりして私ってバカよね」みたいなことを一気にまくしたてるように言っているわけですね。
動揺していることと、「少し考えればわかることなのに、何てバカな発言をしてしまったのかしら、私」的な気持ちとで、こんなに早口になってしまっている、という描写です。

「良いニュースじゃないとしたら何? 何が問題なの? 私に問題があるの? それともあなたに問題があるの?」とモニカがストレートに尋ねると、チャンドラーは「実は俺たち二人なんだ」と答えます。
その後、もう少し長めの文章で、二人の問題について語っていますね。
motility は「運動性」なので、my sperm have low motility は、「俺の精子は低い運動性を持っている」→「俺の精子は運動性が低い、動きが悪い」。

inhospitable は、hospitable 「もてなしの良い」「(環境が)快適な、住みやすい」「〜を快く受け入れて」に、「無」「不」という not の意味を表す接頭辞 in- がついた形。
hospitality 「ホスピタリティ(親切にもてなすこと)」の関連語ですね。
ですから、you have an inhospitable environment. は、「君は、もてなしの悪い(快適ではない、居心地の悪い)環境を持っている」と言っていることになります。
こういう場合の「環境」というのは、精子を受け入れる側の子宮内の環境、という意味ですから、「君の子宮は精子にとって快適ではない環境だ」と言っているわけですね。

モニカがさらに詳しく内容を尋ねると、今度はチャンドラーは、それぞれの状態を擬人化して説明しようとします。
my guys = my sperm で、Barcaloungers 「バーカラウンジャー」は、チャンドラーとジョーイが使っている、リクライング可能な安楽椅子のこと。
過去記事 他の全てを時代遅れにする フレンズ7-13その6 では、そのネーミングの由来を説明しています。

get off は「(バスなどを)降りる」という意味でよく使いますが、要は off 「分離、離れる」という動きをする、ということなので、安楽椅子の場合だと、椅子に座ったまま離れない、起き上がらない、立ち上がらない、と言っていることになりますね。
先ほど、「精子の運動性が悪い」と説明したことを、「やつらは安楽椅子でくつろいじゃって、立ち上がろうとしないんだ、椅子から離れようとしないんだ」と言っていることになります。

チャンドラーは続いて、モニカの側の状態を説明しています。
you have a uterus that is prepared to kill the ones that do. の the ones that do は、my guys that get off their Barcaloungers になるでしょう。
that do のように、「否定語 not のない肯定形」になっているので、「安楽椅子から離れないやつら」ではなくて、「安楽椅子から離れる(立ち上がる)やつら」を恐らく指しているのだろうなぁ、と。
is prepared to kill は、「〜を殺す準備ができている」ですから、子宮の説明の文章は、「安楽椅子から立ち上がるやつらを殺す準備ができている子宮を、君は持っている」と言っていることになるでしょう。
「安楽椅子から離れない」=「運動性が悪い」ということですから、そういうものは子宮に到達しない、その中で運動性の高い、「椅子から離れるやつら」がいたとして、無事、子宮に到達したとしても、その子宮は精子にとって良い環境ではなくて、精子が死んでしまうことになる、とチャンドラーは言っているのだろうと思います。
椅子から離れないやつらを殺す、なら、is prepared to kill them だけで事足りると思うので、わざわざ、kill the ones that do と表現しているというのは、「仮に椅子から立ち上がるやつらがいるとしても」という意味で言っているのだろうと思ったわけです。

そんな例えを使って説明したチャンドラーは、さらに It means-- と言って、何か説明しようとするのですが、モニカは、そのチャンドラーを止めるように、半泣きの顔で、Wait, Chandler? と言っています。
そんな風に冗談っぽく表現しないで、辛くてそんな風に言わずにはいられないあなたの気持ちはよくわかるけど、もっと真剣にその問題に向き合いましょうよ、みたいな表情に私には見えました。

今度はチャンドラーも真剣な表情で、辛い結果をはっきりと言葉にしています。
we can keep trying は、「俺たちは(これからも)子作りにトライし続けることは可能である」。
there's a good chance this may never happen for us. の there's a good chance は「十分な可能性がある」。
good chance という言葉から、「グッド・チャンス、良いチャンス」と訳してしまいそうになりますが、この場合は「良いチャンスがある」ということを言っているのではなくて、this may never happen for us という可能性が高い、と言っていることになります。
this may 以下は、「これは俺たちに(決して)起こらないかもしれない」なので、「子供ができることはないかもしれない、という可能性が高い」→「子供ができる可能性はほとんどない、可能性が低い」と言っていることになりますね。

その後、チャンドラーが、I'm sorry. と言い、続けて、モニカも I'm sorry too. と言っています。
フレンズでは、「相手の気持ちに共感する」 I'm sorry、つまり、「”ごめんなさい”ではない I'm sorry」がよく出てきますが、今回のこのセリフは「ごめんなさい」とお互い言い合っていることになるでしょう。
子供ができる、できないの問題については、どちらかに原因があった場合でも、ごめんと謝ると余計にお互いが辛くなる(自分ではどうしようもないことだから)と思うのですが、何か口にするとなると、やはり、「ごめん」という言葉しか出てこないのだろうなぁ、というのをこのシーンを見て感じました。
今回の結果は、二人に問題がある、ということだったので、それぞれが「ごめん」と言って抱き合うこのシーンは、本当に見ていて辛いものがありました。

figure out は「理解する」「解決する」という意味。
今回こういう結果が出たことで、これから二人は子作りについてどうして行くか、子供ができない可能性が高いとわかった上で、これからはどういう人生設計を考えるか、というようなことを二人で考えて、決めて、解決していかないといけないね、ということですね。
それに対してモニカは、I know. 「そうね、分かってる」と返事していますが、I know. と言えば、モニカが人に褒められたりした時に、I know! 「そうでしょ! 知ってる!」と自慢げに大声で叫ぶという彼女の口癖でもあります。
今回は、いつものような元気のいい I know! ではないのですが、その彼女の決め台詞である、I know. を、こんな悲しい状況で聞くことになるなんて、、という気持ちを、観客も視聴者も抱いたことだろうと思います。


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2015年10月13日

タイムカードに打刻する フレンズ9-21その5

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マッサージのチェーン店の無料招待券をもらったレイチェルは、そのマッサージ店に行こうと思っていたのですが、チェーン店を嫌っているフィービーに、券を破られてしまいます。
ビリビリに破られた券をテープで貼っ付けて、チェーン店のサービスを受けに来たレイチェルですが、その店を嫌っていたはずのフィービーが「お給料が良いから」という理由でそこで働いていました。
チェーン店をけなしてしまった手前、レイチェルに見つかったらやばいと思ったフィービーは、レイチェルがマッサージ台で下を向いているのをいいことに、謎のスウェーデン人のふりをしてごまかすのですが、台の穴から見えた靴が、フィービーが自慢していた新品の靴だったので、レイチェルはそれがフィービーだと気付きます。
様々な会話をふっかけて、フィービーであることを白状させようとしたのですが、なかなか自白しないフィービーに、レイチェルは顔を上げて、フィービーの名前を叫びます。
レイチェル: (now lifts her head) Phoebe!! ([そこで、自分の頭を上げて] フィービー!)
フィービー: You know it's me? (私だって知ってたの?)
レイチェル: Well, for like a half an hour! Man, you can lie about Sweden! (えぇ、半時間(30分)くらいね。なんてこと、スウェーデン人のふりなんかできるのね!)
フィービー: How, how can you come here? (どうやって(どのようにして)ここに来られたの?)
レイチェル: How could you not tell me you worked here? (あなたがここで働いていることを私に言わなかったなんて、どうしてそんなことができたの?[言わなかったなんて信じられない])
フィービー: I don't have to tell you everything! (全てをあなたに話す必要はないわ。)
レイチェル: Yes, you do, if you're gonna make me feel guilty for getting a free massage! (いいえ、あなたは話す必要があるわ、あなたが無料のマッサージをしてもらうことで私に罪悪感を持つように仕向けているのならね。)
フィービー: Tip's not included. (チップは含まれていないわよ[チップは別途必要よ]。)
レイチェル: Oh! Phoebe, why did you lie to me about working here? (もう! フィービー、ここで働いていることについて、なぜ私に嘘をついたの?)
フィービー: Because I was ashamed, okay? I sold out for the cash! And then they give me benefits, like medical and dental and a four-oh-wunk (401K). But, you know, you pay a price. Now I'm this corporate stooge and punching a clock and Ugh! Paying taxes! (だって恥ずかしかったんだもん、でしょ? 私はお金(現金)のために自分を売ったの! それからここは手当をくれるのよ、医療とか歯科とか 401K とか。でも、ほら、代価(代償)を払うの。今や私は、こんな企業の手先となり、タイムレコーダーを押して[タイムカードに打刻して]、それから、あー! 税金を払ってる!)

レイチェルが顔を上げて、「フィービー!」と名前を呼ぶので、スウェーデン人のふりをしてうまく騙せていたと思っていたフィービーは、You know it's me? 「私だってわかってたの? 知ってるの?」と驚きの声を上げています。
「半時間ほどね」と言った後、you can lie about Sweden! と言っていますが、直訳すると、「あなたはスウェーデンについて嘘をつける」になりますね。
化けの皮をはがそうとしたレイチェルに、スウェーデンのことをあれこれ質問されたフィービーは、適当なことを答え、でたらめな国歌まで歌っていました。
それを見ている観客や視聴者は、その嘘のクオリティーの低さに笑ってしまうわけですが、レイチェルは、その質の悪さに気づくこともなく、「フィービー、あなた、なかなか、スウェーデンの嘘、うまいじゃない」と言った面白さになるわけですね。

how can you come here? を直訳すると、「どのようにして、あなたはここに来られたの?」ですね。
Why did you come here? 「どうしてここに来たの?」という理由を尋ねているのではなくて、フィービーがここの無料サービス券をビリビリに破ったにもかかわらず、どうして来ることができたのか? を問うていることになるでしょう。
レイチェルはそれには答えず、逆に、How could you not tell me you worked here? と言っています。
これもくどい感じで直訳すると、「あなたがここで働いていることを私に言わない、ってことが、あなたにはどのようにして可能だったの?」というところでしょうか。
レイチェルがここのサービス券を持っていた時、自分がそこで働いていることも言わずに、フィービーが券を破ってしまったことを怒っているわけですが、「自分が働いているくせに、それを黙ってたなんてどうしてあなたにはそんなことができるの? そんなことするなんて信じられない」と言っているニュアンスになります。

「ここで働いてることを言わなかったなんて、信じられない」と言われたフィービーは、「(友達だからって)あなたに全てを(何もかも)話す必要はない」と答えます。
「人に全てを話す必要はない」というのは、場合によっては正論ですが、レイチェルはもっともな理由でフィービーを非難しています。
Yes, you do は、Yes, you have to tell me ということで、「あなたに話す必要はない」という発言に反論して、「いいえ、あなたは私に話さないといけないわ」と言っていることになります。
その後、if という条件付けをして、「もしあなたが、無料のマッサージを受けることで私が罪悪感を持つ(覚える)ようにしているのであれば」と言っています。
確かに、何でもかんでも話す必要はないのかもしれない、でもあなたは、チェーン店のサービス券で、無料のマッサージを受けようとした私を非難して、罪の意識を感じさせたんだから、それでそこの店で働いていることを黙ってるなんて、最低よ! と言っていることになるのですね。

get a free massage 「無料のマッサージを受ける」という表現を使ったレイチェルに対して、Tip's not included. 「チップは含まれていないわよ」と答えるのも面白いですね。
無料と言ったって、サービスを施した私に対して、別途チップは払ってもらう必要があるんだけど、みたいに言っていることになり、怒っているレイチェルに対して、そんなしれっとした返しをするところがフィービーらしいとも言えるでしょう。

why did you lie to me about working here? は「ここで働いていることについてなぜあなたは私に嘘をついたの?」ということで、シンプルに嘘をついた理由を尋ねる文ですね。

理由を聞かれたフィービーは、定番通り、Because... を使って、「だって私は恥ずかしかったから」と答えます。
I sold out for the cash! について。
sell out は「商品などを売り切る、売り尽くす」という意味で使われることが多く、be sold out 「売り切れた(売り切られた、売り尽くされた)」という意味の Sold out. 「ソールドアウト」は、もう日本語になっていますね。
目的語を取って、「(金などのために)(人)を売る」という意味にもなりますし、自動詞的に「身売りする」という意味にもなります。
今回は「私は金のために自分を身売りした」という感覚ですね。
売り切れる方の sell out の out は、out of fuel 「燃料切れ」の out の感覚で、「ものが不足して、なくなって」というニュアンスになるでしょう。
「人を売る、(自分を)身売りする」方の sell out の out は「外に差し出す」という感覚になるのでしょうね。

その後、「彼ら(雇ってくれるこの店・会社)は、私に benefits をくれる」とも言っています。
benefit はまず「利益」という意味で習いますが、ここでは、「(社会保障制度の)手当、給付」のことですね。
その後、like medical and dental 「医療とか歯科とか」のような言葉が続いていることからも、医療給付的なものを言っていることがわかります。
そしてその次のセリフですが、その部分、ネットスクリプトでは、and a 401K. そして DVD字幕では、a four-oh-wunk. と表示されています。
実際のフィービーの発音も、「ア・フォー・オゥ・ワンク」という感じですね。
フィービーがそのように発音したのを聞いて、レイチェルは、「ん?」という顔をして、観客のラフトラック(笑い声)もかなり起こっているのですが、これは、401k のことをよく知らないフィービーが、正確には、four-oh-one-K [kei] と発音する(LAAD で確認済み)ところを、4-0-wunk のように、1k を wunk という単語だと思って発音している、という面白さなのかなぁ、と思いました。

401k というのは、アメリカの企業年金制度(確定拠出年金)のことで、日本でも2001年に同様の制度が開始した際には、「日本版401k」という表現もよく耳にしました。
LAAD の説明では、
401K : a way of saving money for your retirement that is handled through the company where you work
つまり、「自分が働く会社を介して取り扱われる、退職のためにお金を貯蓄する方法」。

フィービーは、「手当もくれるし、年金も、、」と言いたいわけですが、正確な用語を知らずに発音を間違えているので、レイチェルは「ん?」となっているし、観客も笑っている、ということですね。

you pay a price の pay a price は文字通り「代価を払う」ということで、この場合は「何かを得ることに対して代償を支払っている」「得たものがある分だけ、犠牲も払っている」という感覚になるでしょう。
you pay a price. は主語が you になっていますが、これは、「自分の体験を語る時に you を使う」というものですね。
「会社は手当や年金をくれるけど、その分、代償を払うことにもなる」という「自分の体験」を、you know, you pay a price. 「ほらね、わかるでしょ、代償を払うことになっちゃうのよ」と相手にイメージさせる、という効果ですね。

Now I'm this... 「今や私はこんな〜になって」という表現で、自分がこんな者に成り下がってしまった、的な話を続けています。
stooge は「手先、傀儡(かいらい)」という意味。
ですから、corporate stooge は「企業の手先」ということですね。
LAAD では、
stooge : (disapproving, informal) someone who is used by someone else to do something unpleasant, dishonest, or illegal
つまり、「(非難の言葉、インフォーマル) 不快な、不正な、不法なことを行う誰か他の人によって使われる人」。
disapproving とあるように、非難のニュアンスのある言葉、すなわち悪口ですから、まさに日本語の「手先」という言葉に通じるものがありますね。

punch a clock は「タイムレコーダーを押す、タイムカードに打刻する」という意味。
LAAD では、
punch the clock : (informal) to record the time that you start or finish work by putting a card into a special machine
つまり、「特別な機械にカードを入れることで、仕事を始める時間、または仕事を終わる時間を記録すること」。
出社時、退社時にタイムカードに時刻を打つ(打刻する)ということで、フィービーとしては、そういう行為がいかにも「いち従業員として、会社に雇われている」というイメージを強くするのでしょう。
その後、Ugh! と嫌そうな声を上げてから、Paying taxes! とも言っています。
手当を貰える代わりに、税金もしっかり取られてしまう、ということで、自由人フィービーにとっては耐えられないことのようです。
これまでフリーランスで働いていたマッサージ師の仕事では、どうやら税金を払っていないらしいこともわかる、という面白さになるでしょうね。


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2015年10月09日

可能な限り最も優しい言い方で言うと フレンズ9-21その4

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チャンドラーとモニカは、不妊検査のため、医院に来ています。
[Scene: doctor's waiting room]
医者の待合室。
チャンドラー: I have a weird feeling about this place. (pause) How do I know that they are not gonna secretly videotape me and put it all over the Internet? (この場所に、変な感じがするんだけど。[間があって] (医院の人たちが)密かに(こっそり)俺を録画して[隠し撮りして]、それをインターネットに載せる[上げる、公開する]ことはない、ってどうやってわかるの?[そういうことは絶対しないって断言できないじゃないか])
モニカ: Because, honey, and I mean this in the sweetest way possible, nobody's gonna wanna watch that. (だってね、ハニー、可能な限り最も優しい言い方であなたに言うと、誰もそんなの見たいとは思わないわよ。)
(a nurse walks in)
看護師が入ってくる。
看護師: Mr. Bing? (Chandler jumps up) Here you are! You'll go into that room and deposit your specimen into the container. (ビングさん? [チャンドラーは飛び上がる] ここにいるのね! あの部屋に入って、あなたの検体を容器(コンテナ)の中に置いて下さい。)
チャンドラー: Deposit my specimen? You know, usually I have to call a 900 number for that kind of talk. Thanks. Got it. (俺の検体を置く? ほら、普通、そういうトークをするには、900ナンバーに電話しないといけないだろ? [看護師にいやそうな顔をされて] ありがと。了解。)
モニカ: All right. Honey, my tests are down the hall. Are you sure you're gonna be okay? (いいわ、ハニー、私の検査は廊下の先であるわ[行なわれるわ]。あなた、ほんとに大丈夫?)
チャンドラー: Yeah, I guess! (あぁ、大丈夫だと思うよ!)
モニカ: Look, I know this is embarrassing, but nobody cares! No one here even knows you! (ねぇ、これが恥ずかしいってことはわかるわ。でも、気にする人なんかいないわ! ここには誰もあなたを知っている人すらいないのに!)
ジャニス: OH MY GOD!! (オー、マイ、ゴッド!)
チャンドラー: Oh, Come on! (あぁ、勘弁してよ!)

待合室で、チャンドラーはいらいら、そわそわしています。
「この場所について変な感情を持っている」というのは、「この場所って、何か変な感じがするんだよな」みたいなことですね。
How do I know that they are not gonna は、「彼ら(医院の関係者)が〜することはないと、どのようにして俺が知る?」→「彼らがそうしないって、どうして俺にわかる?」→「彼らがそうしないって、俺には言い切れない、断言できない。彼らはそうしちゃうかもしれない(が俺にはそれを知りようがない)」になるでしょう。
何をしないとも限らないと言っているのかが、secretly 以下で、
secretly videotape me 「俺を密かにビデオテープに録画する[隠し撮りする]」
and put it all over the Internet 「そしてそれ(撮ったビデオ)をインターネット上に出す」
になるでしょう。
videotape は「ビデオテープ」ということですが、me を目的語に取る形になっていることから、この場合は「人をビデオテープに撮る、人をビデオ撮影する」という動詞として使われていることもわかりますね。

チャンドラーは不妊検査のため、今から採取などをしないといけないわけですが、そういう行為をしているところを隠しカメラで撮られて、ネットに上げられたりしない、ってどうしてわかる? 医院がそういうことしようとしてるかもしれないじゃないか! と言っているわけですね。

それを聞いたモニカは、Because... 以下のセリフを言っていますが、「なぜならそれは」と理由を説明する部分は、nobody's 以下で、その間のセリフ、honey, and I mean this in the sweetest way possible は、その理由をはっきり言う前に、ワンクッション置いた感じの挿入文となっています。
Because, honey... 以下を訳すと、「だってね、ハニー、そして私はこのことを、可能な限り最も優しい方法で言うんだけどね」という感覚になるでしょう。
「可能な限り最も優しい方法(言い方)で言うと」というのはつまり、「どう表現しても、キツい表現になってしまいそうだけど、そこを精一杯優しく言ってあげるわね」と言っているニュアンスになります。

そんな前振りを付けて言ったその後のセリフは、nobody's gonna wanna watch that. 「誰もそれ(そんなもの)を見たいとは思わない。見たいと思うことにはならない」。
チャンドラーが、「俺のそういう秘密の行為を撮影されて、ネットに上げられたらどうしよう?」と心配しているので、モニカは、「そんなものを誰がネットに上げるもんですか。そんなの、誰が見たいっての? そんなの、見たい人がいるとでも思ってるのー?」みたいに、いつものようにキャンキャンと容赦なく言いたいのでしょうが、感情的に言うことは避け、「できる限り優しい言い方で表現してあげるわね」と言った上で、「誰もそれを見たいとは思わない」という事実だけを淡々と述べた感じになるでしょう。
言い方そのものはキツい感じではないのですが、言っている内容はそのものズバリで結構キツいよね、みたいな面白さですね。

二人がそんな話をしているところに、看護師さんが入ってきます。
看護師は、採取用のカップをチャンドラーに手渡しながら、You'll go into that room and... とこの後の指示をしています。
deposit は「〜を預ける」「〜を(…に)置く」。
specimen は「見本、標本」という意味ですが、今回の場合は、「(検査の対象となる)検体、サンプル」というところですね。

「あなたの検体を置いて(預けて)」と言われたことを受けて、「俺の検体を置け、ですか?」と繰り返した後、チャンドラーは、「そんな類のトークのためには、普通、a 900 number に電話しないといけない」みたいに言っています。
この部分、DVDの日本語訳では「ダイヤルQ2」と訳されていましたが、まさにそれと同じニュアンスですね。
「ダイヤルQ2」と言っても、若い方はご存じないかもしれませんが、「アダルト向け音声が聞けるサービスで、情報料として通常の電話料金以上の料金がかかる」という電話サービスでした。
サービスが始まったのが1989年とのことで(当時私は大学生)、そのサービスを利用した人が高額請求されたなどというニュースを当時よく耳にしたものでした。

そのアメリカ版が、チャンドラーの言っている、a 900 number ということで、以下のウィキペディアに詳しい説明があります。
Wikipedia 英語版: Premium-rate telephone number
premium rate というのは「割り増し料金」ということで、通常の通話料以外に別料金がかかる電話番号ということですね。

北米のアメリカとカナダの例として、英語版ウィキペディアでは、以下のように説明されています。
A 1-900 telephone number, in the North American Numbering Plan, has the form 1-900-###-####, and is often called a 900 number or a 1-900 number ("one-nine-hundred").
チャンドラーのセリフ通り、アメリカではこういう有料通話サービスを、a 900 number (または、a 1-900 number)と呼んでいることがこの説明でわかりますね。
そのウィキペディアには、アジア圏の例も挙がっていて、日本のところには以下の説明がありました。
In Japan, premium rate telephone number service is known as "DIAL Q2" and begin with the prefix 0990 followed by six digits.
やはり、アメリカの 900 number は、日本で言うところの「ダイヤルQ2」であることがここからもよくわかりますね。

看護師さんは、不妊検査の説明として、通常通りの説明をしているだけですが、チャンドラーはそういう会話をしていることが恥ずかしいのでしょうね、どうしてもジョークに逃げたくなって、「あなたの検体を預けて」みたいな会話って、アダルト有料電話での会話みたいですね、などと言ってしまったわけです。
相手の看護師さんは、年配のベテランという感じで、チャンドラーのそのジョークにニコリともせず、真顔でチャンドラーを見つめています。
それでチャンドラーは、それ以上、おふざけを言うのはやめて、「ありがと。了解(わかった)」と小さな声で言うことになります。

モニカはチャンドラーに、「私の検査は down the hall である(行われる)」と言っています。
down の基本的な意味は、「下へ、低い方へ」という意味で、方位で言うと「南へ」になります。
この場合は、厳密な方位を言っているのではなくて、「(今いるここから)離れて、離れたところへ」「ここから離れて、向こうに行った先」という感覚になります。
ですから、down the hall は「廊下の先で(に)、廊下を行った所で(に)」ということですね。
廊下を行ったところにある部屋で私の検査は行われる、私はあなたと違う場所で検査を受ける、ということで、それで「私は一緒にいられないけど、あなた一人で大丈夫?」と尋ねているわけですね。
「大丈夫だと思う」と答えるチャンドラーに対して、モニカは励ましの言葉をかけています。
「これ(こういう検査を受けること)が恥ずかしいってことはわかるわ。でも、誰も気にしない(気にする人なんか誰もいない)! ここではあなたを知っている人すら誰もいないのよ!」ということですね。
そういう言葉を言いながら、チャンドラーの首に手を回してハグし、そして軽くキスをするのですが、そういう二人の背後から、あのおなじみの声が聞こえてきたので、観客も大爆笑、拍手と歓声も起こっています。
出てきただけでこれほど喜ばれるって、ジャニスは本当に「おいしいキャラ」ですね。
シーズン8では、フレンズ8-23, 8-24 (エマの出産のためにレイチェルが入院した時)に出てきましたので、ほぼ1年ぶりの登場となります。
「ここには誰も知ってる人なんかいないんだから」とモニカが励ました矢先、「誰よりも会いたくない人に会ってしまった」チャンドラーの衝撃いかばかりか、という面白さなわけですね。


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posted by Rach at 13:42| Comment(0) | フレンズ シーズン9 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月07日

The MetとMets フレンズ9-21その3

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前回のエピソードでは、ロスは新任教授のチャーリーに惹かれ、レイチェルはソープオペラパーティーで、出演俳優といい感じになりながらも、やはりジョーイへの気持ちを断ち切れず、彼にアプローチしようとしていました。
そのエピソードの終わりのシーンで、チャーリーを探していたロス、ジョーイを探していたレイチェルは、ジョーイとチャーリーがキスしているところを目撃してしまいます。
「ジョーイとチャーリー」というのは、非常に意外な組み合わせなのですが(笑)、二人はパーティーで意気投合し、お互いに惹かれ合ってしまった様子で、今はすっかり仲睦まじくなっています。
ジョーイの部屋にチャーリーがやって来て、軽くキスをした後で、二人が会話している場面。
チャーリー: So I am just so excited to be here. And I can't wait to start exploring the city! (それで、ここにいる(ニューヨークにいる)なんて、とってもわくわくするの。街を探索するのが待ちきれないわ!)
ジョーイ: Hey, if you need a tour guide... (point to himself) (ねぇ、もしツアーガイドが必要なら… [自分自身を指さす])
チャーリー: Oh, you mean it? That would be so fun! (まぁ、ほんとに? もしそうならとっても楽しいわ!)
ジョーイ: Oh, yeah, definitely, definitely. Okay. What do you wanna see first? (あぁ、そうだ、その通りだよ。よし。最初に何を見たい?)
チャーリー: Oh, well, we could go see the Kronos Quartet at Avery Fisher Hall. (あぁ、そうね、エイヴリー・フィッシャー・ホールで、クロノス・カルテットを見に行けるかも。)
ジョーイ: (looking puzzled and nodding) Okay! ([悩むような顔をしてからうなずいて] オッケー!)
チャーリー: And there's a collection of Walt Whitman letters on display at the public library. (それから、ウォルト・ホイットマンの書簡コレクションが公立図書館で展示されてるわ。)
ジョーイ: I know, yeah! (知ってる、そうだよね!)
チャーリー: But first, I have to see the Met. (でも(やっぱり)最初に、ザ・メット(the Met)を見ないと。)
ジョーイ: Okay, let me stop you right there. The Mets suck, okay? You wanna see the Yankees. (ちょっと、ここで君を止めさせて。ザ・メッツ(the Mets)は最低だよ、いい? 君はヤンキースを見た方がいい。)
チャーリー: No. No, not the Mets. The Met. Singular. (違う、違うの、ザ・メッツじゃないわ。ザ・メット。単数形よ。)
ジョーイ: Which one? They all suck. (どれ[どいつ]のこと? (メッツの)やつらは全員、最低だよ。)
チャーリー: The museum. (美術館よ。)
ジョーイ: (looking puzzled) I don't think so. ([悩んだ顔をして] 俺はそうは思わないな。)

チャーリーは「ここ(ニューヨーク)にいるなんて、すごくわくわくする。この街(ニューヨーク)を探索するのが待ちきれない」と言っています。
すると、ジョーイは、「もし、ツアーガイド(観光ガイド)が必要なら…」と言って自分自身を指さします。
なんなら、ニューヨーカーの俺が君を案内してあげるけど? という申し出になります。

you mean it? は、「それってほんと?」みたいな感じですね。
mean は「〜のつもりで言う」という意味なので、「ただ話の流れ的におあいそでそう言ってるだけじゃなくて、本当にそのつもりで言ってくれてるの?」と、相手の発言が本心からのものであるかどうかを尋ねている感覚になります。
That would be so fun! は、would に仮定のニュアンスが込められていて、「もしほんとにジョーイが案内してくれるんだとしたら、すっごく楽しいものになるわね」という意味になります。

ジョーイが「最初に何を見たい?」と尋ねると、チャーリーは、the Kronos Quartet at Avery Fisher Hall と言っています。
それを聞いたジョーイは、口をつぐんで、しばらく目を丸くした後で、Okay! と言っています。
その表情から、「チャーリーの言った場所の見当がつかない。何のことを言っているのか全然わからない」ということがわかりますね。
ジョーイも知らないわけですし(笑)、このやりとりについては、「チャーリーが行きたいと言った場所が、ジョーイにはわからなかった」ということが読み取れればそれで良い、ということになります。
大学教授であるチャーリーが行きたがっている場所で、ジョーイが知らない場所、であることから、おハイソな場所、高尚な場所であることも想像できればそれで十分ですね。
一応どんなところか知っておきたいという方は、Google 画像検索で、Avery fisher hall と入れると、オーケストラが演奏するような絢爛豪華なホールの写真がたくさんヒットします。
いかにも、「こーゆーのはジョーイは知らないだろうなぁ」という場所ですね。

詳しくは以下のウィキペディアで。
Wikipedia 日本語版: エイヴリー・フィッシャー・ホール
ウィキペディアの説明にあるように、「ニューヨーク・フィルハーモニックの本拠地」ということで、それだけでこのホールの格がわかるというもの。
ホールがこの名前になった経緯なども、ウィキペディアで説明されています。

Kronos Quartet も、ウィキペディアにありました。
Wikipedia 日本語版: クロノス・クァルテット

次にチャーリーが挙げたのも、固有名詞が入っていて、それを聞いたジョーイは I know, yeah! と知ったかぶりをしていますが、その様子から「今度のこれも全然わかんない」ことは明白ですね。
there's a collection of Walt Whitman letters on display at the public library. を直訳すると、「公立図書館で展示(陳列)されている、ウォルト・ホイットマンの書簡(手紙)コレクションがある」ということですから、もう少し自然な日本語っぽくすると、「ホイットマンの書簡コレクションが公立図書館で展示されている」ということですね。

ウォルト・ホイットマンは、アメリカの詩人。
Wikipedia 日本語版: ウォルト・ホイットマン
ウィキペディアに詳しい説明がありますが、代表作は「草の葉」(原題: Leaves of Grass)だそうです。
ウィキペディアの記事中、他の著者との交流に関する説明で、「二人はホイットマンの死まで書簡を交わしていた」という記述もありますので、「ホイットマン書簡展」という展示は、「いかにもありそうな展示」ということになるでしょう。

ジョーイが全くわからないものを2つ挙げた後、チャーリーは、But first, I have to see the Met. と言っています。
それまでは何を聞いてもチンプンカンプンで、さも知っているような顔で軽く流していたジョーイですが、ここでは、let me stop you right there. と言って、チャーリーの発言を軽く止めています。
「ちょうどそこで君を止めさせて」ということですから、「その発言、ちょっと待って。そのまま続けて話さないで、ここで俺に一言、言わせて」という感覚ですね。

チャーリーの発言を止めてのジョーイの言葉、The Mets suck, okay? You wanna see the Yankees. について。
まず、The Mets suck, okay? と言ったところで、観客がかなり笑っています。
これは、チャーリーが言った、the Met を、ジョーイが the Mets と勘違いしていることがわかったので、観客は即座に反応しているわけですが、その後の、the Yankees. の発言が、その勘違いをさらにはっきりさせる効果を生んでいます。

これについてはまず、チャーリーが言った the Met が何を指しているかをわかっていないといけませんね。
The Met とは、マンハッタンにある「メトロポリタン美術館」のことで、Google 検索で、「the Met」と入れると、The Metropolitan Museum of Art がしっかりヒットします。
そのことからも、The Met は、「誰でもそれだけでピンと来る」広く知られた略称だということがわかりますね。
日本人の場合は、「メトロポリタン美術館」という名称は知っていても、その略称 The Met は知らないかもしれないので、その場合には、チャーリーのこのセリフも、瞬時にわかるのは難しいかもしれません。
ちなみに私は「メトロポリタン美術館」と聞くと、昔、「NHKみんなのうた」に出てきた「メトロポリタン美術館(ミュージアム)」という歌が、頭の中をグルグルします^^ (歌っていたのは、大貫妙子さん)

チャーリーとジョーイのこのやりとりの面白さは、誰でも知っているはずの、The Met = The Metropolitan Museum of Art であることをジョーイが知らなくて、チャーリーが、The Mets のことを言っていると勘違いしたところにあります。
ジョーイが言った、その The Mets の方ですが、こちらは日本人でも「メッツ」と聞けばピンと来るように、アメリカ大リーグの球団「ニューヨーク・メッツ(New York Mets)」のことですね。
Wikipedia 日本語版: ニューヨーク・メッツ に、興味深いことが書いてありました。
ちなみに「メッツ」とは1880年代に存在したニューヨーク・メトロポリタンズ(メトロポリタンとは都会人の意)というチームの愛称を元にしている。
野球チームの「メッツ」という名前の由来も、美術館と同様に、metropolitan という単語の略称から来ている、ということですね。

The Mets suck, okay? の suck は「最低である」(= be terrible)という意味の動詞。
フレンズでは、That sucks. 「そんなのってひどい。そんなのって最低」のような形でよく登場しますが、このように主語が that などの場合は、「3単現の -s 」がついて、sucks という形になります。
今回のジョーイのセリフでは、主語が the Mets と複数形になっているので、3単現の -s がつかない suck が使われているということですね。
このセリフで、ジョーイが「(野球チームの)メッツは最低だよ」とけなしているわけですが、その後のセリフ、「君は(メッツじゃなくて)ヤンキースを見た方がいいよ(見るべきだ)」という発言で、「ジョーイは the Met という美術館を、the Mets (野球チームのメッツ)と勘違いしている」ということがより明確になる、という仕組みです。
ヤンキースとメッツは、共に本拠地がニューヨークで、2チームの試合は「サブウェイ・シリーズ」と呼ばれて盛り上がったりしますよね。
ジョーイはニューヨークの2つのチームのうち、ヤンキースの方が好きであることがこの発言からわかります。

「ニューヨークでメッツを見るんなら、ヤンキースを見た方がいい」というジョーイの言葉で、ジョーイが勘違いしていることに気づいたチャーリーは、No. No, not the Mets. The Met. Singular. 「違うわ。the Mets じゃなくて、the Met よ。単数形よ」と言って、間違いを指摘しています。
「メッツって言ったら野球チームになっちゃうけど、私が言ったのは、メッツじゃなくて、メットなの、-s はつかない方よ」と説明したことになるのですが、その後のジョーイのセリフが、さらにまた面白いですね。

Which one? は、「単数形の Met って、Mets のうちのどの Met のこと?」と問い返している感覚。
つまり、Which one? = Which Met? 「どれ? どいつ?」=「どのメット?」というニュアンスですね。
そして、They all suck. は、「彼ら(Mets の中の Met たち)はみんな(全員)、最低だ」と言っていることになります。
そして、ジョーイが言わんとしている、単数形の Met とは、この場合は、「メッツという野球チームの中の選手一人」を意味します(これについては、後述します)。

「メトロポリタン美術館の略称が The Met である」ということを少しでも知っていれば、チャーリーが「複数形じゃなくて、単数形の方」と指摘した際、「あぁ、君が言ったのは、メッツじゃなくて、メット(美術館)の方ね!」とわかるのですが、美術館などに関心なさそうなジョーイは、それが美術館の略称であるなんて、全く気付いていないのでしょう。
the Met という単数形だと説明しても、まだ野球のメッツのイメージから抜け出すことができず、「単数形ってことは、チームじゃなくて、選手個人の話? 君はメッツの選手の誰のことを言ってるの?」みたいに問い返したことになります。
そして、「君はメッツのどの選手を見たいのか知らないが、メッツの選手はどいつもこいつも最低だよ」という意味で、They all suck. と続けたことになります。
そのセリフを言わせることで、「ジョーイがまだ野球チームの話だと勘違いしていること」が一段とはっきりするという(脚本上の)効果もあるわけですね。

その後、チャーリーは、「The Met というのは美術館のことよ」という意味で、The museum. と答えるのですが、ジョーイはそれを聞いて、しばらく考えた後、I don't think so. と言っています。
この I don't think so. については、DVDの日本語訳では
(字幕)そんな選手いない/(音声)そんな選手、いないよ
と訳されていましたが、「その発言のジョーイの意図」を汲むと、確かにそういう意味で言っているように、私にも思えました。

とにかくこのシーンでは、ジョーイは、The Met が美術館であるとは全く気付いていない、ジョーイとしては、Met/Mets と聞くと、ニューヨーク・メッツしか思い浮かばない、という徹底ぶりが面白さの基礎となっています。
ですから、シーンの最後でチャーリーが、「私が言っている The Met は美術館のことよ」とまではっきり言ったのに、それでもまだ(!)ジョーイは野球チームのことだと思い込んでいて、「ジョーイの Which one? (Which Met?) に対する答えが、The Museum であると思った」、つまり、「メッツのどの選手のこと?」という問いに対して、チャーリーが、「ザ・ミュージアム」という「名前(らしきもの)を答えた」とジョーイは勘違いしたのだろうと思います。
それで、しばらーく考えた上で、「俺はそうは思わない」と返したわけですが、その意味は、「チャーリーは、メッツのザ・ミュージアムという名前の[と呼ばれている]選手に会いたいと言っているようだけど、そんな選手聞いたことないなぁ。でもチャーリーがわざわざ名前を出したんだから、そういう名前の選手いるのかな」みたいに思って、名前に聞き覚えがないながらも、名前を出したチャーリーに話を合わせる形で、「チャーリーはその選手がすごいと思っているみたいだけど、俺はそうは思わないな」と否定した、それが、I don't think so. なんだろうなと私も思ったわけです。
つまり、You want to see him (= the Museum) that much? I don't think he's that good. 「君はその彼にそんなに会いたいの? その選手、そんなにすごいって俺は思わないけど」ということなんだろうなぁ、と。
I don't think so. と言うまでの間に、かなりの時間の間(ま)があるのですが、それも「そんな選手いたっけなぁ〜?」と考えを巡らせてみていることの表れなのかなと思うわけです。

最初、このセリフを見た時には、「メットって美術館のことよ」と指摘したチャーリーに対して、「俺はそうは思わないな。メットってのは、野球チームのことだけど?」という意味で、I don't think so. と返したのかと思ったのですが、DVDの日本語訳が「そんな選手、いないよ」となっていたのを見て、「ジョーイは、The museum をメッツの選手の名前だと思っている」方が、確かに面白いな、と思ったのです。
The museum を文字通りの「美術館」という意味だとも気づかずに、「メッツの1選手の名前」だと最後まで勘違いしていると考えた方が、フレンズっぽいオチになるような気がしたのですね。

I don't think so. 「俺はそうは思わない」という表現が、何だかとても漠然としているので、具体的に何についてそう言っているのかがはっきりしないのが残念なのですが、「チャーリーがメッツを見たいと言っている、メッツのある選手に会いたいと言っている」ということに対して、「メッツなんか最低だよ」と思っているジョーイが、「君はそんな風に思っているようだけど、俺は賛成・同意しかねる」という意味で、I don't think so. と言った感覚なのかな、と私は思ったということですね。
もし、the Museum を人名と勘違いしたのだとしたら、この最後のセリフが、I've never heard of him. 「その彼(the museum って名前の選手)のこと、今まで聞いたことない」みたいなセリフになっていれば、人の名前と勘違いしていることがはっきりしたのかもしれません。

最後に、「単数形の Met が、メッツ(Mets)という野球チームの中の選手一人を意味する」ことについて説明します。
まずは簡単にイメージの話から。
野球チームなど、複数で行うスポーツのチーム名は、Mets, Yankees のような複数形になっていることが多いですね。
これは複数の選手が集まっているからで、逆に考えると、「Mets というチームは、単数形 Met が集まったもの」だと言えるので、Mets というチームの中の選手一人は、Met という単数形で表わすことができる、ということになります。
これについては、過去記事、フレンズ2-20その20 で、Yankees という言葉が出てきた時に、「ヤンキースの選手一人を指す時は、Yankee と言います」と解説したことがありました。
その時に参考例として挙げたのが、松井秀喜選手の英語版ウィキペディアだったのですが、
英語版ウィキペディア: Hideki Matsui
今回改めて調べてみると、その松井選手のウィキペディアでは、「ヤンキースの(一人の)選手」として、単数形の Yankee が使われている文章が、合計3回も出てきていました。
3箇所の文章を引用させていただくと、

1. On July 28, 2013, Matsui signed a one-day minor league contract with the New York Yankees in order to officially retire as a Yankee.
2. At the 2003 Yankee home opener, he became the first Yankee to hit a grand slam in his first game at Yankee Stadium.
3. He became the first Yankee to drive in seven runs in a game at Fenway since Lou Gehrig in 1930.


1. の as a Yankee は、「ヤンキースの選手として」ということですね。(これを「ヤンキーとして」と訳すと、何だか別の意味(「ヤンキーの兄ちゃん」みたい)に聞こえてしまいそうですね^^)
2. と 3. はどちらも、he became the first Yankee to... 「彼は〜した最初のヤンキース選手となった」という表現になります。

ヤンキースを例に挙げて説明することになってしまいましたが、今回のジョーイのセリフもこれと同じように、the Met という単数形を「メッツの1選手」という意味で解釈した、ということですね。


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posted by Rach at 15:03| Comment(2) | フレンズ シーズン9 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする