2017年07月05日

髪が口から出て手袋が脱げる フレンズ1-3改その30

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15:30
ロス: You know, there's nothing wrong with speaking correctly. (ほら、正しく話すことは何も悪いことないだろ。)
レイチェル: Indeed there isn't. I should really get back to work. (本当にないですね。私、ほんとに仕事に戻らなきゃ。)
フィービー: Yeah, otherwise someone might get what they actually ordered. (そうね、そうじゃないと[あなたが仕事に戻らないと]誰かが、実際に注文したものを受け取ってしまうかもしれないものね。)
レイチェル: Ohh-ho-hooohhh. The hair comes out and the gloves come off. (おーおーおーぉ(言ってくれるわねぇ)。髪の毛が口から出て、手袋が脱げるのね[決闘開始ね]。)
(THEY DEGENERATE INTO BICKERING AND CHANDLER HAPPILY STARTS TO SMOKE, UNDISTURBED.)
みんなは言い争い(口論)(という悪い状況)になり、チャンドラーは幸せそうにタバコを吸い始める、誰にも邪魔されずに。

くどい言い方の真似をされたロスは、「正しく発音することには何も悪いことはない」と主張しています。
それを聞いたレイチェルは、Indeed there isn't. と言っていますが、語尾の isn't の最後の t の音をことさら強調して発音しています。
t のように舌で弾かせる音を破裂音というのですが、ラフな会話の場合、そのような最後の破裂音は、破裂させないことが多いです。
普通なら、音としては「イズン」程度にしか聞こえないところを、レイチェルは最後の破裂音をはっきり発音することで「一字一句正しく発音する」ロスの癖をからかっていることになります。
「正しく発音することは何も悪くない」というロスの発言に対して、言葉通りの意味としては「(ロスの言うように)本当に何も悪くない、何も悪いことはない」と言ったことになりますが、その言葉を言う時に「極度に正しく発音してみる」ことで、結局、ロスの「くどすぎる発音」をバカにしていることになるわけですね。
自分の発音をからかわれたロスは、レイチェルを少しにらんでいます。

I should really get back to work. は「私は本当に仕事に戻るべきである。戻らないといけない」。
レイチェルはこのコーヒーハウス「セントラルパーク」のウェイトレスなので、フレンズたちとしばらく癖の話であれこれ盛り上がっていたけれど、そろそろまじで仕事に戻らないとね、と言って、みんなの会話から離れようとしたわけですが、そこでフィービーが Yeah, otherwise... のセリフを言って、みんなが「そこまで言うか?」みたいな反応をすることになります。
フレンズたちの反応、特に言われたレイチェルの反応から、それがレイチェルに喧嘩を売ったような発言であることがわかるのですが、フィービーがレイチェルにそういう発言をしたのは、「自分(フィービー)の髪を噛む癖を、ロスはかばって可愛いと褒めてくれた」→「フィービーの髪を噛む癖についてロスが反論したことで、ジョーイはロスの癖を持ち出しバカにした」→「さらにレイチェルがロスの癖をバカにする発言をした」という流れから、「自分をかばってくれたロスをバカにしたレイチェルに、フィービーが仕返しをした」ということになるでしょう。

そのフィービーのセリフについて。
otherwise は「さもなければ」。
セリフを訳すと「あなたが仕事に戻らなければ、誰かが実際に注文したものを受け取るかもしれない」と言っていることになりますが、裏を返すと、「あなたが仕事に戻れば、客が注文したものとは違うものを受け取ってしまう」と暗に言っていることになります。
同じエピソードの過去記事、親指から人差し指までの長さ フレンズ1-3改その8 で、レイチェルが自信満々に「みんなの注文、言わなくてもわかるから」と飲み物を配った後、レイチェルに見えないところでフレンズたちが飲み物を交換しているシーンがあって、レイチェルは注文通りのものを給仕できない人であることが明らかになっていました。
そういうシーンがあったことを受けての、フィービーのこのセリフなわけですね。

someone might get what they actually ordered の they は、someone を受けている代名詞。
本来なら、単数形 someone を受ける代名詞は、he か she になるところですが、性別がはっきりしていない場合だと、he/she や、he or she と表現しなければならなくなります。
そういう手間を省くためでしょうか、単数名詞である someone を受ける場合に、口語では、they という複数名詞が使われることが多いです。
実際、「フレンズ」にも someone を受ける they はよく登場しますので、以後、気をつけて見てみてください。

「あなたが仕事に戻ると、またお客が注文とは違う品を受け取ってしまう」と言われたレイチェルは、何ですって?! という顔で振り向いています。
その後のレイチェルのセリフ、The hair comes out and the gloves come off. について。
これについては過去記事でご質問をいただいたことがあり、それについて記事にした際(フレンズ1-3その7 ご質問4)、たくさんの方から貴重なご意見をいただきました。
いただいたそれらのご意見を参考に、今の私が考える解釈を以下に書かせていただきますね。

まずこのセリフは、A come out and B come off(A が come out して、B が come off する)という形になっています。
韻を踏んでいるというのとは少し違うかもしれませんが、動詞の部分を同じにすることで、基本的な動きが同じで、かつ動きの方向性がやや違うだけ、という感じを出しているのだろうと思います。
out は「外へ」、off は「離れて、分離」のニュアンスなので、come という動詞の動きのニュアンスを出すと「A が外に出ると、B が離れる」という感じになるでしょうか。
the hair については、フィービーが髪の毛を噛む(chew her hair)癖があるという話の流れがあるので、The hair comes out は「フィービーが噛んでいた髪の毛を口から(吐き)出した」ことを指す「髪の毛が(口から)外に出る」ということになると思います。

the gloves come off の glove は「手袋、グローブ」のこと(英語の発音はグラヴ)。
以下、とりあえずは、glove=手袋 と訳しますと、このシーンに特に手袋などは出てきていないので、一般的な表現として持ち出したことが想像できます。

この表現に関連して、Macmillan Dictionary に、以下の項目が出ていました。
take the gloves off : to start fighting or competing hard in order to achieve something. When this happens, you can say ‘the gloves are off’
例)With more than five months left until election day, it is somewhat early for the gloves to come off.

つまり、「take the gloves off(手袋を脱ぐ)とは、何かを達成するために、懸命に戦いや競争を始めること。これが起きる時、"the gloves are off"「手袋が外れる(脱げる)」と言うことができる」。
例文は「選挙日まで5か月以上残っているので、手袋が脱げる[真剣勝負を始める]には幾分早い」。

このマクミランの説明は、項目のタイトルは take the gloves off となっていますが、語義説明では the gloves are off、例文では for the gloves to come off という表現が使われています。
take off は「服を脱ぐ」など、身に付けているものを脱ぐ・取る・取り外す時の表現で、be off は「分離している状態」つまり「取れている、外れている、脱げている」、come off は「分離している状態になる」つまり「手袋が脱げる」動きを指していることになるでしょう。

上の語義に「懸命に戦いや競争を始める時に”手袋が外れる”と言う」とありますが、手袋が外れることと、真剣勝負の決闘が始まることの関連性については、以下の2つの可能性が考えられる気がします。

1. 西洋の決闘で、手袋を投げ捨てる。もしくは手袋を脱いで相手に投げつけることで決闘開始の合図とする。
2. ボクシングで手を怪我しないためのクッションとなっているグローブを外して、素手で殴り合う、本気でやり合う。

gloves が手袋なのかボクシングのグローブなのかは、過去記事にいただいたコメントでも意見が分かれていました。
語源がどちらなのかは気になるところではありますが、今ここで理解しておくべきことは、the gloves を脱ぐ、the gloves が取れる、という表現には「決闘開始」のニュアンスがある、ということですね。
上のマクミランの語義の、start fighting hard のニュアンスを感じ取ることが必要だということです。

それから、いただいたご意見にあったのですが、the hair comes out というのは単に「髪の毛が口から出る」だけではなく、「口に髪の毛をくわえていると話せない、髪の毛を口から離したことで言いたいことを言う」というニュアンスも感じられる気がします。
過去形ではなく現在形で語っているので、現在形のニュアンスを出そうとすると「髪の毛が口から出ると、手袋(グローブ)が脱げる・外れる」のようになりますね。
「髪の毛が口から出る」→「自由になった口で人にケチをつける」→「決闘開始、喧嘩売ってる」というような流れを表現したのが、The hair comes out and the gloves come off. というセリフなのだろうと思いました。

レイチェルのウェイトレスとしての仕事ぶりにケチをつけたフィービーの発言に対し、「あら、髪の毛を食べるのをやめて、戦闘開始ってわけ?」みたいに返したことで、ト書きにあるように、フレンズたちは口論状態になります。
喫煙を責められたチャンドラーが他の人の癖を話題に出したことで、他のみんなはチャンドラーのタバコのことも忘れて言い争うことになり、一人悠々とタバコを吸いながら去っていくチャンドラーの作戦勝ちというところですね。

ちなみに、今回のシーンで、フレンズたちの癖の話が出ましたが、ロスが丁寧で大げさな発音をしがちであるという癖は、このエピソード以降のロスにも見られる気がしますが、ジョーイの指関節鳴らし、モニカの鼻鳴らし、フィービーの髪噛み、などの癖は、これ以降のエピソードで出てくることはありません。
「君らだってこんな癖があるじゃないか!」と責めるために、このエピソードでだけ作られた設定、というところですね。

この一連のシーンは、ある人が発言した後、その発言にムッとして別の人が別の話を持ち出す、というパターンが続きますが、自分の癖をバカにされたから他の人の癖を持ち出す、自分をかばってくれた人をバカにしたから仕返しをする、など、それぞれのキャラの心の動きとともにセリフが理解できると、いい感じかなと思います。


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posted by Rach at 15:37| Comment(5) | フレンズ シーズン1改 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月03日

それがなくても生きられる フレンズ1-3改その29

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14:59
ジョーイ: Does the knuckle-cracking bother everybody, or just him? (指の関節を(ポキポキ)鳴らすのに、みんなイライラしてる?? それとも(イライラしてるのは)彼(チャンドラー)だけ?)
レイチェル: Well, I-I could live without it. (そうねぇ、それがなくても生きられるわね[別になくても困らないわね、あっても役には立たないわね]。)
ジョーイ: Well, is it, like, a little annoying? Or is it like when Phoebe chews her hair? (ふーん、それってちょっとうっとうしいの? それともフィービーが自分の髪の毛を噛む時みたいな感じ(のうっとうしさ)なの?)
(PHOEBE SPITS OUT HER HAIR)
フィービーは自分の髪の毛を口から吐き出す。
ロス: Oh, now, don't listen to him, Pheebs. I think it's endearing. (あぁ、ねぇ、彼の言うことなんか聞かないで、フィービー。僕は(その癖が)愛らしいと思うよ。)
ジョーイ: Oh, (IMITATING ROSS) you do, do you? (おぉ、[ロスを真似て] 君はそう思うんだ、思うんだね?)
(MONICA LAUGHS AND SNORTS)
モニカは笑って、鼻を鳴らす。

bother は、前回の記事に出てきた annoy と同じで、「悩ます、困らせる」という他動詞。
Like Joey's constant knuckle-cracking isn't annoying? とチャンドラーが言ったので、同じような意味の動詞 bother を使ったことになります。
bother を「人を悩ませる」という他動詞として直訳すると、「俺の指関節ポキポキ鳴らしがみんなを悩ませてる? それとも悩ませてるのは彼だけ?」ということになりますが、自然な日本語にすると、「みんな、関節鳴らしにイライラしてる? それともイライラしてるのはチャンドラーだけ?」と言っていることになるでしょう。

チャンドラーに急にその話を持ち出されたので「みんな、俺の関節鳴らしを常々うっとうしいとか思ってた?」と改めて尋ねた感じで、一瞬沈黙が流れますが、少し間を空けてから、ソファの後ろに立って背もたれに手をついていたレイチェルが、I could live without it. と答えます。
直訳すると「それ(関節鳴らし)なしで、(生きようと思えば)生きることができる」ということになりますが、つまりは「別に生きるのに絶対に必要なものではない」「なくても別に困らない」と言っている感覚になるでしょう。
そのレイチェルの言い方からは、「これまではあえて文句を言ったことはなかったけど、あっても特にメリットはないから、ないほうがありがたいわね」みたいなニュアンスが感じられる気がしました。

自分の癖について「あれってみんな気にしてた? 嫌だった?」と尋ねたことについて、「全然気にしてないわ」と返事してもらえればジョーイも安心したでしょうが、わざわざ「なくても困らない」→「必要ではない、ないほうがありがたい」みたいに言われたので、ジョーイはカチンと来たようで、ジョーイは別の人の癖を挙げることになります。
is it, like, a little annoying? Or is it like when SV は「それって、ちょっとうっとうしいの? それとも S が V する時みたいな感じなの?」。
「ちょっとうっとうしいの、それとも」と言った後で、S が V する時みたいなうっとうしさなの? と比較に出しているので、「ちょっとではなく、かなりうっとうしい」ことの例えとして、when SV と言っていることになるでしょう。
例に出された SV は「フィービーが自分の髪の毛を噛む(かむ)」ということ。
chew は「…を噛む」という動詞で、chewing gum は「チューイングガム」ですね。
ジョーイにそう言われた時に、フィービーは自分の長い髪を口にくわえているところだったので、ペッと口を開いて、舌を出しつつ、くわえていた髪の毛を離すことになります。
ちょうどフィービーが髪の毛を噛んでいたのを見て、「自分の癖はフィービーのあの癖よりはましじゃない?」という気持ちでジョーイはその癖を挙げたのでしょう。
「俺の関節鳴らしよりも、フィービーの髪の毛噛みのほうがうっとうしいって思わない?」みたいに言われた時にまさに髪の毛を噛んでいたので、フィービーは恥ずかしくなって慌てて吐き出したわけですね。

ロスは「ジョーイの言うことなんか聞かないで。聞かなくていいよ。気にしなくていいよ」と言って、結構親身になって、フィービーのことをかばっています。
endearing は「かわいらしい、愛らしい」という意味。

ジョーイが非難したフィービーの癖をロスがかばったので、ロスに反論されたことになるジョーイは、今度は矛先をロスに向けます。
Oh, you do, do you? というのは、ト書きにあるようにロスの言い方を真似たもので、付加疑問的に、ちょっとくどい感じに念押しするような大げさな口調がロスっぽいとジョーイは言いたいようです。
この癖は、前回の記事でチャンドラーが And Ross, with his over-pronouncing every single word? と言ったことを受けてのものですね。

ロスの大げさな言い回しをジョーイがからかったのを聞いて、ロスの妹のモニカは笑い、その後、ゴッゴッ(ガッガッ)という感じのブタの鳴き真似のような音を鼻から出しています。
これがチャンドラーのセリフにあった、And Monica, with that snort when she laughs? の snort 「鼻を鳴らす(こと)」ですね。
兄ロスは眉をしかめて、なんて音を出すんだ、という顔をしています。
モニカが鼻を鳴らすことについては、チャンドラーも「ありゃあ一体何だよ?」と言っていましたので、女の子のモニカが笑ったついでにそういう音を出すことについて、男性陣が嫌だなぁ、と思っていることがよくわかります。
ロスはその音そのものに加え、ロスをからかったジョーイのセリフで、妹モニカがウケているのも気に入らないので、余計に嫌な顔をしているのでしょうね。


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posted by Rach at 14:36| Comment(0) | フレンズ シーズン1改 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする