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21:52
[Scene: Central Perk. Ross, Rachel, and Phoebe are there. Ross has an icepack to his head.]
シーン:セントラルパーク。ロス、レイチェル、フィービーがそこにいる。ロスは頭にアイスパック(氷枕)を乗せている。
レイチェル: Oh, are you sure you're okay? (まぁ、ほんとに大丈夫?)
ロス: Yeah. (うん。)
レイチェル: Does it still hurt? (まだ痛む?)
ロス: Yeah. (うん。)
フィービー: [seeing Rachel's clothes] What a neat idea. All your clothes match. I'm gonna do this. ([レイチェルの服を見ながら]なんて素敵なアイディアなの。服全部がマッチする[揃う]わ。私もこれやろうっと。)
[Monica and Joey enter.]
モニカとジョーイが入ってくる。
モニカ: Hi. (はーい。)
フィービー: Hey, how'd it go? (ねぇ、どうだった?)
ジョーイ: Excellent! (素晴らしいよ!)
モニカ: We ripped that couple apart and kept the pieces for ourselves. (私たちはあのカップルを引き裂いて、引き裂いたそれぞれを私たちのためにキープしたの[私たちがもらったの]。)
ロス: What a beautiful story. Hey, I'm fine, by the way. (なんて美しい話だ。あぁ、僕は大丈夫だからね、ついでの話だけど。)
モニカ: [notices his head] Oh, I'm sorry. ([ロスの頭に気づいて] あぁ、大変ね[大丈夫?]。)
レイチェル: Where's Chandler? (チャンドラーはどこ?)
フィービー: Oh, he needed some time to grieve. (あぁ、彼は悲しむ時間が必要だったのよ。)
[Chandler runs by the window outside, joyous.]
チャンドラーは外の窓のそばを喜びに満ちた様子で走る。
チャンドラー: I'm free! I'm free! (俺は自由だ! 俺は自由だ!)
フィービー: That ought to do it. (あれで[今ので]完了よ。)
ケガしたロスをレイチェルが気遣っている時、フィービーはレイチェルの失敗でピンクになってしまった洗濯物を見ています。
neat は「すばらしい」。
match は「マッチする、調和する」ですから、「全ての服がマッチする」、つまり「同じ色に揃うことで統一感が出る」と言っていることになります。
We ripped that couple apart and kept the pieces for ourselves. について。
rip は「〜を裂く、引き裂く」ですから、前半は「(私たちがダブルデートした)あのカップルを別々に引き裂いた」ということ。
the pieces は「ピース、破片」ということですが、この場合は「引き裂いたカップルのそれぞれ」という感覚。
元カップルが別れてばらばらになったそれぞれの男女を、私たちがそれぞれキープした、もらっちゃった、という感じですね。
Hey, I'm fine, by the way. の後付けの by the way について。
By the way は「ところで、話は変わるけど」という意味で、何か言う前の文頭につけることが多いですが、今回のロスのセリフのように、文章の最後におまけのようにつけることも多いです。
「あ、これはついでの話なんだけどさ。ちなみに」と、「本題ではないけれど、参考までに言ってみた」という感覚。
これは、自分たちがデート相手をゲットしたことに夢中になって、ロスがケガをしていることに目もくれない妹モニカに対して、「ま、大したことじゃないんだけどね。一応言っとくと、このケガについては大丈夫だからさ」という意味で付け足していることになります。
チャンドラーがいないことに気づいたレイチェルに、フィービーは「彼には深く悲しむ時間が必要だった」と返しています。
彼女であったジャニスと別れた直後なので、みんなと離れて一人で悲しむ時間が必要だったのよ、と言っていることが想像されますね。
最後のセリフ、That ought to do it. について。
この文の意味については、過去記事でも何度か話題になったのですが、今回改めてこのニュアンスについてまとめてみたいと思います。
このセリフは、ネットスクリプトでは、That oughta do it. と表記されており、発音は「ザット・アウタドゥーイット」のような感じです。
ought to という表現については、学校英語では ought to = should だと習いますよね(厳密には、ought to の方が意味が強いようです)。
今回の意味は「〜すべきだ」ではなく「〜のはずだ」のような意味だと思われます。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、例文の中に that ought to do it が使われているものがありました。
その意味と例文をご紹介すると、
ought to [modal verb] : used to say that you think something will probably happen, probably be true etc.
例)Just one more screw - there, that ought to do it (= used to say that something you have been working on is finished or enough).
つまり、ought to は「(法動詞)何かが多分起こるだろうと、多分正しいだろうと自分が考えていることを言うために使われる」。
例文は「ねじをあともう一つ… ほら、それで完了(終了)だ」(=自分がずっと作業し続けてきた(取り組んできた)ことが終わる、または十分であることを言うために使われる)。
ロングマン現代英英辞典(LDOCE)の do の項目には次のように出ていました。
24. that should do it
(also that ought to do it)
: (spoken) used to say that you will have finished doing something if you just do one more thing
例) I've just got to prepare the dessert and that should do it.
「もし、ただあともう一つのことをすれば、何かをすることを終えることになるだろう、と言うときに使われる」
例文は、「デザートの用意をしなくちゃ、そしたら、それで完了(終了)だわ。」
should と ought to がほぼ同じ意味で使われることから、That ought to do it. も That should do it. も同じ意味として使われるということですが、このフレーズの解釈のポイントは do it にあると思えますね。
英英辞典で do it を調べると「エッチする」の意味(「ヤる」的なニュアンス)しか出てこないのですが、英和では以下のような意味が出ていました。
英辞郎では、
do it=功を奏する、効力[効果]を発揮する、成功する
研究社 新英和中辞典では、
do it=[形容詞・副詞を主語にして]効を奏する
例) Easy [Slowly] does it. のんびり[ゆっくり]やるのが肝心だ。
これらの「功を奏する」というニュアンスは何となくわかる気がしますね。
do it を「それをする」よりもむしろ「それをなす」のように訳した方がより近いかもしれません。
it はこの場合、話者が頭の中にイメージしているものを指しますから、「主語がそれをなすはずだ」→「主語のおかげで何かが完成・完了する」という意味として使われるのだろうなぁと思うわけです。
ここで改めて今回のセリフを見直してみると、That はそのセリフの前に出てきたことを指し、「それで(今ので)完了するだろう、完了するはずだ」のような意味になると考えられます。
このセリフの前にフィービーは「チャンドラーには悲しむ時間が必要だった(過去形)」と言っています。
ジャニスと別れて、どこかで一人寂しく泣いているのかと思わせるセリフですが、その後、チャンドラーが嬉しさ大爆発という感じで大喜びで走っているのを見て、フレンズたちは「悲しんでいるんじゃなかったのかよ!?」みたいにあきれている様子。
そこでフィービーが「あれ(チャンドラーが喜びを爆発させて走り回っている様子)で完了ね」と言っていると考えると、「全然悲しんでないじゃん」と思っているフレンズたちに対して、「(悲しむ時間は)あれで完了するのよ」「最後に走り回って嘆きの時間はおしまい」「今のが最後の締め(しめ)なのよ」のように言っているということかなと思います。
ちなみに、この That ought to do it. という表現は、フレンズ4-20 のエンドクレジット直前にも出てきます。
ネタバレにならない程度に状況を説明すると、ある女性キャラ (A) が、ある男性キャラ (B) に好意を持っていた。男性 (B) が女性 (A) の家にやって来た時、(A) が来ていたある衣装を見てドン引きして、帰ってしまった、というシーンです。
B は見てはいけないものを見てしまった、という感じで、
B: I got to go. (僕、帰らなきゃ。)
A は B を引き留めるように B の名前を呼ぶが、あきらめたように戻ってきて、他の女性陣に、
A: Yeah, well, that ought to do it.
DVD の日本語訳は「字幕:そりゃ逃げるわね/音声:ま、いっか、すっきりした」となっていましたが、口をへの字にしてあっさり言ったその最後のセリフは、確かに「ま、いっか。別にもうどうでもいいわ」みたいなニュアンスが感じられます。
待って、と言いながらも実際には追いかけず、結局、その男性のことはそれほど好きでもなかったということを悟った様子で、英語の意味としては「今のでおしまい」というニュアンスで使ったのだろうと思います。
またフレンズ以外では、フルハウス 4-21 にも出てきます。
D.J. とステフがパパ(ダニー)の寝室でモメていて、誤って壁に穴を開けてしまい、その穴をパテで修理した時のセリフ。
D.J. : That ought to do it.
DVD日本語訳は「字幕:これでよし/音声:これでよし、っと」になっていました。
穴をふさぐ修理が完了した瞬間のセリフで、英英辞典の語義にあった「作業し続けてきたことが終わる」という感覚、仕事が完了した時に「最後の仕上げ、これで完了」「これでよし、っと」と言うニュアンスそのままの使われ方になるでしょう。
余談ですが、新刊「リアルな英語の9割は海外ドラマで学べる!」の p.203 に、「フルハウス」のスピンオフ「フラーハウス」の 1-3 の話を紹介しています。
その話の中で「パパに怒られそうになって、二人でパパ大好きという歌を歌ってごまかしたの」という小さい頃の思い出話をしているのですが、その「怒られそうになった」というのは前作「フルハウス」の 4-21 で「パパの寝室の壁に穴を開けてしまった」ことを言っていて、その穴を修理した時のセリフが、先ほどご紹介した That ought to do it. になります。
「この話はあのエピソードのあのシーンのことだ!」とわかったりするのは長期に続くシリーズを観る醍醐味でもありますし、たまたま関連した内容を新刊で取り上げたばかりだったので、タイムリーかと思いご紹介してみました♪
ちなみに日本語では「これでよし」のように「これ」という代名詞を使いますが、英語では That ought to do it. のように that が使われていますよね。
英語で this と言う場合は「これから先にすること、言うこと」を指し、直前にしたこと、言ったことは that で表現する傾向があります。
フルハウスで穴をパテでペタペタしてふさいだ直後に「これでよし」と言う場合は、「今の作業で仕事は完了」ということですから、英語では this ではなく直前のものを指す that が使われているのだと解釈できると思います。
今回のフレンズの場合は、喜び一杯で店の外を横切って行ったチャンドラーのことを指していますので、日本語で距離が離れたものを指す「”あれ”で完了ね」と訳しても違和感はないでしょう。
ただ、英語での実際のニュアンスは、距離が近いか遠いかどうかということではなく、その発言よりも少し前に起こったことを指しているから that が使われている、と考えれば良いと思います。
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