2020年05月13日

直接話法から間接話法に変わる フレンズ1-10改その18

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19:25
「僕は君と別れることなんかできない」というデビッドに。
フィービー: Oh, yes, yes, yes, you can. Just say, um, "Phoebe, I love you, but my work is my life and that's what I have to do right now." And I say, "Your work? Your work? How can you say that?" And then you say, um, "It's tearing me apart, but I have no choice. Can't you understand that?" And I say, [Hits him] "No! No! I can't understand that!" (あぁ、いいえいいえ、あなたにはできるわ。ただこう言って。ほら、「フィービー、君を愛してる。でも仕事は僕の人生なんだ、それが今、僕がしなければいけないことなんだ」。そして私がこう言う、「あなたの仕事ですって? 仕事? どうしてそんなことが言えるわけ?」 それからあなたがこう言うの、「僕の心は引き裂かれそうだ、でも僕には選択肢がない。そのことをわかってくれないの?」 そして私が言うの、[デビッドを叩いて] 「いやよ、いやよ! そんなのわからないわ!」)
デビッド: Uh, ow. (あ、痛い。)
フィービー: Ooh, sorry. Um, and, and then you put your arms around me. You put your arms around me. [He does so] And, um, and then you tell me that you love me and you'll never forget me. (あ、ごめん。それからあなたは私の体に腕を回すの。あなたは私の体に腕を回すんだってば。[デビッドはそうする] それからあなたは私にこう言うの、私を愛してるって、あなたは私のことを絶対に忘れない、って。)
デビッド: I'll never forget you. (君のことは絶対忘れないよ。)
フィービー: And then you say that it's almost midnight and you have to go because you don't wanna start the new year with me if you can't finish it. [They kiss] I'm gonna miss you... you scientist guy. (それからあなたは言うの、もう少しで真夜中だからあなたは行かなきゃならない、って。なぜなら、私と一緒に新年を始めたくない、もし私と一緒に年を終えることができないのなら、って。[二人はキスする] きっとあなたを恋しく思うわ、科学者さん。)

デビッドが I can't break up with you. と言ったことに対して、フィービーは Oh, yes, yes, yes, you can. と言っています。
「できない」に対して、Yes, you can. ですから、日本語としては「いいえ(そんなことはない)、できるわ」という訳の方が自然になるでしょう。
フィービーがえらく軽い感じで「できるできる」というので、観客からはラフトラック(笑い声)も起きています。
Just say ... 「ただこう言って」と、フィービーはその後に続くべき会話を一人二役で語り始めます。
my work is my life は「僕の仕事は僕の人生なんだ」。
デビッドの気持ちを自分で言ってみせて、「あなたのその気持ちはわかるわ」というのかと思いきや、「仕事ですって? どうしてそんなことが言えるの?」と怒り出すセリフが続くのには、つい笑ってしまいます。
一瞬笑ってしまうものの、このパターンがしばらく続くのを聞いていると、「こう言えば別れるのは簡単よ」と言っておいて、フィービーがそれに対してリアルな感じで怒っている部分が彼女の本当の気持ちである、とわかってきて、だんだんこの一人芝居の切なさを感じられるようになってきます。
あなたの仕事が大切なのは私もわかってる、それを理解してあげたいけれど、こんな風に駄々をこねたい私もいるのよ、という感じでしょう。

tear apart は「引き裂く、バラバラにする」ですが、tear someone apart の形で「人の心を引き裂く、苦しめる」という意味で使われます。
物理的に引き裂く、バラバラにするだけではなく、心のような精神面にも使えるということです。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
tear somebody apart : to make someone feel extremely unhappy or upset
例)Seeing him in that hospital bed tore me apart.

つまり「人を極度に不幸にしたり、動揺させたりすること」。例文は「あの病院のベッドにいる彼を見て、心が引き裂かれた」。
また LAAD には、War tore the family apart. 「戦争がその家族を引き裂いた・バラバラにした」という例文も載っており、親しい間柄だった仲を離れ離れに引き裂いてしまう、という意味でも使われます。
日本語でも「心が・家族が引き裂かれる」のように表現しますので、日英でまさに同じ表現が使われるということです。

you put your arms around me は「私の体に腕を回す」。
フィービーは and then を多用して「それからこう言う、こうする」と説明していますが、そう言ったのにその行動をしないデビッドに対して、「私が言った通りに、そうして」とささやき声で言ったのが、2回目の You put your arms around me. になります。

You tell me that you love me and you'll never forget me. は tell を使った間接話法。
引用符を使って直接話法で表現すると、
You say to me, "I love you and I'll never forget you." となります。
「言う」を意味する動詞の中でも tell は「情報を伝える」というニュアンスで、that 以下は、デビッドが言う「内容」を示しています。

このセリフの直前まで、フィービーは、デビッドと自分(フィービー)のセリフを臨場感あふれる言い方で一人芝居のように言っていました。
字幕もそれを反映して、それぞれのセリフの部分が引用符でくくられていましたが、ここにきて、「引用符を使って、フィービーが彼のセリフを実演している感じ」がぐっと薄れて「間接話法」になっているのが一つのポイントなのかな、と思います。

間接話法で言われている内容は、セリフにすると、"I love you and I'll never forget you." という言葉ですが、この言葉はフィービーがデビッドの気持ちを代弁して言うのではなく、直接デビッドの口から聞きたい、だから「こういう内容のことを言う」と「内容」にとどめて、「セリフそのもの」を言うのを避けたということだろうと。

日本語の場合でも、「私を愛してるって言って」と言うのと、「(彼の口調を真似して)”君を愛してる”って言って」と言うのとでは、後者の場合、決めゼリフを言われる側が先回りして言ってしまったような感じになり、嬉しさや感動が薄れてしまうような気がするのです。
「私を愛してるって言って」→「君を愛してる」
「”君を愛してる”って言って」→「君を愛してる」
だと、後者は、ただ言われた通りにオウム返しのように同じ言葉を返しただけ、という感じがしてしまう、と言えばいいでしょうか。
この言葉はデビッドの口からきちんと言ってほしい、という気持ちが、フィービーに「間接話法」を使わせたのではないかな、と思ったということです。

結局、デビッドは I love you の部分は言わずに、I'll never forget you. とだけ言っています。
これについては、フィービーが自分のために二役を演じている姿が切なくて、後のセリフを言うのが精一杯だったのか、もしくはフィービーではなく仕事を選んでしまった自分には I love you と言う資格はないと思ったかの、どちらかかな、と思いました。

you say that it's almost midnight and... について。
こちらも間接話法となっています。
通常、間接話法では tell を使いますが、say that の形もあるようです。
研究社 新英和中辞典では、
say=〔+(that)〕〈…と〉言う
用法:say to ... that の形はあまり一般的でなく tell ... that を用いる

と出ていますので、tell that のような間接話法として say that の形もあるものの、tell の方が一般的、ということになるでしょう。
(2020.5.15 追記)
コメント欄で「この辞典の say の用法は、「誰々に言う」という場合の使い分けの話である」というご指摘をいただきました。
おっしゃる通りで、「人に〜と言う」という場合は、say to someone (that) よりも tell someone that の方が一般的という話で、「人に」がない形の「〜と言う」という間接話法では、say (that) も一般的に使われます。
コメント欄にも追記しておりますので、併せてご覧いただけると幸いです。
(追記はここまで)

フィービーの you say that を引用符を使った直接話法にすると、
you say, "It's almost midnight and I have to go because I don't wanna start the new year with you if I can't finish it." となります。
almost は「ほとんど」と訳されることが多いですが、時間などを表す場合には「もう少しで・もうすぐ(〜時)」と訳すとしっくりくるでしょう。
前半は「もうすぐ真夜中だから僕はもう行かないと」ということで、この場所で真夜中を越したくない、年越ししたくないと言っていることになります。

I don't wanna start the new year with you if I can't finish it の it は the new year 「新年(の年)」で、「その年を君と終えることができないのなら、君と一緒にその新年を始めたくない」ということでしょう。
これから来る新年を君と一緒に終えることができないとわかっているから、新年を迎える前に僕はここを去るよ、ということ。
デビッドに言ってほしいセリフをフィービーが代わりに言っていることになりますが、さよならするとわかっているから新年を一緒に迎えても余計に寂しくなるだけ、だから新年になる前にあなたは行って、というフィービーの気持ちが表れているということです。

ここで二人はキスしますが、ちょうど、キスする二人の向こう側の壁に、キスする男女のポスターが貼ってあります。
二人のキスはそのポスターとちょうど重なるようなアングルになっており、切ない二人の別れにふさわしい、しゃれた演出だと思いました。

you scientist guy の you は scientist guy と同格 になります。
scientist guy は「科学者の人」という感覚ですが、DVDの和訳のように「科学者さん」という和訳がしっくりくると思います。

このような同格の you は、LAAD では以下のように説明されています。
you [pronoun] : used before nouns or phrases when you are talking to or calling someone
例1)You boys had better be home by 11:00.
例2)You jerk!

つまり「誰かに話しかける時、または誰かを呼ぶ時に名詞、またはフレーズの前に使われる」。例文1は「君たちは11時までには帰宅すべきだ」。例文2は「この最低男!」。

嘘をついた相手に対して、You liar! 「この嘘つき!」と言ったりするのも、これと同じ「同格」になります。


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posted by Rach at 22:24| Comment(4) | フレンズ シーズン1改 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする