私はフレンズ学習を始めた頃は、本当に聞き取れなくて、「こんなの聞き取れるようになるんかいな?」って感じだったんですが、字幕音声切り替えをすることで、だんだんわかるようになってきた、という”実感”があります。(これが効果あるかどうかは人によると思いますので、この方法を無理強いするつもりはありませんが。)
だから、私はある程度までは字幕を否定するものではありません。
私は、自分がそうしてきたように、「ドラマの英語なんてわかんない」というところから、ある程度のところまで来るために、字幕は決して無駄ではない、と思っています。(実は「ある程度」という単語が頻出しているところがポイント・・・笑)
ただ、昨日の記事に書きましたように、そんな私でも字幕などの日本語訳を絶対視しているわけではありません。
私がオススメするDVD学習法では、英語のイメージを日本語の「イメージ」(日本語の「言葉」ではない)に置き換えることで英語のニュアンスをつかむ、のを目的にしています。
DVDの音声と字幕(その3) にも書きましたが、
大事なことは、「ニュアンス」「イメージ」です。
英語を英語として理解する、ということは、英語のセリフを「日本語に置き換えるのではなく」、観念的にイメージで捉える、ということなのです。
が私の学習法の基本コンセプトです。
ここが何とも誤解されやすいというか、説明しにくいところなんですが、例えばこれは
「単語カードの表に英語のセリフ、裏に日本語のセリフを書いて、一対一対応で覚える」
というのとは全く違います。
受験英語で単語を一対一対応で覚えたことによる弊害で、英作文が不自然になるという話はよく聞きますよね。
だから、「一対一対応」の弊害についてはよく理解しているつもりです。
私が言ってるのは、字幕や音声を切り替えることで、「こんな感じのことを言っているらしい」というニュアンス、イメージを掴めれば良い、ということなんですね。
もちろん、それだけでは本質的な部分はわからない、というのは当然のことです。
「日本語訳を見て、全てがわかった気になってはいけない」ということもありますし、「自分が日本語に訳せたからといって、理解できたというものでもない」とも言えます。
そういうイメージ置き換えは、日常会話部分では、それでうまく行く部分も多いと思うのですが、ギャグや文化的背景の話になると、その置き換えにも限界が出てきます。
そこで、日本人にわかるように固有名詞や単語を変えてしまったり、同じように笑えるような日本語のダジャレにしてみたり、といろんな工夫がされています。
話の流れや勢いを止めないようにするには、「何のこと?」「誰それ?」と見てる人に思わせてはいけないからですね。
特にフレンズのようなシットコム(コメディ)は、セリフを聞いたとたんに笑えないと、話に乗っていけません。
これはコメディの宿命みたいなものですね。
聞いた瞬間にパッとイメージが浮かばないと、笑えませんから。
シリアスなドラマなら、これほど置き換えなくても良いのかもしれませんが。
結局、「DVDの日本語字幕・音声(吹き替え)は英語学習者のためのものではない!」ということです。(←わかりきったことを書いてますが・・・)
英語学習者のための日本語訳と、コメディとしての作品の日本語訳とは全くの別物だということです。
日本語に吹き替えられたドラマはそれが一つの完成品です。
オリジナルに翻訳者の手が加わった、共同作業の結果です。
全く同じもののように見えて、実は、「小説を映画化した」、「漫画をアニメ化した」くらいの変化が起こっているとも言えるかも。
例えば、I を「俺」と訳すか「僕」と訳すかだけでも随分とニュアンスは異なりますし、例えば、刑事コロンボの有名なセリフ「うちのカミさんがね・・・」が、「私の妻がね・・・」だと、これまた雰囲気がかなり異なりますよね。
そういう訳者のセンスが、日本語になった作品のカラーを決定してしまう部分がかなりあると思います。
アリーmy Love でリチャード・フィッシュという人の口癖に "Bygones." というのがあって、これを日本語訳では「前向きに!」と訳されています。
bygone は名詞で、複数形の bygones で、「過ぎ去ったこと、過去のこと、過去のいきさつ」という意味になります。
元々は "Let bygones be bygones." ということわざで「過去のこと(過ぎたこと)は水に流せ、過去は過去として。」という意味です。
リチャードはちょっと軽い感じの人で、この「過去を振り返るな」という意味を「明るい未来を見ようよ」というニュアンスに置き換えているところが、私は彼の性格がにじみ出ている気がして好きなんですよね。
こんな風に、日本語に置き換えるというのは、ほとんどセンスの問題です。
ドンピシャならオリジナルの魅力を損ねないし、ちょっと訳者と自分の感性が違うなーと思ったら、何かしらの違和感を感じるのもやむを得ないでしょう。
それはそれで日本語バージョンとして楽しみつつ(違和感がある人は楽しまなくてもいいですが・・・)、英語のオリジナルを理解することで、「日本語の言葉に置き換えずに、英語を英語のままイメージで理解することの大切さ」を知ることができるはず。
そして、いくら翻訳技術が発達しても、やはり英語は英語のままで理解する脳が必要だと、英語学習の必要性を再認識できることになるでしょう。
それに、どんなすごい翻訳マシーンが出来ても、バイリンガルの人が両方理解しているように訳すことは不可能だと思います。
ある程度の日常会話や決まり文句は訳せても、そのニュアンスを汲み取り、適当な日本語に当てはめることはかなり高度なテクニックだからです。
英語と日本語が大きく違っている部分は、すなわち、日本語には訳しにくい箇所。
つまり英語でないと理解できない箇所だということですね。
私はそういう箇所を、英文解釈の上級問題みたいな感じで捉えています。
そういう箇所は、無理して日本語に訳そうとせずに(どの道訳せないんだから)、意味が理解できるだけでいいと思います。
それが出来たら、また英語に一歩近づいたと言えるのではないでしょうか?
(Rachからのお願い)
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完全に日本語を排除した学習法もやってみたいと思ったので、英語のみの文法書も使ってみましたが、今、日本語の文法ドリルをやってみて、先にやっておけばよかったと思っています。
Rachさんの記事を読んで、日本語も上手に使えば使っていいのよって言ってもらったようで、初級者としては気が楽になりました(笑)。人並みのレベルになったら、英語を英語で理解する環境を作って、そのニュアンスを味わってみたいなと思います。
うわー、初めて長文コメント書いちゃいました(笑)。
字幕・吹き替え不要論もあるようですが、僕のレベルでは字幕や吹き替え、プラス英語のスクリプトなしには英語学習ツールとしての「フレンズ」はありえません。辞書だけでは、その場の状況や文化的背景まで含めたセリフの解釈は不可能です。字幕や吹き替えにはそういうバックグラウンドまで含めた翻訳者(=英語上級者)の知識のエッセンスが含まれているわけですから、それを利用しない手はないと思います。
加えて、僕レベルでもある程度英語でセリフが理解できるようになってくると、別の楽しみが生まれてきます。それは「この英語を翻訳者はどう訳すだろう」という興味です。僕の場合、フレンズを見る楽しみの半分はこれにあると言ってもいいかもしれません。
たとえば、以前、Rachさんとの話題にも上った「Yoko」。この日本語訳は「オノ・ヨーコ」でした。もし、ただ「ヨーコ」とだけ訳したら、日本人の9割はなんのことか判らないでしょう。「オノ・ヨーコ」でもシナリオライターが意図した意味を理解できるのは5割だと思います。たぶん、翻訳者の頭の中には「悪女め」とか「最低女」とかいう選択肢もあったでしょう。その辺のジレンマを訳者と共有しながら、「なるほど、ここに落とし所をもってきたか」などと、勝手に舞台裏を探ってみるのも楽しいものです。
Rachさんもおっしゃるように、その人の英語のレベルに応じていろんな「フレンズ」の利用の仕方があると思います。でも、僕にとって日本語字幕や吹き替えは、英語上級者(=翻訳者)の言葉の理解度と翻訳技術を知る上で、なくてはならないものです。
長文コメント、ありがとうございます。私の言いたいことがKIKKAさんに伝わったのがわかって、とても嬉しかったです!
自分のやってきた方法が万人に通用するとは限らないし、いろんな方の意見を聞くたびに、自分のやり方をあまりにも主張しすぎるのも、柔軟性に欠けるのかなぁー、とか日々悩んでいました。
でも、やはり人は、自分が良いと思ったことを主張していけばいいのかもしれない、といただいたコメントを見て思いました。
読者の方が、いろんな方法から自分に合うものを取捨選択して下さればいいのだと。
日本語を排除することの有効性は私も認めているのですが、例えば文法について日本語で理解を深めることも大切なことだと私は思っています。
私は多読多聴が出来ない分だけ、その少ないインプットを文法を使って頭を整理する、という方法で学習してきました。
大西先生の英文法では、ネイティブの英語に何歩も近づいたと実感できますものね。イメージの大切さ、イメージを漠然としたものではなくはっきりと言葉で説明することの大切さ、を大西先生に教えていただいた気がしています。
私もそうなんです。字幕や吹き替えを否定される方も多いのですが、私の学習法も、これなしにはあり得ませんでした。意訳されすぎて使えない部分はともかく、使えるものは使ってもいいんじゃないかと、私は思っているのですけどね。
翻訳者がどう訳すか、というのは私もいつも気になります。どうして、固有名詞を別のものに変えたのか、とか、翻訳者の方に成り代わり(笑)説明したくなるほどです。
Yoko、の扱いも気になりますよね。あそこはやはり固有名詞だからこその面白さなんでしょうけど、これがもし日本人に有名な人じゃなかったら、もしくはあの人のイメージが日本人にも何となく想像できるものではなかったら、また訳も違っていたでしょうね。
私がこの字幕音声を完全否定したくないのは、それがあってこその今の自分だからです。まぁ、そんなに大したものでもないですが、少なくともこの学習法をする前の私とは別人のように違います(笑)。英語を字幕なしでも理解できるようになったのは、このツールがあったからです。
もしかして、日本語完全排除する方法(英語を英語だけで理解、英英辞典を使う)でも、同じように出来たのかもしれませんが、少なくとも、最初のハードルが低いということだけでも、学習を途中で投げ出さずに済んだ、ということは間違いなく言えると思っています。
後は、これからどこまでネイティブに迫れるようになるかです。こんな学習方法では無理だよ、と言われないように、私ももっと頑張らなければなりませんね(笑)。
レス遅くなってごめんなさい。
Rachさんの言いたいこと、よく分かります。たしかにいきなり「フレンズ」を日本語字幕/日本語吹替えなしで理解できるまで何回でも見続けろ!と言われたら私も続かなかったと思います。
日米の文化の違い・表現方法の違いから、字数制限のある字幕では、訳の正確さよりもニュアンスそのものを伝えることに重きを置いているのも分かるし、それがときに英語そのものの表現とはかけはなれた意訳を落としどころとすることも理解できます。そしてそれこそが翻訳者の腕の見せどころなのかもしれません。
最初のハードルは低いほうが続けやすい。そのための、ヘルプとしての日本語字幕の力は大きいですね。
ただ、私のように、文法力/語彙力ともに未熟な者が日本語字幕に頼りすぎると、今回TBいただいた記事のように、英語での理解が字幕の訳に引っ張られて混乱してしまうこともあります。
英語は英語でちゃんと理解できていれば、日本語字幕が意訳をしていることにも自然と気付けるはずだし、その差異を楽しむこともできるのでしょうけど、私はまだまだその域に達していません。
だから私にとって日本語字幕は諸刃の剣。とても便利だけど使い方が難しいです。
日本語字幕に助けられている面も多いので、「今後まったく日本語字幕に頼らない!」と胸をはって宣言はできませんが、英語がフラフラしたまま頼りすぎる場合の弊害が、今の私にはけっこう大きく思えます。字幕/吹替えとの付き合い方は、今後も模索が続きそうです。
というわけで、来年もまた「フレンズ」ネタのヘルプ、頼みますねぇ〜!
お返事ありがとうございます。私の記事は「何を今さらそんな当たり前のことを・・・」という程度の内容しかなく、melocotonさんにとっては、特に目新しい話はなかったと思います。だらだらした文章を読ませてしまって申し訳ありません。
melocotonさんの記事を読んでいて、字幕とどう付き合っていくべきかを自分なりに考えたいと思って、ああいう記事になりました。
私は「字幕音声切替DVD鑑賞法」をやってきましたので、私にとってはメリットの方が大きかったのです。でも、英語の解釈が日本語訳に引きずられる、という経験も何度もしました。その辺りのリスクをはっきり書いておかないと、このDVD活用法をおすすめするのが無責任になるかも、とずっと思っていたので、今回はそれをはっきり書くことのできる良い機会になりました。
どういう学習法が最適か、は本当に人それぞれだと思います。melocotonさんのように字幕なしで数回見て、英語スクリプトと付き合わせる、というのが本当は一番の正攻法なんでしょうね。私はハードルを低くすることと興味が持続することを考えた結果、自分の方法にたどり着きました。もちろん、簡単なだけではなく、私は自分の成果を実感していますが。
私の場合は、そうやって英語に慣れることで、初めて「英語そのものに向き合う」準備ができた気がしています。
フレンズネタの疑問点に関しては、私もわからないことだらけです。はっきり言って、自分のブログに書いてないことは、わからないから飛ばしてるんだと思って下さい(笑)。私の意見はあくまで「英語学習者」の意見で、「英語の堪能な人」の意見ではないですが、その分、なぜその箇所に疑問を持たれたのか、という気持ちはよくわかりますよ。わからないことは調べて聞いて、少しずつ知識やセンスを磨いて行くしかしょうがないんでしょうね。私もmelocotonさんのブログで、他の方の意見を聞くことができて、とても参考になってます。
今年もよろしくお願いしまーす!