動物園でマルセルを探しているロス。
動物園園長: I'm afraid I have some bad news. Marcel has passed on. (申し訳ありませんが、悪いお知らせがあります。マルセルは亡くなりました。)
ロス: Oh, my God. What happened? (なんてことだ。何が起こったんですか?)
園長: He got sick, and then he got sicker...and then he got a little better. But then he died. (マルセルは病気になって、それから、もっとひどくなって・・・それから、少し良くなって。でも、それから彼は死んでしまいました。)
pass on は「死ぬ」の婉曲表現です。pass away とも言います。
日本語でも「死ぬ」という言葉はダイレクト過ぎて、例えば相手の祖母が死んだ時に、「あなたのおばあさんが死んだんですか?」とはあまり言いませんよね。(普通は、「亡くなられたんですか?」でしょうか。)
英語でもこういう場合は die という直接的な言葉は使わないようです。
この園長さんの説明が、妙なんですけど・・・。
「それから良くなって・・・」と期待を持たせるようなことを言っておいて、「死にました」だなんて。
盛り上げておいて、落とす、という典型的なパターンです。
園長: Look, I know this can't bring him back, but here, it's just a gesture. (あの、こんなことでマルセルが戻ってきたりはしないとわかっているんですが、でも、これを。ほんのしるしです。)
ロス: Zoo dollars? (動物園の金券?)
gesture は、日本語の「ジェスチャー」だと「うわべだけのそぶり」という意味になりますね。
英語の gesture には、その意味以外にも、うわべだけではない「意思表示としての行為」という意味もあります。
just a gesture は「ほんの気持ち、ほんのしるし」という感じ。
フレンズ2-5その8 にも gesture という単語が出てきました。
その時も悪い意味では使っていませんでしたね。
zoo dollars は恐らく「動物園でだけ通用するお金」のことだと思います。
ショーを見るとか、乗り物に乗るとか?
大事な人(猿)が死んだと聞いてがっくりしてるのに、金券かよ!って感じですよね。(かと言って、現金ならいいか、というとそうでもないけど・・・。何なら慰めになるでしょうねぇ。そうだ、マルセルの在りし日の写真とか?)
それにしてもこのボケぶり。この園長さん、かなり変わった人ですね。
「つまらないものですが・・・」と言って、くれたものを見ると、本当につまらないものだった、というのはよくあるギャグです。
「あの、これ、つまらないものですけど・・・」「うん、これは何だね?」「ポケットティッシュです。」という山口君と竹田君のコントがありましたよ。(歳がバレる・・・)
ジョーイが、エリカ(ジョーイのファンで、ほとんどストーカー)と食事に行った、と聞いて驚くモニカたち。
モニカ: What is she like? (その人ってどんな感じ?)
チャンドラー: You remember Kathy Bates in Misery? Well, she looks the exact opposite of that. (ミザリーって映画のキャシー・ベイツを覚えてる? 彼女の姿(見た目)は、あれと正反対だ。)
ミザリーは1990年の映画です。スティーヴン・キングが原作でしたね。
キャシー・ベイツ演じる女性が、「ミザリー」という小説のファンで、怪我をした作者を助けたのですが、その後監禁し、自分の好みのラストにするように強要する、という話です。
この映画で彼女はアカデミー主演女優賞を受賞しています。
この映画は、偏執的なファン、ストーカーの代名詞のような映画ですよね。
エリカがストーカーチックな人なのはみんな知っているので、てっきりそのキャシー・ベイツみたいな恐ろしいストーカーなのかと思ったら・・・見た目が正反対、つまりキャシーと違って(失礼!)、とても美人だと言っているのですね。
つまり、キャシー・ベイツは「美しくない人」という意味で例に出していた、ということになります。
「ミザリー」の話を出しておいて、キャシーみたいなストーカーか、と思わせておいて外すのは、チャンドラーらしいギャグのセンスです。
(Rachからのお願い)
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07:01 She’s a total whack-job.
チャンドラーのセリフで、
whack-jobが辞書的な意味では
面白くないのですが・・・
ご質問ありがとうございます。
コメントを読ませていただくと、whack-job の辞書的な意味について既にご存じのようなのですが、他の読者の方の参考として、まずは意味について少し書かせていただきますね。
whacko/whacky という単語は、LAAD (Longman Advanced American Dictionary) で、それぞれ wacko/wacky の別の綴りとして紹介されています。wacko を参照すると、
wacko, whacko : (informal) someone who is crazy or strange
つまり「クレイジー、または変わった人」。
そしてアカデミックな辞書である LAAD には wack/whack job という job がついた形は載っていません。
Macmillan Dicitonary には、wack job が載っていました。
wack job [noun] : an insulting word for someone you think is crazy
つまり「クレイジーだと思える人に対する侮辱的な言葉」。
クレイジーな人に対する蔑称なので、アカデミックな辞書LAADには載っていないのだろうと想像できます。
whack-job=変人(という蔑称)という意味を再確認したところでセリフに戻りますと、ブログ記事と重なるところも含め、以下のようなやりとりになっています。
ジョーイのファンのエリカについて、チャンドラーがモニカとレイチェルに説明しているところ。
チャンドラー: Well, you remember Kathy Bates in Misery? ( 映画「ミザリー」のキャシー・ベイツを覚えてる?)
レイチェル&モニカ: Yeah. (ええ。)
チャンドラー: Well, she looks the exact opposite of that. (彼女(エリカ)の見た目はそれ(キャシー・ベイツ)とは正反対なんだ。)
レイチェル: And she's not crazy? (それでエリカはクレイジーでもないの?)
チャンドラー: Oh, no no no. She's a total whack-job. Yeah, she thinks that Joey is actually Dr. Drake Ramoray. (あぁ、いやいやいや。エリカはまったくの変人だよ[まったく頭がおかしいんだよ]。そうさ、エリカは、ジョーイが本当にドクター・ドレーク・ラモレーだと思ってるんだよ。)
「ミザリー」のキャシー・ベイツの名前を挙げた上で「見た目は正反対(つまり美人)」とチャンドラーは説明しています。「正反対」という表現から「じゃあ、性格や人格も正反対なの?」とレイチェルが尋ねたので、チャンドラーは「レイチェルの発言を否定」する形でまずは no と言い、「彼女は全くの変人だよ」と言って、「ドラマの役柄を本当の姿だと思ってるんだ」と続けます。
わざわざ「見た目は反対」と言えば「見た目は違うけど中身は似てる」という流れが想像でき、チャンドラーのセリフも「彼女は変人なんだよ」という流れそのままなので、「意外な流れ」的な面白さはないのですが、ここで笑い声が起きているのは、crazy と表現するよりもさらにひどい「頭がおかしい、いかれている」というようなニュアンスの「変人の蔑称」に当たる whack-job というキツい表現を使ったからかな、と思います。想像を超えた(そこまで言う? と思えるほどの)容赦ない表現に対して、観客は笑ったのではないかなぁ、と思いました。