2006年10月15日

フレンズ2-21その12

キャブの中で悩んでいるフィービー。
フィービー: I just think that this was a really bad sign. Like the beast at the threshold. It's just I have no family left, except for my grandmother. But let's face it, she's not gonna be around forever. Despite what she says. And I have a sister who I've barely spoken to since we shared a womb. I don't know. This is my real father and I want things to be like, just right. (これはすごく悪い前兆だと思うの。例えば入り口にいる野獣とか。私には家族が残っていないのよ、おばあちゃんを除いてはね。でも、現実を直視してみたら、おばあちゃんは永久に存在するわけじゃないわ。おばあちゃんが何と言おうともね。それから姉が一人いるけれど、その姉とは子宮を分け合って以来、ほとんど話したこともないわ。自分でもよくわからないんだけど…。この人が私の本当のお父さんだから、物事を、ほら、”きちんと”したいと思っているの。)
レイチェル: I completely understand. (よくわかったわ。)
ジョーイ: Whatever you need. Hey, you want to go home? (フィービーがいいようにすればいい。じゃあ、家に帰りたい?)
フィービー: Okay, thanks. Sorry, again. (そうね、ありがとう。何度もごめんなさい。)
フィービーが車を動かすと、犬のキャンという鳴き声が。
フィービー: What was that? (あれは何?)
ジョーイ: I'm guessing the threshold's clear now. (玄関の邪魔者はもういなくなったみたいだな。)

the beast at the threshold は、パパの玄関前でキャンキャンとうるさかったワンちゃんのことですね。
beast という単語は日本人にもなじみがありますよねぇ。
格闘技の K-1 でボブ・サップのニックネームがビーストでしたし、美女と野獣の原題が Beauty and the Beast であるため、beast というと「野獣」というイメージがあるし、私もずっとそう思っていたのですが…。
Merriam-Webster Online Dictionary には、
beast = 1 a : a four-footed mammal as distinguished from a human being, a lower vertebrate, and an invertebrate
b : a lower animal as distinguished from a human being
c : an animal as distinguished from a plant
訳しますと、
a: (人間や下等脊椎動物や無脊椎動物と区別して)4本足の哺乳類
b: (人間と区別して)下等動物
c: (植物と区別して)動物
という意味になります。
何だか生物分類学のテキストを読んでいるようですが(笑)、これを見る限りは、日本語の荒々しい「野獣」というイメージはないですよねぇ。
ロングマン現代英英辞典には、
beast = (written) an animal, especially a large or dangerous one
と書いてあります。
dangerous 「危険な」という言葉があるので、これは日本語のイメージに近いかもしれない。
研究社 新英和中辞典には、
beast = 動物、(特に大きな)四足獣 (この意味では animal のほうが一般的、寓話ではよく用いられる)
とあります。
この説明でも animal とあまり差がないように感じられますが、「寓話で用いられる」というそのイメージから、ニックネームや物語のタイトルに使われることが多いのでしょうね。
the beast at the threshold という表現は、その寓話のイメージと合わせて、私には「地獄の番犬」のようなものが想像されます。
ただ「門で吠えている犬」というよりももっと深い意味を持たせることができて、フィービーの言う bad sign 「悪い前兆(兆し)」のイメージにぴったりくる表現なのかな、とも思いますね。
ということで、話が長くなりましたが、beast = 野獣というイメージがあるけれど、それは必ずしも正しくないかもしれない、ということです。
実際、手持ちの英和辞典には「野獣」という日本語訳は載っていませんし。
ただ、animal と違ったニュアンスを和訳に出そうと思うと、私が上で書いたように「野獣」と表現するのが妥当なのかなぁ、とも思うので…。(話が二転三転してすみません。)

Let's face it. は「現実を直視しよう、現実を認めよう。」という意味。
face を動詞として使うと、「顔を向ける」という意味があり、そこから「(危険や災難などに)まっこうから立ち向かう」「(事実などを)直視する」という意味になるのですね。
Despite what she says. は「おばあちゃん本人が常々言っていることにかかわらず」ということ。
つまり、普通おばあちゃんの年を考えてみたら、いつまでもこの世に、そして私の傍に、家族としていてくれるわけじゃない、というのが「認めなければならない現実」ですよね。
でも、その後に despite 「…にもかかわらず」と続いているということは、その現実とは異なることをおばあちゃんはいつも(口癖のように?)言っている、ということになります。
フレンズ2-9その7 のおばあちゃんのセリフでもわかりますが、このおばあちゃんは死んでも霊として存在できて、生きている人と意志の疎通が可能だ、と思っているタイプの人なのです。
この Despite の一節をこっそり挿入することで、「あぁ、そう言えば、フィービーのおばあちゃんって、そういう人だったなぁ…」と思い出されて、くすっと笑えちゃうわけですね。

womb は「子宮」。発音は「ウーム」。
似た綴りの単語で comb 「髪をとかす櫛(くし)」がありますが、こちらの発音は「コウム」であって、「クーム」にはならないんですよねぇ。(難しい…)
since we shared a womb は「子宮を分け合って以来」、フィービーと姉のアースラは双子だからこういう表現を使っているのですが、物心つく前から、という表現よりももっと強烈な表現ですね。
embryo 「胚、胎芽」か fetus 「胎児」の頃から仲が悪いそうです(笑)。
want things to be right の right は「望みどおりに、うまく、整然と」などと言う意味です。
Things went right. なら「物事が(万事)うまくいった。」ということ。
フィービーにとっては残された最後の「家族」になるかもしれない人なので、どうも日の巡りが悪そうな今日は避けて、また出直したい、こんな状況で無理をして何もかも台無しにはしたくない、慎重に事を運びたい、というところでしょうね。(その気持ちはよくわかる)
で、友達も優しくそのフィービーの気持ちを受け止めてあげて(せっかく来たのに…と無理強いしないところが素敵です)、何だか暖かい気持ちになりかけたその時に、ハプニングが!
the beast at the threshold が不吉だということであきらめようとしたのですが、その beast を車で轢いてしまったフィービーです。
the threshold's clear の clear は「(邪魔物・危険などの)妨げがない、(路上などの)障害物がない、視界を遮るものがない」という意味。
All clear. だと「敵影なし」。
ガンダムではモビルスーツの発進時に「進路クリア。発進どうぞ。」などというセリフがありますので、この clear の感覚にはとてもなじみがあったりする。(お、久しぶりのガンダムネタ…笑)

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posted by Rach at 07:40| Comment(2) | フレンズ シーズン2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いつもながら鋭い指摘ですね beast ≠ 野獣 the beast = 野獣でしょうか。原題の Beauty and the Beast も本来Beautyにtheがつけば美女になるはずなんですがね。話の筋を考えると邦訳も仕方ないかな。
Posted by catch at 2006年10月15日 10:06
catchさんへ
元々 beast の話だったのですが、the のあるなしの話から、the Beauty と Beauty の違いが気になって来ました(笑)。
beauty は不可算名詞で「美しさ、美、美貌」、可算名詞で「美人、美しいもの」という意味になるようですね。(どちらにしても素敵な言葉♪)
そういう意味では、このタイトル Beauty and the Beast の beauty が「無冠詞」なのが変に思えてきますよねぇ。「美女」だと a beauty か the beauty かどちらにしても何かしら冠詞が必要ですよね(そして、物語のタイトルの場合は、the になりますよね、The Cat in the Hat (by Dr. Seuss)みたいに)。
私は今まで何も違和感感じませんでしたが、どうして The Beauty and the Beast じゃないんだろう???
と思ってちょっと調べてみました。
(catchさんは私が以下に書く情報(?)をご存知の上で、上のコメントを書かれたようにも思えるのですが、ちょっと私がしつこく調べたことを書かせて下さいね…笑)

Wikipedia 英語版: Beauty and the Beast
http://en.wikipedia.org/wiki/Beauty_and_the_Beast
このウィキペディアによると、もともとはフランスの民話(folktale)だそうで、その Plot summary(筋の要約、あらすじ)が書いてあるのですが、それを読むと、この物語の主役の女性を Beauty、主役の男性を The Beast と表現しています。つまりそれが「名前」というか「役名」ということですね。ただこれは英語での表記の話で、元はフランスの民話なので、そのオリジナルタイトルは La Belle et la Bete になるようです。

正直、フランス語は知らないし、冠詞の付け方の規則も全く知らないので、以下、かなりトンチンカンなことを書いてる恐れもありますので間違っていたらどなたかご指摘下さい。

ネットでフランス語の意味を調べると、la = the、et = and、bete = beast (stupid という意味もあるらしい)ということなので(まぁいちいち調べなくてもそうだろうってのは見ればわかりますが…笑)、La Belle et la Bete を厳密に英語にすると、The Beauty and the Beast とどちらにも the がつくはずなんじゃないのか?と思うのですが…。フランス語ではその民話の中で、Beauty のことを La Belle と書いてあるのだとすると(←何と表記されているのかは確認取れてません)、やっぱりそれは名前というよりも「美女」というニュアンスになるような気がします。(調べると、La Belle = beautiful girl or woman, the beautiful, the lady... のような意味がヒットしました。)
でも! 英語では the Beauty じゃなくて、Beauty なんですよね。フランス語を英訳した時にどういう判断があったのかわかりませんが、英語では、「ビューティーさん」という「固有名詞のような感覚」で使っているように思えます。(もちろん、美女であることを暗に示した名前なのでしょうが、ここでは「固有名詞である!」と断言するのは避けます。)
だからオリジナルのフランス語のタイトルは本当に「美女と野獣」で、英語のタイトルは「ビューティと野獣」になってるってことなのかなぁ?とか…。

さらに、ウィキペディアの Adaptations(脚色、翻案?)の Movie versions という項目に名前のことが書いてあります。それによると、
「La Belle et la Bete というタイトルのフランス語バージョンの映画が1946年に作られた。1991年のディズニーのアニメ版では、Beauty に Belle (フランス語で beauty という意味)という名前が付けられた。The Beast の名前は映画では言及されていないが、Dave Smith氏による The Official Disney Encyclopedia(公式ディズニー百科事典?)によると、The Beast の名前は Adam(アダム)である。」
とのことです。
ウィキペディアには、"This version gave Beauty a name ("Belle", the French word for "beauty.") " と書いてあるのですが、この書き方だと、Beauty は "name" ではない感じもします。Beauty と通称呼ばれている美女に、ちゃんとした固有名詞を与えた、というニュアンスなのかもしれません。

私はディズニーのアニメ版は見ていませんが、劇団四季のミュージカルは見ました。ですから女の子の名前がベルだというのは知っていたのですが、それはフランス語の名前をもらってつけた、ということみたいですね? Beauty を固有名詞のように使うと、あまりにも「そのまんま」な名前だからでしょうか?
一方の The Beast は彼の固有名詞が「ザ・ビースト」や「ビースト」なのではなく、けものの姿をしていて、おそらく誰も彼の本名を知らないので、「あの”けもの”、あの野獣」という意味で The Beast と人から呼ばれていた、ということですね。the が付いて特定されることで、「みんなが恐れているあの怖い野獣」というただの「動物」ではない感じを出している、とか。もっと優しい言い方をすると、「野獣さん」という感じなのでしょうか?

ということで、Beauty and the Beast をオリジナルの意味どおりに訳すと「(通称)ビューティさんと野獣さん」という感じになるのかなぁ?(←かなりヘンですが…笑) でも実際は Beauty さんはやはり「美女」の代名詞としてそういう名前になっているので「美女と野獣」というタイトルが内容を的確に表しているとも言えるわけで…。ですからcatchさんのおっしゃるように「この邦訳も仕方ない」ということなんでしょうかねぇ?
Posted by Rach at 2006年10月16日 20:20
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