2006年10月17日

フレンズ2-21その14

レイチェル: How did you make $17? (どうやって17ドル儲けたの?)
モニカ: Well, my financially challenged friends, I split my money and I bought some shares of CHP and ZXY. (そうね、財政的に不自由な(障害のある)私の友達に教えてあげるわ。私は所持金を分けて、CHP と ZXY の株をいくつか買ったのよ。)

今日は、challenged という表現について少し語ってみたいと思います。
financially challenged の challenged は「障害を持った」という意味で使われているのだと思います。(間違っていたらどなたかご指摘下さい。)
よく使われるのは、physically challenged 「身体が不自由な、身体的障害を抱えている」という表現で、a physically challenged person、または the physically-challenged で「身体障害者」という意味になります。
日本語ではハンディキャップという言葉を使うこともありますね。
実際、英語でも、physically handicapped という表現があるのですが、この言葉を差別的だと考える人がいるので現在はあまり使われないようです。
handicapped は sometimes offensive 「時には侮辱的」だと Merriam-Webster Online Dictionary には書いてありました。

また disabled という表現も同じような意味です。
disabled は、handicapped ほどには敬遠されていないようです。
偶然なのですが、今日発行の週刊STに "Is disability still a dirty word?" つまり、「障害という言葉は今でも禁句か?」というタイトルの記事が載っていました。
「いまだに「障害」がタブー視される日本」という日本語の副題がついていて、世界と比較して、日本の取り組みが遅れている、という記事でした。
記事のタイトルに disability、記事中では physically disabled (身体に障害のある)という表現が出てきますので、問題のない一般的な表現だと思われます。(この記事中ではほとんど disabled が使われていて、1箇所のみ handicapped という単語が出てきます。また、challenged という表現は使われていません。)

私の受けた感じでは、challenged という単語は、日本語で言うところの「…の不自由な方」というニュアンスに一番近いのではないでしょうか。
(日本語の「…の不自由な方」という表現は、サービス業でお客様に対して使うフレーズですから、一番マイルドで丁寧なはずですよね。)
challenge という単語を使うことで、どういうニュアンスを表現したいのか、について。
Merriam-Webster Online Dictionary には、
challenged: presented with difficulties (as by a disability)
とあります。
つまり、障害があることを、「困難を与えられた、試練を与えられた」と表現しているのですね。

以下、こういう表現と関係があると思われる話をします。
英語には、politically correct という概念があります。
直訳すると「政治的に正しい」という意味ですが、これは「(表現・考え方・行動が)人種や性による差別や偏見がない」という意味です。
しばしば P.C. または PC と略されます。(日本語で PC と言うと、personal computer 「パソコン」を思い浮かべる人が多いと思いますが…)
Merriam-Webster Online Dictionary の定義は以下の通り。
politically correct: conforming to a belief that language and practices which could offend political sensibilities (as in matters of sex or race) should be eliminated
つまり「性や人種の問題に見られるような政治的感情(感受性?)を損ねる可能性のある言語や慣習は排除されるべきであるという考えに従うこと」です。
できるだけ差別的言葉、慣習は排除していこう、という現代社会の流れですね。
アメリカでは、この P.C. の概念から、差別的だと思われる言葉は、できるだけ politically correct な言葉に置き換わっていくようです。
私は、この challenged という表現がまさにそれなのだと思います。
フレンズでは直接 P.C. という言葉を聞いた記憶がないのですが、弁護士のドラマであるアリー my Love には何度が登場しました。
弁護士は職業柄、差別に絡んだ訴訟が多いですからね。
アリーで初めてこの概念を知った時、とてもアメリカ的な概念だなぁ、と思いました。

日本では、政治家の発言やニュースでは P.C. な発言を求められることが多いですが、テレビのバラエティなどを見ていると、ある程度の放送コードがあるとはいえ、結構野放しになっている気もしますね。
漫才かコメディで、いわゆる「美人でない」人のことを「顔の不自由な人」と呼んで笑いを取っているのを見たことがありますが、これはそういう P.C. を揶揄している雰囲気、つまり「不自由な人」という P.C. 的丁寧な言い方をすれば、その言っている内容そのものも許容される、というようなニュアンスがあるように思います。(ジョークとしては、かなりきわどいものだと思いますが…)
そして、このモニカの発言も、今お金を儲けている rich な自分に対して、poor 「貧しい」友達、だという意味で、わざと financially challenged 「財政的に不自由な(つまり、金銭面で困っている)」という P.C. 的表現を使って「表現としては失礼のないように」言っているのだと思います。

差別に関する話なので、今回は真面目に語ってみましたが、私の考えでは、言われた方が差別的だと感じる言葉はやはり差別用語ということになるのだろうと思います。
人はそれぞれの立場によって、受け止め方が違うものです。
もちろん、言葉上でだけ丁寧に言っておけばそれで良いというものではありませんが、その単語を使うだけで傷つく人がいるかもしれない、ということも忘れてはいけないのでしょうね。
英和辞典にも「差別的なので使わない方がよい」とした上で語義を説明していることがありますが、そういう部分も見逃さずに、きちんと語義を理解した上で言葉を覚えていきたいものだと常々思っています。
差別的な表現だけでなく、性的に卑猥な表現、下品な表現なども、「外国人だからということで大目に見てもらえるだろう」という可能性はあるかもしれませんが、分別と品性のある大人として見られたいと思えば、そういう表現を使わないように注意すべきなのでしょうね。

share は「株」。
このエピソードの最初は、株のことを stock と表現していましたが、ここでは share を使っています。
「株主」なら、stockholder または shareholder になりますね。
「株主総会」なら、a stockholders' [shareholders'] meeting となります。
私は何となく、a shareholders' meeting の方がなじみがあるのですが、手持ちの辞書には、通常、米では stockholder、英では shareholder が使われる、とありますね。

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posted by Rach at 11:18| Comment(4) | フレンズ シーズン2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
politically correctの話で、最近爆笑した小ネタ。
"Alien hired to make Sci-Fi TV politically correct!"(Sci-Fi TVというのは、ケーブルTVのチャンネルの一つで、まぁSFドラマとか深夜にはB級ホラーとかをやってるところ)
スーパーのレジ前に置いてある、「んなアホな」雑誌の見出しでした。「エルビス・プレスリーはまだ生きている!そして次の大統領選に出る!」がトップ見出しだったりするやつね。でもこれはトップではなくて、このときのトップは「Jonah's skeleton found in whales mouth, carbon dating proves bones are 2300 yrs old!」でした。聖書ネタは知識がないと笑いも出来ないのですが、carbon datingを持ち出したところが私としては笑いのツボにはまりました。障害についてもそうだけど、宗教も話題としては神経を使うものですね。

challengedに関しては、Rachやん(ちゃん、より馴染む)の解説の通りだと思います。学校など、「障害児教育」関係でこの言葉が使われていることがよくありますが、disabledも使われるようですね。disabledは、障害者用の車のナンバープレート/駐車場所とかに書いてあると思います。Disabled Vet(eran)(傷痍退役軍人)というのも普通に見るし、あんまり敬遠されてない、というか、結構公式な表現で使われてるという印象があります。
Posted by おちか at 2006年10月18日 03:04
おちかちゃんへ
Sci-Fi TV か、いいなぁ。でも私、ホラーはB級もA級も全くダメなんですよ(笑)。スタートレックに出てくる Alien は大丈夫なんだけど、シガニー・ウィーバーの出ている「エイリアン」という映画のエイリアンの造形はかなり苦手で、あの映画は一生見られない気がする。(どこがどう違うねん!と言われると困るけど、あのおどろおどろしい映画の雰囲気がどうもあかんみたいで…)

>"Alien hired to make Sci-Fi TV politically correct!"
確かに大爆笑!
ちかちゃんは当然ご存知のことと思うけれど、新聞の見出し文法(headline grammar)を説明する良い機会なので、この見出しを見て「?」と思った人のために、ちょっと以下に説明させて下さいね。

この見出しの本当の意味は Alien is hired to make... なのですが、見出しは文字数が限られているので、is のような be動詞は省略されます。
ですから、hired は「過去形」ではなくて「過去分詞形」であり、hired 単独で「受身(受動態)」を表しているんですね。
私がこの見出し文法について知ったのは、The Japan Times 刊 「第一線の記者が教える英文記事の読み方」(伊藤サム 著)という本で、p.25 以降で詳しく説明されています。
また、
The Japan Times PLUS: 毎朝15分ジャパンタイムズを読むコツ
http://club.japantimes.co.jp/knack/jt.htm
の「英字新聞を読み解くポイントとなる見出しのルール」にも同様の説明がありますので、興味のある方はご覧下さい。

ということで、この見出しは「Sci-Fi TV を PC にするためにエイリアンは雇われている」ってことですよね?(違ってたら教えて下さい。)
当然、Sci-Fi TV を Sci-Fi (SF)っぽく見せるためにエイリアンを登場させている、または、まだ(?)人間が出会ったことのないエイリアンを登場させているがゆえに「サイエンス・フィクション」と呼ばれているわけなのに、それを「人間以外のエイリアンにも門戸を開いている(エイリアンを差別していない)というテレビ局の姿勢を示すために、エイリアンを雇っている(登場させている)」、と、PC 問題にすりかえているところが、面白いわけですよね?

思いっきり脱線しますが、スタートレックでは、全宇宙をアルファからデルタまでの4つの宇宙域(Quadrant)に分けています。地球はアルファ宇宙域に属している(正確にはアルファとベータにまたがる地点に位置する)のですが、PC的に言うと、それぞれの宇宙域からまんべんなくエイリアンを採用しないといけない、という感じがしますねぇ(笑)。実際、TNG(The Next Generation)というシリーズでは、アルファとベータ宇宙域の話しか出てきませんでしたが、その後の DS9(Deep Space 9)はガンマ宇宙域も舞台となり、その後の VGR(Voyager)はデルタ宇宙域に舞台が広がりました。そしてそれに伴って、それぞれの宇宙域のエイリアンがたくさん登場しています。そういう意味では、まだまだアルファとベータに偏ってはいるのでしょうが(笑)、随分と雇うエイリアンが増えてきて、PC的には問題ない、って気がしますね。(実際のところは、アルファとベータだけではもうネタがなくなってしまっただけですが…笑)。

脱線しすぎましたが、そういう「大スポ」(「大阪スポーツ」というスポーツ新聞。東京では「東スポ」)みたいな新聞や雑誌がどこの国でもあるんですね。いや、むしろ、こういうネタはアメリカの方が一枚も二枚も上手かもしれません。エルビスの命日近くになると必ず「生きている!」って言う記事があちこちで出る、という話を聞いたことがあります。

聖書には詳しくないのですが、この見出しを読むだけで、だいたいの感じはわかりますね。Jonah(ヨナ)は、ヘブライの預言者だそうですね。
Wikipedia 日本語版: ヨナ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A8%E3%83%8A
ここにざっと「旧約聖書 ヨナ書」のあらすじが書いてあります。
Wikipedia 英語版: Jonah
http://en.wikipedia.org/wiki/Jonah
にはさらに詳しく書いてあります。
魚は、a large fish と表現されていて、The fish という項目に、
Though often called a whale today, the fish at the time probably referred to a large shark, common in the Mediterranean.
つまり、「現在ではその魚はクジラだと言われているが、その当時の the fish という言葉は、恐らく、地中海によくいた大きなサメのことを言っていたのだろう。」ということらしいですね。
イエスの言葉として、
Jonah was in the belly of the "great fish" for 3 days and 3 nights. 「ヨナは三日三晩、その大きな魚の腹の中にいた」
という表現があり、それがこの「クジラの口の中に彼の骸骨を発見した」というガセネタ(!)につながっているわけですね。
確かに carbon dating (放射性炭素年代測定法)で、ってのが笑える。その破天荒なガセネタと、その測定法の厳密さとの gap がおかしいよねぇ。
聖書の知識はいつも身に付けたいと思っているのだけど、なかなか落ち着いて取り組むチャンスがなくて。だから、こういう「小ネタ」(?)で、ちょこちょこした知識を蓄積していけるのはとても嬉しい。興味深い題材を提供してくれてどうもありがとう。

障害に関する単語を説明したのは、母国語である日本語では、相手にいやな思いをさせないように気を使って話しているはずですが、外国語になると、話すことに精一杯でそこまで気が回らないことってあるかなぁ、と思うんですよ。だから、せめて単語だけでも「使うのが好ましくない単語」に注意を払いたいなぁ、と思って。
やはり、アメリカでは challenged という単語をよく目にするんですね。そして、disabled も公式に使われている、と。私の思っていたのと同じだと知って安心しました。これも、教えて下さってどうもありがとう。

P.S. Rachやん、か。かわいいやん(笑)。Rachはん、やったら、ちょっとオバちゃんっぽいしねぇ(爆)。
Posted by Rach at 2006年10月18日 11:12
こんにちわ。
Jonahの記事はおもしろいですね。いかにもレジ周り新聞にありそうで。読んでみたいです!

さてスタートレックのpolitically correctnessのネタとくれば飛びつかない訳にはいきません。

私はシリーズの中でVoyagerが一番好きですが、アメリカ人のとある友人が、あれは「スタートレックのPCバージョン」だというちょっと小ばかにしたコメントをしていて、ああ、そういう見方もあるのね、と思った記憶があります。

確かに、艦長が女性で、副長がNative Americanの血筋で、その他のシニアスタッフが、バルカン種族黒人男性、中国系男性、クリンゴンと人間のハーフの女性、デルタ宇宙域出身のニーリックス(種族名は失念)ということで、人間の白人男性といったらトム・パリスしかいない。ジェンダーと人種と種族(?)に大変配慮した布陣ですな。

(あとは白人ブロンド女性のセブンが途中で登場して、これはあまりにボディコンシャスすぎて明らかにPCではないと思いますけど、、、、。まぁでもボーグ出身だから一応多用性には貢献しているのかな)。

PCの行き過ぎは問題ですけれど、Voyagerみたいな多様な布陣は、私は決して悪くないと思います。スタートレックの基本精神の一つが文化の多様性の尊重であると思っているので。でもNative Americanの副長が活躍する場面がスピリチュアルな探索と文化人類学的研究に限定されているなど、ステレオタイプな設定に限界は感じますけど。
Posted by YN at 2006年10月18日 20:22
YNさんへ
スタートレックネタに反応していただき、ありがとうございます(笑)。

そう言われれば、VGR(Voyager)のキャストが勢ぞろいしている写真を見ると、バラエティに富んでいますよねぇ。(ちなみにニーリックスはタラクシア人ですね…笑)
トム・パリスも、父親が提督なのにそれに反発して、マキというテロリストに加わったり刑務所に送られたり…という意味で、「立派に成長し、成功した白人男性」というイメージはないですよねぇ。
セブンについては、多くの方があの体型のグラマーさに注目してしまうようですが(あれは女でもどうしても気になりますよねぇ?)、まぁ、後半のテコ入れという意味もあり(笑)、またボーグという、半分機械であり人間としての感情があまりない種族なのに、体型だけ妙に人間っぽい、というギャップが面白いのかもしれません。(もしくはボーグに同化されていなければ、お色気ムンムンのセクシー美女(?)になっていて、恋多き人生を楽しんでいたかもしれないのに…という悲しさ、とか?)

Voyager でスター・トレックの PC は行き着くところまで行った感はありますが、一番最初の TOS というシリーズから、製作者のジーン・ロッデンベリーは黒人女性のウラ(ウフーラ)を登場させたりしていますよね。さらにはそのパイロット版(The Cage)では、TOSのクリスティン・チャペル看護婦(看護師)や TNGのラクサナ・トロイを演じているメイジェル・バレット(Majel Barrett)が、副長(Number One)を演じているんですよねぇ。(メイジェルさんはジーン・ロッデンベリーの奥さんでもある。)
これはかなり画期的だったようで、結局、女性副長はパイロット版のみとなってしまったのは残念ですが、1960年代にそういうアイディアを持つことができたジーンさんという人は、柔軟で前向きな考えの持ち主なんだなぁ、と思います。
TNG の「亡霊戦艦エンタープライズ"C"(Yesterday's Enterprise)」に出てきたUSSエンタープライズ NCC-1701-C の艦長レイチェル・ギャレットは女性でしたし、提督も女性が何人もいますが、やっとメインとなる宇宙船の艦長が女性になったという意味でVRGも画期的なわけですよね。

Native American の副長チャコティは、スピリットガイドを使ったビジョンクエストをするんでしたっけ?(その辺りはあまり詳しくないんです)。確かにステレオタイプかもしれませんね。もし日本人のキャラクターがいたら、部屋で茶の湯を立てて精神統一を図っているとか、そういうイメージでしょうか?(全然違うかも…笑)
Posted by Rach at 2006年10月19日 08:52
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