ブッフェ夫人: Are these stitches? (これ縫ったの?)
フィービー: Yeah, eight of them. That's 56 to him. If it's raining, you can't let him look up because that cone will fill up fast. (はい、8針。そのワンちゃんにとっては56針に相当しますね。もし雨が降ったら、犬に上を向かせてはいけませんよ。そのコーンに水がすぐに溜まりますから。)
ブッフェ夫人: Thanks for bringing back what's left of him. (犬の”なれの果て”を戻してくれてありがとう。)
Are these stitches? は「これ縫ったの?」と訳しましたが、実際は「これらの跡は(傷口を縫った)縫い目なの?」ということですね。
つまり、縫わないといけないほどひどいケガをしたわけ?と聞いているのでしょう。
「8針が56針」の件ですが、これは「人間の1年は犬の7年に相当する」という説から来たものです(笑)。
フレンズ1-14その3 にもこの説は登場しています。
ロスのセリフ、
because of the whole seven-dog-years-to-one-human-year thing (人間の1年が犬の7年に当たるっていうことを考えると)
というのがそれですね。
その時は、「ふーん、そんな説があるんかいな」で終わっていたのですが、今回はウィキペディアでそれに関する記事を見つけました。
Wikipedia 英語版: Dog years
ざっと説明すると、
「ドッグイヤー(ドッグイヤーズ)とは、『特に犬や猫などの家で飼っているペットは、人間の1年で、7歳年を取る』という有名な俗説のこと。例えば、9歳の犬は「犬の年では63歳だね。」といわれる。専門的に言うと、この説は正しくない。(以下、省略)」
…ということで、やはり俗説に過ぎないようですが、7年、あるいは7倍、という数字は有名なようですね。
コーンに水が溜まる、という説明には笑ってしまいました。
この場合の fill up は自動詞で「いっぱいになる」ですね。
また、他動詞としては「(自動車を)満タンにする」という意味になり、Fill it up with regular. なら「レギュラー、満タンで。」になります。
Fill her up. と言うこともありますね。
こういう風に車を女性代名詞で呼ぶのは、ドライバーに男性が多くて、「いとしの彼女」だからなのか、フレンズ2-16その8 にも書いたようなことが理由なのか…?
ちなみに、船は女性代名詞で受けることが多いですね。
スタートレックに出てくる宇宙船(Starship)を女性代名詞で呼んでいるシーンを見たことがあります。
"There she is!" 「あそこにエンタープライズ号が見える。」みたいに使います。
what's left of him ですが、これについての解釈を、以下のコラムで読んだことがあり、記憶に残っていました。
週刊ST 2006/5/12 号の 翻訳家 宮脇孝雄さんによるコラム『翻訳の料理法』の「関係代名詞の what 」という記事です。
以下に引用させていただきます。
At last I saw the house - or what was left of it.
「ついに私はその家をみた−あるいは、そのうちの残されているところのものを」となるが、「そのうちの残されているところのもの(What was left of it)」とは、ひらたくいえば「残骸」なので、「ついに私はその家を見た−というより、その家の残骸を」と訳すことができる。
もう少し長い例では、
The miserable man turned out to be what was left of an old friend of mine.
というのがあり、同じように解釈すれば、what was left of an old friend of mine (私の古い友人の残されたところのもの)は「私の古い友人の残骸」だが、人間を残骸というのは変なので、「この哀れな男はわが旧友のなれの果てであった」などと訳すことができる。
(引用終わり)
この法則(?)を当てはめると、what's left of him は「ワンちゃんの成(な)れの果て、残骸」ということになりますよね。
満身創痍(まんしんそうい)の状態で、もとの可愛いワンちゃんの面影がない、という感じでしょうか。
でも本当に可愛がっているペットなら、こんな表現は使わないような気もするのですが、どうでしょう?
何だか容赦ない表現のように思えるのですが…。
ちなみに、上で引用させていただいた宮脇さんのコラムは興味深いです。
「原書の英語が、手元にある日本語の訳本ではこう訳されていたが、それは誤訳で、本当はこういう意味のはずだ。」ということがズバっと書いてあるんですよ。
書店に並んでいる訳本なのに、そんなにはっきり「間違いだ!」と言っちゃっていいのかなぁ?というくらいに(笑)。
「それはそうじゃなくて、こうだ!」と言えるくらいですから、説明にもとても説得力があるし、わかりやすくて面白いです。
そして何より私が安心するのは、そうやってその訳が本として出版されているような翻訳家の方でも、間違うことがあるんだなぁ…という点でしょうか。
私ごときが間違うのは当たり前ですね。(←と開き直ってみる。)
でも、素人なりに思うに、一度こうじゃないかな、と思い込んでしまうと、なかなか他の観点から見ることができなくなるんでしょうね。
(Rach からのお願い)
今回の記事、面白いと思われた方は、下のランキングサイトをクリックして下さい。
人気blogランキング
にほんブログ村 英会話ブログ
TVの同時通訳でも「えっ?」っと私でも分かる間違いがありますよね。同時通訳は仕方がないとして、英語教材も間違いが多いと思います。産業翻訳、技術翻訳などの、日→英は、正しいナチュラルな英語を、わざわざ日本人が分かりやすいようnativeから見れば不自然な英語に変えるという話も聞きますが。
"what's left of 〜" は、とっても参考になりました。ありがとう!そして「いっちょまえ」も(笑)。標準語だと思っていたのが大阪弁という経験はあるけど、逆は初めてや〜。Rachさん、それググったんや〜(爆)。
>「白いおっちゃんどこ行った?」
うん、確かに愛を感じますね。名前を呼ぶのが照れくさいねんやろぉ〜?(笑)
通訳・翻訳については、あくまで人間のする作業ですから、間違いがないということはないのでしょうが、結構ポコポコと間違いって発見しますよねぇ。英語がわからない時は日本語訳を信じるしかなかったわけですから、間違いに気づくことができるようになった自分を喜ぶべきなんでしょうね。
しかし、同時通訳の人はすごいですね。あの作業って、耳で英語を聞きながら、口では日本語をしゃべってるんですよねぇ? ある程度のポーズを置いてくれて、その間に日本語を話せるのなら何とかなりそうな気もしますが(←まだ私にはムリやろか?)、「同時」はやっぱりすごいですよ。絶対につられてヘンな英語交じりの日本語になりそうな気がします。
英語を使った職業にはすごく憧れているけど、同時通訳になりたいと思ったことはあまりないんですよ(←どのみちもう遅いと思いますが)。あまりのプレッシャーで胃に穴があきそうな気がするので。
産業翻訳、技術翻訳の不自然な英語の話は初耳です。日本が輸出したゲームなどに出てくる英語が不自然で、それが却ってクールだと言ってnative が面白がって使う、という話は聞いたことあるんですが…。
標準語だと思っていたのが大阪弁だった、という経験は数え切れないほどありますね。「いっちょまえ」はいかにも大阪チックなのに、大阪特有のものじゃないと知ってちょっとショックやねん(泣)。