何とかセントラルパークでコーヒーを飲んだロスとチャンドラーですが、店の外でワルたちに出会ってしまいます。
カール: Did we not make ourselves clear the other day? (こないだ、俺たちがはっきりと説明しなかったか?)
ロス: That's why we're here. (だから、僕たちはここにいるんだ。)
チャンドラー: Yes, we're standing our ground. Apparently. (そうさ、俺たちは一歩も退かないぞ。どうやらな。)
We're standing our ground. は昨日の記事、フレンズ2-21その23 にも出てきました。
その際、私は「僕たちのホームグラウンドに立ってるんだ。」と訳したのですが、その記事のコメント欄で「stand one's ground は「一歩も引かない」という意味の成句」であるとのご指摘がありました。(詳しくは直接コメント欄をご覧下さい。)
そこで私なりに調べてみました。
まず、手元の英和辞典にはそういう意味がちゃんと載っていました。
研究社 新英和中辞典には、
stand one's ground (=hold one's ground): (1) 後退しない、一歩も退かない (2) 自分の地歩[立場、主張]を固守する
英辞郎には、
stand one's ground=(他に心を動かさないように)しっかり大地に足をすえる、後ろへさがらない、自説を曲げない、自分の地位を守る、自分の立場を守る、譲らない、一歩も引かない
また英英辞典にも以下のようにありました。
Merriam-Webster Online Dictionary には
stand one's ground : to maintain one's position
つまり、「自分の地位を保つ」という意味。
ロングマン現代英英辞典には、
hold/stand your ground として挙げられていて、
a) to stay where you are when someone threatens you, in order to show them that you are not afraid
b) to refuse to change your mind about something, even though people are opposing you
a) は「誰かが脅してきた場合に、その相手に自分が恐れてはいないことを示すために、今いる場所にとどまる(今いる場所から動かない)こと」
b) は「たとえ人が反対しても、何かについての決心を変えることを拒む(決心を変えようとしない)こと」
という意味になります。
ですから、昨日の「僕たちのホームグラウンドに立ってるんだ。」という日本語訳は、英語を直訳しているようでありながら却って抽象的に聞こえてしまい、意味がぼやける気がするので(←何だか言い訳がましい…笑)、ここはやはり「僕たちは一歩も退かないぞ。」の方が適切かと思います。
昨日の分と合わせて、ここに訂正したいと思います。(また何か別のご意見がある方はご遠慮なくどうぞ!)
ちなみに細かい話ですが、「退く」という漢字は「しりぞく」と読むことが多いですが、私が上に書いた訳は「一歩も退(ひ)かないぞ。」と読ませるつもりで書きました。
「しりぞく、後へ去る」という意味の「ひく」には、広辞苑によると「引く・退く」の2種類の漢字があり、どちらでも間違いではないようです。
また、パソコンの文字変換ソフト(?)Microsoft IME で変換すると、「ひく=退く」は「常用外」だと書いてあるのですが(笑)、私のイメージでは「退かない(ひかない)」の方が後ろにずるずると後退しないで踏ん張るニュアンスが出るかと思ったので、敢えてこちらの漢字を選んでみました。
日本語にはせっかくいろんな漢字があるんだから、細かいニュアンスを出したい場合には、使い分けにちょっとこだわってみるのも楽しいかな…って思っただけです(笑)。
apparent という形容詞は、「はっきりした、明白な、一見してそれとわかるほど明らかな」というまさに「はっきりした」意味を持つのですが、それに -ly がついて副詞形になると、「明白に」という意味で使われることはめったにありません。
apparently は「(実際はともかく)見たところでは(…らしい)、どうも[どうやら](…らしい)」という「何ともはっきりしない」(笑)意味になります。
ロングマン現代英英辞典の apparently の説明は以下のとおり。
1 [sentence adverb] used to say that you have heard that something is true, although you are not completely sure about it.
例: I wasn't there, but apparently it went well.
2 according to the way someone looks or a situation appears, although you cannot be sure.
つまり、1 は「”あることが本当だ”と聞いたのだが、それについて完全には確信していないことを言うときに使われる」、2 は「確信はないけれど、誰かの見た目や状況が表す様子によれば」。
このロングマンの定義にあるように、「確信はないが」というニュアンスが含まれるようです。
つまり「はっきりとはいえないが…という感じだね。」とぼかす表現のようですね。
フレンズにはよくこの apparently が出てきますのでだんだんそのニュアンスがわかってきましたが、最初はどうしても apparent 「明白な」のイメージが残っていて、apparently を見ると「明白に、はっきりと」という意味かとよく勘違いして困りました。
ここで apparently を使っているのは、さっきロスが言った、we're standing our ground という言葉をチャンドラーも使ってみたのですが、たかがコーヒーハウスに行くことを大袈裟に表現しすぎて、対決姿勢を前面に押し出したセリフだから、相手が怒って「それはどういう意味だよ?」と突っ込まれても困ると思ったので、やんわりとぼかしてみた、ということでしょうか?
「まぁ、そんな感じだよ。ちょっとそう表現してみただけだよ。」とはぐらかしているのかと思うのですが。
よく日本語でも「…するぞー!」と決意表明した後、ちょっと照れ隠しで「…みたいな」と付け加えたりしますが、あんな感じでしょうかねぇ?
アーサーが時計を外そうとするので
ロス: You got a weapon? (武器にするのか?)
アーサー: A nice watch. I don't want to break it on your ribs. (上等な時計なんだ。お前の肋骨で時計を壊したくないんだ。)
よく殴り合いのケンカをする時に、拳を傷めないように(ですか?)手にベルトを巻いたり、さらには相手を傷つけるために時計などの金属類をつけることってありますよね。
時計を外そうとするから、そこまでするのか!と焦ったロスですが、アーサーは break your ribs with my watch 「自分の時計でロスの肋骨を骨折させる(break)」つもりはなく、「ロスの肋骨で自分の時計が壊れる(break)」のがいやだったんですね。
ケンカっ早いわりには、かなり冷静な判断です(笑)。
車と人が衝突した時に、「車は大丈夫か、ヘコんでないか!?」と心配するようなもんですね。
(Rach からのお願い)
今回の記事、面白いと思われた方は、下のランキングサイトをクリックして下さい。
人気blogランキング
にほんブログ村 英会話ブログ
「そうとも、俺たちは自分達の主張を固守してるんだ!」
と言った後で
Apparently.
俺たちが今「地面に立っている」ってのは明らかだよね。
"stand one's ground" の2つの意味を使った三流の
ダジャレのようですね。(笑)
上の記事にも書いたのですが、apparently という副詞が「明らかに、明白に」という意味で使われることはあまりないようです。(英辞郎にもそう書いてあります。)
ですから「明らかだよね」と訳すとちょっとニュアンスが違ってしまって、ここはやはり「どうやらね」くらいかな、と思うのですが。
standing one's ground のように one's という所有格がついている場合は、「自分の主張」のようなポリシーが絡んだイディオムになるようですが、普通に standing on the ground 「地面に立っている」という言葉のイメージを連想させて、「ほら、地面に立ってるだろ?」と言ってごまかしている、ということはあるのかもしれません…。
そう思ってよく考えると、stand one's ground は、stand on one's ground じゃなくて、前置詞なしの stand だけで使われている「他動詞」なんですね。
研究社 新英和中辞典では、stand の他動詞の項目で、
stand (他動詞) (…を)固執する (注 通例次の句で)
stand one's ground 自分の立場を固執する。
とあります。
ですから、「立つ」という見た目でわかる行為を意味しているのではなくて、もっと内面的なものを指す stand なのかも、という気がしてきました。意味は違いますが「我慢する、耐える」という他動詞の stand にニュアンスは似ているように思います。
いろいろ考えてみた結果、stand our ground という言葉にはやはりかなり「強い主張」が感じられて、でも強気で言い過ぎたと思って、「そんな感じみたい」と尻すぼみな apparently 「どうやらな」を付け足しているというイメージ、ということかな、と思います。
ぴろろさんのおっしゃるように「実は地面に立ってるだけ」というオチも楽しいと思いますので、もしそんな感じのオチだったら、
Yes, we're standing our ground! ... or, we're just standing on the ground, you know.
みたいになるのも面白いかなぁ、と思ったりもしますが、どうでしょう??
「〜のように見えます」と言う感じです。
つまり
断定はしていないけど、正しいかどうかは分からないけど
「明らかに自分には〜の様に見える」
と自分の主観を表す時に使います。
誰が見ても当たり前の事を
チャンドラーが "apparently" と言っている
ところが、よけい可笑しいわけです。
英次郎で言っているのはたぶん
”断定的な意味では使わない”
と言う意味でしょう。
お返事ありがとうございます。
apparently の意味は、
研究社 新英和中辞典では、
(実際はともかく)見たところでは(…らしい)、どうも
英辞郎では、
(副詞1)どうやら〜らしい、どうも〜らしい、恐らく、一見したところ、見たところでは、外見上
(副詞2)明らかに、明確に、〜に違いない (注意)この語義で用いられることはまれ。
とあります。
その日本語訳に共通するニュアンスは、「実際はともかく、見たところ・一見・外見上・どうやら〜らしい」という感じですね。
上の記事のロングマンの語義では not sure 「確信がない」ところにポイントがあるようです。
それを考えると、「主観的な意味で〜のように見えます」という意味だとは思うのですが、「”明らかに”自分にはそう見える」と「明らかに」という言葉を使うと、少々ニュアンスが違ってしまうような気が(私は)します。やはり「”どうやら”自分にはそう見える」の方が、「自分に確信がないこと」を表現できるのではないかと思います。
私も最初、
フレンズ2-21(その23)
http://sitcom-friends-eng.seesaa.net/article/388470599.html
で、
We're standing our ground. (僕たちのホームグラウンドに立ってるんだ。)
と訳してしまったのですが、そういう「立っている」という意味だと、やはり前置詞の on が必要になってくるように思います。ですから、「ホームグラウンドに立ってるんだ」という私の日本語訳は「間違い」だったかな、と。
ground は「地面」ですが、この場合はもっと抽象的・精神的な「立場、意見」という意味なのだろうと思います(「立場」という日本語でも「立つ」という言葉が使われているのが興味深い気がしますが)
上の記事で引用している stand one's ground の語義の中には「しっかり大地に足をすえる」という意味も載っていますが、それはやや比喩的な表現で、stand のニュアンスは英英辞典の語義にあるような、maintain や hold の感覚が近いのかな、と。
ですから「(自分の)立場を固守している」という意味になり、今、目に見えているような「地面に立っている」という意味で解釈するのはちょっと難しいのではないかな、と思うのですね。「地面に立っている」と言いたいのならば、We're standing ON THE ground と言い換える必要があるかなと思って、昨日のコメントではそういう例を挙げてみたのですが…。
standing our ground で、standing on the ground のイメージを示唆している、ということはあるのかもしれません。今は正直よくわかりません。また何か思いついたら書きます。
いつも丁寧なお返事に感謝です!
確かに構文や文脈、前置詞との組み合わせで
1つの単語の意味合いってかわりますが
そのコアとなる意味、イメージはどんな場合でも
一貫したイメージとしてネイティブには感じられて
いるはずですよね。
"stand" "ground" と言う言葉は当然あるイメージを示唆する
だろうし、合わせて "apparently" は元々かなり
「視覚的」な意味合いの強い単語だと思うんですよ。
レイチさんが示しているロングマンの説明も
2 according to the way someone looks or a situation appears, although you cannot be sure.
"someone looks" "a situation appears" とすごく視覚的な言葉
が使われてますよね。
そんな理由で、私はチャンドラーが自分の心の中の葛藤
を指しているのではなく、単純に物理的に目に映っている
状況を指していると感じました。
でも、レイチさんの言うように、チャンドラーが強気な事を言った
後に「〜のようだ、〜らしい」と弱気になっているところが
笑える・・・とも十分考えられますよね。
私も、分からなくなってきました(笑)
僕達は退かないぞとロスにあわせて言ってるけど、自分にはそんな主張をする気はなく、でもロスによるとどうやら俺達は一歩も退かないらしい、のapparentlyと解釈しました。
「どうやら(ロスによると)な。」という訳は的確だと思います。
このシーンのapparentlyで笑えるのは、チャンドラーは逃げたいのに、ロスが「俺達は」といかにも二人を代表して喧嘩を買ってしまい、どうらやロスのせいでそんなことになってるらしいわな、ってところでしょうか?
お返事ありがとうございます。
stand, ground にコアなイメージがある、というのはよくわかります。だから、違うニュアンスで使っている場合でも、コアのイメージは頭に浮かぶ、という効果はありますね。
イディオムを文字通りに捉えてそれをジョークにする、というのはフレンズでもよく出てきますが、今回の場合は、stand one's ground と聞いて、stand on the ground のイメージがネイティブの頭に浮かぶかどうか、というところがポイントなのかもしれません。
私も最初「グラウンドに立っている」と訳したくらいですから(笑)、私の中では「立つ」「地面」というイメージは浮かんだようです。でもそれは、stand =立つ、ground =グラウンド、と真っ先に浮かんでしまう日本人だからなのかもしれません。(よくわかりません)
apparently は「真実はともかく”見たところは”」ですから、「視覚的」であるというのはその通りだと思います。このセリフの解釈では、その「見た目」が一体何を指しているのか?ということですね。
テリトリーさんへ
議論へのご参加、ありがとうございます。
apparently を「ロスの言い分によるとどうやら」という意味だと解釈されたのですね。
私は「ロスの言い分によると」という部分を見逃していたのですが、テリトリーさんのおっしゃることよくわかります。
ロスは強気だけど、チャンドラーはそうでもない、でもロスがやる気まんまんだから、俺だけ逃げ腰になるわけにもいかない、それで、「俺たちは一歩も退かないぞ!」と言ってから、「…てな状況になってしまってるようだね(俺の意図に反して)。」みたいなことなんでしょうね?
「ロスが二人を代表して喧嘩を買ってしまう」という部分もまさにそうだと思いますし、「ロスのせいでそんなことになってるらしい(わな)」というのも、その尻すぼみな感じのオチがぴったりだと思います。
今はこの解釈が一番すっきりしていて、納得できると思います。ありがとうございました!