ロスがレイチェルパパのタバコの箱を持っていたので、ママはロスがタバコを吸うのだと勘違いしたようです。
レイチェルママ: Rachel, you didn't tell me your boyfriend smokes. (レイチェル、あなた、恋人がタバコを吸う人だなんて言ってなかったわよ。)
レイチェル: Yeah, like a chimney. (えぇ、もう煙突が煙を吐くみたいに吸うのよ。)
ママのセリフですが、ネットスクリプトでは、"you didn't tell me your boyfriend smoked" と smoke が過去形 smoked になっていました。
過去形になっているのは、「時制の一致」が起こっているから、ということですね。
実際の音声では、smokes と現在形になっていて、DVDの英語字幕も現在形です。
このセリフの場合、smoked と smokes のどちらがナチュラルなのか、というのは日本人にはわかりにくいところだと思います。
実際のセリフは現在形でしたので、実際のセリフを正しいものとして判断した方が良いとは思うのですが、ネットスクリプトを書いている人はネイティブスピーカーなわけですから、ネイティブとしては過去形でも違和感がなかった、というふうに考えることも可能ですよね。
「時制の一致」というのは日本語文法にはない概念なので、これを苦手とする日本人学習者は多いですよねぇ。
ハートで感じる英文法 会話編 (大西泰斗/ポール・マクベイ著) の Lesson 6 「時制の一致−感じたままに報告する−」で、時制の一致が詳しく説明されています。
大西先生の言葉を引用させていただくと、
時制の一致の呼吸は、「報告したのが過去ならその内容も過去」
英語の「とき表現」(現在形・過去形・過去完了形)の選択は、現実の物理的時間に対応しているのではなく、「とき」は私たちの「ながめ方」の中にある。
時制の一致をかける・かけないは話し手の感性にゆだねられている。
大西先生は、時制の一致をかける・かけないの例として次の文を挙げておられました。
Deborah does a yoga class every Tuesday. 「デボラは毎火曜日ヨガをする。」
a. Did you know Deborah did a yoga class every Tuesday? これは単に相手の知識を尋ねている。「知っていましたか?」
b. Did you know Deborah does a yoga class every Tuesday? 「デボラ、毎週火曜日ヨガやってるんだよ、君知ってた?」(現在の事実として前面に押し出されている)
その感覚を今回のセリフに当てはめてみると…。
ネットスクリプトの過去形は「あなたはそういうことを過去に言ったことはなかったわ。」、つまり「言わなかった」部分にポイントがある。
実際のセリフが smokes と現在形になっているのは、今現在の習慣を表すものだからで、「ロスがタバコを吸う? そんなことあなたは言ってなかったわよ。」とロスにそういう習慣があるという事実にポイントがある。
…ということなのだろうなぁ、と思います。
また、週刊STの2004年4月9日号の伊藤サムさんによる英作文添削コラム「これであなたも英文記者」で時制の一致に関する問題が取り上げられていたのですが、そこにこんなことが書かれてありました。
オーソドックスな文法に従って時制の一致をさせるならば、主節に合わせて、従属節でも過去形にします(英国系のロイター通信社などがこの立場)。
しかし、現在においても真実であることについては、従属節であっても過去形にこだわらずに現在形や未来形で表現するのが自然でよい、と考える立場が強くなりつつあります(米国系のAP通信社など)。
特に話し言葉ではあまり時制の一致はしなくなっています。あくまで、現在においても真実であれば、自然に書いても構わない、というルールです。
私は学生時代から、時制の一致に対してものすごい苦手意識を持っていたのですが、この伊藤サムさんのお話を聞いて、ちょっとほっとしたのを覚えています。
そして上にも書いた大西先生の「呼吸」。
ただ機械的に従属節の動詞の時制を主節の時制に合わせる、というのではなく、自分がその文章を書くときにその従属節の内容をどう捉えているか、が大事なんだ、ということなんですね。
(未だに英文を書くときにはふと考え込んでしまいますし、間違って書いていることもしょっちゅうだろうとは思いますが…でも、意識しながら書くようになっただけでも進歩かなぁ…と)
chimney は煙突。
smoke like a chimney で「煙突が煙を吐くようにタバコを吸う、やたらにタバコを吸う」という意味になります。
「吐くように吸う」ってちょっと妙な表現なんですが、これは単に「喫煙する」ことを日本語では「タバコを”吸う”」と表現するからですね。(実際の動作は「吸って吐く」のがペアになってると思うのですが…)
つまり、「もくもくと煙が出るくらいにスパスパ吸っては吐く」ってことですよね。
見たまんまのイディオムです。
(Rach からのお願い)
今回の記事、面白いと思われた方は、下のランキングサイトをクリックして下さい。
人気blogランキング
にほんブログ村 英会話ブログ
話すときには完全にごっちゃになります!
でも、Rachさんの解説読んでいたら、そうなんだぁ〜って納得!
大西先生の文法書も読んでみたいです。
(文法書って結構書く人によって同じニュアンスのことなのに、すごく
難しく感じるときありますよね? なんだろう・・・相性?)
ちなみにサムさんの本も持ってる・・・でも読んでない・・・(汗)
持ってるだけでは、完全に宝の持ち腐れですね・・・→反省!
コメントありがとうございます。
時制の一致、というのは、学校英語でも出てきた項目ですが、習った時は「何でそんなめんどくさいことをするんだ」みたいな気持ちでした^^
大人になってから英語のやり直し学習を始めた後に、上で紹介させていただいた、大西先生やサムさんの本の説明を聞くと、すごく腑に落ちる気がしたんですね。そんな風にわかりやすい言葉で「感覚」を説明してもらえることがとてもありがたかったです。実際に、生きた英語のセリフをたくさん浴びているからこそ、その説明がしっくりきた、というのもあるんだろうなと思いました。
大西先生のご本も、サムさんのご本も、どちらもとてもわかりやすく書かれていて、すっと頭にイメージが入ってきます。是非お読みになって下さい!(^^)