2006年12月15日

フレンズ2-23その19

報告書の提出が遅くなることに不満の、上司ダグラスさん。
チャンドラー: Well, the people in my group wanna spend the holiday weekend with their families. (私のグループの者は週末を家族と過ごしたいと望んでいるんです。)
ダグラス I have a family. I'm gonna be here. (私にも家族はいる。(でも)私は(週末に)ここに出社するつもりだが。)
ジョーイ: Yeah, Bing. What's that about? (そうだよ、ビング。それってどういうことなんだよ?)
チャンドラー: It's about cutting my people a little slack, ya know, for morale. Look, if you wanna see some rough numbers, I can get them to you by Wednesday. (部下たちに少し息抜きをさせてやりたいってことなんですよ、ほら、士気を高めるために。もしざっとした数字を見たいとおっしゃるなら、水曜日までにそれをお見せすることは可能ですが。)
ダグラス: Rough numbers? (ざっとした数字、だって?)
ジョーイ: This company was not built on rough numbers. Am I right, Mr. Douglas? (この会社はざっとした数字の上に成り立ってるわけじゃないぞ。そうですよね、ダグラスさん?)

ジョーイの "What's that about?" を直訳すると「that (チャンドラーの言っていること)は何についての話だよ?」ということになり、つまり「お前は一体何を言ってるんだよ。仕事とプライベートとどっちが大事なんだよ。」という意味で問い詰めている感じです。
それに対してチャンドラーは "It's about cutting... " と返事しています。
つまり「何についての話だ?」とジョーイに聞かれたので、その返事をダグラスさんに対してしているんですね。
「It (私が言いたいのは)cut... ということをする、という話です。」と答えているわけです。
slack は「ゆるい、たるんだ、ゆるみ、たるみ」という意味。
この場合は「ひと休み、息抜き」というような意味で、cut someone some slack で「…に息抜きをさせてやる」という意味になります。
cut の代わりに、give someone some slack とも言います。
つまり、cut と give が同じような動詞として使われている、ということですが、この場合の cut は cut+目的語A+目的語Bで、「A(人)にB(もの)を切ってやる」という感じでしょうか。
cut him another piece of pie 「彼にパイをもう一切れ切ってやる。」と同じ cut のニュアンスだと思います。
フレンズ2-8その13 にも、cut someone some slack という表現が出てきました。
そこでは「人を勘弁してやる、人に理解を示す」という意味で使われていました。

morale は moral 「道徳、モラル、品行」とは別の単語です。
morale は「(軍隊・国民の)士気、意気込み、気力、やる気」という意味で、発音も「モラァル」という感じで後ろにアクセントがあります。
build+目的語+on は「(希望・判断などの)基礎を(…に)置く」という意味。
build one's hopes on promises だと「約束を当てにして希望を持つ」という意味になります。
上のセリフは受動態になっていますが、これを能動態にすると、We don't build this company on rough numbers. という感じになるのでしょうか。
「我々はこの会社の基礎を概算数字には置いていない。」ということになるかと思うのですが、この場合はむしろ build を「事業を築く、建設する、造る、建てる」という意味のままで捉えて、「我々は概算数字の上に(概算数字をを元にして)会社を作っている(もしくは運営している)のではない」と言った方がわかりやすいかもしれません。
上のセリフが受動態になっているのは、「会社の状態がどうであるか」を説明したいから、This company を主語に持ってきているわけですね。
We を主語にすると、We がどういう意思を持ってどういう行為を行っているか、という方にポイントが移ってしまうので、言ってる内容は同じでも、微妙にニュアンスは異なると思います。
それにしても、いちいちつっかかるジョーイがおかしいですよね。
いくらそのジョセフという役に成りきっているからって、どうして友達じゃなくて上司の方につくんだよ、お前は!って感じです。

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posted by Rach at 15:10| Comment(8) | フレンズ シーズン2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
また、質問させていただきます。
今日はフレンズに絞っての英語  という本来の趣旨にのっとり(笑)
1-22より
CHANDLER: And this has nothing to do with the fact that he needs a note to get out of gym.
授業を抜け出すには保護者の許可が必要だからかい?

これがね、、まず最初の疑問です。  たぶん若干 意訳してるんでしょうが。
noteには、私の辞書では許可といういみについてはありませんでした。  かろうじて手形が。
私の拙い役だと「彼は体育館を抜け出すノート(通知)が必要にする事実を何も持ってなかった」????
拙すぎて恥ずかしいんですが、全くお手上げ状態です。  ご教示ください!


morphin time!  変身タイム
head rush   立ちくらみ
も分からないもといえば分からないのですが、YouTubeでも・・・レンジャーのmorphin time映像があったし なんとなく向こうでは
変身タイムとして定着してるんでしょうね。
私なんか変身といえばウルトラマンや仮面ライダーの残像が強いのでmorphinが変身になることに違和感 感じてたんですが薬物でいちいち変身するんでしょうかね(笑)
head rushも辞書には、そういう言葉なかったんですが 最近の言葉としてあるみたいですね。
この二つは流してくださってけっこうです。   


CHANDLER: Work people? Nobody told me.  会社の人とだって? 聞いてないぞ!
PHOEBE: No, I know. Thatエs a part of the whole, you know, them-not-liking-you-extravagance.
だって、あなたは・・・  ボス面するから   嫌われてるのよ

part of the whole全体の一部.    
part of the whole 、、は、会社の人の中の一部の人とだけのパーティーだといって、彼の孤立感を和らげてるんでしょうか?

them-not-liking-you-extravaganceの部分がさっぱりです   extravaganceについてはextravaganzaという説もあり。
extravagance (行動・意見などの)行き過ぎ,過度;放縦    extravaganza狂想的音楽劇. はでなショー[行事]
いつもの彼女の意味不明話法と納得すればいいのですが、主語述語関係がいまいちわかりません。
ただ、なんとなく 「あなた、チャンドラーの 過度の(or 芝居がかった音楽劇のような)ボス面を好んでないのよ」なんでしょうかね。
themが、チャンドラーのボス面をさしているのか、部下の彼らをさしているのか 良く分かりません。



PHOEBE: Well, you know what Chandler? I think youエve gotta face it. Youエre like, the guy in the big office, you know.
Youエre the one that hires them, that fires them... They still say youエre a great boss.
あなたの立場上 仕方ないわ   あきらめたら?
大きなオフィスで部下の人事を握ってるんだもの(人を雇ったり首にしたり出来る人なのよ)  でもいいボスよ

このgotta face it. は、 現実に向き合え→あきらめたら? になるんですかね?

Posted by John Doe at 2006年12月16日 00:10
まだ続きがあるのですが書き込みを何遍やってもはねられます。
長すぎるのかどうか?
ですので残りは後日分割します。
Posted by John Doe at 2006年12月16日 00:39
John Doeさんへ
ご質問は 1-22 に関するものなので、それに対する私なりの回答を、
フレンズ1-22その6 のコメント欄
http://sitcom-friends-eng.seesaa.net/article/388470153.html#comment
に書かせていただきました。1-22 を見て、同じような疑問を持たれた方がおられるかもしれませんので、該当記事のコメント欄に書く方が相応しいかと思いまして。

That's a part of the whole, you know, them-not-liking-you-extravagance.
に関しては、以前にも同じ質問をいただいたことがあります。上に挙げたリンク先の、フレンズ1-22その6 のコメント欄に私の回答が書いてあります。そのコメントの返事は半年ほど前に書いたものですが、今でもその解釈は変わっていません。
ただ、何人もの方がそのセリフで「おや?」と思う、ということは、やっぱり解釈が難しい箇所だということなんでしょう。ですから、説明に絶対の自信があるわけでもないのですが…。

「書き込みがはねられる」件については申し訳ありません。ですが、私にも原因はわかりません。
長さは多分関係ないでしょうね。何故だか知りませんが、少し前から、ウィキペディアへのリンクをはろうとすると、書き込みエラーがでることがあります。自分のブログの過去記事へのリンクは大丈夫みたいなのですが、何かリンク先のURLによっては、エラーがでるのかもしれません。
何もリンクをはっていないのにはねられるのであれば、思い当たることはないのですが…。禁止ワードなどは何も設定していませんし。たまたま、このDIONのLOVELOGの調子が悪かっただけ、かもしれません。
Posted by Rach at 2006年12月16日 10:26
上の記事に出てきた、cut someone some slack というイディオムの追加説明を、ここでさせていただきます。

フレンズ2-23(その20) のコメント欄
http://sitcom-friends-eng.seesaa.net/article/388470652.html#comment
で、John Doeさんからご質問をいただきました。
John Doe さんは、「たるんでるのをカットする→ たるむな!→ しゃきっとしろ」のように解釈された、とのことで、それだと「部下を息抜きさせる」という意味とは反対になってしまうけど…というお話でした。
どうして、そういう解釈にならないか、というのをもう少し詳しく説明してみたいと思います。

確かに slack には「たるみ、不景気」というネガティブな意味があり、cut もまずは「削減する(reduce)」という意味が基本です。
が、このイディオムでの意味は、記事にも書きましたように、slack は「ひと休み、息抜き」というような意味で、cut は give というニュアンスです。

まず、slack についてですが、このイディオムの slack には「たるんでる、だらけている」というようなネガティブな意味はないと思います。言葉というものは、ある基本的なイメージがあるとは言え、ネガティブな言葉は常にネガティブなわけではなくて、捉え方によってはそれがポジティブな面を表す場合もありますよね。また、時が経つにつれて、意味が変化してきた、ということもあるでしょうし。ですから、自分が知っている意味がネガティブなものであったとしても、いつも必ずネガティブな意味であるとは限らない、と心に留めておくことも大事なのではないか、と。

slack の語義は、
研究社 新英和中辞典には、「たるみ、不景気」など否定的な意味が書いてありますが、

英辞郎には
slack=ひと休み、息抜き(参考)give [cut] someone some slack

というのが書いてあります。私が記事で引用したのはこの語義です。

ロングマン現代英英辞典には、
cut/give somebody some slack: (spoken) to allow someone to do something without criticizing them or making it more difficult
例) Hey, cut me some slack, man, I'm only a few bucks short.

訳すと、「非難したり、それをより困難にすることなしに、誰かに何かをすることを許可すること」
この語義は、フレンズ2-8(その13) に出てきた「人を勘弁してやる、人に理解を示す」という意味に近いですかね。
ロングマンの例文を訳すと、「なぁ、勘弁してくれよ。(俺は)たった2、3ドル金が足りないだけなんだ。」という感じですが、それはつまり「2、3ドルくらいは大目に見て、まけてくれよ。堅いこと、厳しいこと言わずに(非難せずに)、俺がそれを買うのを許してくれよ。」ということなのだと思います。

Merriam-Webster Online Dictionary には、
slack: additional leeway or relief from pressure -- usually used with cut <refused to cut me some slack on the schedule>

つまり、「追加の leeway (余地、余裕、行動の余地、行動の自由)、または圧力の軽減・除去。たいていは cut と共に用いられる」
上の例文は、「スケジュールに余裕を持たせることを拒んだ」

こちらが、「…に息抜きをさせてやる」に近いでしょうか。つまり、ずーっと働きづめに働くのではなくて、ちょっと余裕を持たせて休みたい時には休ませる、という感じですかね。

次は cut について。
cut は「削減する」という意味ではなく、記事中に書いたように give と同じような意味で使われています。

Merriam-Webster Online Dictionary の cut の語義の 9 a に
cut: to yield or accord to another : GIVE <cut me some slack>

yield to も accord to も「…に許す、与える」という意味ですし、まさに cut = give である、とも書いてあります。
そして、例として、cut me some slack が挙げられているということは、これが、cut を give という意味で使う典型的な例だ、ということですね。
何故、特にこのイディオムで、cut という動詞を使うのかは私にもイマイチよくわかりませんが、慣用的に cut がずっと使われてきたのでしょう。
give me some slack ならわかりやすいと思いますし、あまり意味を取り違えることもないと思うのですが…。

なぜ、この cut が give のような意味になるのか、については、cut という言葉が持つ意味よりも、その文型から判断できると思います。
cut someone some slack というのは、記事にも書いたように、「cut+目的語A+目的語B」の形なので、「A(人)にB(もの)を切ってやる」という意味になるのですね。

大西先生の著書「ハートで感じる英文法」の p.196 に「文型にも感覚はある」という説明があります。

第4文型の「S+V+O1(間接目的語)+O2(直接目的語)」のように、動詞のあとに名詞のカタマリが2つある感覚を、大西先生は、
「受け渡し」の感覚
だと表現されています。
それは give に限らず、SVOOの文型では、find, buy, get, promise, teach, show, tell という動詞にもその「受け渡し」の感覚は含まれている、
とのことでしたね。
番組中でも道行くネイティブに尋ねていたと思いますが、SVOOのVの部分に見たこともないような言葉を動詞として入れた文章をネイティブに見せても、ネイティブはそのSVOOの文型から「受け渡し」のニュアンスを汲み取っていました。
まさに、ここの cut もそれなんだと思います。someone に some slack を「受け渡し」する感覚、ですね。

もし「誰かから、たるんでるのをカットする、誰かのたるんでる部分をカットする」という意味であれば、cut some slack from someone とか out of someone とかの形になるのではないかと。つまり「誰かから切り離す」という意味の from か out of が必要になると思います。
日本語の「カットする」=削減する、というイメージに捉われすぎていると、SVOOという文型にある give の感覚が見えてこない、ということでしょうか。
「カットする」のではなく、「カットしてやる、切り与える」、その人にどこからか切ってきた「ゆるさ」を「与える」という感じなのかなぁ、と。

cut someone some slack の slack は、「きつくしない、きっちりしすぎない、タイトにしない、厳しくしすぎない」という意味の「余裕、ゆるみ」なんだと思います。イメージとしては、家に帰ってネクタイの首をゆるめる感じのゆるみ、手綱をきつく引き締めるのとは反対に手綱をゆるめること、みたいな感じかなぁ? 「たるんでる、だらけてる」というネガティブなイメージではなく、「リラックス、余裕」というポジティブな意味でしょう。

John Doe さんのご質問に、ミス・マープルの話が出てきます。それによると、ミス・マープルに出てくるスラック警部という「非常に短気で、いつもイライラしてる」人に対して、ミス・マープルが「あの人、名前はスラックなのに、名前とは大違いね!」と言うセリフがあるそうなんですが…。
そのセリフの意味も「名前とは違って、いつもキリキリしている感じで余裕が感じられないわね。」ということなのでしょうね、きっと。
Posted by Rach at 2006年12月19日 14:25
ラケさん  毎日すいません。
あまりに詳しくやってくださるんで本当に恐縮します。
あ! でも今の言葉は流してください。
重荷にはなさらないでください
それにくどいとかえって言うイヤミですが、この投稿自体も前回のように流してください。
ラケさんの解説確かに読ませて頂きましたという受領印のように思っていただければこちらも幸せです。

それと、やはり自己流の納得はいけませんね(笑)
cut  が「与える」という意味があるのに 勝手な方向に進むとこでした。
ネットの辞書にも「与える」ってありました。
ただ、私の持ってる辞書(英英、英和など3冊ほど)には載ってなかったんですよねぇ・・・
なにぶん古い辞書なので、最近 付加された言葉かなぁか〜と思ってしまいました。
 
SVOO、、、、大西先生 ピボットの関係ですね!

ラケさんの いつもながら理詰めの解説、、、、絡まっていた物が解きほぐれる快感に浸っています。
ところで今日の解説を聞いて思ったことがあります。

Let me suggest  that you take a vacation... from yourself.   あなた自身から体験を取ってみたら?

一見、簡単な英文ですよね
でも今日の解説につながるみたいで、もう一度吟味してみました。
 この文は現カリフォルニア州知事が昔、主役していた映画の一文です。
「トータル・リコール」有名なSF作家の映画化です。
訳はかなり意訳でして、なぜvacationが体験になるかは文脈から判断する類です。
take a vacation だけなら 「休暇をとる」
しかし、その後にfrom yourselfがあることから takeに二重の意味を持たせた台詞なのかなと深読みしてしまいました。

まず、背景を説明すると 夢を見ながら実際の火星旅行が出来るという(本当に行ったかのような・・・あくまで錯覚)未来のサービスがあります。
主人公が それを受けに、提供している会社に行ったときの会話です。
英文自体は簡単そうなんですが、背景が難解(SFなので)なため説明に手間取るんですが。
つまり「夢売り家」は、仮想現実の旅のオプションとして、あなた自身も仮(つまり化けて旅行できる)に出来ますよと提案しているわけです。
ですんで、、、例文
あなたは休暇(旅行)をとる & あなた自身から「過去の旅行・・・体験」を取る→アイデンテティーを取る みたいなことかな???と・・・
なんか未熟なものが理屈をこじつけて妙ちきりんな話をしてますね(恥)
いや、、これは独り言と思ってお聞き流しください。
少し気になったもので。




Posted by John Doe at 2006年12月20日 01:34
John Doeさんへ
お礼、ありがとうございます。そんなに恐縮していただかなくてもいいですよ。
解説が長いのは、書きながら頭を整理しているからです(笑)。本当なら、調べたことを簡潔にまとめて説明する方が親切なのでしょうが、それは却って時間がかかるので、調べたことと思いついたことを全て書き出しているだけです。私にとってはこうする方が簡単だから、そうしているだけなんですよ。後にブログの記事を書くのに参考になることもあるし、私のネタ帳みたいなものでしょうか。
最近は、自分の過去記事と、それに伴うコメントが私のネタ帳そのものみたいになってきました。自分でそういうものを別途作るよりも、ブログの形で残っている方が、後から検索して調べやすいし、そのままコピーしたり、リンクをはったりして、使い勝手が良いからですね。
読まれる方(かた)は、その辺をくんでいただいて、適当に大事そうなところだけ拾い読みして下さるとありがたいです。
「簡単にまとめて下さい。」と言われると、却って困ります(笑)。「さらりと流して下さい。」とか「聞き流して下さい。」と言われた場合も、よくわからない場合はもちろん流しますが、こだわりたい部分は、質問者の方の意図を無視して暴走するのも、これまたRach流(笑)、なのです。

トータル・リコールですか。見ていませんが、映画のCMは記憶にありますし、その設定も聞いたことありますから、映画の大体の内容はわかります。
そのセリフ、有名なんですね。検索したらたくさんヒットしました。(まぁ、有名な映画ですからね)

IMDb の Memorable Quotes from Total Recall (1990)
http://www.imdb.com/title/tt0100802/quotes
より以下にそのシーンのセリフを引用します。

Bob McClane: What is it that is exactly the same about every single vacation you have ever taken?
Douglas Quaid: I give up.
Bob McClane: You! You're the same. No matter where you go, there you are. It's always the same old you.
Let me suggest that you take a vacation from yourself.
I-I know it sounds wild. It is the latest thing in travel. We call it the Ego Trip.

映画を見てないので、ちょっと前後関係がわからないながら私なりに(笑)訳してみると

ボブ・マクレイン:君が今までにしてきた全ての旅行において、全く同じであること、って何だと思う?
ダグラス・クエイド:お手上げ[降参]だ。(わからないよ。)
ボブ・マクレイン:君だよ! 君が同じなんだ。君がどこに行こうと、そこにいるのは君だ。それは常にいつもの[これまでどおりの]君なんだよ。
僕にこんな提案をさせてくれ、「君自身から休暇を取る」っていう提案さ。
ワイルドな[突飛な]話に聞こえるけど、それが旅行の最新型なんだ。僕らはそれをエゴ・トリップと呼んでる。

うん、確かに説明して下さったそのシーンの内容と一致しますね。
つまり、仮想現実の世界なので、自分自身も今の自分とは違った人間に変身できる、ということなんですね。
今までの旅行だと、どんなにすごい場所に行っても、旅行している自分自身はいつもと同じ自分。「エゴ・トリップ」では、旅行に参加している自分自身をも変えることができるんだよ、とその楽しさを訴えているわけだ。旅行願望と変身願望を一気に叶える、というか、旅行先に合った人物に変身してもっとその旅行を楽しめるようになる、というのがウリなんですね。

その日本語訳の「あなた自身から体験を取ってみたら?」の「体験」には何かしらの意味を持たせているのでしょうね。恐らく John Doe さんがおっしゃるように「過去の体験を取る」→「過去の自分の記憶を忘れて、新しい人間になる」という意味で、この日本語になっているのでしょう。

私は「君自身から休暇を取る」と訳しましたが、それはちょっと比喩的な表現も混じっています。

vacation はまさに日本語のバケーションで「休暇、休み」、take a vacation は「休暇を取る」という決まり文句ですよね。
さらに vacation には「明け渡し、立ち退き、引き払い」「辞職、辞任、退官」という意味もあります。(語義は研究社 新英和中辞典のもの)
vacation は vacate という動詞の名詞形で、その語義は、同じく研究社 新英和中辞典によると、

vacate=1.(席・家などを)空ける、引き払う、立ち退く
vacate a house 家を立ち退く
2.(職・位などを)退く、辞する、空位[空席]にする

とあります。
よく似た単語で、vacant 「空(から)の、空虚な、空っぽの、使用されていない」という形容詞もありますね(a vacant house 「空き家」とか、a vacant room 「空室」とか)。
vacant も vacate も、ラテン語「空(から)の、空(から)にする」という意味から来た言葉だそうです。

その vacation や vacate のニュアンスを考えると、「あなたを明け渡す、あなたを引き払う、あなたを辞任する」みたいな、「あなた自身であることをやめる、あなたのアイデンティティを放棄する」というニュアンスで言っているのかなぁ、と思ったりします。

英辞郎には、take a vacation from work 「仕事を休む」という表現が出ています。また、"take a vacation from" とグーグル検索するとたくさんヒットがあります。そのニュアンスは「(from 以下のもの)を休む、を離れる、から距離を置く」みたいな感じのようです。
そういうニュアンスだと考えると、「自分自身を休む、自分自身から離れる、自分自身から距離を置く」という感じにも取れます。

take a vacation from yourself という表現は、普通の日常会話ではそんな表現は使わないと思いますし、特殊な表現、比喩的表現、あるいはSFっぽい表現でもあるのでしょう。
ですから、比喩的に「自分自身から休暇を取る」と訳してみても、「自分であることを少しお休みして、自分から離れてみる、自分とは違う人間になってみる」というニュアンスは出るかなぁ…と思うのですが。

上に書いて下さったセリフは、take a vacation... from yourself. と、"..." が入っていますよね。これは take a vacation までなら普通なんだけど、それが "from yourself" である、というオチみたいな感じです。
日本語にすると、「休暇を取る、という提案ですよ、それも”あなた自身から”ね。」みたいなニュアンスでしょうか。聞いた方は「え、俺自身から?(From myself?)」と驚く、みたいな(笑)。

あ、それから
フレンズ2-23(その20) のコメント欄
http://sitcom-friends-eng.seesaa.net/article/388470652.html#comment
で書かれていた、The guys all duck under the table. の duck の話ですが。
ボクシングにダッキングという言葉があるんですね。(確かにウィキペディアにも載ってます…笑)
まさに「頭をかがめること」で、このト書きのように「みんなテーブルの下に頭をかがめた(頭を隠した)。」の duck と同じですね。
ダック(duck)には、おっしゃるように、
名詞(duck の定義1)=「カモ、アヒル」
動詞(duck の定義2)=「(ひょいと)水にもぐる、頭をひょいと下げる・ひっこめる、ひょいとかがむ」
という意味がありますよね。
私も duck 「(ひょいと)水にもぐる」という動詞は、「カモ、アヒルの生態から取られた動詞」だと思っていたのですが…。

研究社 新英和中辞典の語源欄を見ると、
動詞「水にもぐる」の語源は、「古期英語「水にもぐる」の意」、
名詞「カモ」の語源は、「古期英語「水にもぐる(duck の定義2)もの」の意」
とありますので、鳥の名前から動詞が出来たのではなくて、古語の「水にもぐる」という意味の動詞が先にあって、その動詞の行為をするものとして「カモ」の名前が duck になった、ということみたいですね。つまり、「duck するもの(鳥)」という意味で、あの鳥に duck という名前がついた、ということだそうで…いやぁ、実に細かくてどうでもいいような話ですが(笑)。
Posted by Rach at 2006年12月20日 10:10
今晩は   受領印です(笑)
そうですねラケさんの長文に、では恐縮しないようにします。
トータル・リコールまで解説してくださってすいません。

独り言だとか流してくださいといいながら何処かで律儀なラケさんを見越して謎かけしたというような、やらしい大人の駆け引きは決してないのですが。  
でも、すっきり解説していただいて本当に嬉しいです。
もやもや状態でいるのは嫌ですから。
私が大助・花子の大助状態でそこはかとなく感じていたものをなかなか頭の中で整理できなかったり、口でうまい具合に表現できないことを ものの見事に代弁していただき 「そうそう、、これこれ!」というのが今の感じです。
vacationからvacateまでのお話、、いやいや また目から鱗です。
何か自分でもあの台詞に本能的に、そういう感触を持っていたんですが・・・  そうだったんですね!  スッキリ!
それに日本語もそうですが語源調べって本当に面白いですよ!
それに、いつも思いますがアメリカのドラマにしろ映画にしろ、あるキーになる台詞は本当に凝ってるなと思います。
こちらが、こだわりたくなるのも無理ないかと・・・・言い訳を(笑)


ポピュラー・メカニックの件、、、ありがとうございます。
雑誌だったんですね  私もネットで調べたときは確たるものが得られず玩具の写真なんかがあったので、玩具メーカーかなって思ってたんです。
さて、実際の訳が分かってみると これは日本語吹き替えの「ポピュラーな・・・」の返しのほうが面白いですね

それとduckの件  思い違いを訂正していただきありがとうございます。
何か一人合点の納得で、ややズレのものが多かったので此処で正直に言ってよかったです。
Posted by John Doe at 2006年12月21日 01:14
John Doeさんへ
受領印、確かに頂戴いたしました(笑)。
本当に毎回、お返事いただかなくてもいいですよ。何しろ私の文章は長いですから、その日のうちに読もうと思うと、気が重いでしょう?(笑)。
お時間のある時にでも、ゆっくり読んで下さればそれでいいですからね。
Posted by Rach at 2006年12月21日 14:51
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