フレンズ1-18 に関するご質問を元に書いた記事は、今日が最終日です。
昨日取り上げたシーンの説明の続きになります。
チャンドラー: Could you want her more? (まだ彼女のことがいいのか?)
ロス: Who? (誰のこと?)
チャンドラー: Who? Dee, the sarcastic sister from What's Happening! (誰のことかって? [以下、訳は省略])
ここで観客は大爆笑。
ロス: Look, I am totally, totally over her. (いいか、僕はすっかり、完璧に彼女のことはあきらめたよ。)
上のピンクの部分を解説します。
質問者の方も、質問後に調べてわかったそうなのですが、イタリック体で書いてある What's Happening は、あるドラマの名前で、Dee はそこに出てくる人物の名前。
最初、Dee の部分は、Gee!(ジー!)と言っているのかと思いました。
Gee は Jesus (イエス・キリスト、ジーザス)の婉曲形で、"Oh, my God!" などと同じように、「おや! まあ! 驚いた!」という驚きや喜びを表す表現なんですが、ここは Gee ではなくて、Dee だったんですね…。
ネットスクリプトには、Whats Happening と書いてあるのですが、正しくは What's と、アポストロフィーが必要です。
おまけにドラマの正式なタイトルは、What's Happening!! と、感嘆符が二つも付いています(笑)。
私は全くこのドラマを知りませんので、これ以下、ひたすら、ウィキペディアと IMDb からの引用記事が続きます(笑)。
まずはウィキペディア(英語版)から。
Wikipedia 英語版: What's Happening!!
上のウィキペディアの Premise (「前提」…つまりは「設定」ということだと思います)によると、
ロスのワッツ地域に住んでいる、労働者階級のアフリカ系アメリカ人3人のおふざけ(ふざけた・おどけた・こっけいな行動)を扱ったドラマ。
ロスにはワッツ(Watts)という場所(地域)があるんですねぇ。
Wikipedia 英語版: Watts, Los Angeles, California
「ワッツ・ハプニング」というドラマのタイトルと「ワッツ」という地名は、発音が似ているのですが、それは何か関係があるのでしょうか?
韻を踏んでいるというか、地名をタイトルにかけている、ってことなんでしょうかねぇ?
それに関する記述は見つからなかったのですが。
主人公は、Roger "Raj" Thomas (演じるは Ernest Thomas)で、そのロジャーの妹が Dee (演じるは Danielle Spencer)。
ちょっと話は脱線しますが、ラッセル・クロウの奥さんも、Danielle Spencer (ダニエル・スペンサー)という名前の女優さんなんですが、もちろん彼女とは別人です(笑)。
ですから、"Danielle Spencer" でグーグルのイメージ検索をすると、そのラックロの奥さんばかりがヒットしてしまうのですが、「Danielle Spencer Dee」とか、「What's happening Dee-Thomas」などの語句でイメージ検索すると、それらしい女の子の写真がヒットしますね。
話は戻って、そのウィキペディアの Premise によると、
Other schemes involved getting back at Roger's sister Dee, who was a caustic, bratty busybody.
他の枠組み(?)では、ロジャーの妹ディーに仕返しをする話も絡んでいる。ディーは、「痛烈・辛辣(caustic)」、「こまっしゃくれた、やんちゃの、行儀の悪い(bratty)」、 「おせっかいな、でしゃばりな(busybody)」人である。
ちなみに、bratty という形容詞は、名詞 brat 「(手に負えない)子供、(うるさい)がき、やんちゃ坊主、わんぱく小僧」の形容詞形です。
Major characters にディーの説明も載っています。
詳しく書いてあるので、そのまま引用させていただきます。
Dee Thomas is Raj's younger sibling. She personifies the typical 'annoying little sister'. Dee is obsessed with making money, usually by blackmailing her brother and his friends a quarter at a time. She is also shrewd, and difficult to keep secrets from. Her trademark phrase is "Ooh, I'm tellin' Mama!"
ディー・トーマスはラッジ(ロジャー)の妹。ディーは典型的な「うっとうしい妹」のキャラクターである。ディーはお金儲けに固執しており、時には自分の兄や友人を恐喝して一度につき25セントをゆすってお金を儲ける。彼女は抜け目がなく鋭いので、彼女に隠し事をするのは難しい。彼女のトレードマークのフレーズは、「あっ、ママに言いつけちゃうから!」
そのディーを演じている Danielle Spencer のウィキペディアにも興味深いことが書いてあります。
Wikipedia 英語版: Danielle Spencer (US actress)
Spencer tied with Alison Arngrim (Nellie on Little House on the Prairie) for "Character Most in Need of a Time-out" award on Nickelodeon's TV Land Awards in 2006 for her role on "What's Happening".
2006年のニケロデオンTVランド賞の「黙って反省する時間が最も必要なキャラクター」というのがあり、そこで、What's Happening の役柄(ディー)を演じたスペンサーは、アリソン・アーングリン(「大草原の小さな家」のネリー)と同点であった。
上の英語は、自然な日本語に訳しにくくて、変な日本語になってしまいました。
英語のままで理解した方が絶対にわかりやすい、という典型のような文ですね。
いろいろと面白い語句が出てくるので、ついでに説明させて下さい。
Nickelodeon は英辞郎を引用させていただくと、
Nickelodeon=ニケロデオン。アメリカの民放テレビ局。子ども向けのアニメのみを放映。Cartoon channel よりも内容が多少過激な番組もあり。
とのことです。
また、time-out も、英辞郎の語義がわかりやすいので引用させていただくと、
time-out=タイムアウト。学校や家庭において、悪いことをした子どもに反省をさせるための方法として、自分の部屋に閉じこもらせて(あるいは、いすに座らせて)数分間黙らせておくこと。
tie with は「…と同点である、並ぶ」ですから、多分1位で並んだか、上位で並んだ、ということですね。
「大草原の小さな家(Little House on the Prairie)」って、NHKで何度も再放送されていますよねぇ。
それなのに全く見たことないんですよ(笑)。
ざっとネットで調べると、そのネリーという娘は、意地悪で有名みたいなので、「その」ネリーと「並ぶ」というのは、かなりのものだ、ということなんでしょう。
「ちょっと反省してなさい!」と言いたくなるほど、「悪い子」の代名詞だ、ということですね。
今度は、IMDb (The Internet Movie Database)からの情報。
IMDb: "What's Happening!!" (1976) [TV-Series 1976-1979]
IMDb の Plot Outline の (more) をクリックすると、Plot Summary for "What's Happening!!" にジャンプするのですが、そこには、
the boys get into trouble because of Roger's bratty sister Dee.
(3人の)少年たちは、ロジャーのこまっしゃくれた妹ディーのために、苦境に陥る(もめごと[トラブル]に巻き込まれる)。
と書いてあります。
Trivia には
The character 'Dee Thomas' was ranked #5 in TV Guide's list of "TV's 10 Biggest Brats" (27 March 2005 issue).
”ディー・トーマス”というキャラクターは、2005年3月27日発行のテレビガイドの「テレビ番組で最大の悪ガキ(やんちゃ)10人」のリストで5位にランクされた。
ウィキペディアに書いてあった「ニケロデオンTVランド賞」もそうですが、このドラマ自体は1970年代後半のものなのに、2005年や2006年のアンケートの上位に名前が挙がる、というところが、彼女のすごさを物語っている気がしますねぇ。
また Quotes という項目で彼らのセリフが一部取り上げられています。
Fred 'Rerun' Stubbs: [makes joke and laughs]
Dee Thomas: That's funny!
Fred 'Rerun' Stubbs: Of course it is!
Dee Thomas: No, I mean the way your belly shakes when you laugh!
これを訳すと、
フレッド・「リラン」・スタブズ:(冗談を言って笑う)
ディー・トーマス:それ、面白い!
フレッド・「リラン」・スタブズ:当然だよ!
ディー・トーマス:違うわ。私は、あなたが笑う時にあなたの腹(おなか)が揺れる様子が面白い、って言ってるの。
うーん、確かに、子供にしては辛辣ですな(笑)。
ディーの説明に時間をかけすぎましたが(笑)、とにかく、チャンドラーが名前を出しているのは、間違いなく、この What's Happening!! の Dee Thomas なわけですね。
ネットスクリプトには、
[sarcastically] Dee, the sarcastic sister from Whats Happening.
と書いてあって、チャンドラーは、sarcastically 「皮肉たっぷりに、いやみに、からかうように」 ディーの名前を挙げている、とのことです。
このセリフのどこが「皮肉、いやみ」なのか、についての解釈を2通り考えてみました。
1つ目は、ロスのセリフがまるでディーのセリフみたいだよ、という解釈、2つ目は、「彼女ってだれ?」とすっとぼけたロスに対して、「彼女ってのは、あの有名なディーのことだよ。」と答えた、という解釈です。
まず1つ目。
明らかにレイチェルのことを言っているのに、「チャンドラーは一体誰のことを言ってるんだよ? 僕には何のことだか…」とロスがしらばっくれたことに対して、「お前は、What's Happening に出てくる、あの皮肉っぽい妹の Dee かよ!」と言っているのかなぁ?と。
ディーは抜け目のない子らしいので、自分の都合の悪いことに対しては知らん振りする、自分の都合のいいようにうまく立ち回る、という部分もあるんでしょうね。
例えばこれはあくまで想像ですが、人から金をゆするのが趣味(笑)みたいですから、兄が金欠だと嘆いている場面を想定してみると…
ロジャー: I'm a bit short today, because SOMEBODY blackmailed me for money yesterday. (今日はちょっと金欠だ。だって、昨日誰かさんに金をゆすられたからね。)
ディー: Somebody? Who? (誰かさんって、誰のこと?)
みたいなやり取りもあり得るかなぁ?と思ったりします。
(英語のセリフは私が適当に考えただけなので、何の参考にもなりませんが…笑)
そんな風に、「ディーが言いそうなセリフだな」というニュアンスを補足して日本語訳をつけるとすると、
ロス: Who? (誰のこと?)
チャンドラー: Who? Dee, the sarcastic sister from What's Happening! (誰のことかって? よくもまぁ、そんな風にしらばっくれることができるねぇ。お前は、What's Happening!! の皮肉屋の妹、ディーかよ。)
2つ目は、チャンドラーもロスも「彼女」がレイチェルを指しているのがわかっているのに、ロスが「彼女って誰?」と言ったので、「彼女と言えば、あの有名な”彼女”だよ。」と、理想の恋人像とはかけ離れたキャラクターの名前を挙げて、ロスがとぼけたように、チャンドラーもとぼけてみた、ということかなぁ?
ディーは悪ガキのベスト10で名前が挙げられるくらいなので、とても「恋人にしたいキャラ」ではないですよね。
「お前、まだ彼女のことが好きなのか?」と言った後、その彼女の名前に、誰でも知ってる「嫌われキャラ」(←表現は悪いですが)をすかさず挙げたそのセンスに、観客が大喜びしている、ということかな?と思います。
そういうニュアンスをつけて訳してみると、
ロス: Who? (誰のこと?)
チャンドラー: Who? Dee, the sarcastic sister from What's Happening! (誰のことかって? そんなの決まってるじゃん。彼女と言えば、あの有名な What's Happening!! の悪ガキ、ディーのことだよ。)
さて、どっちでしょう?
私は2つ目の方かなぁ…と思うのですが、もしかして、どちらでもなかったりして(爆)。
私はただ、ディーというキャラクターの説明をしてみたかっただけなのかもしれません…。
ここまで読んで下さった方、どうもありがとうございました。
明日は、フレンズ2-23 の解説に戻ります。
(Rach からのお願い)
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チャンドラーはよくこういう皮肉をいいますね。明らかに答えはわかっているのに質問をしてくる人に対して、いかにも違った答えを言うんですよ。たとえば、食事をしてる時に「今何してるの?」と聞くあほな人に対して、「今寝てるんだよ」とか。
「little play things with yarn」は「who makes me a little play things with yarn」となっていて「毛糸でできたおもちゃ/毛糸がついたおもちゃ」を作ってくれる人、だと解釈しました。それが、何を意味してるのかわかりませんが僕の解釈では、ロスがレイチを見つめながらその先の言葉が出なくなったのを適当に言葉をあてがったように思いますが、どうでしょう?
一緒に考えて下さって、ありがとうございます。
まず、little play things with yarn について。
フレンズ1-18その11 ご質問5 のコメント欄
http://sitcom-friends-eng.seesaa.net/article/388470659.html#comment
でも、little play things with yarn についてのご意見をいただいていますが、何かそのフレーズに「意味がある」とすれば、「猫、子猫」のイメージだ、というのが一番納得できるかな、と思いました。
その前の記事の解説でも少し触れていますが、ロスが、who makes me と言った時、その make は使役動詞で、「僕を…にしてくれる人」と言いたいのがわかっていながら、チャンドラーはわざと、その後ろに「目的語」を続けることで、何か物を「作って」くれるような人?と、茶化した、ということですよね。
「その先の言葉が出なくなったのを適当に言葉をあてがった」のはその通りだと思います。そして、その「適当な言葉」にも、チャンドラーらしいジョークが込められているとしたら、ロスのことを子猫だと言った、というのがチャンドラーらしいかな、と思うのですね。
What's Happening の Dee については、ロスのセリフのしらばっくれ方がディーっぽいのか、ロスがとぼけたのに対して、ディーのことだよ、と言ってみせたのか、どちらかな、と思ったのですが、とぼけたロスに対して、「その彼女ってのはディーのことだよ。」と言った、とテリトリーさんは解釈された、ということですね。
「んなわけないだろう!」的な人物を挙げた、というのは、まさにその通りでしょうね。チャンドラーに限らず、英語のジョークでは、「明らかに答えはわかっているのに質問をしてくる人に対して、いかにも違った答えを言う」ってこと、よくありますよね。
フレンズ1-20その1 でも、
http://sitcom-friends-eng.seesaa.net/article/388470134.html
フィービーに電話しろと言われて、チャンドラーは電話してみますが、
チャンドラー: I got her machine. (機械だった。)
ジョーイ: Her answering machine? (留守電のことか?)
チャンドラー: No, interestingly, her leaf blower picked up. (いいや、面白いことに、彼女の落ち葉送風機が出たよ。)
というのがありました。電話で machine と言えば、留守電しかあり得ないのに、当たり前のことを尋ねたジョーイに、あり得ない返事をした、ということですね。
日本の漫才だったら、「当たり前だろ。leaf blower が出たらびっくりするだろ?」くらいまでは言うかもしれませんが(?)、「いいや、出たのは、誰もが思う留守電じゃなくて、leaf blower だった。」と、しれっと答えるのが、いかにも英語のジョークという感じですよね。
そこにも「なぜ、leaf blower なの?と深く考えてはいけません。突拍子もないこと、あり得ないことを言うのが、アメリカンジョークだとも言えるのです。」と私は書きました。
この、Dee についても、Rachel だとわかりきっているのに、わざと違う名前を出した、それがチャンドラーのユーモアなわけですよね。
ただ、私が上で長々とこだわってみたのは、いろんなキャラクターのある中で、どうして、Dee を出したのかな?ということだったのです。意味はないかもしれないけど、「もしあえてその人選に意味を見い出すとしたら」どういう意図になるだろう?と思ったのですね。
私はこの Dee というキャラを全然知らなかったので、とりあえずそのキャラについて調べたかった、というのもあるようです。名前を聞いただけで大爆笑するには、かなり有名で、キャラ立ちしていて、名前を聞いただけでみんなが「あいつか!」とわかる人じゃないといけませんし。
ここでは、Dee でなければならない必然性はないかもしれないけど、Dee という名前を出すことで、観客にどういうイメージをもたらすか、ということを考えてみたかったのかなぁ。誰の名前を出すのか、という選択は、leaf blower と同じく、「センス」なんでしょうね。そのチャンドラーの「センス」について考えてみたかった、という感じでしょうか。
いろいろと一緒に考えて下さって、ありがとうございました!