2006年12月26日

フレンズ2-23その24+comeの話

昨日の続き、と言いますか、追加説明になります。
昨日取り上げたセリフはこちら。
モニカ: I can't believe this. I hate this. You're too normal. I can't believe my boyfriend doesn't have a "thing." My boyfriend doesn't have a "thing." (こんなの信じられないわ。こういうのはいやよ。あなたはノーマルすぎる。自分の恋人が thing を持ってないなんて信じられない。私の恋人には thing がないのよ。)
リチャード: See, if anyone overheard that, I didn't come off well. (ねぇ、誰かが今のを立ち聞きしてたら、僕はうまくいかなかった、ってことになる。)←昨日とは日本語訳を若干変えております。

thing に関しては、昨日解説しました。
昨日の記事、フレンズ2-23その23 のコメント欄 で、come off について、あるご指摘がありましたので、今日はそこから話を進めて、come や off のイメージについて語ってみたいと思います。

何やら全般的にエッチな話になっておるのですが、まぁ、フレンズ解説をする以上、あまり恥じらってばかりもいられないかなぁ、と思いまして。
結構、本人は「大真面目に」考察しておりますので、あまりエッチな部分にのみ注目しないで下さいね(笑)。

コメント欄でご指摘があったように、come off には「orgasm(性的興奮の頂点、オルガスム)に達する」という意味があります。
実は、研究社 新英和中辞典にも、英辞郎にも載っていました。
ですから、私も昨日の記事を投稿する時点で、そのことは頭の隅にあって、「そっち」かなぁ…と思いつつ、まぁ、そういうことも含めて「エッチがうまくいく」という何だか漠然とした表現に流してしまったようです。
英和辞典にはそういうエッチな意味が載っているのですが、英英辞典(Merriam-Webster Online Dictionary やロングマン現代英英辞典)の come off の項目には、そういうエッチ系の意味が何故か載っていないんですよ。
載っていたら、その英語の語義を使って説明したのですが、英英に載っていないので「これって本当のところはどうなんだろう?」と迷ったのかもしれませんねぇ。

「うまくいく」という語義は英英辞典にちゃんと載っていました。
ロングマン現代英英辞典では、
come off: (informal) to be successful
例) It was a good idea, but it didn't quite come off.
The performance on the first night came off pretty well.
(インフォーマルな[くだけた]表現) 成功すること
例) それは良い考えだったが、あまりうまくいかなかった[成功しなかった]。
第一夜の公演はかなりうまくいった[かなり成功した]。


ですから、I didn't come off well. は、「僕は成功しなかった。僕はうまくいかなかった。」ということで、それは「エッチがうまくいかなかった、相手を満足させてあげることができなかった。」ということを指しますよね。
それをもっと直接的でエッチな表現で言うとすると、「僕はイケなかった。イカなかった。」みたいな感じになるんでしょうか。
リチャードが thing という言葉をどう受け取ったのかは、未だによくわからないんですが、例えばリチャードが thing を「モノ」だと捉えて、「あなたにはモノがない、あなたについてるモノは役に立たない」とモニカが言ったかのようにわざと取って、「そんな風に言ったら、僕はうまくイカなかった、みたいに聞こえちゃうよ。」と訳すと、「成功する」と「orgasm に達する」というダブルミーニングの感じが出るかなぁ…と思います。(カタカナで書くと、やらしいですねぇ…笑)
このリチャードのセリフについては、
1.普通の「成功する」という言葉を使っているように見せて、そういうエッチな意味を匂わせている、
のか、
2.最初からダイレクトにエッチな意味で使っている
のか、その辺りがよくわかりません。
ネイティブはこのセリフを聞いた時、即座にエッチな意味が思い浮かぶのかもしれませんが(笑)。

実際のところ、come という動詞だけで、そういう「orgasm に達する、”いく”」という意味があります。
性的な俗語ではありますが、研究社の辞書にも、英辞郎にも載っています。
Merriam-Webster Online Dictionary にも、
come: often vulgar : to experience orgasm
「(しばしば卑語として) orgasm を経験[体験]する」

ロングマン現代英英辞典にも、
come: SEX (informal) to have an orgasm
「(インフォーマル) orgasm を持つ[になる]こと」

と書いてあります。

それを現在進行形にした、"I'm coming!" というフレーズは、そういう場面での決まり文句みたいなもんですね(笑)。
"I'm coming!" 自体は普通のフレーズで、例えば誰かに呼ばれた時に、「はいはーい、今行きまーす!」という時にも使うので、これを使うと即エッチな意味になるわけではないのですが、エッチなシーンでは、「いく」という意味になるということです。

"I'm coming!" と誰かが言っているエッチなシーンを、私は実際に見たことはないんですが(笑)、私がそのフレーズを知ったのは、明石家さんまさんが司会の「恋のから騒ぎ」の外国人妻スペシャルでした。
ある奥さんが、日本人男性がそういう状況で「いく」と言うのを聞いて、「行く、ってどこに? ってキョロキョロしちゃった。」と言っていて、他の外国人妻も「そうそう、あれは変よねぇ…」みたいな顔で頷いていたんですよ。
(みんな思い当たる節がある、とはっきり言うのが、あの番組のすごいところですね…私はこういう話題になった時は、うつむいて恥ずかしそうにするタイプなんですが…ほんとだよ…笑)
さんちゃん(さんまさん)も、英語では come を使うのを知っていたらしくて(笑)、「そう言えば英語では go とは言わへんもんなぁ…」みたいなフォローを入れていたと思います。(正確に覚えてるわけではないので、間違ってるところがあるかもしれませんが)

フレンズ1-9その1 で触れたことがあるのですが、そもそも、「come=来る、go=行く」と訳して覚えることが間違いなんですよね。
そこにも書きましたが、
come は、"話者がイメージしている場所、話題の中心となる場所"に向かう、近づく
go は、イメージしている所とは、別の場所に行く

ということになります。
基本的な意味は、come = to move toward something 「何かのある方向へ移動する」ことで、そこから come = to reach a particular level or place 「特定のレベルや場所に達する」という意味になるわけですね。

その外国人妻さんも、「日本語の「行く」は、英語では go」というイメージが強かったんでしょう。
ですから、もし日本語の「いく」を go だと解釈してしまうと、今している行為から離れて別の「関係ない」場所に行ってしまう、という意味になってしまうから違和感を感じたんだと思います。
彼女の頭の中では、「いく」→ "I'm going." →「僕はここを離れるよ。」みたいな感じに聞こえて、聞いた方は「離れる、って、今のこの行為をあなたは楽しんでいないの?」みたいに相手を問い詰めたくなるんでしょうか?(笑)

come だと「イメージしている場所、話題の中心となる場所に近づく」わけですから、エッチの行為の最終目的地にもうすぐたどり着く、という意味で適切なんだと思います。

ちょっと日本語の方を見てみましょう。
日本語の「行く、来る」というのは、あくまでも「話者のいる場所が起点」になっているので、自分の今の状態からどこかへ移動する場合は全て「行く」になってしまいますよね。

広辞苑で「いく(行く)」を調べると、「ゆく」に同じ、とあります。
「ゆく(行く)」の語義でそれらしいものをいくつか挙げてみます。
ゆく(行く)
1.現在いる地点から出発して向うの方へ進行・移動する。
イ.前方へ向かって進む、離れ去る
ハ.目的の所に到達する。とどく。
7.心が満たされる。
8.物事がはかどる。進展する。

上の「到達する」のような意味がきっと、エッチな「いく」のニュアンスなんでしょうね。
そしてそれは英語の come に通じる部分がありますから、日本語の「いく」には come の意味も含まれている、だから、「行く=go」という一対一対応で覚えてはいけない、ということです。

come は「来る」だと思い込んでいる場合でも、I'm coming. を「私は来る。来ようとしている。来ている。」と訳すのはやっぱり変な感じがしますよね。(自分が今いる場所に、自分が「来る」というのはおかしいですから。)
「私が来る」んじゃなくて、「私が(どこかイメージされた場所に)行く、到達する」という訳が正しいのです。
ですから、「come=行く」となり、"I'm coming!" は、日本語では「今からそちらに行く」または「(エッチで)いく」という意味になるのですね。
アメリカ人と日本人の頭の中にあるイメージは全く同じなんだ、ということだと思います。

今回のセリフは come off と off がついていますよね。
その off についても語りたいと思います。
off の基本的な意味は「離れて、分離して」です。
また、研究社 新英和中辞典には、以下のような意味も載っています。
off=[動作の完了・中止などを表わして] …してしまう、すっかり、終わりまで
drink off 飲み尽くす
finish off 終えてしまう
I know them off by heart. それらをすっかりそらで覚えている。

動詞と結びつくことで、その動詞の行為を終了して、その動作から「離れる」感じなのかなぁ、と思うのですが…。
「はい、これで完了、おしまい。」みたいに、その動作と縁を切ってしまう感じでしょうか。

Merriam-Webster Online Dictionary には、
off: used as an intensifier
例) drink off a glass / finish it off
「強意語(intensifier)として使われる」
例)「グラスを飲み干す」「仕上げる、完了する」

この M-W の語義だと、off 自体には意味はなくて、off がついた動詞を強調する役割を果たしている、ということのようです。

come off の off は、例に挙げられた finish off の off にとても近いものを感じます。
finish だけでも「終える、完了する」という意味ですが、それにさらに off をつけることでその完了の度合いを強調しているのでしょうかね。
英辞郎の finish off を見てみると、
finish off
(句動-1)終える、終わる、おしまいになる、〜で終わりにする、(食べ物を)平らげる
(句動-2)(仕事を)仕上げる、片付ける、済ます、完成する、完了する、締めくくりをつける
(句動-3)やっつけてしまう、壊す、殺す、破壊する

という意味が載っているのですが、その「仕上げる」「締めくくりをつける」の「上げる」や「くくる」のような感覚が off なんでしょうかねぇ。
私の勝手なイメージとしては、オーケストラの指揮者がタクトを最後にパッと上で止めて曲がスパッと終わる、その「締め」の感覚、みたいなものをその off に感じるのですが…。

ですから、come だけでも「目的地に到達する」という意味があるけれど、それにさらに off を付けることで、到達するという行為を強調している、ということでしょう。
ですから、come off は「すっかり目的地に到達する」→「成功する」「(エッチで)いく」、come off well と well がつくと、その結果が「うまく」いったことをさらに強調する、ということでしょうね。

ここまで書いて気付きましたが、昨日、「エッチがうまくいく」というあいまいな表現で流したのは、come の話をすると、上に書いたようなディープな話をしないといけなくなるのを本能的に察したからでしょうか?(笑)。
自分で書いていても恥ずかしいので、あまりエッチな話の部分には反応しないでいただきたいのですが、私が上に書いたような come や go の感覚が、英語の感覚として合っているのかどうか、はとても気になります。
かと言って、こういう問題は、道行くネイティブに尋ねるわけにもいきませんしねぇ(笑)。
間違っていたら、ご遠慮なくご指摘下さいませ。

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posted by Rach at 12:22| Comment(4) | フレンズ シーズン2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ハロ!最後まで読んだぞ!(←自慢?)

やっぱRachさんはすごいや。ホントに脱帽です。

しかし、今回の解説とても「ハートで感じる」的考察ですごくわかりやすかったです。

そして、もう2006年が終わりますが今年はRachさんともお友だちになれて、かわいい声も聞けて満足の一年でした!

来年は、Rachさんに追いつけるように本気で(ホンマ?)やろうと思ってますので、またよろしくお願いします♪

このブログはお正月休みはあるのですか?w

とにかくよいお年をお迎えください!(ちょっと早いか・・ははは)

Posted by みりぃ at 2006年12月27日 19:31
みりぃさんへ
ハロ!最後まで読んで下さったなんて…よよよ…(感涙)。本当にありがとうございます。
いつも記事を投稿した後、自分の記事をスクロールしてみて、「何て長いんや…」と自分自身があきれておりますので(笑)。

今回の記事は、話題が話題だけに、反応がないことを承知で書いてみたのですが、以前から何となく気になっていたことを文章にできて、私自身は(はっきりとした確信は持てないながらも)とてもすっきりした気持ちでおります。私のブログの記事というのは、常にそうなのかもしれません。「解説する」と言っておきながら、自分の思考過程をさらけ出して、自分の弱点みたいなものをよりはっきり認識するために、だらだらと長く書いているんだろうなぁ、と。
そんな記事を「わかりやすい」と言っていただけるなんて、とても嬉しいです。(この記事にコメントを入れるのは、勇気が要りませんでしたか?…笑)

私も、みんなの憧れのみりぃさんとお友達になれてとても嬉しかったです! 私は実生活でもそうなんですが、なかなか自分から積極的に声を掛けられない人間なんですよねぇ。相手の方が自分のことをどう思ってくれているかがわからないと不安なのでしょうか。ですから、ブログのいろんな場所で遭遇していて、お互い認識しているとわかっていても、私から「はーい!」って気軽に声を掛けることができないタイプみたいです。それをみりぃさんがパッと握手の手を差し出して下さった、というのがとても嬉しかったんです、ホントに。

私がみりぃさんのところでコメントを入れると、こちらのブログへコメントを入れなくちゃ、といつも気にして下さっているようなんですが、そんなこと気にしないで下さいね。本当に読んでいただけるだけでとても嬉しいのです。何しろ私の記事は長いですから、例えば1週間読まなかったら、膨大な量がたまってしまうでしょ?(笑)。だから、ちょっと時間が出来た時に、面白そうなところだけ飛ばし読みして下さるだけでも嬉しい、と思うんです。毎回きっちり読んで下さらなくても、ふと「Rachはどうしてるかなぁ?」と思って下さって、たまに覗いてもらえるだけでいい、と言いますか。
こんな風にコメントをいただけると、もちろん嬉しいんですよ。嬉しいのは言うまでもないことなんですが、私はコメントを「たくさん」欲しい、という願望はあまりないみたいです。そんな風に書いてしまうと、コメントは要らないと言っているように聞こえたら困るんですが、そうではなくて、「コメントがないと寂しい、ということはない」という感じでしょうか。
解説型ブログだから、コメント書きにくいと思いますしね。私が読者の立場だったら、どうリアクションしたらいいのかわからないです(笑)。本当にコメントに関してはお気になさらず。あまり気にしていただくと、みりぃさんのところにコメントが入れにくくなってしまいます(笑)。

年末年始の休みについてですが(笑)、実は年末に家事都合で1日お休みする予定です。お正月は多分休みません。それぞれの実家には行くのですが、私たち夫婦は共に実家が大阪にあって日帰り圏内なので、お泊りの準備をする(してもらう)よりは、帰って来た方がラクでしてね(笑)。

来年も、みりぃさんのバイタリティとバランスの良さと人間的な大きさを見習って、私も本気で(笑)頑張りたいと思っていますので、こちらこそよろしくお願いいたします。
みりぃさんにとっては今年はきっと幸せな一年だったでしょうね。私もみりぃさんの心暖まるお話から、たくさんの幸せを分けていただきました。
よいお年をお迎え下さい。かっこいい息子さんにもよろしく!(笑)
Posted by Rach at 2006年12月28日 15:56
Rachさん
初めまして。大分前から拝見させていただいています。
私も英語はフレンズから学んで、今は通訳、翻訳の仕事をしていますので正に私にとってはバイブルです!
そしてこのRachさんのブログを見つけてからは、横着して調べて来なかったトリビアがたくさん学べてすっかりファンになりました(^^)

今更ながらこちらの件でコメントさせていただきますが、こちらのcome offは特にセクシュアルな意味はないですよ。
「〜という印象を与える」という熟語で、ここでは"come off well" なので、リチャードのセリフは「これを聞いた人の僕の印象は良くないな」となります。
thingの解釈はRachさんの言う通りで、モニカは「obsessive thing」のことを言っていて、リチャードはそれをちゃかして「男性のモノ」として"not come off well" と言っています。

このcome offはよく使われる表現なので、今更ながらコメントさせていただきました。シーズン8の最後のエピソードでも、病院でPhoebeがCliffという男性と知り合った際にこの表現を使っています。
You came off great! A lot better than I'm coming off right now.
Posted by friends my love at 2012年03月26日 13:37
friends my loveさんへ
コメントありがとうございます。
大分前から見て下さっているとのお言葉、とても嬉しいです。通訳、翻訳のお仕事をされている方にそう言っていただけると大変光栄です。ありがとうございます。

さて、come off についてのご意見ありがとうございます。
come off そのものにセクシュアルな意味はなく、モニカが言った thing を「男性のモノ」と捉えることで、そっちの話題に変えている、ということなのですね。come という単語が、よくそういうエッチ系の場面で使われる単語なので、考え過ぎてしまったようです(笑)。

貴重なご意見、ありがとうございました。
Posted by Rach at 2012年03月27日 18:23
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