2006年12月28日

フレンズ2-23その26+brown-noserの話

昨日の続きです。

ジョーイ: What're you talking about, everybody loves Joseph. (何言ってんだよ。みんなジョセフが大好きなのに。)
チャンドラー: I don't, I hate Joseph. Okay, I think he's a brown-nosing suck-up. (俺は大好きじゃないぞ。俺はジョセフが大嫌いだ。いいか、ジョセフはゴマすりのこびへつらい屋だ。)

brown-nose(brownnose) は「(人に)おべっかを使う、ゴマをする、こびへつらう」という動詞。
brown-noser(brownnoser)なら「ゴマすり、ご機嫌取り、おべっか使い、太鼓持ち」という人を表す名詞になります。

どうして「鼻が茶色」なのかと言うと、ここは英辞郎の説明をそのまま引用させていただくとしましょう。
brown-nose=(人)の尻にキスをして鼻にウンチがついて茶色になる、人の気に入るように振る舞う…
なんとも汚い話ですが(笑)、語源はそういうことなんですね。

Merriam-Webster Online Dictionary には語源について以下のように書いてあります。
Etymology(語源): from the implication that servility is equivalent to having one's nose in the anus of the person from whom advancement is sought
語源を訳すと、「ある人から出世(昇進)を求める(手に入れる)場合、その相手に対する卑屈さ(追従)が、相手の肛門に鼻を入れるのに相当するほど卑屈であること、を暗示することから」
うまく日本語に訳し切れてない上に何とも表現が露骨ですが(笑)、実際 anus 「肛門」という単語を使ってあるのでしょうがないですねぇ…。
フレンズ1-16その3 にも anus という単語は出てきたので、ここは開き直っておきましょう(笑)。
開き直りついでに、anus の形容詞形は anal です。
カタカナ読みすると日本語でもエッチ系でたまに聞く言葉になりますが(恥ずかしいのでここには書きませんが)、英語の発音は「エイヌル」という感じになります。

で、その Merriam-Webster Online Dictonary には brownnose の意味が以下のように書いてあります。
brownnose: to ingratiate oneself with : curry favor with
訳すと、「…に気に入られるようにする(取り入る)、人の機嫌を取る(へつらう)」なんですが、これは英英辞典として簡単な単語で語義を説明していると言うよりは、同じ意味の別の表現を紹介している、という感じですね。(だって、ingratiate の方が単語としては難しいような気がしません?…笑)
で、その次に挙げられている curry favor with という表現が気になりました。
これも brownnose と同じ「人の機嫌を取る」という意味なんですね。
この curry という単語はカレーライスのカレーと同じ綴り・発音なんですが、それとは別の単語です。
最初、私はカレーのことかと思って、もしかして、brown という「色つながり」? きったなーい!と思ったら、違ってたので良かったです。(度々汚い話でごめんなさい。)
curry は他動詞で、「(馬に)馬くし(currycomb)をかける、(馬を)くしで手入れする、(なめし革を)仕上げる」という意味。
curry favor with someone、または curry someone's favor で「ゴマをする」という意味になるらしいのですが、どうしてそういう意味になるのかいまいちよくわかりません。
favor には「好意、親切」「引き立て、愛顧、寵愛」「偏愛、えこひいき」などの意味がありますが、そういう「誰かの寵愛」が欲しくて、馬を手入れするように、せっせとその相手の favor を磨く、というようなニュアンスなのでしょうか?

ところで、上にも書いたように「お尻にキスをする」というのが brownnose の語源なのですが、まさにそのままの表現もあります。
kiss someone's ass は「人にへつらう、ご機嫌を取る」で、まさに brownnose と同じ意味です。
多分、こちらの方が表現としては先に存在していて、その後、その連想からさらに下品な(?) brownnose という表現が出てきたのだと思いますが。

kiss someone's ass で思い出したシーンがあります。
映画「インデペンデンス・デイ」で、NASAのスペースシャトルの乗組員になりたいヒラー大尉(ウィル・スミス)の元に、NASAからの採用に関する通知の封筒が届きます。
それを自分で開けるのが怖いヒラーは、友人のジミー(ハリー・コニック・ジュニア)に読んでもらうのですが…。
ジミー: "We regret to inform you that despite your excellent record of service..." I'm sorry, man. You know what you need to do? You need to, like, kiss some serious booty to get ahead in this world. That's what I'm trying to tell you. See, I like the one-knee approach, because it puts the booty, like, right in front of the lip... ([手紙を読む]「誠に遺憾ですが、貴殿の優秀な軍歴にもかかわらず…」 残念だったな。お前に何が必要かわかるか? この世界で出世するには誰かの(偉い人の?)ケツにキスしないといけないんだ。俺がこれからそれを教えてやるよ。ほら、片膝アプローチがお勧めだぞ。このアプローチだとその相手のケツが唇の真ん前に来るからさ…。)

ここでは ass ではなくて booty という単語が使われていますが、これも「尻」という意味です。
実際にジミーは片膝をついてみせるのですが、この「片膝をつく」というのは、男性が女性にプロポーズする時のお決まりのポーズですよね?
そういうポーズを使って媚びろと言っているのが面白いのだと思います。

he's a brown-nosing suck-up. の suck-up という名詞も「ゴマすり、ご機嫌取り」という意味で、brown-noser と同じ意味になります。
suck up to だと「(人)におべっかを使う、(人)にゴマをする、(人)の機嫌を取る、(人)に取り入る」という意味になります。
Merriam-Webster Online Dictionary では、
suck-up: a person who is ingratiating or fawning
例) a suck-up to the teacher

訳は、「ingratiate(…に取り入る)、または fawn(へつらう)人」
例は、「先生にゴマをする奴」
ロングマン現代英英辞典では、
suck up (phrasal verb)
to say or do a lot of nice things in order to make someone like you or to get what you want - used to show disapproval
suck up to としての例) He's always sucking up to the boss.

訳は、「誰かが自分を好きになるように、または欲しいものを得るために良いことをたくさん言う、またはすること。非難を示すのに使われる。」
例は、「彼はいつも上司にゴマをすってばかりいる。」
チャンドラーのセリフの、he's a brown-nosing suck-up. は、「brown-nose している suck-up」ですから、「ゴマをすっているゴマすり屋」という意味を、同じような意味の違った二つの単語を使って、強調しているわけですね。
かなりひどい非難の言葉だということになります。

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posted by Rach at 18:39| Comment(2) | フレンズ シーズン2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
curry favor withで思い出したのですがバック・トゥ・ザ・フューチャーのラストのシーンで乱暴者のビフとジョージ・マクフライの立場が入れ変わってビフが車にワックスがけをしてるシーンがありますが,
ゴマをするの象徴的な行為のように思います。昔は車ではなく馬を綺麗にするところから来ているのでしょね。
suck-upはプライドや意地を飲み込んで自分をころすというニュアンスですね。私は武士の一分を通します(笑)
Posted by catch at 2006年12月28日 22:25
catchさんへ
そういえば、ビフがワックスがけしているシーン、ありましたね。確かにビフはジョージに対してヘコヘコしていました。そんな風に愛用の馬とか車とかをせっせと手入れする、というのは「ゴマをする」という行為を典型的に表している気がします。非常にわかりやすい説明をありがとうございました。

suck-up と言えば、
フレンズ2-19その7
http://sitcom-friends-eng.seesaa.net/article/388470513.html
で、suck it up というフレーズが出てきました。

ロス: So suck it up, man. It's a job. It's money. (だから、愚痴は飲み込めよ。(端役でも)仕事なんだよ。お金になるんだよ。)

というセリフがありました。この suck it up は「愚痴を言わない、ごちゃごちゃ言わない」という意味に訳していましたが、その「ゴマすり」の suck-up も基本的には同じ概念なんでしょうね。
私はその過去記事で、
「ややこしいことは、全部自分の心の中にしまいこんでしまって見ないことにしろよ」という感じでしょうか。

と書いているのですが、そんな風に「飲み込む」ことで「自分を殺して、自分以外のものに追従する」というニュアンスが出るのでしょうね。日本語の「飲み込む」にも同様の感覚があるのが面白いなぁ、と思います。

「武士の一分」、映画は見てないのですが、その言葉の意味は、
Yahoo!映画:武士の一分(いちぶん)
http://moviessearch.yahoo.co.jp/detail/tymv/id324298/
によりますと(笑)、

「武士の一分」とは、侍が命をかけて守らなければならない名誉や面目の意味。

だそうです。
確かに人間には守らなければならないもの、譲りたくないもの、というのがありますよね。私は必要以上に人と争うことはしたくないタイプなんですが、やっぱり譲れないところは譲りたくはない、とも思います。(私が頑固なのは、このブログの読者の方はご存知だと思いますが…笑)。
catchさんも、武士の一分を通し続けて下さいね(笑)。
Posted by Rach at 2006年12月29日 19:28
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