2007年01月12日

フレンズ1-19その7 ご質問1

昨日に引き続き、M-1グランプリ2006(今さらですが) のコメント欄 でいただいたご質問から、記事を書いてみました。

今日は、フレンズ1-19 のエピソードから。

(質問)何故、Unclench. が「怒るなよ。」になるのか?
ロスはおサルのマルセルくんを肩に乗せています。
ロスは明日、用事があって出掛けるので、あらかじめ、マルセルの世話をレイチェルに頼んでいたようです。
レイチェル: And I will see you tomorrow. ([マルセルに]明日、会いましょうね。)
ロス: That's right. You're gonna spend tomorrow at Aunt Rachel's. aren't you? Huh? (そうだよ。マルセルは明日、レイチェルおばさんのところで過ごすんだよねー?)
モニカ: Huh, hang on, hang on. Does Aunt Monica get a say in this? (ちょっと待ってよ。モニカおばさんは、この件に関して発言権はないのかしら?)
ロス: Please, Aunt Monica, Please? Oh, unclench. You are not even gonna be here. (お願い、モニカおばさん、お願い! [と甘えた口調でお願いしてみるが効果がないので] あぁ、怒るなよ。モニカは(明日)ここにはいないだろ。)

at Aunt Rachel's 「レイチェルおばさんのところ(=at Aunt Rachel's place)」で過ごす、と言っていますが、それはこの部屋のことで、今はルームシェアしているとは言え、元々はモニカの部屋なわけです。
モニカはきれい好きだから動物は苦手なんですよね。
モニカは、私もこの部屋の住人なのに、その私に断りもなくそんなこと勝手に決めちゃって…とロスたちを非難しているわけです。

unclench が、DVDの日本語では「怒るなよ。」と訳されていたのですが、それは何故?というご質問でした。

研究社 新英和中辞典では、
unclench=(こぶし・くいしばった歯などを)解く、ゆるめる
とあります。
また、その反対語の clench は、
clench=(歯を)くいしばる、(口を)固く結ぶ、(こぶしを)固める
ですので、どの意味を見ても、非常に力が入っているさまが伺えますよね。
緩んでくつろいでいるのとは反対の状態なわけです。
上の辞書の語義には「怒り」という表現は書いてありませんが、「ぐっと力が入っている」ことから、「何かに対して怒っている」ことが連想されますよね。

英辞郎には、
I clenched my teeth in anger. 私は怒りで歯を食いしばった。
clench one's fist in anger 怒ってこぶしを固める(両方のこぶしの場合は fists)

という表現も載っていますので、そういう怒っている時に使われる動詞なんですね。
ですから、unclench は、そういう動詞 clench に 接頭語 un- がついてその「逆」の動作を表わすわけですから、訳してみると、「そんな風に怒ってこぶしを握り締めるのはやめなよ、歯をくいしばるのをやめなよ、そんなにギリギリと歯ぎしりして怒るなよ。」みたいな感じになるんでしょうかね?

ロングマン現代英英辞典には、
clench の項目に、次のように書いてあります。
clench your fists/teeth/jaw etc: to hold your hands, teeth etc together tightly, usually because you feel angry or determined
つまり、「拳・歯・顎(あご)を clench する=手や歯などを固くつなぎ合わせること、たいていは怒りを感じている、または決意を固めている、という理由で」
ここにははっきりと angry という単語が出ていますね。

…と、ここまではただ辞書の語義を引用しているだけなので、これだけなら、わざわざ記事にはしなかったのですが…。
フレンズの過去のエピソードで、clench がそういう「怒る」というニュアンスで使われていたことがあったので、それを今回、合わせて紹介したいと思います。(過去記事の解説では、何故か飛ばしていたので…)

フレンズ1-6 のシーン。
ジョーイが、アル・パチーノのお尻の代役で、シャワーを浴びているところです。
ネットスクリプトのト書きも日本語訳しておきます。

(JOEY STARTS TO SHOWER WITH A GRIM, DETERMINED LOOK ON HIS FACE)
ジョーイはいかめしい断固とした表情で、シャワーを浴び始める。
監督: And cut. Hey, Butt Guy, what the hell are you doing? (カット。おい、尻役、何をやってるんだ?)
ジョーイ: Well, I'm- I'm showering. (えーっと、僕はシャワーを浴びています。)
監督: No, that was clenching. (違う、その尻が clench してるんだよ。)
ジョーイ: Oh. Well, the way I see it, the guy's upset here, y'know? I mean, his wife's dead, his brother's missing... I think his butt would be angry here. (あぁ、僕が思うに、その男はここでは憤慨しているわけですよね? つまり、妻が死んで、兄が行方不明で…。僕は、ここ[このシーン]で、彼の尻は怒ってるだろうと思うんです。)
監督: I think his butt would like to get this shot before lunch. (私が思うに、彼の尻は、昼前にこのショットを撮影してしまいたいと思ってるよ。)

このシーンでは、尻の代役なわけですから、お尻しかカメラに映ってないわけですよね。
ですから、「お前は何をやってるんだ?」と監督が言っているのは、ジョーイという人物の行動がどうこうではなくて、その映っているお尻の様子(?)に問題がある、ということです。
ですから、That was clenching. の that は your butt (または the guy's butt)であって、それが「固くしまっている」ことを指摘しているのですが、それは「緊張している」とか「力が入っている」ということでしょうね。
それに対してのジョーイの弁解が「彼の尻は怒っている」(笑)。
やはり尻が clench していると言われると、「あぁ、それは怒っているんですよ。」という連想が瞬時に働くわけですね。
clench という単語はそんな風に「怒り」と強く結びついた動詞だ、ということでしょう。

今回はたった一つの動詞を説明しただけでしたが、フレンズなどのドラマで英語を学んでいると、このように同じ動詞が何度も出てくることがありますよね。
前にどっかで出てきたよなぁ…と思い出して、その過去のセリフを再度見直してみることで、その単語に対する理解がより深まる、ということもよくあります。
私が、「過去記事でも(そういうフレーズが)出てきました」といつもしつこく書いているのは、単語というものは、できるだけたくさんの例文(セリフ)と共にそのニュアンスを覚えることが大切だ、と思っているから、なんですよ。

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posted by Rach at 09:27| Comment(10) | フレンズ シーズン1 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちわ。
今年もどうぞよろしくお願い致します。

ジョーイはお尻しか写らなくてもいろいろ考えて一生懸命演技したのに、認められなくてかわいそう。今回ばかりは(この部分を読む限り)まともなことを言っていそうなのですが。

それにしても、手タレや脚タレは聞いたことあるけれど、尻タレントというのもあるのですね。よほど形がいいのかな、、、、。
Posted by YN at 2007年01月12日 20:32
久しぶりです。
頑張ってますねーすごいです!尊敬!

実は今までフレンズのエピソード9しか持ってなかったんですが、
やっとエピソード1が手に入ったので、
こちらのサイトを有効利用させていただきます笑

実はまだ使ってなかったw
でもブログランキングは押してましたよ笑

今年もフレンズで頑張りたいと思います!

今、大学3年なんですけど、
もしかしたら、2年ほど休学して
1年間、バイトで金を貯めて
1年間ほど留学に行くかもしれないです。

今はすっごくそのことで悩んでます。。
就職への影響とかありますからねー。
親にも迷惑かけますし・・・

まぁどっちにしろ、英語は必要だし頑張りたいと思ってますから、
頑張りますよー!

ではでは、お邪魔しました。
これからも頑張ってくださいー!
Posted by もんち at 2007年01月13日 02:27
YNさんへ
こちらこそ、今年もどうぞよろしくお願い致します。

上で取り上げた 1-6 では、お尻役とはいえ、憧れのアル・パチーノの代役だということで、本人はとても張り切っていました。緊張しているのをごまかそうと、彼なりの理屈を一生懸命考えていますよねぇ。でも、「普通」に演じれば良かったのに、妙に力が入りすぎて緊張感がみなぎったお尻になってしまったので(笑)、監督に降ろされてしまったみたいですね。「力が入ってるお尻」ってどんなんやねん!とつっこみたくなるところですが…(笑)。
結局、そんな風に屁理屈をこねたために、監督の機嫌を損ねてしまった、ということなんでしょう。

過去記事、フレンズ1-6その3
http://sitcom-friends-eng.seesaa.net/article/388470035.html
で、そういう代役の話をちょこっと書いていますが、そう言えば、新スタートレック(TNG)のデータ少佐(アンドロイド)も、顔や手が白いので、「手」だけの代役というのがいました。DVDの映像特典で、代役の人が「手」を演じている(タッチパネルをたたく)シーンを見たことがある気がします。
どうせ、データ役のブレント・スパイナーは、役を演じる時に、顔も手も白く塗っているわけだから(笑)、わざわざ手の代役を用意するほうが面倒くさいようにも思うのですが、やっぱりレギュラーは撮影による拘束時間ができるだけ少なくなるように気をつけているんでしょうかねぇ?
「俺はデータ少佐の”手”をやってたんだぜ!」と言うのも、ある意味、ちょっとした自慢でしょうが…(笑)。
お尻とかヌードの場合は、代役を使うのはしょうがないと思いますけどね。

ところで、アル・パチーノとジョーイでは年齢が違いすぎて、お尻も全然違うような気がするんですが…若くて締まったお尻がいい、ってことでしょうか?(私はあまりお尻に興味はないので、どういうのが良いお尻なのかよくわかんないんですけど…ははは)
Posted by Rach at 2007年01月13日 14:40
もんちさんへ
お久しぶりです! お元気ですか?
「すごい」だなんて、「尊敬」だなんて…恥ずかしいです(笑)。でも、いくつになっても褒められると嬉しいです。ありがとうございます。
ブログランキングも押して下さっていたんですね、重ね重ね、ありがとうございます。

私のサイトがどれほど役に立つかはわかりませんが、使っていただけると嬉しいです。フレンズ学習、頑張って下さいね。

大学3年生だと、進路のことで悩む時期ですよねぇ…。
留学を考えておられるんですね。ご自分で1年間バイトをしてお金を貯めてから…というのが立派ですね。確かに就職するのが遅くなるかもしれませんけれど、ご両親に迷惑をかけるかもしれない…ということを、もんちさんが意識しておられて、その上での決断だったら、親御さんも、もんちさんの夢を応援して下さるのではないでしょうか?

私は留学したことがないのでわからないのですが、やはり若くて何でも吸収できる敏感で繊細な時期に、海外で学ぶことの意義は大きいと思います。私自身も、当時はそんなこと夢にも思わなかったのですが、大学時代、もしくは卒業後に留学していたら、また違った人生になっていたかも…と思うことはよくあります。

ご自分の人生ですから、いろんな方と相談されて、ゆっくり進路を決めて下さいね。いずれにしても、英語を学ぶことは決して無駄にはならないと思いますし。

私もこのブログで頑張りますので、もんちさんも頑張って下さいね。応援しています!
Posted by Rach at 2007年01月13日 14:43
>(私はあまりお尻に興味はないので、どういうのが良いお尻なのかよくわかんないんですけど…ははは)

変な所に反応しますが、常々、フレンズだけでなくアリーマイラブ等でも、海外の女性は何故そんなに「おしり」の話をよくするのか不思議でした。日本人で、「おしり」を男性の評価対象とするのを聞いたことがないような・・・
今後、日本人女性も、そうなって行くんかな? それか、私らが、おぼこいんかな?(笑)
Posted by Mayumi.K at 2007年01月13日 21:19
Mayumi.Kさんへ
いやぁ、全く「変な所に反応」していただいて、ありがとうございます(笑)。そうそう、海外ドラマの女性はお尻をよく話題にしてますよね。まぁ、異性のどこにセクシーさを感じるか、というのは個人差が大きいんでしょうけど、締まった身体、というならともかく、どうして「お尻」なのか?と思ってしまうんですよ。
そもそも、締まった身体、ちゅーのにも、あまり私はそそられなくて(笑)、イケメンの俳優さんが上半身裸(セミヌード)のポスターになってたりしても、「キャー! Sexyだわ〜!」とかって反応したりしないです。
前にもどっかで書いたことあるけど、B'zの稲葉さんのことも、上半身裸で短パンでステージを駆け回ってるよりも、スーツ姿にネクタイの方が素敵だわ!と思うようなタイプですからね、私は。
もしくは、ちょっとネクタイをゆるめて、スーツを着崩したりされると、私はそういうのに弱いので…(←何を説明してるんだろう?)
まぁ、まだまだ私もおぼこいんかもしれんけどねぇ。ちなみに、「おぼこい」(=幼い、子供っぽい)って関西弁やねぇ?
すれっからし(擦れ枯らし)って言われるよりは、ずっとえぇけども(爆)。
Posted by Rach at 2007年01月14日 07:57
>イケメンの俳優さんが上半身裸(セミヌード)のポスターになってたりしても、「キャー! Sexyだわ〜!」とかって反応したりしないです。
わたくしも、同感です。まあ、室伏広治さんのようながっちりが好みですが、別にそれを見てどうこうはありません。わたくしがセクシーさを感じるのは「指」です。
ちなみに、わたくしの場合、” make your toes curl” に関しては・・・(笑) もお、ええっちゅうねん。(笑)  ここ数日の記事を読んでいると、Rachさんは何かを超越したようですわ〜。(爆)

「おぼこい&すれっからし」がおもしろいなと思い少々調べてみると(笑)、
広辞苑には「おぼこ」Aういういしい娘、きむすめ。
とありますので、どうやら私達(すくなくとも私は)は違うようで。(笑)
英辞郎には「おぼこ娘」green girl(俗語)
とありますが、
14日にRachさんが紹介下さっている、Urban Dictionaryには、”green girl” はなく、”green banana” で、An attractive girl under the legal age of consent. Tempting, but just not ready. とあります。

いずれにせよ、英語には性的関連の表現が多いみたいやなぁ。
Posted by Mayumi.K at 2007年01月14日 22:12
まぁ! まゆみさんは、室伏選手のようながっちり体型がお好みなのですか?!
私はだいたい昔から、色白で眼鏡の似合う優男(やさおとこ)タイプが好きなんですよ。うちのダンナさんも、”敢えて”カテゴリー分けすると、そういうタイプに分類される…と妻である私は思っている(笑)。
もちろん、がっしりした方を見ると、「男らしさ」を感じて、素敵っ!と思ってドキドキするのですが、まぁ、トキメいてドキドキしてるというよりは、あまり今までご縁がなかったタイプなので、そういう人を目の前にすると緊張するのかもしれません。
で、「指」にセクシーさを感じるんですね? 私は特にどの部位に思い入れがある、ということはないなぁ…。(今、ダンナさんの指がどんなんだったか、思い出せない…笑)

「きむすめ」ですかぁ…。もうあの初々しい頃には戻れませんな(爆)。
green girl も green banana も初耳です。特にその green banana に関しては、「ある年齢には達していないけれども魅力的」ということで、なかなか興味深い表現だと思います。
確かに、green にはそういう「(果物が)熟していない」「(人が)未熟な、うぶな、青二才の」という意味がありますよね。
私は green というと、green with envy 「…をひどくねたんで」というイディオムをすぐに思い出してしまうのですが…。

ここ数日の記事、何かふっきれたものを感じます?(笑)。フレンズを解説する以上、どうせどこかでこんな話をすることになるだろうし、書こうと思った時に書いておいた方が後々、楽かなぁ、と思ったんですよね。
性的関連の表現を深く追求してみると、感情面や感覚面でなるほどなぁ、と納得できる部分が結構あるので、取り上げて調べるのは楽しいですね。
そう、あくまでストイックに英語の学習のためにやっていることなのだっ!(笑)
Posted by Rach at 2007年01月15日 09:56
unclench ですが、私のDVDの字幕には「怒るな」とはないんですね。clench はジョーイのお尻の件でもわかるようにぎゅっと力をいれてた緊張状態ですよね、なのでunclenchは逆にぎゅっと握っていた手のひらを開く、力を抜く、リラックスするという感じで、「怒るなよ」よりも「落ち着けよ」とかのほうがしっくりくる訳だと思います。「怒るなよ」でも誤訳とは言えませんが、字幕にもふっと力を抜いて、という感じが欲しいところです。
Posted by ぴろろ at 2007年06月28日 02:49
ぴろろさんへ
コメントありがとうございます。
clench は「力を入れる」感じなので、unclench は「力を抜く」感じになるのですね。「怒るなよ」というよりも「そんなにギリギリするなよ、ギリギリと力を入れるなよ」みたいな感じかなぁとも思います。「そんなに興奮するな」「そんなに熱くなるな」と、つっかかってくる相手に対して、それを諌めているのでしょうね。
Posted by Rach at 2007年06月28日 12:05
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