ジャニス: So, I hear... you hate me! (それで、聞いたわよ…あなたは私を嫌ってる!)
ジョーイ: I, ah, I never said hate. I was very careful about that. (俺は「嫌ってる」なんて言ってないよ。そのことに関しては、すごく気をつけていたからね。)
ジャニス: A little birdie told me something about you wanting to rip your arm off and throw it at me. (噂で聞いたんだけど、ジョーイが自分の腕を引きちぎってそれを私に投げたい、とか何とか。)
ジョーイ: And you got a 'hate' from that? You're taking a big leap there. (それで、その言葉を hate って意味に捉えたの? かなり飛躍が過ぎるんじゃない?)
I was very careful about that. の that は「嫌いだと言うこと」を指しているようですね。
hate というのは結構キツい言葉なので、「hate という言葉だけは使わないように、言葉を慎重に選んでたんだから、hate って言葉を俺が言ったはずはない。」とジョーイは言いたいようなんですが…。
それって、hate していると認めているのと同じだってば(笑)。
フレンズ1-13その5 では、フィービーの恋人の精神科医のロジャーをフレンズたちが嫌っていて、"I hate that guy!" とみんな怒っていたのですが、最後に恋人であるはずのフィービーまでもが "I hate that guy!" と言うことになった、というオチでしたよね。
研究社 新英和中辞典には、
hate=(…を)憎む、ひどく嫌う、嫌悪する (dislike, do not like よりも感情的に強い意味をもつ、 hate は敵意・悪意を含んで強く嫌悪する)
と書いてあります。
非常に感情的な言葉なんですね。
hate という言葉がキツい、という話で私がいつも思い出すのは、アリー my Love のシーズン3第21話「恋に歌えば」(原題:Ally McBeal: The Musical, Almost)です。
ちなみにこれはシーズン3の最終話で、原題が The Musical, Almost 「ほとんどミュージカル」となっているのは、このエピソードで、メンバーたちがやたらと歌いまくるんですよねぇ。
シーズン最後のお祭り、という感じなのでしょうか。
いろんな意味で異色のエピソードでした。
たくさんのクライアントのファイルを持って事務所を辞めたネルと話し合おうとするリチャード。
いやがるジョンを何とか説得しようとするのですが、
ジョン: I hate her! (僕は彼女を憎んでる!)
リチャード: You know as long as I've known you, I don't think I've ever heard you use that word "hate." I never thought you even had the capacity for, for hate. (俺がお前と知り合ってからずっと、お前が「憎む」って言葉を使うのを聞いたことはなかったと思うけど。お前に「人を憎む」能力があるとさえ思ってなかった。)
ジョン: Well, then you were wrong, now, weren't you? (それじゃあ、君は間違ってた[見込み違いをしていた]ってことだね。)
リチャード: You know, prior to her leaving, you were walking around, you were saying some pretty awful things to her, about her. (彼女が事務所を出て行く前、お前もあちこちで、いろんなかなりひどいことを彼女に言ったし、彼女に関するひどいことも言いふらしてただろ。)
ジョン: She dumped me while I was wedged in an elevator. In public. In front of the whole office. (ネルは僕がエレベーターに挟まっている時に、僕をふったんだぞ。公衆の面前で、事務所のみんなが見てる前で。)
アリーを見たことある方はご存知だと思うのですが、ジョンはとても優しい人で、確かに hate という言葉の似合わない人です。
そのジョンが hate という言葉を使ったことから、ネルにひどいふられ方をしたこと、ネルが自分たちを騙して事務所を出て行ったことなどを、どれほど許せないと思っているかがわかるわけです。
birdie は小児語で「鳥さん、小鳥さん」。
A little bird told me. は「ある人から聞いた、そういう噂を聞いた、風の便りに聞いた、小耳にはさんだ」という意味。
話の出所を隠すために誰かさんを a little birdie 「ちっちゃな鳥さん」と表現しているのですね。
この場合の話の出所は間違いなくチャンドラーですが(笑)、それをわざとそんな風にイヤミに表現しているだけです。
And you got a 'hate' from that? は「 that(腕を引きちぎって…という一連のフレーズ)から hate という言葉をゲットしたの?」という感じで、その言葉に「嫌っている」ニュアンスを嗅ぎ取ったのか?、その言葉を「嫌いだ」という意味で受け取ったのか?ということです。
You're taking a big leap there. の leap は「跳ぶこと、跳躍」。
jump と似た言葉ですが、英辞郎によると、
jump では跳躍の「動作」に、leap では跳躍による「移動」に重点が置かれる。
と書いてあります。
日本語でも「論理の飛躍」という言葉がありますが、これは英語にすると、a leap of logic, a logical leap, a jump of logic などになるようです。
ロングマン現代英英辞典には、名詞 leap の項目に、a leap of the imagination についての説明があります。
a leap of (the) imagination (an imaginative leap): a mental process that is needed to understand something difficult or see the connection between two very different ideas
つまり「想像(力)の飛躍:何か難しいことを理解するため、または二つの非常に違った考えのつながりを理解するために必要な心理過程」
ここでのジョーイの言う leap も同じような感じで、「腕がうんぬんの話から、嫌いだという言葉の間にはかなりの隔たりがあるのに、ジャニスは思いっきり論理や想像力を飛躍させて、その二つの無関係なことを結び付けようとしているんだよ。」と言いたいのです。
が、誰が聞いてもジョーイのセリフは、ジャニスを嫌っているようにしか聞こえませんよね。
少なくとも好きな相手に腕をちぎって投げつける、ってことはないだろう(笑)。
(Rach からのお願い)
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hateの使用回数を調べて下さって、ありがとうございました(笑)。
確かに dislike は聞きませんね。dislike というのは、like に dis- という「反対の動作を示す」接頭語がついたものなので、「非好き」みたいな感じですから(?)、言葉としてのインパクトが弱い気がします。like 「でない」ことを言いたいのなら、やはり not という言葉を使いたいだろうし、完全に like とは正反対の正直な気持ちを言いたい場合には、not like では生ぬるいので(笑)、hate を使うわけですね。
マイブログのBlog内検索を使って hate を調べたら、かなりの数の記事がヒットしました。まぁ、キツい言葉ではありますが、感情に正直な言葉なので、本音のやり取りの多いドラマではしょっちゅう出てくる単語なわけでしょう。
セリフのニュアンスとしては、「大嫌い!」みたいな感じが近いでしょうか。人に使う時は、本当にその相手をかなり嫌っているとか、相手に対してものすごく怒っている時に使いますね。
ジョーイはやっぱりチャンドラーの彼女に対して hate と言ってはいけない、という気持ちがあるようで、
フレンズ3-1その14
http://sitcom-friends-eng.seesaa.net/article/388470718.html
で
ジョーイ: Look, I don't hate Janice. (いいか、俺はジャニスを嫌いなんじゃない。)
と言っていました。(彼にとってはこれが精一杯なんでしょうね…笑)
人に使っている場合は、
フレンズ2-23その26+brown-noserの話
http://sitcom-friends-eng.seesaa.net/article/388470664.html
チャンドラー: I don't, I hate Joseph. Okay, I think he's a brown-nosing suck-up. (俺は大好きじゃないぞ。俺はジョセフが大嫌いだ。いいか、ジョセフはゴマすりのこびへつらい屋だ。)
フレンズ2-17その17
http://sitcom-friends-eng.seesaa.net/article/388470472.html
モニカ: I hated you when we were kids! (子供の頃、私はロスが嫌いだったわ。)
この後、hate という言葉が連続して出てくるのですが、言われたロスはショックを受けていましたよねぇ。
あとは、モニカやフィービーが、I hate this. 「こんなのってイヤよ。」と何かいやな出来事について愚痴る時に使ったりもしていますね。
A little bird told me. について。
Wiktionary 英語版: a little bird told me
に Etymology(語源)が載っていました。
それを私なりに訳しますと、
このフレーズの起源にはいくつか異論がある。ある人は、Ecclesiastes (旧約聖書の伝道の書)の10:20
"for a bird of the air shall carry the voice, and that which hath wings shall tell the matter."
「空の鳥は声を運ぶ(から)、羽根を持つ者は物事を伝える(から)」
がその起源だと言う。
一方、オランダの格言 "Er lif t'el baerd" 「私は誰かを裏切るべきだ」から来ている、と言うものもいる。
3番目の説は、ただ、伝書鳩や他のそういったメッセージを運ぶ鳥のことを言及しているのだ、というものである。
私の訳がいつもながらイマイチですが(笑)、そのオランダの格言の意味がよくわからない(爆)。3番目の説のように、鳥は空を自由に飛んで、動物や人に情報を伝えて回る、みたいなイメージは、童話などにもありますよね。
聖書から来ている、というのが多分正解でしょう(英語の語源を辿ると聖書…というのは多いですからね)。
研究社 新英和中辞典にも、
A little bird told me.
(口語) 風の便りに聞いた、小耳にはさんだ
(注)話の出所を隠す表現 (由来)聖書に「鳥はうわさを広めるから…」という言葉がある
と書いてありましたし。
中東にもそういう言葉があるのだとしたら、面白いですよね。よそから来た言葉の場合、そのイメージが自ら持っているイメージとものすごく異なっている言葉なら、人々の間に根付くことはないでしょうから、やはり人間の鳥に対するイメージには万国共通のものがあるのでしょうね。