2007年02月24日

遥か彼方の銀河系の話 フレンズ3-1その21

セントラルパークにレイチェルとモニカが入ってきます。
モニカ: So I went down to the post office, and it turns out it was those videos that I ordered for Richard about the Civil War. He loved the Civil War. (…それで、郵便局に行ったのよ、そしたら、それは、私がリチャードのために注文しておいた南北戦争のビデオだったのよ。リチャードは南北戦争が好きだったの。)
フィービー: Monica, do you want us to take you home? (モニカ、私たちが家まで送ろうか?)
モニカ: Uh, huh. Or maybe to a galaxy far, far away. (えぇ。[ロスの方を向いて](家か、)もしくは、遥か彼方の銀河系まで。)

civil war は「内戦、内乱」のことですが、the Civil War というふうに the がついて大文字になると、アメリカでは「(アメリカ)南北戦争」(1861〜1865年)を指します。
モニカはレイチェルと話をしながらセントラルパークに入ってきています。
その前にきっと、「モニカ宛に荷物が届いている、という連絡が郵便局からあって」などと話していたのでしょうね。
「それで」郵便局に行ったら、it turns out it was those videos 「その荷物というのは、ビデオだったということがわかる、判明する」という感じでしょうか。

モニカがこの一連の出来事を語るのに、他は全て過去形なのに、turn out だけ turns out と現在形になっています。
このような現在形の turns out は以前にも出てきたことがあります。
フレンズ2-23その25 で、
ジョーイ: Because at first, he thought it was Joseph. But after he asked Joseph about it, turns out it was you. (なぜなら、最初に彼はジョセフのせいだと思ったんだよ。でもジョセフにそのことを尋ねたら、それはチャンドラーのせいだってわかったんだ。)
というセリフがありました。
その記事のコメント欄で、「turns out だけ現在形なのが興味深い」というご意見をいただいて、私もなるほどぉ!と思ったので、そのコメント欄でいろいろと思いついたことを書いております。
未だによくわからないのですが(爆)、その現在形 turns out のニュアンスは、「今さっき判明した。そしてそれは今現在における事実である。」みたいな感じなのかなぁ、と私は考えています。
日本語では何かが判明するという事実があった場合に、それが1年前に判明した場合でも、今気付いたという場合でも、「…だとわかった。」と言いますよね。
英語の場合は、過去形と現在形の違いはもっと明確で、turned out と過去形にするとその行為があったのが過去である、という距離感が出てしまう気がします。
私は上の日本語訳で、「そしたら、それは、私がリチャードのために注文しておいた南北戦争のビデオだったのよ。」と訳してみましたが、それは、it was those videos that I ordered for Richard about the Civil War 「それは、私がリチャードのために注文しておいた南北戦争のビデオだった」ということ(過去の事実)が、it turns out 「たった今判明したの。そのことに今気付いたの。」みたいなニュアンスで考えてみたわけです。
過去の事実と、それが判明した現在の時点で、時制に差があることを明確にしているのかなぁ、と。
「それは南北戦争のビデオだった、ってわけよ。」と言ってもいいでしょうか。
このセリフは日本語にうまく訳すのが難しいですし、こういう状況を自分で説明する場合には、turned out と過去形を使ってしまいそうな気がするのですが…。

リチャードはきっと今でも南北戦争が好きでしょうから、loved ではなく、loves と現在形でもいいと思うのですが、もう別れてしまった人だから、「あの人は…が好きだったわ…」という感じで、思い出のように過去形で語っているのでしょうね。

モニカのセリフの a galaxy far, far away には大爆笑してしまいました。
スター・ウォーズの映画は、画面にスクロールされるテロップで始まりますが、その一番最初の決まり文句ですよね。
正式には、
A long time ago in a galaxy far, far away.... 「遠い昔、遥か彼方(かなた)の銀河系で…」
です。
このフレーズは、音声ではなくて、画面に文字として登場するので、日本語字幕版、吹替版を問わず目にするものですよね。
だから、日本人でもこのフレーズを見ると、スター・ウォーズだ!とすぐにわかる人が多いでしょうから、モニカの英語のセリフを聞いて笑えた人も結構多かったのではないでしょうか?
モニカがここでこのフレーズを使ったことで、ロスがレイア姫の金色のビキニに憧れている話がモニカにまでバレてしまっている、ということがわかります。
モニカもボロボロに泣いているにも関わらず、こんな捨て台詞を残して去っていくのがおかしいですね。

Wikipedia 英語版: Star Wars の Setting の項目に以下の記述があります。
(Wikipedia に書いてある内容はころころとよく変化するので(笑)、今日現在書いてある英語を以下に引用しておきます。)
The events of Star Wars take place in the fictional Star Wars galaxy. Each Star Wars film begins with an "opening crawl" of text that provides specific context for the events of the film. "A long time ago in a galaxy far, far away...." is the line that appears first in the opening crawl for each film and alludes to the classic fairy tale opening of, "Once upon a time, in a faraway land..." The opening crawl is the only instance that the Star Wars galaxy has been defined in relation to our real world.
それを訳しますと、
スター・ウォーズでの出来事は、フィクションのスターウォーズ銀河(Star Wars galaxy)で起こっている。スター・ウォーズのそれぞれの映画は、映画の出来事の特別な状況を提供する文章の opening crawl で始まる。"A long time ago in a galaxy far, far away...." 「遠い昔、遥か彼方(かなた)の銀河系で…」は、どの映画でも opening crawl の最初に登場する一節で、それは "Once upon a time, in a faraway land..." 「むかしむかし、遠い国で…」という古典のおとぎ話の出だしをさりげなくほのめかしている。その opening crawl は、スターウォーズ銀河と我々の現実世界との関連を示す唯一の例である。

あの文字が流れて遠くに小さくなって消えていく、例のテロップは、英語では、opening crawl というのですね。
crawl は「のろのろはう、腹ばいで進む、徐々に過ぎる」というような意味ですから、文字がゆっくり進んで流れていく様子を表しているわけでしょう。
Wikipedia 英語版: Star Wars opening crawl には、その文字の写真も載っています。

これがスター・ウォーズだから日本人でも笑えるんだよなぁ…としみじみ思うのは、例えば今回の話がスター・ウォーズネタではなくて、スタートレックネタであった場合に、どれだけの日本人が笑えるだろうか?と思うわけです。
まぁ、レイア姫のゴールド・ビキニに対抗できるような強烈なものがスタートレックには存在しないような気もするのですが(笑)。

この後は、スタートレックについて少しは知ってるよ、という方だけ読んで下さいね。
知らない方には、何のことやらさっぱりわからないオタク話ですから…(爆)。

例えば、新スタートレック(Star Trek The Next Generation [TNG])の導入のナレーションは、
Space, the final frontier. These are the voyages of the Starship Enterprise. Its continuing mission: To explore strange new worlds. To seek out new life and new civilizations. To boldly go where no one has gone before.
となっていて、日本語吹替版では以下のように訳されています。
「宇宙、そこは最後のフロンティア。これは宇宙戦艦エンタープライズ号が、新世代のクルーの下に、24世紀において任務を続行し、未知の世界を探索して、新しい生命と文明を求め、人類未踏の宇宙に勇敢に航海した物語である。」
スタートレック的な決まり文句というと、boldly go where no one has gone before の部分だと思うのですが、これを使って、"Take me where no one has gone before." とか、"Let's go boldly where no one has gone before." などとモニカが言ったとしたら、アメリカ人は結構な割合の人がスタートレックのパロディだとわかる、と(私は)思うのですが、日本人だとトレッキーしかわかりませんよねぇ。
それもスター・ウォーズと違って文字がテロップで出るわけじゃないから、英語音声で見たことある人しかわかんない(笑)。

さらにどーでもいい話ですが、一番最初のシリーズ「宇宙大作戦」(Star Trek The Original Series [TOS])では、no one ではなくて、no man になっていたそうです。
Wikipedia 英語版: Where no man has gone before の History in Star Trek という項目に以下のように書いてあります。
this new version replaced the word "man" with the gender-neutral "one".
訳すと、
新スタートレックでの新しい(ナレーションの)バージョンは、man という言葉を、gender-neutral (性的に中性な、性別による男女の区別のない) one という単語に置き換えた。
フレンズ2-21その14 で、PC(politically correct)「(表現・考え方・行動が)人種や性による差別や偏見がない」という概念について解説したのですが、この no man が no one になった、というのも、どうやらそういう流れに則ったもののようですね。

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posted by Rach at 09:10| Comment(10) | フレンズ シーズン3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
直接相手に対してThank youとかI'm sorry.を過去形にすると、反対の意味になりますが日本語との違いですね。 ありがとうございます、とありがとうございました。使う場面が微妙に違う気がします。We finally meet.(やっとお会いできましたね)、I win.(勝ったんだ。)これらは口語なので感嘆の言葉として現在形で使われますが、会ったとか、勝ったとかの瞬間にしかつかえません。turn outは予想外の瞬間の出来事を表していて過去形にすると予想していたことが【やはり】起こったというニュアンスが出ると思います。会話でよく出てくるknowとknewのニュアンスに似ているように思えます。「as it turns out」という言い方もありますがある映画で「なんと〜だ」と訳されてました。『それがなんと、私がリチャードのために注文しておいた南北戦争のビデオだったのよ。』とするとturn outのニュアンスが出ると思うのですが。 スター・ウォーズが静かにテロップで始まり劇的な音楽が流れて画面いっぱいにタイトル出るのは「七人の侍」の影響でしょうね。ジョージ・ルーカスが黒沢明の「隠し砦の三悪人」をヒントにスター・ウォーズつくったのは本人も言ってるように有名な話です。カット割りの時間もだいたい同じだそうです。キャリー・フィッシャーも50歳になるんだ。今回のエピソードの最後のシーンとは関係ないですけどね。
Posted by catch at 2007年02月24日 21:22
「宇宙大作戦」!
私の父がよく深夜に見てました。カーク船長。どうも「スタートレック」と言われてもピンと来ず、「エンタープライズ」の出てくるのは私の中では永遠に「宇宙大作戦」になりそうです。
Posted by おちか at 2007年02月25日 03:55
catchさんへ
turn out について、そして現在形について、詳しく説明して下さって本当に「ありがとうございます」。
日本語の場合は、「ありがとうございました」と過去形にしてしまうと、「もうこの件については決着しましたので、今後これについて話すことはないですね」みたいなニュアンスになってしまうような気がします。過去形だと、その感謝した出来事が遠くに感じられてしまうので、現在形の「ありがとうございます」の方が今まさに感謝している感じが出て良いかもしれませんね。(ということで、上のは、現在形で書いときました…笑)

Thank you. や I'm sorry. の過去形、というのに私はあまり遭遇したことがないのですが、「過去形にすると反対の意味になる」というのは、以前にもありましたね。I forgot という過去形は、「私は忘れていた」、つまり「今、思い出した」ということの裏返しである、とか。
例えば、I believed you. なら「私は信じていた(のに、あなたは裏切った)。」みたいな感じがしますよね。過去形を使うと、その後に、but... 「でも、今は…」と続きそうな予感があります。I thought も「私はこう思っていた(けど、実際は違った)」みたいなニュアンスが出ますよね。

turn out の場合は、私が上の記事で書いた「そしてそれは今現在における事実である。」というニュアンスは間違いみたいですね。
その現在形が、「予想外の瞬間の出来事を表す」というニュアンスであること、as it turns out が「なんと〜だ」と訳されるというのも、非常によくわかります。その事実がポンっと出てきた、現れた、という「瞬間」の turn out なわけですね。

ジョージ・ルーカスが黒澤明監督の大ファンだと言うのは有名ですよね。
C-3POとR2-D2が「隠し砦の三悪人」の登場人物をモデルにしている、という話は知っていましたが、
Wikipedia 日本語版: スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望
には、他にもいろんなトリビアが書いてあります。(三船敏郎に出演依頼があった、という話は私は知りませんでした…)
「七人の侍」、いいですよねぇ…私、デジタル・リマスター版というのを映画館に見に行ったことがあるんですよ。さすが名作、面白かったし、見ておいて良かったと思いました。

キャリー・フィッシャーが50歳!? 今、彼女があの衣装を着たら、今回のエピソードの最後みたいに…?(笑)。
若い時のあのイメージのままでおいといてもらった方がいいですよね。若い時に好きだったアイドルが、あまりおじさんやおばさんになって出てくると、ちょっとがっかりしますから(笑)。
Posted by Rach at 2007年02月25日 16:22
おちかちゃんへ
「宇宙大作戦」って、日本でも深夜に放送してた、とかって聞くんだけど、私は本当にチラッとも見たことないんですよ。だから、スポックとかも全然知らなかった。私は新スタートレックの方から入ったので、「宇宙大作戦」の方は本などに書いてあるのを読んだだけなんですよね。
「宇宙大作戦」のキャラクターが新シリーズに出たエピソードは、ファンの人気も高いそうです。私はただ、「へー、そうなんだ、これが有名な前のメンバーなんだ。」と思うだけで、懐かしさを感じられないのがつらい(笑)。
Posted by Rach at 2007年02月25日 16:23
こんにちわ。
>>まぁ、レイア姫のゴールド・ビキニに対抗できるような強烈なものがスタートレックには存在しないような気もするのですが(笑)。

いやいや、ボイジャーのセブン・オブ・ナインの普段の服装は、十分対抗できるのでは?あれこそSFオタク男子の究極のファンタジー(幻想)なのではないかと思います。ふつう勤務時間にあんな服装しないですよね。

それにしても初めてスターウォーズを見たときは、子供心に(何でこんなおばさんがお姫様役なの?!)とはなはだ憤慨しました。なので、あれが当時のアメリカの若者のファンタジーだったとするとびっくりです。

ちなみに、サウンド・オブ・ミュージックのジュリー・アンドリュースについても、子供心にこんなやぼったいおばさんを主役にするなんて!!と思っていましたが、最近みると彼女がかわいい若い女性に見える。最近スターウォーズはみていませんが、もし今みたら、レーア姫もかわいい若い女性に見えるのでしょうか。

(読み直すしてみると我ながらpolitically incorrectなコメントですね(笑))。
Posted by YN at 2007年02月28日 19:16
YNさんへ
そうですねぇ…セブン・オブ・ナインの服装は確かに…(笑)。どうしてあんなに不必要なまでにボディ・コンシャスなスーツなんでしょうねぇ?(笑)。

私がレイア姫を初めて見た時は、「地味な人だなぁ…」と思った記憶が…(キャリー・フィッシャーさん、ごめんなさい…)。「お姫様」って言うと、もっとファンシーな感じを連想してしまうのですが、それは日本人とアメリカ人のイメージの違いなんでしょうか?

サウンド・オブ・ミュージックは見ていませんが、子供の時に見ると、登場人物って老けて見えるんでしょうね。何かを見る場合に、自分の年齢というのはかなり重要なファクターになりますよね。
今見ると、ほとんどの主役の人は私より若いから(爆)、みんな可愛く見えてきます。男性でも可愛く見えますよ(笑)。
Posted by Rach at 2007年03月01日 13:44
>モニカのセリフの a galaxy far, far away
>モニカがここでこのフレーズを使ったことで、ロスがレイア姫の
>金色のビキニに憧れている話がモニカにまでバレてしまっている、
>ということがわかります。

そうなんだぁ! スターウォーズって私観ていないんですよ〜
(正確には観ず嫌い?)
だから、この後ロスとチャンドラーが女ってのは・・・って始まった
時、話が繋がらなかったんですが、これでようやく納得です。
フレンズっていろいろな伏線が張られているから、奥が深いですね(笑)
Posted by やっちん at 2013年09月17日 21:35
やっちんさんへ
コメントありがとうございます。

映画を観たか観てないか、というのは、自分の好みのジャンルかどうか、で大きく左右されますよね。私はSF好きなのでスター・ウォーズを見たわけですが、ファンタジー系やホラー系はあまり得意ではなくて、観てないことが多いんですよ。

「ロスはレイア姫のビキニに憧れてるんですってね」というのを、a galaxy far, far away で表現している、という面白さですね。モニカが見るからに失恋でボロボロになっているにもかかわらず、去り際に兄に対してそんな言葉を残して去って行く、というのが、フレンズぽくて楽しいなと思いました。
元ネタがわかると俄然面白くなるのが、フレンズの魅力なんでしょうね^^
Posted by Rach at 2013年09月20日 13:27
いつも空き時間にちょくちょく読んでいますが、3-1もなかなか終わらないです(笑)3-2はもっと長いなら読み応えありますね!
このスターウォーズの、全然わからなかったです。
なるほどー、それでロスが微妙な顔?してたのかー。
モニカにも話しとるんかい!?みたいな感じでしょうか。
Rachさんの洞察力すごすぎます♪

しかし、Crawlって、全然crawlに思えないです。
あ、待って、待って!って感じです。。。い、いつか!
Posted by k at 2013年10月09日 14:56
kさんへ
コメントありがとうございます。
フレンズ3-1 の解説記事もかなり長いですよね。3-2 も長いですから、どうかのんびり読んで下さい^^

こういうサブカルネタは、元ネタがわかるとほんと楽しいです。フィービーだけじゃなく、モニカまで!?という面白さですね。

crawl 「のろのろはう」という意味ですが、ああいうテロップの出方にそういう名前がついてるんだぁ、というのが何だか新鮮でした(^^)
Posted by Rach at 2013年10月11日 14:55
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