2007年03月16日

1級二次試験参考書その2

昨日の続きです。
今日は、Amazon.co.jp: ベレ出版 英語で意見を論理的に述べる技術とトレーニング (植田一三、妻鳥千鶴子 著) という本について語ります。

ちなみに、二次面接試験対策の本として挙げているのですが、私は「書く」「話す」というアウトプットは、同じ方向にあるものだと思っているので、これはライティング・スピーキングの両方の能力をトレーニングするために使っていました。
「二次面接」のためだけではなく、「一次英作文」のための本でもあったので、以下の話はライティングの話ともかなりカブりますが、ご了承下さい。

この本は、「スピーチで使える便利な表現」を自分の中に蓄積するのに大変役立ちました。
まず、最初から読んでいくと、英語の専門用語などが出てきてちょっと難しいのですが、スピーチの「何がダメで、何が良いか?」という説明はわかりやすかったですし、さすがに論理的に(笑)説明されていると思いました。

第3章の「論理性を鍛えてアーギュメント力 ワンランクUP!」という項目があるのですが、これがクスっと笑ってしまう感じの面白さ、があります。
「してはいけないアーギュメント」の例を挙げて、その論理の矛盾を突いています。
何が面白いと思ったかと言うと、二人の意見のやり取りの日本語訳と英訳が並べて書いてあるのですが、日本語訳を見たら、あまりに矛盾した論理展開に唖然として「そんな無茶苦茶な!」と思うのですが、それを英語で言われた場合には、もしかしたら相手に言いくるめられてしまっていたかもしれない、と思ったからです。
つまり、自分にとっては母国語ではない多言語の「英語」を読んでいる時は、その文章の意味を理解することばかり考えて、その内容が論理的に筋が通っているものかどうかについてまではなかなか気が回らない、ということに気が付いたのですね。

TOEIC のリーディングでは長文を読ませてそれに該当する選択肢を選ぶ、という問題がありますが、あれは文章の内容の論理展開について尋ねているのではなくて、「本文内で言及されていることが書いてある選択肢を探す」というテストです。
正解以外の選択肢は、「そんなことは本文には書いていない、本文に書いてある事実と異なる」という理由だけで不正解だと判断するわけです。
長文に書いてある流れを見て、内容を把握することは必要ですが、その書かれている内容の是非や、論理展開が正しいかどうかなどはあまり関係ありませんよね。
だいたいビジネス文書だから、論理を展開させて自分の意見を述べる、という文でもないわけですが。

そう言えば、フレンズなどのシットコムを見ていてジョークで大笑いしている時には、そのセリフの矛盾をちゃんと読み取れているわけですよね。
「それって、おかしいやん!」と、ツッコミを入れることができたりもします。
シットコムの場合は、ただ言葉尻を捉えているだけの場合もありますが、それがお堅い真面目な文章に対しても、相手の論理展開の矛盾に対して「それって違うやろ!」と「ツッコミ」のできる能力を高めるのが、ディベートなのかなぁ、と思ったりします。
そして、それが人間同士のコミュニケーションでもある、と。

そういう論理の矛盾を読み取るためには、まず相手の言っていることを完璧に理解できなければいけません。
「相手の言っていることを理解する」という段階を経て初めて、「その論理の矛盾を突く」というもう一つ上の段階に進むことができるわけです。
「ただ相手の意見を聞く」「ただ自分の意見を述べる」のと、ディベートとの差はそこにあるのですね。
日本人は日本語でもディベートが苦手だと言いますが、それを母国語ではない英語で行う、というのはなおさら大変で、それだけの英語のスキルが必要になる、ということです。
この本は、ディベートの基本を丁寧に説明して下さっていて、日本人が母国語でも苦手なディベードの能力を伸ばす訓練にもなると思いました。

英検の二次試験では、スピーチの後に質疑応答がありますが、それは、こういうディベートの能力を測るためのものなんでしょうね。
自分がスピーチをした後、面接官が自分の意見の矛盾や足りない部分を指摘し、それを自分の言葉で論理に矛盾がないことを説明する、というスキルを証明する場なのでしょう。

本の内容に戻りますが、ディベート力、アーギュメント力を高める説明が一通り終わると、後半はスピーチで使える表現、実際のアーギュメントの例などになります。
アーギュメントの例は、具体的なトピックを分野ごとにカテゴリー分けして、そのトピックに対して、Pros(賛成)か Cons(反対)かに分かれて展開されていきます。
この部分は、何度も音読して、使えそうな便利な表現を覚えていきました。
フレンズには、よく出てくる日常会話表現、というのがあるように、スピーチにはスピーチでよく使われる表現、というものがあります。
自分の意見を述べる時や反論する時などの決まり文句、と言うのでしょうか。
そういうものをできるだけたくさん身に付けて、もう自分の「口癖」にできるくらいに自分のものにしてしまう必要があるのだろうと思います。

私も、英語を書くことがあれば、できるだけそういう表現を盛り込むように心がけていました。
読者の方で、自分で日記を書いている、英語でコメントのやり取りをしている、誰かと英文でメールをやり取りしている、というような方は、そういう「覚えた表現を積極的に”自分の言葉として”使う」ようにしていかれたらいいのではないかなぁ、と思います。
使っているうちに、だんだん馴染んでくるものです。
最初は同じ言葉ばかり使っても構わないのではないでしょうか。
私は日本語でもボキャ貧で(笑)、同じような言い回しを何度も何度も使いますが、それはその人の口癖であって、その人の文章の特徴でもあるわけですよね。
ボキャブラリーをどんどん増やす努力も大切ですが、使えそうなものを「使いこなす」までになる、ということも大切だと思います。
どんな人でもその人がよく使う「独特の言い回し」というのがあるのですが、それはその人がそれを気に入っていて、その言葉が自分の考えや気持ちを投影しやすい、ということなんだと思いますね。

例えば、I am keenly aware that... 「私は…を痛感している、よくわかっている」という表現を私は時々使うのですが、それはこの本(p.134)に出てきた表現です。
keenly 「鋭敏に、痛烈に」という副詞に気持ちが込められる気がするから、でしょうか。
別に理由は何でもいいんですが、そんな風に自分がいいな、と思った表現を使っていく、それも、"I am keenly aware that.. " と話す時、書く時に、本当に頭の中で「それを痛感しているのよ!」と思いながら(笑)、自分の感情とリンクさせながらアウトプットしていく、アウトプットするものに感情を乗せていく、という感覚で使っていったら、そのうち「自分の言葉」として使えるようになる気がするんですよね。
ただの丸暗記で呪文のように唱えるだけではなくて、あくまでも思考・感情を伝えるためのツールとしての言葉である、という認識を忘れずにいたいと思うのです。

決まり文句と言えば、こんな表現も覚えました。(p.140より)

Regulations on the Internet go against the spirit of freedom of expression which is guaranteed by the Constitution.
「インターネットの規制は憲法が保障する表現の自由の精神に反する。」

日本語の場合でも、「人の権利を制限する」という話になると、必ずこの「表現の自由の権利」というのが出てきますよね。
自分の感情・考えを伝える決まり文句とは別に、そういう「あるトピックでよく使われる決まり文句」というのも、この本にはたくさん載っていて、それを各分野ごとに頭に入れておくと、その分野のトピックが出てきた時に思い出して使うことができるのではないかなぁ、と思いました。

後は、自分で具体例を挙げる場合など、決まり文句でない文章を自分で組み立てる場合に「使える動詞」を自分なりにまとめてみました。
この本を一通り読むとわかるのですが、アーギュメントをする場合によく出てくる動詞、というのがあります。
私はそれを、pros に使えるポジティブな動詞と、cons に使えるネガティブな動詞とに分けてみる、ということをしました。
ちょっと漠然とした分け方なのでわかりづらいかもしれませんが、
ポジティブなもの increase, encourage, stimulate, promote, facilitate...
ネガティブなもの decrease, discourage, mislead, undermine, hamper...
のような感じでしょうかねぇ。
他には、lead to のような「結果を表す動詞」など、動詞の「意味」ではなく「機能」を考えて、「スピーチで使える動詞」の語彙を増やしていった、という感じです。
この本に何度も何度も出てくる動詞は、どんなトピックのアーギュメントでも使い回しをすることのできる便利な動詞である、もしくは、アーギュメントというのは、使う名詞は変わるけれど、「どういう働きをするか、どういう効果があるか」を表すには、限られた動詞だけでかなりの部分をカバーすることができるのではないか、ということでしょうかねぇ?
もちろん、同じ動詞ばかりを使っていたら、語彙が少ないと思われるのでしょうが、妙に難しい動詞を使う必要もないだろうと思いますし。

…と、これだけえらそうに書いていながら、どうして面接に2回落ちて、通った3回目もギリギリだったかと言うと(←自虐ネタとして使わないではいられない…笑)、私の中では「書く」と「話す」の明確な違い、というのが見えていなかったんですね。
「書く」ことの向こうに「話す」があって、「書く」能力を高めれば、「話す」能力は自然に伸びるだろう…とちょっと呑気に考えていたようです。
ちなみに、一次試験の英作文は、28点満点中20点(合格者平均点20点、全体平均14点)でした。
自分でも完璧に書けたとは思っていなくて、それでそれなりに取れたので、スピーキングも当日頑張ればなんとかなる、みたいに思っていたようです。
実際に面接をしてわかったことは、頭で考えていたよりも、私にとっては、「書く」と「話す」の距離のへだたりがとても大きかった、ということでした。
独学であるために、誰かと英語で話をした経験があまりない、というのはやはり大きいのだろうな、と思いました。
「話す経験」を積んでみないとわからないこともたくさんある、ということを痛感したのです。
まぁ、キスしたこともないのに、オーディションで上手にキスしているところを見せろ、と言われているようなものですかねぇ?(←変な例え…笑)

大失敗だった面接1回目、失敗だったけれど何かを掴んだ面接2回目、そして、1回目と2回目は面接が終わるまでに「絶対に不合格だ!」と確信したのですが、初めてそれを感じることがなかった(かと言って合格してるかもと思ったわけでもない…笑)面接3回目、について、順を追って書いていきたいと思います。
それについては、1週間後にします。

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posted by Rach at 11:58| Comment(2) | 英検 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
間違ってたらすみません。
stimulate 、misleadではなく
simulate、misleadと言いたかったのでは?

私は、Toeic 900超え目指して奮闘中です。
現在、855までいったのですが、そこから中々超えれませんし、最後まで問題を時間内に解けたことがありません。
900超えたら、1級にチャレンジしたいです。
いつもありがとうございます。
札幌でもぜひセミナー開催してください。
Posted by 久保田 at 2019年04月28日 10:01
久保田さんへ
コメントありがとうございます。
この記事を書いた時にイメージしていた内容が、今の自分にはわからない部分もあるのですが、
stimulate, mislead の部分は、上下で対のような意味になることは意図していなかった、、のかもしれません。increase/decrease, encourage/discourage は明らかな対義語ですが、それ以降は厳密には対義語ではなく、思いついたポジティブっぽいもの、ネガティブっぽいものをそれぞれ挙げただけ、というようにも見えるのですね(自分が書いたことなのに、いい加減な話ですみません)。「人を刺激(鼓舞)して〜させる」という、encourage のニュアンスのある動詞として、続けて挙げただけ、なのかなぁ、と。

それから TOEIC900超を目指して頑張っておられるとのこと、また、1級にもチャレンジしたいとのお話、素晴らしいです。どうかこれからも頑張って下さい! 応援しています。

それから、札幌でセミナーを、と言っていただけること、とても光栄で嬉しいです。いつかお邪魔させていただける機会がございましたら、その時にはどうかよろしくお願いいたします<(_ _)>
Posted by Rach at 2019年04月29日 13:55
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