2007年03月31日

ビニール人形の話 フレンズ3-2その19

レイチェルの部屋から出てきたロスとレイチェル。
ロス: Look, I'm sorry, I thought it looked pretty. (ねぇ、ごめんよ。あれが可愛く見えると思ったんだ。)
レイチェル: Ross, that was a Halloween costume. Unless you would like me to go to this thing as Little Bo Peep. (ロス、あれはハロウィーンの衣装よ。私がリトル・ボーピープとして晩餐会に参加することをあなたが望むのなら、話は別だけど。)
ロス: Look, I didn't recognize it without that inflatable sheep. (ねぇ、例のふくらませて使う羊がついてなかったら、それがリトル・ボーピープだって僕は気付かなかったよ。)
レイチェル: Yeah, which, by the way, Chandler, I would like back one of these days. (ところで、羊と言えば、チャンドラー、あの羊をそのうちに返してちょうだいね。)

unless は「…でない限り、もし…でなければ、…なら話は別だが」。
go to this thing は「ロスがスピーチをする宴会に行くこと」を指していますが、宴会だとかパーティーだとか banquet だとか言わずに、もう分かりきっていることだから、「それ、これ、今から行こうとしてるやつ」みたいに this thing という漠然とした言い方で表現しているのでしょうね。

リトル・ボーピープは、フレンズ2-24その12 にも出てきましたので、詳しくはそちらをご覧下さい。
簡単に言うと、「自分の羊が迷子になってしまって、それを探している羊飼いの女の子」です。
would like は want の丁寧な言い方で、「私にリトル・ボーピープとして会に出席して欲しいとロスが思う」という文章に unless がついているので、「リトル・ボーピープとして出席して欲しくなんかないでしょ? じゃあ、そんなハロウィーンの衣装を着るわけにはいかないわ。」とか、「それが可愛いって言ってもリトル・ボーピープの格好で出席するわけにはいかないわよ。あなたがそれを望むのなら話は別だけど。」という感じになります。

inflatable は「ふくらますことのできる、ふくらませて使う、膨張式の」ですから、浮き輪やビーチボールみたいに空気でふくらませるビニール製の羊のことのようですね。
リトル・ボーピープには欠かすことのできない羊というアイテムが、衣装に小道具として付いているわけですね。
recognize は「…を認める、承認する」で、「(人・ものを)(知っているものと同じだと)わかる、見覚えがある、(見て)思い出す、見分ける」という意味もあります。
英辞郎に載っている例文の
She's changed so much that at first I didn't recognize her. 「彼女はすっかり変わってしまったので、最初彼女だとは気づかなかった。」
というのが、わかりやすい例ですね。
ここの didn't recognize it も、「リトル・ボーピープだとは気付かなかった」ということで、羊がおまけについていなければ、その衣装だけでは、ボーピープだとはわからなかったよ、つまり、さっき見た時は、羊がいなかったから、その衣装がボーピープのものだとはわからなかった、ということです。

Yeah, which, by the way, Chandler, I would like back one of these days. について。
one of these days は「いずれそのうち、いつかそのうち、近いうちに、そのうちに、近日中に」。
この文の構造は、挿入句を除くと、Which I would like back (one of these days). ということ。
which というのは、その前のロスのセリフの that inflatable sheep を指しています。
ですから、普通の文章の形にすると、I would like that inflatable sheep back. になります。
would like は want の丁寧な形。(さっきも出てきましたね。)
want A back は「Aを取り戻したい、Aを返して欲しい」という意味になります。
I want my life back! 「俺の人生を返せ!」などと同じですね。

このセリフの後、歓声が起こっています。
これは、今、そのビニールの羊はチャンドラーが所持している、という事実に対して観客が笑っているわけです。
恐らくこれは、「風船状になっている人形」に、ちょっとやらしいニュアンスを持たせているのだと思います。
つまり、チャンドラーが一人寝の寂しさを紛らわせるために、その人形を所持している…ということを示唆しているのだろう、と。(「ひとがた」ではなくて「羊」なので、ちょっと想像(?)しにくいですが…笑)
レイチェルに「返して」と言われた後のチャンドラーを見ると、「こんなときに、何てことを暴露するんだ」というような顔をしていますから、やはり人に知られると恥ずかしいこと、ということですよね。
ただ、むぎゅうっ!と抱き締めながら寝ているということか、もっと具体的なエッチな行為を想像させようとしているのか、そこのところはよくわかりませんが(笑)。

アリー my Love(Ally McBeal)シーズン1第19話「誕生日の憂うつ」(原題:Happy Birthday, Baby)で、アリーの部屋に、ビニール製の男性の人形(an inflatable doll)が置いてあるのを見たことがあります。
非常にシンプルで、本当にただの風船人形、と言う感じの全くリアルさのないもので、見ていてギョッとしたりはしないのですが(笑)。
このエピソードでは、その人形にどんな意味があって、それを持っていることについてアリーがどう思っているか、がわかるセリフも出てきます。
完全なる脱線なのですが、an inflatable doll について考える良い機会(?)だと思うので、それにまつわる部分を詳しく説明してみたいと思います。

医師のグレッグという素敵な男性に、家まで送ってもらったアリー。
アリー: Do you want to come up for some coffee? (部屋に上がってコーヒーでもどう?)
グレッグ: I would love to, but I got rounds, early morning. (そうしたいけど、回診があるんだ、朝早くに。)
アリー: Is this guy gay or what? ([心の中で]この人、ゲイか何かなの?)
アリー: Well, thanks for walking me home. (じゃあ、家まで送ってくれてありがとう。)
グレッグ: Sure. (どういたしまして。)
かなりロマンチックなさよならのキスをする二人。
アリー: Definitely not gay. ([心の中で]絶対にゲイじゃないわ。)
アリー: Greg, come upstairs. ([かなり強い調子で]グレッグ、部屋に上がってって。)
グレッグ: You got those Pips snapping behind you? (例のピップスが君の後ろでうるさく言ってるの?)(注:アリーがよく見る幻覚(hallucination)の話です。)
アリー: No. This is all me. Come upstairs with me. (いいえ。これは私自身が言っていることよ。一緒に部屋に来て。)
グレッグ: You know what? I'll definitely take a rain check on that. (そうだな、今日の分は、次回に必ず。)
自分の部屋に帰ってきたアリー。ルームメイトのレネが話しかけます。
レネ: How did it go? (どうだった?)
アリー: It's great. (最高よ。)
と言いながら、オーバーオールを着た男性型ビニール人形を持って、自分のベッドルームへと入ってしまうアリー。
レネ: Good. (それは良かった。)

誘ったのに断られて「この人ゲイ?」と思うのもおかしいですが、キスした後に、「絶対にゲイじゃない。」と確信するのもおかしいです。
キスが上手だったんですねぇ。
rain check は「雨天引換[順延]券」のことで、「(今回は辞退するけれど後でまた要求する)後日の約束・招待」をも指します。
ですから、take a rain check で「(誘いを)またの機会[今度]にする、延期する」という意味になり、このようにお誘いを断る場合に使いますね。
レネは、Good. と言いながらも、「あぁ、誘ったのに断られちゃって、アリーは今、ご不満なんだね。」みたいな顔をしていました。
ここでビニール人形を部屋に持ち込むところに、アリーの欲求不満ぶりが現れているわけですね。

次の日に、グレッグと喧嘩して、さらには足フェチの依頼人とは意見が合わなくて、トイレで怒っているアリー。
相談に乗ろうとする同僚のジョージア(元彼ビリーの妻)に自分の怒りをぶちまけます。
アリー: You know, I had a plan, Georgia. My whole life I had a plan. When I was 28, I was going to be taking my little maternity leave. But I would still be on the partnership track. I, I would be home at night cuddled up with my husband, reading "What To Expect When You're Nursing and Trying Cases." Big home life. Big professional life. And instead... I am going to bed with an inflatable doll, and I represent clients who, who suck toes! This was not the plan. And, and, and you! You with your, with your new haircut... It... (ねぇ、ジョージア、私には計画があったの。人生設計を立ててたのよ。28歳で産休を取るつもりだったわ。でも私はまだ相手を探しているところなの。夜には家でダンナさんに抱き締められながら、「子育てと裁判に取り組む時、何を予期すべきか」という本(DVD日本語吹替では「子育てと裁判の両立」という本)を読むの。素晴らしい家庭生活。素晴らしい仕事生活。でも、実際はと言うと…私は空気でふくらむ人形[ビニール人形]と一緒にベッドに入るの。そして、私が弁護している依頼人は、(足フェチで)つま先をなめるような人なのよ! これは私の思っていた計画じゃないわ。それに、それにあなたは! あなたは、新しい髪型で…)
どうして私に矛先が向くのよ、みたいに目をむくジョージア。
アリー: Thanks. Thanks for letting me unload. Bye. (ありがとう。悩みを打ち明けたら[吐き出したら]すっきりしたわ。じゃあね。)

自分が夢に描いていた姿と現実とのギャップを愚痴っているのですが、その情けない現実の例として、「ビニール人形と寝る[ベッドに入る]」ことを挙げていますね。

その後、グレッグがレネとデュエットで盛り上がったのも気に入らない上に、グレッグがシカゴの病院に転勤になるという話を聞いて荒れるアリー。
ふと目に付いたそのビニール人形をベッドにたたきつけた上、その上に飛び乗って、破裂させてしまいました。
惨めな自分を思い出させる物体に怒りをぶつけた、ということでしょうね。

…ということで、an inflatable doll というと、このアリーのエピソードを思い出してしまう…という話でした。(あぁ、長かった…ごめんなさい。)

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posted by Rach at 12:20| Comment(4) | フレンズ シーズン3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちわ。
フレンズのこのエピソードはビデオ録画してあるので、何度か見ています。何度みても笑えますね。

ちなみにアリーの方ですが、こちらも好きなエピソードです。アリーの"This was not the plan!"の切羽詰った気持ちがよく分かって、なんだかおかしい。若いときはあれもこれもと欲張るのだけど、なかなかすべてそうは思い通りに行かない。でもこの葛藤の時代をくぐりぬけた後は、今精一杯やっていることをけっこう楽しめたりするものだと思います。。。なんてことをようやく最近になって思えるようになりました。"This was not the plan!"とジタバタしているアリーを、ちょっと距離おきながらも愛おしく思える今日この頃です。

それにしてもグレッグとレネのデュエットはハイレベルでしたね。このエピソードは音声だけ持っていて何度も聞いています。歌だけでもきく価値がありますよね。
Posted by YN at 2007年03月31日 21:04
YNさんへ
このエピソードは、確かに何度見ても笑えますね。テンポがすごくいいんですよ。この記事を書くにあたって、いろいろ確認するためにDVDを見るたびに、ププッ!と吹き出してしまいます。

アリーのこのエピソードも面白いですよね。確かビニール人形が出てきたはずだ(笑)…と思って久しぶりにDVDを見返してみたのですが、セリフにじーっと聞き入ってしまいました。
アリーがこんな風に自分の考えをブワーッとまくし立てることはよくあるのですが(笑)、そう言いたくなる気持ちはよくわかります。若い時ほどジタバタするんでしょうね。

私は若い頃、アリーのように完璧な計画というものを立てていなかったんですよ。ですから、計画と現実とのギャップみたいなものはあまり感じませんでしたが、それでも、若さゆえの葛藤というものはありましたね。今はYNさんがおっしゃるように、「今精一杯やっていることをけっこう楽しめたりする」心境です。そういう年齢なんでしょうね(笑)。

グレッグとレネのデュエットはすごいですね。アリーはバーを舞台にして歌を歌うシーンが多くて、あれが結構好きです。ただ、その間はほとんどセリフがないので、セリフの勉強にはならないけどなぁ…とも思ってました(笑)。効果音やBGMなどの音楽も効果的に使われているし、挿入歌やあぁいうライブでの歌も非常に印象的ですよね。上手くないのがウリのキャラもいましたが(笑)、上手な人はもうびっくりするくらい上手いです。レネとエレインはよくオンステージみたいな感じになっていましたが、ゲストも上手な人が多かったですよね。アメリカの俳優さんというのは、歌の上手い人が多いんだわぁ、さすがエンターテインメントの国で、層が厚いのねぇ…と妙なところで感心していました。
Posted by Rach at 2007年04月01日 11:16
長かった、ごめんなさいなんて、こちらがごめんなさい、ご苦労様って感じです。アリーの台詞を詳しく取り上げてくれてありがとう。
アリーマイラブも大好きなドラマで、それにしては流して見ただけだから、だれかRachさんとこみたいにあのドラマの英語ブログ立ち上げてくれたらいいのに(ひょっとしてあったりして?後で調べよ。笑)、法廷の台詞も盛りだくさんで楽しいのに・・・と思います。今の映画終わったら私がやろかっ!(爆)
また機会があればお願いね!
Posted by まゆみ at 2007年04月01日 14:58
まゆみさんへ
英語に興味のある女性は、アリーを見てた、って人は多いですよねぇ。アリーの話をすると、とりあえず盛り上がれる、みたいな(笑)。
私は、アリーも、フレンズのようにRach流DVD学習法(笑)を使って勉強したので、セリフも印象深いです。
フレンズは特に日本でブームになった、という感じはないですが、アリーは明らかに「ブーム」だった時期があったので(ダンシング・ベイビーがCMに使われたり、とか)、その時にたくさんの方がアリーのサイトを運営しておられたようですね。私はどなたかのそういうサイトを参考にして勉強したことがないので、どのようなサイトがどれくらいあるのか、という詳しいことはあまり知らないのですが…。(当時のマイパソコンは無線LANではなかったので、今のようにわからないことをその場でパッと検索する、ということができなくて、そういうサイトにも詳しくなかった、と。)

また、何か関連することがあれば、脱線して解説したいと思います。何しろ、私は見た映画が少なくて、「そう言えば…」と例えに出せる作品が少ないんですよ。アリーは全シーズン見たし、日本でもメジャーだから、例えに挙げ易いですね。

アリーは難しい単語もたくさん覚えられるし、アメリカの訴訟文化みたいなものも学べるし、女性の価値観というのもよくわかる(笑)。ものすごく解説しがいがありますよねぇ? まゆみさん、トライされたらいかがですか?(笑)
Posted by Rach at 2007年04月02日 16:36
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