2007年04月15日

チャンドラーの口癖の話 フレンズ3-2その29

昨日の続きです。
恐ろしく長くて、かなりのフレンズ好きの人しか楽しめない(いや、フレンズ好きの人でも楽しめるかどうかわからない…笑)記事です。

ジョーイ: Look at me! I'm Chandler. Could I be wearing any more clothes? (俺を見てくれ! 俺はチャンドラーだ。これ以上あと少しでも服を着ることができるかな?[着込めるだけ着込んでるぞ。])

この "Could I be wearing any more clothes?" というセリフは、チャンドラーの口癖をジョーイが真似ているようです。
だから、「俺はチャンドラーだ。」とその前に言っているのですね。
直訳すると、「これ以上あと少しでも服を着ることができるだろうか?」
つまり「もうこれ以上は一枚も着ることができない。もう着込めるだけ最大枚数を着込んでるよ。」ということでしょうね。
そういう「最高、最大」であることを、"Could ... any more...?" と、わざわざ「疑問文で反語的に」表現するのが彼らしい、ということのようです。(回りくどい、と言うのでしょうか?…笑)

Wikipedia 英語版: Friends (前にもこのサイトを紹介しましたが、ネタバレ要素満載なのでお気をつけ下さい)の Running gags 「連続して登場する(?)ギャグ」という項目に 、Chandler's humour という項目があります。
そこで、今回の could I be wearing... のセリフが取り上げられていました。
以下にウィキペディアの英文を引用し、それを私なりに訳してみます。

Chandler often makes sarcastic, snide remarks, typically in response to the actions of his friends. A psychoanalyst tells him that he probably "started using humour as a defense mechanism when [his] parents divorced". Chandler occasionally uses these exact words to justify his behavior.

Chandler is also known for saying phrases in the form of "Could noun(s) be any more adjective?" His friends often imitate him using this phrase. For example, in the episode "The One Where No One's Ready", Joey dresses up in all the clothes that Chandler owns, and remarks, "Look at me, I'm Chandler, could I be wearing any more clothes?" This phrasing is known to have been a significant influence upon popular culture (see below).

チャンドラーは、たいてい、友達の行動に反応して、しばしば皮肉ないやみを言う。ある精神分析医は彼にこう言った、彼は恐らく「両親が離婚した時に防衛メカニズムとしてユーモアを使い始めたんだろう」と。チャンドラーは、自分の行動を正当化するために、時々、この精神分析医の言った言葉をそのまま使う。

チャンドラーは、"Could 名詞 be any more 形容詞?" という形式のフレーズを言うことでも知られている。彼の友達はしばしばこのフレーズを使って彼の真似をする。例えば、3-2 のエピソードでは、ジョーイがチャンドラーの所持している服全部を着込んで、以下のように言う。「俺を見てくれ。俺はチャンドラーだ! これ以上…(以下略)」 この言い回しは、ポップカルチャーに多大な影響を与えてきたことで知られている。


前半部分は今回のエピソードの話ではありませんが、面白いので引用してみました。
「ある精神分析医」とは、フレンズ1-13その1 で出てきたロジャーのことですね。
「この言い回しが、ポップカルチャーに多大な影響を与えた」とはえらく大層な表現ですが(笑)、see below と書いてあって、その下の項目の Cultural impact にジャンプするようになっています。
が、そこにこのチャンドラーのセリフのことは書いていませんね。(削除されてしまったのか、そのリンク自体が間違いなのか?)
でも、ウィキペディアで上のように書いてあるので、この言い回しが彼の特徴であるのは間違いないようです。

実際の過去のチャンドラーのセリフとしては、フレンズ1-6 で、オーロラという女性に声を掛けようとするシーンでこんなセリフがありました。
チャンドラー: Oh please, could she be more out of my league?
この場合は、any が入っていませんが、ニュアンスは似ていますね。
このセリフについては、過去記事できちんと説明していなかったのと、ちょっと気になる点があるので、明後日、フレンズ1-6 の追加解説記事 フレンズ1-6その6 として、別途説明したいと思います。

他にフレンズのセリフで、似た言い回しを探してみました。(他の人の発言も含みます。また、まだ登場していないエピソードもあるので、日本語訳は書きません。)

フレンズ2-10
ラス: You could not be more wrong. You could try but you would not be successfull.
チャンドラー: OK, I'm gonna get some more coffee before the pinching and eye poking begins. (こちらのチャンドラーのセリフは、フレンズ2-10その14 で取り上げています。)

フレンズ2-24
レイチェル: Afraid to ask him?
モニカ: Could not be more terrified.
これらのセリフは、フレンズ2-24その9 で解説しています。

フレンズ4-3
チャンドラー: Could there be more Kims?

フレンズ5-10
チャンドラー: Could I be more sorry?

私の探し方が悪いのかもしれませんが、チャンドラーのセリフで、"Could 名詞 be more ..." というのはありますが、"any more" ではありませんね。
それにラス(ロスではない…笑)が(肯定文ですが)普通に使っていますし、2-24 のモニカのセリフはチャンドラーの質問に答えたわけではないので、チャンドラーの口真似をしている、ということでもないようです。

肝心のチャンドラーのセリフに "Could 名詞 be any more 形容詞?" というのが見当たらないので悩んでいたのですが、ふと、"more 形容詞" じゃなくて、"形容詞+ -er " の比較級かも、と思い付きました。

形容詞の比較級の作り方について、数研出版「基礎と完成 新英文法」では、以下のように説明してあります。
1音節の語、または2音節の語のうち -y で終わるものには、-er をつける。
その他の大部分の2音節の語、または3音節以上の語は、原級の前に more をつける。


ということで、"Could 名詞 be any ..." となっているものを探してみました。
すると、フレンズ1-22 のエピソードで、興味深いセリフを2箇所発見!

フィービー: You know like... uh okay... uh... "Could that report be any later?" (そうねぇ、ほら…あ、そうそう…「あのレポート、遅すぎるぞ!」)

ガーストン: Uh, like, "Could these margaritas be any stronger?" (例えば、「このマルガリータ(お酒)、最高にキツいよね!」)

これらはチャンドラー本人のセリフではないのですが、それぞれ、チャンドラーの「物真似」をしているのです。
長くなるので、1-22 のチャンドラーの物真似の部分については、明日の記事 フレンズ1-22その7 で詳しく説明したいと思います。

これが物真似だとわかったところで、もう一つ物真似があったことに気付きました。

フレンズ2-20その28 で解説している部分。
リチャード: Could that shot BE any prettier? (あのショットは、かなり見事だっただろ?)
これは、リチャードとジョーイ&チャンドラーがフーズボールゲームで遊んでいて、見事にショットを決めた時のリチャードのセリフ。
このセリフを言った後、リチャードはちょっと舌を出して「ふざけてみたよ」みたいな顔をしていますし、チャンドラーたちに対して、チャンドラーの口癖を使ってみた、ということのようです。

また、ネットスクリプトでは、上のように BE が大文字になっているのですが、実際の音声も、be の部分をかなり強調してしゃべっています。
今回の 3-2 のジョーイのセリフも、1-22 の二つの物真似も、そしてこのリチャードのセリフも、注意して聞いてみると、すべてこの be の部分を強めに発音しています。
ここにアクセントを置いて、
"Could 名詞 BE any 形容詞の比較級 ?"
となるのが、チャンドラーの癖だ、ということですね。
3-2 のジョーイのセリフは、"Could 名詞 be wearing any more 名詞?" という変形バージョンになっていますが。

とここまで見つかったのはいいのですが、やっぱり肝心のチャンドラー本人のセリフが見当たりません。
私が見落としているのかもしれませんので、チャンドラーがこのフレーズを使っているのを知っている、という方はご一報下さい(笑)。
もしかすると、1-22 で「チャンドラーの物真似」として出てきたのが初出で、本人がそれを使ったことがないにもかかわらず、それがすっかり「チャンドラーの口癖」として浸透してしまったということかもしれません。

ちょっと面白い記述を発見しました。
AOL Entertainment TV turnarounds に Matthew Perry (マシュー・ペリー。チャンドラーを演じている俳優さん)のことが書いてあります。
引用すると、

As Friends' Chandler Bing, Matthew Perry was a lovable loser, but he shed his gag-a-minute image when he took a part in political drama The West Wing during its final two seasons.

Perry played a republican attorney and earned himself an Emmy nomination for the serious role - could he be any more successful?!


訳してみると、
フレンズのチャンドラー・ビングとして、マシュー・ペリーは「愛すべき負け犬」であったが、政治ドラマ「ザ・ホワイトハウス」(原題:The West Wing)のファイナルの2つのシーズンで(訳注:「ファイナル」ではないはずですが…)ある役を演じて、彼の「1分に1回ギャグを言うイメージ」(?)を払拭した。

ペリーは共和党の弁護士を演じて、そのシリアスな役でエミー賞にノミネートされた。
彼がこれ以上あと少しでも成功することが可能だろうか?[これ以上ないほどの成功を収めている。]


その最後のフレーズ、"could he be any more successful?!" が、チャンドラーの口癖を使ったものですよね。
こういう記事でそれが使われていることからも、このフレーズがチャンドラーのものとして有名だ、ということがわかりますよね。

ちなみに、The West Wing に登場した回、というのは、
4-20 ホワイトハウス閉鎖(原題: Evidence of Things Not Seen)
4-21 スキャンダル(原題: Life On Mars)
です。
また、5-7 Separation of Powers(日本未放映?)でもゲスト出演しているようです。
ちなみに、私は 4-20 はテレビで見ました。
チャンドラーとは違って、「クールで出来る男」って感じでしたよ(笑)。

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posted by Rach at 12:19| Comment(4) | フレンズ シーズン3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
2-17 チャンドラー:「Couldn't be happier. 最高に幸せだ。」という決まり文句でよく聞きます。フレンズでもこの形の台詞は何度か出てきます。couldの否定文とか疑問文+比較級で最高に〜だを表しているんですね。2-17ではI couldn't be happier.です
9-9 モニカ:Could I BE any more turned on? (チャンドラーの真似をしてる台詞です)
Posted by catch at 2007年04月16日 00:03
catchさんへ
コメントありがとうございます。
その 9-9 のセリフは、「まさに」チャンドラーの真似をしているセリフですよね。
記事中に「私の探し方が悪いのかも」「私が見落としているかもしれない」と書いたのですが、その見落としていた部分を教えて下さってありがとうございます。

チャンドラー: I couldn't be happier. (最高だよ[最高に幸せだよ]。)
については、
フレンズ2-17その14
http://sitcom-friends-eng.seesaa.net/article/388470468.html
で取り上げていますが、
"couldn't be happier" や "couldn't be better" などは、一種の決まり文句ですよね。

フレンズ2-16その17
http://sitcom-friends-eng.seesaa.net/article/388470446.html
で、
モニカ: This is a good thing. You said you've never seen Richard happier. (これは良いことだわ。パパも言ってたわよ、リチャードがこんなに幸せそうにしてるところは見たことがないって。)
というフレーズも出てきました。

普通の人の場合は、「否定文」で使うことが多くて、それを「疑問文」で使いたがるのがチャンドラーの傾向のようですね。
そして、依然としてチャンドラー本人のセリフが見当たらないのですが(笑)、more に any をつけて強調したがるのもチャンドラーの傾向である、と思われているようです。真似をしている人が、全員 any more と言っていますので…。

上で紹介した 1-6 の
チャンドラー: Oh please, could she be more out of my league?
というセリフが非常にチャンドラーっぽい、ということなのでしょうが、ここに any がついていないのに、その後の物真似では常に any more がセットになっているのが、何だか興味深いなぁ、と思うのですが…。

記事で言い忘れたことを以下に付け足しとして書きたいと思います。(長くなって申し訳ありません。)

Wikipedia 英語版: Friends の Running gags という項目には、
Wikipedia 英語版: Running gags in Friends
という、別の Main article が存在します。
そちらの方の「Chandler の Sarcasm and speech(皮肉と話し方)」の項目に、また少し違う説明が書いてありました。(昨日はそれを見るのを忘れていました…笑)

一部、引用すると、

He is also fond of rhetorical questions along the lines of "Could [noun(s)] be any more [adjective]?"
チャンドラーは、"Could [noun(s)] be any more [adjective]?" というセリフを使った、誇張した[修辞的な]疑問文が好きである。

そして、今回のジョーイのセリフのことが書いてあります。1-22 のフィービーがやった物真似のことも書いてあります。
それから、私が上で少し触れている、
フレンズ5-10
チャンドラー: Could I be more sorry?
の件についても書いてあって、ネタバレになるので詳しくは書けませんが、これも「ある人」が、チャンドラーのセリフとして考えたものを、チャンドラーに無理やり言わせている、という感じのシーンなんですよね。
DVDを見てみると、チャンドラーはこのセリフを言った後、「俺がこんなこと言うか?」みたいに、「ある人」をにらむのですが、その相手はチャンドラーを指差して、「いかにもチャンドラーが言いそうなセリフだ」と喜んでいました。

「Chander "Could * be any more"」とか、「Chandler Joey "Could * be any more"」などと入力してぐぐってみると、フレンズのセリフ以外に、このフレーズがあちこちで使われていることがわかります。明らかに、チャンドラーのセリフをもじったもの(パロディー)として使われているようです。

また、トリビアネタを発見してしまったのですが(笑)、
Wikipedia 英語版: Matthew Perry (actor)
の Trivia に以下の記述がありました。

引用すると、

In, Treehouse of Horror XII, a halloween episode of The Simpsons, the Simpsons buy an electronic house with a voice and personality. They try out a few voices, one being Matthew Perry's, which, when tested, says: "Yeah, could I be any more of a house," reflecting Chandler Bing.

訳すと、

ザ・シンプソンズのハロウィーンのエピソード、「恐怖のツリーハウス12」で、シンプソン一家は声と性格を持った電気仕掛けの家を買う。彼らは2、3個の声を試してみる。その一つがマシュー・ペリーの声で、テストすると、その声はこう言う。 "Yeah, could I be any more of a house." それはチャンドラー・ビングの言い方を反映したものである。

しゃべる家の声がチャンドラーのパロディーだなんて、やっぱりこのフレーズは有名なんですね。何だか嬉しい(笑)。
Posted by Rach at 2007年04月16日 12:35
こんばんは。
今週、英会話の授業でチャンドラーの口癖使いました!
プレイロールの授業で出張中はどうだった?みたいな質問に
『It couldn't be better!』
ってニヤニヤしながら答えました(笑)
あんまり他の生徒には通じてないような反応でしたが、先生はナイスコメントみたいな感じで頷いてくれてて嬉しかったです。
これもRachさんのブログのおかげですね。
Could this blog be better!?
Posted by かもお at 2013年03月30日 23:46
かもおさんへ
コメントありがとうございます。
"(It) couldn't be better!" は、not+比較級の典型例でネイティブもよく使う表現ですから、それを聞いた先生も、「お、なかなかやるな」と思われたでしょうね(^^)
また、それを早速、拙ブログへのお褒めのお言葉に活用して下さり、ありがとうございます。

私も、"Could 名詞 be any+形容詞の比較級?" を、フレンズ好きのネイティブの方々に使ってみたりするのですが、皆さん、チャンドラーの口癖を真似ていることに気付いて下さるのが嬉しいところです。
そういう「しゃれた表現」を、どんどん英会話の練習に取り入れて行って下さいね。
Posted by Rach at 2013年04月01日 14:41
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