昨日の記事、チャンドラーの口癖の話 フレンズ3-2その29 で、フレンズ1-22 のセリフについて触れたので、この機会に、1-22 のその部分の追加解説をしたいと思います。
昨日の記事では、"Could 名詞 be any 形容詞の比較級 ?" が「チャンドラーの口癖、彼らしい言い回し」だということについて説明しました。
今日、取り上げる 1-22 にも、チャンドラーの口癖を真似た「物真似」のセリフが2箇所出てきます。
まず一つ目。
フレンズ1-22その4 辺りのシーンです。
フィービーはチャンドラーの会社で秘書としてバイトしていて、いろんな情報を仕入れてきます。
昇進してからのチャンドラーは、会社のみんなに嫌われている、という衝撃の発言をするフィービー。
フィービー: Yeah, yeah. They even do you. (みんなは、あなたの物真似もしてるわよ。)
チャンドラー: They "do" me? (俺の物真似だって?)
フィービー: You know like... uh okay... uh... "Could that report be any later?" (そうねぇ、ほら…あ、そうそう…「あのレポート、遅すぎるぞ!」)
[Joey and Ross laughs]
ジョーイとロスは笑う。
チャンドラー: I don't sound like that. (俺はそんな言い方はしないよ。)
ロス: Oh, oh Chandler... (またまたぁ、チャンドラー…)
ジョーイ: Oh... Yeah, you do. (あぁ、確かにそう言うよな。)
過去記事でも触れていますが、do (a) someone は「…の物真似(ものまね)をする」という意味です。
"Could that report be any later?" を直訳すると、「あのレポートがそれ以上少しでも遅くなることが可能だろうか?」ですから、「これ以上遅くなることなんてあり得ないぞ! あまりにも遅い、遅すぎる!」ということですね。
"Could 名詞 be any 形容詞の比較級 ?" の形にぴったり当てはまっています。
フィービーはこのセリフを言う時に、be any later の be を強調して発音しています。
それが、チャンドラーの発音の特徴なんですね。
「そうそう、そんな感じ!」とジョーイとロスが手を叩き、指を指して大笑いしているのが面白いです。
本人はあまり自覚がないようですが、癖というのはそういうものですよね。
次に二つ目。
フレンズ1-22その6 で、モニカとイーサンが別れ話をした後のシーン。
[Scene: A hall on the floor where Chandler works. Chandler and Phoebe enters, and overhears some employees' conversation. One of
them is doing Chandler.]
チャンドラーが働いている階の廊下。チャンドラーとフィービーが登場する。社員の会話が聞こえてくる。その中の人がチャンドラーの物真似をしている。
ガーストン: Uh, like, "Could these margaritas be any stronger?" [They discover that Chandler is listening] Hey, Chandler. (例えば、「このマルガリータ(お酒)、最高にキツいよね!」 [社員たちはチャンドラーが聞いているのに気付く。] やぁ、チャンドラー。)
サントス: Hello, Mr. Bing. (こんにちは、ビングさん。)
ピートリー: Loved your "Stevie Wonder" last night. (昨夜の”スティービー・ワンダー”、あれは良かった。)
チャンドラー: Thanks. Listen, about the weekly numbers, I'm gonna need them on my desk by 9 o'clock. (ありがとう。週末の数字についてだけど、9時までに俺の机に提出してくれ。)
サントス: Sure. (わかりました。)
ガーストン: No problem. (問題ありません。)
[They go away, trying very hard not to laugh at Chandler]
チャンドラーを見て笑わないように苦労しながら[笑いをこらえながら]、彼らは去って行く。
チャンドラー: You have to give them something, you know. Okay, now that was Gerston, Santos, and who's the guy with the mustache? (あいつらに何か与えてやらないとな。よし、さっきのは、ガーストン、サントス、それからヒゲを生やしたやつは誰だっけ?)
フィービー: Petrie. (ピートリーよ。)
チャンドラー: Petrie, right, right. Okay, some people are gonna be working... this weekend. (ピートリーだ。わかった。よし、誰かさんたちは、仕事をすることになるな、この週末も。)
言うまでもなく、ガーストンの、"Could these margaritas be any stronger?" がチャンドラーの物真似です。
ここでも be に思いっきり力が入っています(笑)。
strong にはこのように「(酒が)強い、きつい」「(コーヒー・茶が)濃い」という意味がありますね。
お酒がキツいということを言うだけなのに、確かにちょっと回りくどい感じがします(笑)。
ピートリーのセリフから、チャンドラーが昨夜のパーティーで、スティービー・ワンダーの歌を歌った、または真似をした、ということがわかりますね。
そうやってチャンドラーを誉めながら、ピートリーは首を振ってスティービー・ワンダーの仕草をしてみせます。
このピートリーの顔がどことなくスティービー・ワンダーに似ていて、首を振るとそっくりな感じなので吹き出してしまいました。
これを見ていると、ピートリーの方が上手いんじゃないか、チャンドラーの物真似や歌は全然似てなくて空回りしていたのではないか?などと勘ぐりたくなりますが(笑)。
by 9 o'clock の by にアクセントを置くチャンドラー。
部下たちは笑いをこらえながら去っていきますが、「また、変なところにアクセントを置いてるよ!」とウケているんですね。
give them something は普通の場合は、「彼らに何かを与える」ですが、この場合は、彼らが陰口、またはコソコソ物真似をしていたことに腹を立てたチャンドラーが、「何かお仕置きしてやる、懲らしめてやる」か、そういうお仕置きのための「仕事」を与えてやる、かのどちらかでしょう。
どちらにしても、何か「悪いこと、大変なこと」を与えてやるぞ、と言う感じですね。
最後のセリフでは、this と weekend の最後の d に力を込めるチャンドラー。
「俺のアクセントを笑いたいなら笑え! それがどういう結果になるか見てろよ!」という感じで、わざとそのアクセントを強調しているわけですね。
(Rach からのちょっとした言い訳)
現在解説中のエピソード(フレンズ3-2)に関係する過去のセリフを説明するのに、わざわざ「フレンズ1-22その7」として記事を分ける理由、について。
これまでは、現在解説中のエピソードに盛り込む形で書いていましたが、例えばシーズン1のvol. 6 のDVDだけを持っている読者の方であれば、そこに入っている話の解説にしか目を通しませんよねぇ?
過去のシーズンのセリフについて、3-2 の解説記事で触れたところで、それを読むことがない、という可能性が大いにあります。
フレンズは10シーズンもあるので、その一部分だけを使って学習する人の方が圧倒的に多いわけですからね。
ですから、少しでも解説を有効に使っていただけるように、また、「私はこう思ったけど?」という意見を広く集められるように、それぞれのセリフは該当エピソードの解説内で収まるようにしたいのです。
そこで、今回のように記事タイトルを分けて、1-22 の追加解説とし、1-22 のオリジナルの記事の該当部分には追記としてリンクをはって、今日の記事にジャンプできるようにしてあります。
こんな風に脱線していると、本来の 3-2 の解説がちっとも進まないのですが(笑)、本来であれば初期のシーズンの解説ほど詳しく解説しておくべきだろうと思いますので、どうか、私の解説方針についてご理解いただきますよう、よろしくお願いいたします。
明日も「チャンドラーの口癖」に関連して、過去エピソード(フレンズ1-6)の追加解説をします。
(Rach からのお願い)
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チャンドラーの部下ピートリーが言った、Loved your "Stevie Wonder" last night. のところですが、少し前にチャンドラーがオフィスでフィービーと、昨夜のパーティーの話をしているシーンに出てきた、「"Ebony and Ibory"をトレイシーとデュエットした」という話と繋がっているんだと思います。
この"Ebony and Ivory"は1982年のヒット曲で、スティービー・ワンダーとポール・マッカートニーの2大スターによる豪華デュエットでした。チャンドラーがスティービー・ワンダーのパートを歌ったということでしょうかね。もちろんチャンドラーがスティービー・ワンダーの他の曲を歌ったのかも知れませんが。
チャンドラー: You have to give them something, you know. の部分に関して、私はこの台詞の前にチャンドラーが言った I'm gonna need them on my desk by 9 o'clock. の発音が、例によって"by"にアクセントを置いていることを言っているのだろうと思いました。つまり、わざとこんな発音をして、彼ら部下たちに「笑いのネタを与えた」ということではないかということです。
こんにちは。涼しくなりましたね。私は夏に弱いタイプなもので、秋になるのを今か今かと待っております(笑)。
スティービー・ワンダーの何の歌を歌ったのか、については、rereさんのおっしゃるように、"Ebony and Ivory" だったみたいですね。1-22 の解説をしていた頃は全てのセリフを取り上げていなかったので、過去記事では解説していませんが、確かに、
チャンドラー: I think last night was great. You know, the Karaoke thing. Tracy and I doing "Ebony and Ivory". (昨日は最高だったと思うよ。ほら、あのカラオケ(ってやつ)だよ。トレイシーと俺とで「エボニー・アンド・アイボリー」を歌っただろ。)
フィービー: You were great. But they still made fun of you. (チャンドラーは最高だったわ。でも、部下たちはまだあなたをばかに[物笑いの種に]していたわよ。)
というやり取りがあります。
ウィキペディア英語版: Ebony and Ivory
に、その曲の詳しい説明が載っています。
ebony は「黒檀、コクタン」、ivory は「象牙」で、それぞれピアノの黒鍵と白鍵を指すんですね。と同時に、スティービーとポールという、黒色人種と白色人種のデュエットであることも示唆しているようです。
-ny と -ry という風に韻も踏んでいますし、深い意味を持った、本当によく出来たタイトルですね。
このやり取りが事前にあったので、その後、部下が「昨日のスティービー・ワンダーは良かった」と言っているのを聞くと、観客は「エボニー・アンド・アイボリー」のことだな、と頭に浮かんでクスリと笑えるわけです。
と同時に、チャンドラーはその歌がウケて、それで部下の心を取り戻したように思っていたけれど、フィービーが「あの歌は良かったけど、みんなはやっぱりバカにしてた。」と言っていたので、その部下からの誉め言葉を素直に受け取ることができない…という心の動きも見えるわけですよね。
そういう意味でも、Ebony and Ivory がこのシーンと繋がっている、ということは、脚本上大切なことだと思います。ドラマを最初から最後まで鑑賞して楽しむ、ということは、それぞれのシーンがどんな風に繋がっているかを理解すること、なんだろうと思いますね。「あぁ、このセリフはさっきのあれと関係している。」とわかるくらいになって初めて、日本語のドラマ並みに理解できている、と言えるのかもしれません。私がスルーしていた点を指摘していただき、ありがとうございました!
You have to give them something, you know. の部分について。
give them something という表現が漠然としているので、いろいろな解釈の仕方が可能ですね。
その部分、DVDの日本語では、「あいつらちょっと絞ってやらないと。」「絞ってやるぞ。」のように訳してありました。そのイメージもあって、私は上のように「お仕置きする」と解釈したようです。
rereさんのコメントを読んだ後、英語音声で見直してみたのですが、rereさんのおっしゃるニュアンス、よくわかります。rereさんの解釈の方が正解かもしれませんね。
長くなりますが、「懲らしめる罰を与える」のか「笑いのネタを与える(提供する)」のか、以下でちょっと考えてみたいと思います。
私が最初に受けたニュアンスでは、You have to 、つまり、主語が you(一般の人)、現在形の have to を使うことで、「人があんな風にばかにされた場合は、何らかの仕返しをしなければならないのが常だ、それが常識だ」みたいなことを言っているのかなと思いました。チャンドラーは怒っているので、something 「何か」だけで、それが彼らにとっては悪いこと、であることは言わなくてもわかるので、「ちょっとしたことを彼らに与えてやらないといけないんだ。」と言った後、名前を確認してから、「あいつらは今週末も仕事だよ。」と、その具体的な仕返しの内容を言っているのかなぁ、と。
rereさんの受けたニュアンスだと、something to laugh at とか、something to make fun of ということですね?
これが、You have to ではなくて、I had to give them something, you know. と、「過去形になっていた、主語も I になっていた」のだったら、「笑いのネタ」で間違いない!と思うのですが…。
横にフィービーがいるのでその自分の行為を説明するために、「ばかにされているのがわかっているのに、どうしてわざとそんな言い方をしたか、って言うと、また彼らが面白がるネタを提供しようと思ってさ。」という意味で、「俺はあいつらに笑いのネタを提供しないといけなかったんだよ、わかるだろ。」と自身の自虐的行為を正当化している、その理由を述べている、という感じでしょうか。
ただ、I had to ではなくて、You have to という形でもそういう意味に取ることは可能だと思います。「俺みたいな道化役(の人間)は、人に笑いのネタを提供してやらないといけないんだ。」とか、「こういう場合、ネタを提供してあげるもんだろ。ネタを提供してあげないとな。」みたいな感じでしょうか。「それであいつらも喜んで帰るしね。あいつらはまた笑うだろうけど、俺はわかってやってるんだよ。」とチャンドラーは言いたいのだろう、と。
何気ない挿入句の you know ですが、この場合は、「おれはわざと言ってるのにそれに気付かずに笑ってる。フィービーはそれをわかってるよね?」という確認のニュアンスが入っているような気がしますね。
貴重なご意見、ありがとうございました。
いつも思うのですが、Rachさんの説明は丁寧で良いですね。ご自分の考えや調べた知識が誰にでも理解できるように、論理的かつ分かり易く説明されている点がすごいと思います。
ところで、「1-22 の解説をしていた頃は全てのセリフを取り上げていなかったので…」ということは、今は全てのセリフを解説してはるんですか?(まだそこまで進んでないのでわからないのですが)
いえいえ、こちらこそお返事ありがとうございます。
コメントで返事を書いていると、文章が思いっきり長くなってしまっていつも申し訳なく思っているのですが(笑)、他の方と意見を交換することで、より自分の考えがはっきりする、ということがあるんですよね。自分の間違いに気付いたり、自分があいまいだった部分が明白になったりします。順序立てて書かないと、自分で納得できないので、そんな風に書いているのですが、それを論理的、分かり易い、と言っていただけると、本当に嬉しいですね。
ところで、「今は全てのセリフを解説してはるんですか?」(”してはる”は関西弁の敬語、ですね?…笑)とのご質問ですが、今は、ネットスクリプトをコピペしたものを使って、英語のセリフは全部記載し、それに全て「私なりの日本語訳」をつけています。
もちろん、全てを「解説」しているわけではないのですが、セリフやシーンを「はしょる」ということはしていません。
本当に最初の頃は、気になるフレーズだけを取り上げていて、それがだんだんシーンごとに取り上げるようになってきて、今では「わざわざ書くまでもないかなぁ。」というような簡単なやり取りのシーンも省かなくなりました。
やはり脚本というのは(特によく出来た脚本は)、全てのセリフが密接に絡み合っていて、一見無駄なようなセリフも決して無駄ではない、ということに気付いたからですね。
それから、簡単で説明するまでもないやり取りでも、いざ、その日本語訳を見て英語に直そうと思うとパッと出てこない、ということもあります。何気ない表現でも、そこには「ネイティブが話す英語らしさ」が溢れているので、省くのがもったいないんですよ。
そんなわけで、シーズン3に入ってからは、どれも「その30」を超えています(爆)。こんなんじゃ、遅々として進まなくて、あまりにも時間をかけすぎだ!ということもわかっていますし、読者の方もかなりあきれておられるのではないかと感じているのですが(笑)、英語を学べば学ぶほど、「ひっかかる部分、気になる部分」が増えてくる、見えてくる、ということです。もっと早く進みたい、というジレンマもあって、自分でも何が最善なのかわからないのですが、せっかく「生きた英語」を題材に使っているので、それを無駄なく自分のものとして吸収していきたい、と思う気持ちの表れなんでしょうね。
そういう自分の「英語に対する姿勢、考え方」を整理するためにも、近いうちに自分の考えを述べる記事を書こうかなぁ、とは思っています。(ただの言い訳みたいなものですが…笑)
「省くのがもったいない」というのはなんとなくわかる様な気がします。それにしても、Rachさんの英語に対する意欲はすごいですね。「その30」を超えてる!?とは驚きです。1話の解説に1ヶ月かけるとしても、1シーズンで2年。シーズン3から10までだったら16年。本編のフレンズよりずっと長いではないですかー(笑)。
そうですね、「してはる」と言われると嬉しいですね(笑)。
現在は1話の解説に1ヶ月強かけていて、確かにこのままでは1シーズンに2年かかってしまうのです(爆)。せめて「その15」くらいまでにして、1シーズン1年なら、まだ許容範囲だと思うのですが…?(そうかな?)
重要な点だけを取り上げてさっさと進んだ方がいい、というご意見も当然あるだろうとは思うんですよね。それをわかっていて、どうして細かく解説しているか、については、また機会を見つけて記事にできたらなぁ、と思っています。
簡単に言うと、「いわゆる重要表現」だけが重要なのではない、ということでしょうか。重要な文法事項とか、珍しいイディオムとか、そういう目立つ部分以外の「目立たないところ」に「英語の本質」が隠れている、というか…。それを学ぶのに、ドラマは最適だな、と私は思っているのです。