一昨日の記事、チャンドラーの口癖の話 フレンズ3-2その29 で、フレンズ1-6 のセリフについて触れたので、この機会に、1-6 のその部分の追加解説をしたいと思います。
今日の記事では一つ、「気になる点」があります。
それ以外の部分はおまけなので、そこだけ読みたいという方は、「気になる点はこちら」までワープして下さい(笑)。
一昨日の記事では、"Could 名詞 be any 形容詞の比較級 ?" が「チャンドラーの口癖、彼らしい言い回し」だということについて説明しました。
今日、取り上げる 1-6 には、それとよく似たバージョンのセリフ、"could she be more out of my league?" が出てきます。
any more ではなく、「ただの more 」(笑)なのですが、物真似と同じように、be を強調気味に発音しています。
恐らく、このセリフが、後のエピソードで真似をされることになる言い回しの”原型”だと思うんですよ。
過去記事では、フレンズ1-6その1 に当たる部分で、その過去記事でもセリフを一部取り上げています。
ジョーイのお芝居を見に行って、ものすごい美女を見たチャンドラー。
チャンドラー: She's amazing! She makes the women that I dream about look like short, fat, bald men! (彼女は素晴らしいよ! 彼女と比べると、今まで夢見てきた女が、チビで太ってはげたおっさんに見えるよ。)
モニカ: Well, go over to her! She's not with anyone. (それなら、彼女にアプローチしてみたら。誰か(男性)と一緒にいるわけじゃないし。)
チャンドラー: Oh yeah, and what would my opening line be? "Excuse me. Blarrglarrghh." (あぁ、そうだね。最初にかける言葉は何? 「すみません。うわわわわ。」)
レイチェル: Oh, c'mon. She's a person, you can do it! (ねぇ、大丈夫よ。彼女だって人間よ。あなたならできるわよ。)
チャンドラー: Oh please, could she be more out of my league? Ross, back me up here. (あぁ、お願いだから(そんなこと言うの)やめてくれよ。彼女は、俺にとって史上最高の高嶺の花だよ。 ロス、何とか言ってくれよ。)
ロス: He could never get a woman like that in a million years. (チャンドラーには、あんな女は100万年たってもゲットできないね。)
チャンドラー: Thank you, buddy. (ありがとう、友よ。)
フィービー: Oh, oh, but y'know, you always see these really beautiful women with these really nothing guys, you could be one of those guys. (でも、ほら、こういうすっごくきれいな女性が、全くつまらない男といるところをよく見るわよ。あなたなら、その男になれるかも。)
そう言われて、「なるほど。そういうことなら俺にも可能性があるかも?」みたいな顔をするチャンドラー。
他のフレンズたちも「フィービーの意見は正しい」と頷きます。
モニカ: You could do that! (それならできるかも。)
チャンドラー: Y'think? (そう思う?)
みんな: Yeah! (うん、思う。)
チャンドラー: Oh God, I can't believe I'm even considering this... I'm very very aware of my tongue... (なんてこった、声を掛けようと思ってることさえ信じられないよ。舌を意識しすぎちゃうよ…)
ロス: C'mon! C'mon! (頑張れ、頑張れ!)
チャンドラー: Here goes. (よし、行くぞ!)
彼女のところへ言って声を掛けたら?と提案されるのですが、what would my opening line be? "Excuse me. Blarrglarrghh." と言っています。
line は「セリフ」。
フレンズではこの意味で何度も出てきます。
opening というのは、open a conversation 「会話・話を始める」という意味の open ですから、opening line は「話の口火を切るためのセリフ、導入のセリフ」という感じになります。
フレンズ1-22その6 に、opener という単語も出てきましたが、それも「最初の話を切り出すもの」という意味ですね。
Blarrglarrghh 「バラグラガ…」と何だかよくわからないセリフを言っていますが(笑)、緊張してうまく舌が回らなくて噛んじゃった、みたいな感じですね。
声がドナルドダックみたい(笑)。
She's a person. は「彼女は一人の人間よ。」
いくらきれいだって言ったって、女神様ってことはなくて同じ人間でしょ、そんなに緊張することないわよ、という意味で言っているのですね。
日本語でもそんな風に「彼女も人間だ。」などと言って、いくら完璧な人でも何かしらの欠点があることを示唆したりしますよね。
You can do it! は「あなたならできるわ。」
フレンズ2-17その18 でも書いていますが、発音に注意。
「できるわ。」と言う場合は、do にアクセントを置きます。
逆に You can't do it! 「あなたにはできないわよ!」という場合は、can't という否定語「できない」にアクセントを置きますね。
そんな風に励まされて、逆にチャンドラーは「何と言っても、無理なものは無理なんだよ。俺を説得しようとするのはやめてくれよ。」という意味で Oh please. と言っているようです。
そのような please のニュアンスは、フレンズ1-5その3 で説明しています。
今日のメインテーマ、「気になる点はこちら」
out of one'e league は、フレンズ1-8その5 にも出てきますが、「高嶺の花」という意味。
league はメジャーリーグという言葉からわかる通り、「同盟、連盟」という意味ですが、そこから、「(同質の)グループ、仲間、部類」という意味にもなります。
ですから、「同じ部類には属さない」ということで、「手の届かない人、住む世界の違う人」みたいな感じの「高嶺の花」という意味になるのですね。
ロングマン現代英英辞典では、
be out of your league: to not be skilled or experienced enough to do or deal with something
つまり、「何かをするのに、または扱うのに十分なほど熟練していない、または経験がないこと」。
また、それと同じような not be in the same league という表現もあります。
同じくロングマンでは、
not be in the same league (as somebody/something)
also be in a different league (from somebody/something)
: to be not nearly as good or important as someone or something else
例) They're not in the same league as the French at making wine.
訳すと、「誰かや何かとほとんど同じくらい上手または重要ではないこと」。
つまり「…ほどの腕前ではない」という意味です。
例文は、「彼らはワイン作りに関してはフランス人ほどの腕前ではない。」という意味になります。
could she be more out of my league? は She could be more out of my league. の疑問形ですから、直訳すると、「彼女は俺にとって、これ以上高嶺の花になることは可能だろうか?」という意味になります。
これは反語的表現で、「可能だろうか? いや、そんなことはあり得ない、不可能だ」と言いたい、つまり「彼女が俺にとっては、史上最高の高嶺の花だ。」と言っているわけですね。
もし more がなくて、Could she be out of my league? ならば、「彼女が俺にとって高嶺の花だという可能性があるか? 必ずしも高嶺の花だとは言えない。」という意味になると思うのですが、more が入ってるために「それ以上…である可能性があるか? (いや)もうそれ以上…である可能性はない、これが最高だ。」という意味になると思います。
なぜここをしつこく解説しているかと言うと、この部分はDVDの日本語では以下のように訳されていて、少しニュアンスが異なるんですよね。
日本語訳は、(DVD日本語字幕/DVD日本語吹替)の順に書いています。
レイチェル: Oh, c'mon. She's a person, you can do it! (ビビることないわ/ビビることないじゃん。行って来なさいよ。)
チャンドラー: Oh please, could she be more out of my league? Ross, back me up here. (落とせないとでも? ロス 言ってやれ/ビビるかよ。俺が落とせないとでも思うのか? ロス 言ってやってくれよ。)
ロス: He could never get a woman like that in a million years. (絶対に落とせないね/100万年たっても彼女は落とせないだろうね。)
チャンドラー: Thank you, buddy. (ありがと/ありがとね。)
この訳だと、「彼女は高嶺の花だって言うのか? そんなことはない。俺だって頑張れば落とせるよ。」と高嶺の花であることを否定しているニュアンスになりますよね。
つまり、私の上の解釈とは正反対のことを言っていることになります。
DVDの日本語訳がこうなっているのは、そのように訳したら、それはそれでまた「別のジョークとして成立する」し、その方が話の流れがシンプルでわかりやすいからなんだろうなぁ、と思います。
この日本語の場合だと、レイチェルが She's a person. とまで言っているのに対して、「そこまで言われなくてもそんなことくらいわかってる。俺だってやろうと思えば出来るさ。だからそんなことは言わないでくれよ。」と答えて、ロスに back up 「後援(支援・援護・バックアップ・助太刀・加勢)する」ことを求めたのに、ロスが「絶対に無理だ。」と言い切ったので、「それじゃ全然援護になってないじゃん」という意味で、「思いっきり俺を”擁護”してくれて感謝するよ。」と言った…というオチになるという感じでしょうか。
ただ、英語音声で一連のやり取りを見ていると、チャンドラーが声を掛ける気になったのは、フィービーの「美人がつまらない男と一緒にいる」発言がきっかけで、それまではずっと一貫して「あんなすごい美人に声を掛けることなんて出来ない」と感じているようなんですね。
ですから、レイチェルにいくら促されてもその心境は変わらず、「いくら説得しようとしてもダメだ。だからそんなことを言うのはやめてくれ。彼女は間違いなく高嶺の花だよ。ロスもそう思うだろ? ロスも何か言ってくれよ。」と言ったんだと思うんです。
back up と言うと、けちょんけちょんに言われている人間をフォローして、「彼はいいやつだよ、できる人間だよ。」とバックアップする、みたいなイメージがありますが、実際のところは、あくまで、チャンドラーの「意見」を back up するのであって、この場合は、「チャンドラーが自分のことをネガティブに捉えている」ことを、ロスが「それは正しい」とバックアップすることになると思うんですね。
back up してくれと言われたロスは、"I also think she is out of his league." 「うん、確かに高嶺の花だね。」くらいで止めておいてくれたらいいのに、not in a million years 「決して(ゲットでき)ない、100万年たっても(ゲットでき)ない」とまで「断言」しています。
チャンドラーは、「ありがとう。」と言いながらも、「そこまではっきり言わなくてもいいじゃん、そんなに強調しなくてもいいじゃん…」とがっかりしてるのがおかしい、というジョークなのかなぁ?と。
Thank you, buddy. は「そこまで言ってくれてありがとう。さすがは”友達”だね。」という感じですが、「いくら友達だからって、そこまで正直に言わなくてもいいんじゃないの?」というニュアンスが入っている気がするのですがどうでしょう?
ですから、私の英語の解釈が合っているとしたら、DVDの日本語訳は、ジョークをわかりやすくシンプルにするための「意訳」なんだろうと思いますね。
それはコメディを訳す時の宿命みたいなものでしょうか。
…ということで長くなりましたが、Could she be more out of my league? の解釈について、「私はこう思うけど…」などのご意見がありましたら、是非お寄せ下さい。
(Rach からのお願い)
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でも違う言語から違う言語にうまいこと訳すのって本当にむずかしいですけどね。。(>_<)
そうですよね。もともと、英語のニュアンスを日本語に置き換えること自体がかなり難しい作業ですよね。その上、字幕や吹替には文字数や時間の制限があるので、そういう制限の中で上手に訳すのは本当に難しいですよね。翻訳家の方はどんなに大変だろう…と思います。
は「彼女は(自分の手がとどく以上の)高嶺の花か?」で、つまり「いや、手が届くかもしれない」となるんじゃないでしょうか?
コメントありがとうございます。
上の記事でも書きましたように、
もし more がなくて、Could she be out of my league? ならば、「彼女が俺にとって高嶺の花だという可能性があるか? 必ずしも高嶺の花だとは言えない。」という意味になると思うのですが…。
more さらにはそれをもっと強調して any more をつけるのがチャンドラーの口癖の特徴で、「最高に…だ」というのを、「それ以上…になることがあるだろうか?」と表現するのがチャンドラーっぽい、ということらしいのです。
out of my league がすなわち「自分には手の届かない高嶺の花」という意味で、「”もっと”高嶺の花になる可能性があるだろうか?」→「もうこれが最高に高嶺の花で、これ以上、上に行くことはあり得ない」という感じになるのかなぁ、と思います。
そうですね。「彼女以上の高嶺の花はいない」ですね。
Rachさんの言うとおりだと思います。
お返事ありがとうございます。最上級を、比較級を使った疑問文で表現するのがチャンドラー流、ということみたいですね。