妻が浮気して家を出て行った、という辛い状況をどうやって乗り切ったのか?と聞かれて、
ポール: Well, you might try accidentally breaking something valuable of hers, say her- (そうだな。妻の持ち物で価値のあるものを「ついうっかり」 break してみてもいいかも。例えば彼女の…)
モニカ: -leg? (脚を break するの?)
ポール: (LAUGHING) That's one way! Me, I- I went for the watch. ([笑いながら]それも一つのやり方だね! 僕の場合は…僕は腕時計にトライしてみたよ。)
モニカ: You actually broke her watch? (実際に彼女の腕時計を壊したの?)
try accidentally breaking でここで accidentally が使われているわけですが、try breaking、つまり、try ...ing 形になっていることにも注目してみましょう。
壊そうとする(try to break)のではなく、実際に壊してみる(try breaking)のです。
フレンズ2-10その9 でも、try to kill (未遂)と try killing (既遂)の差について語っています。
accidentally は「偶然に、ついうっかり」。
フレンズ3-3その14 の説明とカブりますが、再度その意味を確認しておきます。
ロングマン現代英英辞典の、形容詞 accidental の語義は、
accidental: happening without being planned or intended
つまり、「計画・意図されることなく、起こる」。
「そんなつもりはないのに」という感じです。
上のセリフでは、「偶然に」というのを意味ありげに使っていて、本当は「偶然を装った風にして」という意味ですね。
わざと壊したんじゃないんだ、偶然何かが当たって…などと言い訳するためでしょう。
実際に、accidentally on purpose 「偶然のように見せて[偶然を装って]その実、故意に」というフレーズも存在しますが、ここではポールはあえて、accidentally だけで止めているわけです。
breaking something valuable of hers と言ったところ、モニカが break her leg? と尋ねるのがおかしいです。
break には「…の骨を折る」という意味もあり、break her leg なら「彼女の脚(の骨)を折る」ということです。
さすがにそこまではしないよ、という意味で彼は笑っているのですね。
日本語では、時計を「壊す」、骨を「折る」、と違う動詞を使いますので、しっくり来ませんが、英語ではどちらも break なので、すんなり続くジョークになるわけです。
go for は「…に向かって進む、…を求める」で、「…を試みる、試してみる、やってみる」という意味になります。
actually を使って、「本当に、実際に」それを実行に移したのか?とモニカはびっくりしているようです。
時計で驚いているところを見ると、やはり「脚を骨折」の話は冗談だったのね(笑)。
このやり取りの後、モニカとポールは一夜を共にするのですが、このように妻に捨てられた話をして同情させて…という同じ方法で、モニカの同僚の女性とも寝ていたことが後に判明します。
このエピソードの最後で、自分の部屋にポールの時計が落ちているのをモニカが発見する、というシーンがあります。
レイチェル: Hey Mon, look what I just found on the floor. (MON SMILES) What? (ねぇ、モニカ。見て、今、床でこれを見つけたの。[モニカは微笑む] 何?)
モニカ: That's Paul's watch. You just put it back where you found it. Oh boy. Alright. Goodnight, everybody. (STOMPS ON PAUL'S WATCH AND GOES TO HER ROOM) (それはポールの腕時計よ。見つけたところに戻しておいてくれたらいいわ。あぁ、それでいいわ。おやすみ、みんな。)
と言いながら、ポールの腕時計を思いっきり足で踏みつけてから自分の部屋に行く。
このラストで、ポールが話した、例の「時計を accidentally に壊す話」が生きてくるのですね。
妻が浮気をして出て行った辛さを乗り切るために「妻の腕時計を壊した」ポールでしたが、今度は、ポールに騙されて寝てしまったという悔しさをモニカは「ポールの腕時計を壊す」ことで晴らそうとしているのです。
その壊し方も、壁に投げつけて壊す、とかじゃなくて、元々落ちていた場所に戻しておいてから、通りすがりに踏む、のが accidentally なわけですね。
ポール、または別の誰かに事情を説明する時に、「わざと壊したんじゃなくて、落ちてたから間違って踏んづけちゃった」という「アクシデント」なんだ、と言い訳できるということです。
accidentally、つまり「わざとじゃない」ならば、責任は少し軽くなる…というのをわかっていて、二人ともそうやって憂さ晴らしをした、というお話なのでした。
(Rach からのお願い)
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2007年05月14日
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