2007年06月13日

ドール(人形) フレンズ3-4その6

キャスティング・ディレクターとの電話交渉がうまく行ったフィービー。
フィービー: Annie, you are a doll, what time can you see him? (to Monica) I need a pen. (Chandler hands her one, but she needs something to write on, so she tilts Chandler's head over and writes on the back of his neck) (アニー、 あなたは、いい人ね。何時に彼に会ってくれる? [モニカに]ペンが要るわ。)
チャンドラーがフィービーにペンを渡すが、書くもの[紙など]も必要。そこで、フィービーはチャンドラーの頭を前に傾けて、彼の首の後ろに文字を書く。

doll はご存知「人形」ですが、ここでは「いい人ね。」という意味で使っているようです。
ロングマン現代英英辞典によると、
doll:
2. [countable] (old-fashioned informal) a word meaning an attractive young woman - now usually considered offensive
例) Hey, doll, why don't you get me a cup of coffee?
3. [singular] (American English informal) a very nice person
例) Thanks, you're a doll.

つまり、2. は「(古い、くだけた表現) 魅力的な若い女性を意味する言葉。現在は失礼だと見なされることが多い」
3. は「(アメリカ英語でくだけた表現) とてもいい人」。

今回のフィービーのセリフの意味は、3. ですね。
例文の「ありがとう、あなたはいい人ね。」というのが、今回のセリフと全く同じニュアンスです。
「人形」というと「可愛い」というイメージがあり、日本語でも可愛い子供を見た時に、「お人形さんみたいに可愛いわね。」などと言ったりします。
英語でも「若い美人」という意味になるようですが、それを相手に直接使うと、少し無粋(不粋、ぶすい)な表現だと思われるようですね。
ロングマンの 2. の語義の例文のニュアンスは、「なぁ、そこのきれいなおねーちゃん[べっぴんさん]、俺にコーヒーをひとつくれへんか?」(←何故か大阪弁?)みたいな感じでしょうか。

Merriam-Webster Online Dictionary の語義は、
doll:
Etymology: probably from Doll, nickname for Dorothy
1. a small-scale figure of a human being used especially as a child's plaything
2.a.(1) a pretty but often empty-headed young woman
c. an attractive person

1. が、一番一般的な「人形」という意味。
2.c. は「魅力的な人」ということですが、2.a.(1) の意味は「かわいいけれども、しばしば頭が空っぽな若い女性」ということになりますね。

人形はかわいいけれど自分の意思では動かないのでそういう意味があるのでしょう。
日本語でも「人形」には「操り人形」(自分の意思ではなく、他人の思うがままに動く)のイメージがあるので、小さい子供には、「可愛い」という誉め言葉として「人形」という言葉を使うことがあるけれど、若い女性には使わない、ということなんでしょうね。
上のロングマンの語義で「現在は失礼だと見なされることが多い」とあったのは、その「頭が空っぽ」のイメージがあるから、でしょう。
また、M-W にあるように、doll の語源は、ドロシー(Dorothy)の愛称ドール(Doll)から、ということだそうです。
「オズの魔法使い(The Wonderful Wizard of Oz)」の主人公の女の子がドロシーでしたね。
日本人の私でも、ドロシーと聞くと、フリフリの服を着た、お人形さんみたいに可愛い女の子のイメージがあります。

フレンズ2-10 では、エステルが doll という言葉を使っていました。
ジョーイ: OK, uhh, listen, there's something I want to talk to you about. The network casting lady... (あの、お話したいことがあるんですけど。例のネットワークのキャスティング担当の女性のことなんですが…)
エステル: Oh, isn't Lori a doll? (あぁ、ローリーちゃんは可愛いでしょ?)
ジョーイ: Oh, yeah, yeah she's great but. . . I kinda got the feeling that she was, sort of... coming on to me. (えぇ、そうです、彼女は素敵です。でも、彼女が僕に色目を使っているような気がしたりするというか…。)

ここでは、「見た目が可愛い女性」「かわいこちゃん」みたいなニュアンスで使っているのでしょう。
エピソードは別ですが、どちらもキャスティング担当の女性に対して使っており、どちらもエステルが絡んでいるので(笑)、ちょっと面白いなぁ、と思いました。

she needs something to write on は on the paper, on the notebook などの「用紙類」が欲しい、ということですね。
よく私の友達が、「書くものと”書かれるもの”をちょ〜だ〜い!」と言っていましたが、確かにペンなどは書くもので、紙などは書かれる(←受身形)もの、ですね(笑)。
tilt という単語は、フレンズ2-15その6 に出てきました。
また、フレンズ1-2 にもこんな形で出てきましたね。
ロスの赤ちゃんの超音波映像を見ているフレンズたち。
フィービー: You know, if you tilt your head to the left, and relax your eyes, it kinda looks like an old potato. (ねぇ、頭を左に傾けて、目をリラックスさせて見たら、古びたじゃがいもみたいに見えるわよ。)
ロスが感動しているのに、何とも容赦のないセリフでした(笑)。

まるで男の子が散髪屋さんで襟元をバリカンで刈られる時みたいに、首をぐいっと前に傾けられるチャンドラー。
ここでは tilt his head over になっていますが、tilt his head forward でも同じような意味になるでしょうね?
反対に、ヒゲをそる時のように首を後ろに傾けるのであれば、tilt his head back になるかと思います。


チャンドラー: Get the woman a pad! Get the woman a pad! A pad! A pad! (その女性にメモ帳を渡せ! そいつにメモ帳を! メモ! メモ!)
モニカ: Oh, now you want a pad. (まぁ、ほら、やっぱりメモ帳が必要でしょ。)

このセリフのリズム感が、いかにもチャンドラー的ですよねぇ。
Get someone something は「(人)に何かを持ってくる、もたらす」。
Get me that tissue. なら「そこのティッシュ取って。」ということです。
フィービーにメモ帳(notepad)を渡せ、ということなんですが、普通なら、Get her a pad! と言うと思うのですが、それをわざと、the woman 「そこの女性」と言っているのが面白い気がします。
「俺の首に文字を書いてる、”その一風変わった女性”にメモ帳を!」という感じでしょうか。

それに対して、勝ち誇ったように、メモ帳の必要性を説くモニカが面白いです。
フレンズ3-4その4 で、
モニカ: See, now this is why I keep notepads everywhere.
フィービー: Yep, and that's why we don't invite you to play.
というやり取りがありました。
コメント欄でご指摘があったのですが、その記事で私が最初に書いた日本語訳が間違っていました。
正しくは、「(いつでもメモが取れるように)部屋のあちこちにメモを置いてある」とモニカは言っているのですね。
(その詳しい解釈については、その記事のコメント欄をご覧下さい。play の詳しいニュアンスについても触れています。)

「そんな几帳面な人は(あるいはそういうイヤミを言う人は)、かくれんぼみたいな遊びの仲間に入れてあげない」とか言ってたけど、やっぱり、すぐに手の届くところに置いておけば良かった…って、今、後悔してるでしょ?という感じ。
そういう細かいこと言うから嫌われるみたいに言うけど、その考えの正しさを、今、思い知ったでしょ?というところでしょうか。

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posted by Rach at 11:49| Comment(2) | フレンズ シーズン3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Nice catch on the use of the word "woman" instead of "her"!

どうしてキャスチング・ディレクターに演技をしているフィビーかエステールだけはdollの単語を使っているかというと、古い言葉という理由もあるが、Hollywood語とも言えます。古い言葉と言えるが、まだ死語じゃありませんね。エステールは年を取っていて、古い言葉を使っています。そして、Hollywoodだけで使う言葉も言い方もありますね。DollはHollywoodっぽいだと思います。
Posted by Alex at 2007年06月13日 15:41
Alexさんへ
Thank you for your compliment!

そうですか、doll は古い言葉であって、なおかつ、Hollywood語、なんですね。日本語で言うと、「業界用語」みたいな感じでしょうか。show business で使われる専門用語っぽい感じがする、ということですね?
フィービーはここで、エステルのようなエージェントを演じているので、そういう「業界の人」っぽい言葉遣いをわざと使っているわけですね。
フィービーが電話でしゃべっている時、"Annie? Hi. Listen" とか "Annie, you are a doll." とかの口調が、エステルの言い方にとても似ている気がします。

You are a doll. が「古い表現で業界っぽい」のなら、私が誰かに "You're so sweet." という意味で、"You are a doll." というと、少し(いや、かなり?)違和感がある、ということでしょうね。
Posted by Rach at 2007年06月14日 10:40
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