2007年06月22日

コミットメント フレンズ3-4その12

チャンドラー: Look what do I do? I wanna get past this. I don't wanna be afraid of the commitment thing. I wanna go through the tunnel to the other side! (なぁ、俺はどうしよう?俺はこれを乗り越えたいんだ。コミットメントってやつを恐れたくないんだ。俺はそのトンネルの反対側に抜けたいんだ!)

get past は、意味としては、get through 「(困難などを)乗り越える、切り抜ける」と似たニュアンスの言葉です。
get through については、フレンズ1-1その3 で詳しく説明しています。
through は「…を通って、貫いて」という「貫通」のイメージですね。
そして、past は pass「通り過ぎる、通過する」の関連語で、「通り越して、過ぎて」という意味になります。
ロングマン現代英英辞典では、
past: beyond or no longer at a particular point or stage
つまり、「ある特定の点や段階を越えて、または、もはやそこにいなくて」。
ということで、get past も get through も何らかの困難を乗り越える、克服する、というニュアンスなのですが、through の方が、その困難のど真ん中を突き進んで行くイメージが強くなるような気がします。

commitment の日本語訳を英和辞典で調べてみると、「かかわり合い、献身、傾倒」「本気で深く関与すること」「特定の異性と交際すること」などと書いてあります。
今回のセリフの意味は、「特定の異性と交際すること」という意味が一番近いのですが、ちょっと説明的な日本語になってしまいますね。
ぴったり対応する日本語がない場合は、英英辞典で調べてみると、すんなり理解できることが多いです。

動詞 commit の名詞形なので、まずは commit という動詞から見てみましょう。
ロングマン現代英英辞典によると、commit の基本的な意味は、
commit:
4. SAY YOU WILL DO SOMETHING
to say that someone will definitely do something or must do something
5. RELATIONSHIP
to give someone your love or support in a serious and permanent way

訳すと、4. は「絶対に何かをする、または何かをしなければならないと言うこと」、
5. は「真剣な、そして永続的な[恒久的な]方法で、誰かに愛や援助を与えること」

5. の援助、そして 4. の意味が、日本語では「献身、傾倒」などと訳されているのでしょう。
5. の「愛を与える」という意味が、今回のような男女関係におけるコミットメントですね。
「真剣な、永続的な」がポイントなんですねぇ。
「不真面目、安易、その場限り」ではない、ということです。(プレイボーイには耳が痛い話でしょうか?…笑)

続いて、名詞の commitment も見てみましょう。
同じくロングマンでは、
commitment:
1. a promise to do something or to behave in a particular way

「何かをする、またはある特別な方法で振舞うという約束」
2. the hard work and loyalty that someone gives to an organization, activity etc
「ある人が組織や活動に与える勤勉や忠誠」
3. something that you have promised you will do or that you have to do
「する、またはしなければならないと約束したこと」

こういう語義なので、「真剣にかかわり合う」「深く関与する」という日本語訳が当てられているのですね。

フレンズはラブ・コメ(?)なので恋愛がらみの話が多く、commitment というと、そういう男女間の relationship での意味で使われる場合がほとんどです。
噛み砕いて言うと、「深いかかわり(拘り、関わり、係わり)合いを持つこと」「深入りすること」「退っ引きならない(のっぴきならない)関係になること」「引くに引けない関係になること」「遊びではなく真剣に付き合うこと」などと様々に表現できるでしょうか。

チャンドラーはあまり女性にモテなくて(笑)、女性関係が苦手である、というのは、これまでに何度も描写されてきましたが、この「コミットメントに対して恐怖心がある」というのが、これ以降、チャンドラーの特徴となります。
チャンドラーの恋愛を語る時に、なくてはならない言葉になるのですね(笑)。

through 「(トンネルを)抜けて」と to 「(反対側)に」という二つの前置詞に、力と身振りが入っています(笑)。
チャンドラーらしい強調の仕方ですよね。

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posted by Rach at 12:01| Comment(2) | フレンズ シーズン3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
commitmentはお互いを信頼して役割分担することだと思います。
コミットするというのは役割の一端を担うことですよね。そこは俺に任せろと言ってそこに対して責任を持つわけです。
「日本も対テロ戦争にコミットするべきだ(要するに一端を担うべきだ)」
「あなたの旦那はもっと結婚生活にコミットするべきだ(要するにもっと家事や子育てなどを手伝うべきだ)」
国家間のことであっても夫婦間のことであってもcommit自体の意味は同じでしょう。
夫婦も含めて男女が一緒に生活するようになると、お互いのやるべきことをそれぞれがすべて自分でこなすというのは却って不自然になってきますよね。パートナーが忙しくしていればそのパートナーがやるべきことの一部を代わりに担ってあげるなどしてパートナーの負担を減らしてあげようとしたりします。この辺がおそらくcommitmentの原義です。日本語で簡単に言うと「尽くす」ということでしょうね。
チャンドラーはカップルや夫婦がやるような共同作業的なものにアレルギー反応を起こしたわけですね。「鳥肉半分食べるの手伝って。かわりに私トマト食べるから。」みたいなことでも言われたんでしょうか。
「相手に尽くしたり、自分が尽くされたり」そういうことを恐れたくない、と言ってるんだと思います。
Posted by フレンズ研究所所長 at 2008年01月19日 20:44
フレンズ研究所所長さんへ
ご意見ありがとうございます。
私のイメージでは、「深いかかわり合いを持つこと」という日本語が一番違和感がないのですが、日本語でドンピシャな概念のない動詞(commit)と名詞(commitment)であるので、いろいろな捉え方が可能かもしれませんね。
例のチキンピカタとトマトの話も、恋人がよくやる「分け分けしよう」みたいな行為で、「そこまでする仲になってしまった」ことの恐怖、みたいな感じに私は思いました。

研究社 新英和中辞典では、commit の語源として、

ラテン語「一つに組み合わせる、 ゆだねる」の意 (com-+mittere 「送る、譲る」)

とあります。そのゆだねる感覚が、「掛かり合いにさせる、のっぴきならぬ立場になる、傾倒する、コミットする」という日本語の感覚に繋がるのかなぁ、と思います。
Posted by Rach at 2008年01月20日 08:41
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