[Scene: the hallway, Joey is moving in, Monica is leaving.]
廊下。ジョーイが引っ越して来る。モニカは出かけようとしている。
モニカ: Hi again. (はーい、また会ったわね。)
ジョーイ: Hey. (goes into the apartment) (やぁ。[アパートに入る])
チャンドラー: (leaving to go to work) Hey! ([仕事に行くために出かけようとしている] やあ。)
モニカ: Thank you soo much. (本当にありがとう。)
チャンドラー: Oh, don't thank me. Thank the jerk that never showed up. Okay, I gotta get to work. (あぁ、俺に感謝しなくていいよ。現れなかったあのバカに感謝して。よし、仕事に行かなくちゃ。)
また対面したモニカとジョーイ。
こういう時のジョーイのデレデレした顔が面白いです。
ジョーイがルームメートに選ばれたと知って、モニカはチャンドラーに礼を言うのですが、「礼なら、俺にじゃなくて、あの jerk に言ってくれ。」と言っています。
Thank the jerk that never showed up. の the jerk 「バカ、まぬけ、ムカつくやつ」とはエリックのことですね。
このチャンドラーのセリフで、エリックはヘッケルさんとの問答に敗れた(?)後、あのまま帰ってしまって、チャンドラーに会うことも電話で話すこともなくそれきりになっていることがわかります。
エリックにしてみれば、せっかく引越しの準備をしてやって来たというのに、変なじいさんと同居する約束ができていて、僕には一言の連絡もないなんて…とムッとしているのでしょうね。
チャンドラーはチャンドラーで、約束の時間になっても現れないので、すっぽかされたと思っているわけです。
ところで、ヘッケルさんがフィービーに言い負かされた仕返しに、エリックを追い返すといういたずらをして、そのお陰でジョーイがルームメートになるわけですよね。
これが、ジョーイがこの部屋に住みたくてエリックに嘘をついたりする展開だったら、その真実を観客が知ってしまった時に、何となく気分が悪いですよね。
ジョーイは何もしていないのに、ちょっとした「運命のいたずら」で、こういうことになってしまったんだ、という方が微笑ましくて面白いのだと思います。
よく出来た脚本だなぁ、と思います。
(Joey comes back into the hallway and starts to pick up a heavy box)
ジョーイは廊下に戻ってきて、重い箱を持ち上げようとする。
モニカ: You want some help with that? (それを持つの、手伝いましょうか?)
ジョーイ: Oh, no thanks, I got it. (picks it up) No I don't! (あぁ、いいよ。大丈夫だ。[それを持ち上げる] いや、大丈夫じゃない!)
モニカ: Whoa! You okay? (わぁ! 大丈夫?)
ジョーイ: Whew! Stood up too fast. Got a little head rush. (ふぅ! あんまり早く立ち上がったから、ちょっと立ちくらみがしたよ。)
モニカ: It's the heat. (has her hand on his chest, and then pulls it away) And-and the humidity. (熱いわ。[モニカは自分の手を彼の胸に当てている。そしてその手を引っ込めて離す] それから湿気がね。)
ジョーイ: That's a uh, that's a tough combination. (暑さと湿気って、タフな組み合わせだよね。)
I got it. は「わかった。」という意味で使うことが多いですが、ここでの意味は、「自分で出来るよ(だから助けは要らないよ)。」か「自分で”それ”を持てるよ。」という感じかのどちらか、でしょうか。
I got it. と言ってから、No I don't! と言ったのは、「got it と言ったけど、やっぱり無理だった。」みたいなニュアンスですね。
head rush というのは「立ちくらみ」という意味。
フレンズ1-22 にも、出かけようとしているフィービーのこんなセリフがありました。
フィービー: Ooh, oh, I've gotta go. [raises] Whoa, oh, head rush. One more, and then I have to go. [sits down, and then raises again] Cool! (あぁ、行かなくちゃ。[立ち上がる] あら、立ちくらみが。もう一度、それから、出かけなくちゃ。[座って、それから再び立ち上がる] いい感じ!)
この 1-22 のセリフに関してですが、立ちくらみがしたので、また立ち上がるという行為をやり直していますよね。
その後、Cool! と喜んでいるのは、「今度はうまく行った、立ちくらみにならなかった」ということかなぁ、と思うのですが、人と少し感覚の違うフィービーの場合、立ちくらみを再度味わって、その妙な感覚に再び酔いしれている、という可能性もあるのかな?と思ったり(笑)。
head rush という言葉は上のセリフを見ても「立ちくらみ」という訳が適切だと思うのですが、意外と辞書には載っていません。
過去に、フレンズ1-22その6 のコメント欄 で head rush について解説しているのですが、以下に少し追加説明をしておきます。
rush はロングマン現代英英辞典では、
rush (noun):
1. FAST MOVEMENT
[singular] a sudden fast movement of things or people
つまり、「ものや人の突然の速い動き」。
5. FEELING
[singular]
a) (informal) a sudden strong, usually pleasant feeling that you get from taking a drug or from doing something exciting (see also high)
例) an adrenalin rush
つまり、「ドラッグを使うことによって、または何かエキサイティングなことをすることによって得られる、突然の強い、たいていは心地良い気持ち」
例の「アドレナリン・ラッシュ」というのは、血液中にアドレナリンが放出されて、元気が出たり興奮したり快感を覚えたりする感じ、でしょうか?
その「アドレナリン・ラッシュ」と似たニュアンスで、「頭の中に何かがどっと押し寄せる、湧き上がる」という感覚が、「急に立ち上がって頭がくらくらして目まいがする」という「立ちくらみ」のイメージになるのだろうと思います。
ラッシュという言葉は日本語にもなっていて、「ラッシュ・アワー」などの「人がどどっと押し寄せる感じ」からも、そのイメージは何となく理解できますよね。
ただカタカナになっている外来語の場合は、英語と意味が全く違っている場合もあるので注意が必要です。
今回、英英辞典の語義を使って rush を詳しく説明したのは、英英辞典で調べて、その単語の基本的なイメージを「英語で」理解している方が、応用が利くし、イメージが湧きやすいからですね。
rush の基本的イメージは、「突然の速くて強い動き」という感じでしょうか。
日本人の場合は、漢字を見てだいたいの意味を推測することができますが、それはその漢字の意味、またはその漢字が使われている別の単語を知っているからです。
英語の場合も、個々の単語の基本的なイメージを知っていれば、意味を推測するのが楽になるわけです。
今回の場合も、「head に rush が来る感じ」と言うのが分かればそれでイメージが湧きますし、たまたま日本語ではそれを「立ちくらみ」と言う、というだけのことですね。
「head rush =立ちくらみ」と丸暗記して納得するよりも、その立ちくらみのイメージから、rush という言葉の基本的イメージを覚える方が、ずっと有益だ、と私は思っています。(…ということで、head rush の話が長くなってしまいました。すみません。)
モニカはジョーイの身体を触っていて、明らかに彼に気があるのがわかりますね。
It's heat. というのは、立ちくらみしたジョーイを思わず支えて、彼の胸に手を当てた時、その彼の身体がほてったように熱い、という意味で言ったのでしょう。
でも、それを言った後、ほとんど初対面の人に恥ずかしいことを言っちゃった、みたいに手を離して、heat は身体の「熱さ」ではなくて気候の「暑さ」だと言い訳するように、「湿気」の話を持ち出したんですね。
ここでの humidity は「(気候の)湿気、湿度」のことで、表向きは「夏で湿度が高い」ことを言っているのだとは思いますが、「触った彼の身体が汗ばんでる」ってことも示唆しているのではないかと思います。
モニカがジョーイに対して男性としての魅力を感じていて、その汗ばんだ体にドキドキしている様子も出ているのかな、と。
ジョーイは「あぁ、確かに暑い上に湿度が高い、ってのはタフな組み合わせだよね。身体に堪えるよね。」と返していますが、もちろん、モニカの様子を見て、ただの気候の話をしているのではないことはわかっていたでしょう。
二人とも妙に恥ずかしそうで、相手を意識しているのが見え見えですから(笑)。
(Rach からのお願い)
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興味深く読ませていただきました。
英英辞典を使って、英語の真髄に触れ、そこからイメージで解釈を拡げていくことは、語学習得上、最も大切なことだと思います。
私も「フレンズ」が大好きで、留学中もよく見ていました。DVDが欲しくなりました!
はじめまして。ご訪問&コメントありがとうございます。
おっしゃる通り、英英辞典を使うと「英語の真髄に触れる」気がしますね。英語の単語を英語で説明することで、それぞれの単語が繋がり、語彙が広がっていきます。1年半ほど前は英英辞典を使うのがおっくうだったのですが、最近は英英の説明の明瞭さに感動を覚えます。こんな風に論理的に、かつシンプルに説明できるなんてすごい!という感じでしょうか。
英語道さんもフレンズがお好きなんですね。人気ドラマですから、脚本もよく出来ていて、本当に面白いと思います。是非DVDを買って、または借りて(笑)、見てみて下さい。
立ちくらみという意味が分からなくても(通訳でないかぎり) 英語で理解できていればいいのですから・・・・
わかりやすかったです なので ぽちぽちぽち (^^)v
☆ momo
「わかりやすかった」とお褒めいただき、本当にありがとうございます。また、ぽちぽちぽち…にも感謝感謝感謝、です。また、これからも頑張ろう!と思えますので…。
momoさんがおっしゃるように、瞬時に日本語に置き換えなければならない通訳の方とは違って、私たちが普通に英語を読んだり聞いたりする場合は、その的確な日本語が浮かばなくてもいいわけですよね。むしろ、そういう日本語をいちいち思い出している時間がもったいない、というか、いちいち日本語が浮かんでいたら、英語のナチュラルスピードについていけなくなるわけです。それぞれの英語の単語の意味やイメージのままで、その語順どおりにたどっていくことが、英語を読む、聞く、ということなんだと思います。
同時通訳の方はそれを的確な日本語の文章に直さないといけない、という意味で、よりハードルが高くなるわけですね。あの作業は、私たちが普通に英語を読む聞く以外の別の回路も使っておられる、という気がします。
momoさん、お仕事、順調のようですね! その調子で頑張って下さい!!