2007年08月31日

家賃安定化条例 フレンズ3-6その16

モニカ: So this place is really my grandmother's. (Joey starts to take off all of his clothes, while Monica gets the glasses and pours the lemonade.) I got it from her when she moved to Florida, otherwise I could never afford a place like this. So if the landlord ever asks, I'm an 87-year-old woman who's afraid of her VCR. You thirsty? (それで、この部屋は本当は私のおばあちゃんのものなの。[ジョーイは服を全部脱ぎ始める。その時、モニカはグラスを取り出してレモネードを注ぐ。] おばあちゃんがフロリダに引っ越す時にここを譲ってもらったのよ。そうじゃないと私はこんなところに住めるほどお金がないもの。それで、もし大家さんが何か質問してくることがあったら、私は87歳のおばあちゃんになるのよ、ビデオにオロオロするような[ビデオの使い方がわからないような]おばあちゃんにね。のど渇いてる?)

昨日取り上げたセリフのうち、モニカが自分のアパートのことを説明する部分を詳しく見てみたいと思います。

最初にこの部屋に入った時、ジョーイは、"Wow! This is a great place." と言っていたのですが、それは社交辞令ではなく、その「大きさ」に驚いていたようでした。
チャンドラーの部屋とモニカの部屋は隣同士ですが、部屋の大きさが実はかなり違っていて、モニカの部屋(特にリビング)の方が随分大きいですよね。
レイチェルがここに転がり込んで来る前は、モニカは一人でこの部屋に住んでいたわけですが、確かに言われてみれば結構広い部屋です。
ですから、家賃もかなりのものになるはずです。

その彼女がここに住めているのは、実はある法律があるからなんですね。
その法律の名前は、the Rent Stabilization Act of 1968 「(1968年の)家賃安定化条例」と言います。
ざっとネットで調べてみたのですが、RSL (New York City Rent Stabilization Law) や、Rent Stabilization Code という表記もあるようです。

何故アメリカに住んだこともない私(笑)が、この法律を知っているかと言うと、もう少し先のエピソード、フレンズ4-4 にその法律名が出てくるから、です。

ちょっとネタバレっぽくなりますが、その4-4 でのやり取りが説明としてはわかりやすいので、以下で少しそれを使うことにします。(4-4 まで行き着く自信もないですし、行き着いたところでかなりの年月が経過しているでしょうし…笑)

ジョーイとトリーガーさんとのやり取り。
トリーガーさん、というのは、フレンズ2-9その13 に出てきたアパートの管理人さん(英語では super )です。

あることが原因で、管理人のトリーガーに文句を言いに来たジョーイ。
ジョーイが文句を言うと、逆に、条例の話を持ち出されてしまいます。
トリーガーさん: Yeah. Well, maybe you haven't heard of a little something called Rent Stabilization Act of 1968! (多分、君は1968年の家賃安定化条例ってやつを聞いたことないんだろ。)
ジョーイ: I have actually not heard of that. (確かに、そんなのは聞いたことないさ。)
トリーガーさん: Yeah, well, your friends are in violation of it. I've been a nice guy up until now, but uh, I don't need this grief. I'm gonna call the landlord and tell him that Monica is illegally subletting her grandmother's apartment. Your friends are outta here, pal. (君の友達はそれに違反してる。今の今までは俺もいいやつをやってきたが、こんな面倒はごめんだ。俺が大家さんに電話して、モニカがおばあちゃんのアパートを違法に又貸し(サブレット)している、って言うぞ。君の友達はここを出て行くんだ[出て行くことになるんだ]。)

この管理人の話だと、
そのアパートはモニカのおばあちゃんの名義なのに、モニカが住んでいる。
さらに正式な名義人でもないのにレイチェルに又貸ししている(ルームシェアというのは、法律上は「又貸し」に当たる、ということでしょうね)。
それらがその条例に違反する、ということになりますね。

なぜ、「おばあちゃん名義」のままかと言うと、その方が家賃が安く抑えられるから、のようです。

この条例の仕組みがわかる事例が、抄訳付き英字新聞「週刊ST」にも出てきたことがあります。
週刊ST 2003年4月25日号の、Manhattan short stories The Dorsett という連載小説の一部を引用します。

The person directly below him, with the exact same configuration, was paying three times as much.

これを私が訳してみますと、
「彼の真下に住んでいる住人は、その部屋は全く同じ間取りなのに、3倍の家賃を払っていた。」

そしてその理由については、欄外にきちんと説明が書いてありました。
その説明を引用すると、

ニューヨークは家賃統制によって賃貸料を更新する上限が定められており、同じ建物に長く住む人の家賃は安く抑えられている。

このストーリーでは、家賃が安く済んでいる「彼」は11年間住んでいる、という設定でした。
モニカの場合は、おばあちゃんが住んでいた、ということですから、もっと長い期間住んでいた可能性もあります。
とにかく、今いきなり入居するよりは、ずっと割安の家賃で済んでいる、ということのようですね。

管理人の人は管理人の部屋に住んでいるようですが、家主(landlord)は遠いところにでも住んでいるのでしょうか。
実際にはモニカがここで暮らしていることを家主(大家さん)は知らないようで、家主と連絡を取り合う必要があった場合は、「最近の機械は操作が難しくってねぇ…」みたいな機械オンチのおばあちゃんのふりをしなくちゃいけないのよ…と言っています。

VCR は video cassette recorder の略で「ビデオカセットレコーダー、ビデオデッキ」のことです。
フレンズ2-14その9 にも出てきました。

ところで、「家賃安定化条例」なんてそんな細かい話、英語の解釈には直接関係ないのかもしれません。
今回私がわざわざこれを取り上げたのは、フレンズ3-6 や 4-4 を見て、「あぁ、そういう条例みたいなものがあるんだな。」と何となく記憶に残っていた、その後で、その週刊STの記事に出会って、「あ、ここにも同じようなことが書いてある!」と思ってすごく嬉しかった、そしてそのお陰で、よりその条例に対する理解を深めた、という経験があったからです。

「アメリカに住んだことないからわかるわけない!」じゃなくて、自分が見た映画やドラマ、小説や新聞から、いろんな情報を取り込んでいけば、それぞれの情報がうまく組み合わさって、いろんなことがわかっていく…今、この瞬間はわからないことでも、ずっと英語の勉強を続けていくうちに、そのうちにまたわかることもある…。
今回はそのことを伝えたかった…のかなぁ、と思います。

さらには、どんなにつまらないネタでも(笑)、知らないよりは知っている方が内容をより楽しめるのも確かです。
4-4 の「大家が知ったら、モニカたちは追い出される」というトリーガーのセリフから、これがかなり違法度の高いものであることがわかりますね。
でも違法だとわかっていながらモニカがそうしているのは、それだけの危険を冒す価値があるほど、家賃がものすごく安く済んでいるから、ですね。
「おばあちゃんの名義」であることは、モニカの弱点でもあり、またメリットでもある、ということがわからないと、セリフの面白さが伝わってこないのです。

また、今回の 3-6 で、ほぼ初対面のジョーイにそのことを早速告白しているところを見ると、相手をかなり信用していて、好意を持っているんだろうな、ということもわかる、ということでしょう。
相手がタチの悪い人で、そのネタを使って脅迫するような人だったら、どうするんだ、モニカ!?(笑)

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posted by Rach at 09:54| Comment(10) | フレンズ シーズン3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ご無沙汰しております。
僕が6年あまり住んでいたバーモント州でも同じ法律があるのかどうか知らないですが、僕が住んでいたアパートの家賃も6年間全然変わりませんでした。でも、契約書類には2年ごとの更新で、その際新しい家賃は大家が決めることが出来ると書いてあったような気がするので、バーモント州にはニューヨークのような法律は無かったのかもしれません。ま、周囲の部屋の家賃の差はたかだか20ドルぐらいだったとは思いますが。家賃が上がらなかった秘訣は、多分大家さんと仲良くした事でしょう(笑)。
Posted by ほんだ at 2007年08月31日 10:43
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Posted by magazinn55 at 2007年08月31日 20:13
ほんださんへ
こちらこそ、ご無沙汰しております。
6年間家賃が変わらなかった…なんて、良かったですね。たかだか20ドル…といっても、「塵も積もれば…」ですよ(笑)。やはりNYは家賃が他の地域に比べて極端に高くて、なんらかの条例が必要になってくる、ということでしょうか。
大家さんはその「家賃を決める(上げる)ことができる権利」を行使しなかった、ということになりますね。きっとほんださんが、「日本から勉強のために来た”好青年”」に見えたんでしょう(笑)。
確かに契約うんぬん以前に、人間関係を良好にすることで、ことがうまく運んでいく、ということはありますね。そんな風に「大家さんと仲良くできてたな。」というのも、アメリカでのいい思い出なんじゃないですか? いいなぁ、そういうの(笑)。
Posted by Rach at 2007年09月01日 05:56
magazinn55さんへ
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ご希望に沿えず申し訳ありません。お誘い、ありがとうございました。
Posted by Rach at 2007年09月01日 05:57
フレンズで検索してここに来ました。
とても英語の勉強になりそうなブログですね。
モニカの住んでいたアパートはRent Controlというものみたいです。
今日、たまたまフレンズの最終回を見たのですがモニカがそんなことを言っていました。
これはたしか家賃が固定されて上がらない(ほんとかな?)という、NYではとてもうらやましい制度です。
これからも英語の勉強のためにここに寄りますね。
Posted by sawataro at 2007年09月02日 09:48
sawataroさんへ
こんにちは。ご訪問&コメント、ありがとうございます。
フレンズで検索してお越しくださったとのこと、同じフレンズファンとしてとっても嬉しいです!
私も最終回のDVDを見直してみたのですが、確かに rent control という言葉が出てきますね。

セリフをそのままここで書いてしまうと、少しネタバレっぽくなるので、抜粋になりますが、
because of rent control 「レント・コントロールのお陰で」、a steal 「格安品、掘り出し物」だ、ということを言っていますね。

rent control という言葉でだいたい日本人にも見当はつきますが、いくつかの辞書にも載っています。
英辞郎では、rent control=家賃統制、家賃抑制、
ロングマン現代英英辞典では、
rent control: [uncountable]
when a city or a state uses laws to control the cost of renting houses and apartments
つまり、「市や州が、家やアパートの賃貸料をコントロールするために法律を使うこと」
この語義を解釈すると、「賃料が上がり過ぎないような法律を設けること」みたいなことでしょうか。

Wikipedia 英語版: Rent control
には、
「この rent control は a price ceiling 「価格の上限」として機能する。」
という記載があります。

「家賃が固定されて上がらない」のかどうかについてはよくわからなくて(笑)、ウィキペディアに「例えば、サンフランシスコでは、Consumer Price Index (CPI) 「消費者物価指数」の60%の家賃値上げが年1回認められている」というような記載もあります。物価に合わせてある程度は上がるのかもしれませんが、急激な賃料の上昇はない、ということのようですね。

ウィキペディアには、New York を含め、どの都市にその法律があるか、ということも載っていました。
rent control という言葉を教えていただいたお陰で、上に書いた記事よりも、詳しいことがわかりました。ありがとうございます。

是非またお越し下さいね。
Posted by Rach at 2007年09月03日 11:41
I'm AN 87-year-old woman は正しい。(英語は私の母国語だから、SAFEです)

やっぱ、英語は難しいね。:−)
Posted by Bunpo Mastaa at 2008年02月12日 16:34
Bunpo Mastaa さんへ
Thank you for correcting my mistake.

そうですね。確かに、an が必要ですね。I'm AN 87-year-old woman という文が正しいです。
DVDを確認してみたのですが、やはり(というか当然) an 87-year-old と言っていますし、DVDの英語字幕にも、I'm an 87-year-old woman who's afraid of her VCR. と書いてあります。

私が使わせていただいているネットスクリプト(transcript)に、
I’m 87 year old woman, who’s afraid of her VCR.
と書いてあったので、それをそのまま使ってしまったようです。
本来であれば、読んだ時に「あれ?」と違和感を感じないといけない部分でした。本当に英語は難しいですね。:−)

ご指摘ありがとうございました。
Posted by Rach at 2008年02月13日 15:04
長期間にわたる家賃詐欺、病院での健康保険詐欺、犬に重傷を負わせたのに自分がやったことを隠した上に謝罪も賠償もしない、違法なサルを飼っているなど、フレンズの主人公の遵法意識の低さには驚きますね。日本でもし大ヒットドラマの主人公が、あたかも生活の知恵だとでもいわんばかりに犯罪行為をしまくってたらどうなるかと考えると、文化の差はすごいなと思います。アメリカは日本よりも貧富の差が激しく、底辺人口が圧倒的に多い社会なので、そんな程度の犯罪は生活の知恵みたいに見られる土壌があるんでしょうね。

私は妻と二人でアメリカとメキシコを車で1万キロほど旅行したことがあるのですが、その時に法律が適当なアメリカ(無法のメキシコも)を体験しました。アメリカは地平線の彼方まで続く道路でもスピード違反の取り締まりはやっています。とにかく簡単にスピードが出てしまうのでアメリカで5回スピード違反でつかまりました(アメリカ人は超のんびり運転していました)。そのうち2回切符を切られたのですが、2回とも警察官にこの後どうなるのか聞くと「踏み倒せばいいよ。君たちどうせ州を越えていくし最後には日本に戻るんだろ?そんなもの払うバカがいるとはこっちも思ってないから。アメリカを十分楽しんでね。俺たちのいなか村に来てくれてうれしいよ。」みたいな答えが返ってきました。で結局払ってません。残りの3回は切符を切られなかったのですが、旅行者だと知るととてもフレンドリーで、ある人は私たちが釣りをしながら移動していると知ると、切符切るのを途中でやめて、釣り場を一生懸命教えてくれて、その後何もなかったように去っていきました。メキシコでは一度だけ捕まったのですが、その時は少額のわいろを要求されて払っておしまいでした。ただわいろの礼なのか釣り場まで案内してくれました。(メキシコは交通ルールはほぼあってないような世界でした。)自分がやったことは明らかによくないことですが、むこうにいくと普通な感じがしてしまいます。いまや日本のほうがよほど法治国家で、アメリカのほうが人情の世界ってことでしょうか?

やや趣の異なる話ですが、ホームステイ先の家の壁紙を張り替えにきた業者が、ものさしを使わずに指を広げて採寸していたのに絶句しました。しゃくとり虫みたいに広げて閉じて5回分の長さみたいな。できあがりもひどいものでした。とにかく適当な国でした。外国との商取引ではありえないくらい細かいことまで契約書に書くために、日本人からはアメリカ人は超細かい契約をする人というイメージがありますが、実際に見たリアルなアメリカ(コロラド州の田舎にいました)は超適当で、細かい約束を交わそうなんて人や業者はまず見かけませんでした。
Posted by 神田 at 2012年12月27日 11:51
神田さんへ
アメリカでの貴重なご体験のお話、ありがとうございます。

フレンズでは、「そんなことしていいのか?」的な場面がよく出てきますよね。そういうことをブログの解説で触れる時に、さらっと書いてしまっていいのか?!と自分で葛藤することもよくあります(笑)。
リアルなドラマとは異なる「コメディ」だということで、視聴者も笑いの一環として受け入れている、ということはあるのでしょうね。

アメリカとメキシコでのご体験は、「現地の人との温かいふれあい」という感じで微笑ましいですね。「俺たちのいなか村に来てくれてうれしいよ」という言葉がよく物語っていると思うのですが、いわゆるそういう「アメリカのいなか」では、日本人などの外国人を見かけることも少ないのでしょうね。訴訟大国アメリカ、というイメージが強いですが、そういう人情の世界、というのはまだまだ存在している気がします。

「指で採寸」はすごいですね。日本でそれをされたら大騒ぎでしょうね。電車のダイヤが正確だとか、店員さんの対応が誰にでも丁寧だとか、日本のそういう美点も日本にいると当たり前みたいに思ってしまいますが、外国に行くとそういう文化の違いを感じられるのも大切なことですよね。

興味深いお話、ありがとうございました。
Posted by Rach at 2012年12月27日 16:19
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