フィービーがロスを慰めているうちに、情熱的なキスとなり、ついにはプール・テーブルに横たわろうとする二人。
ロス: Wait, wait, wait, wait, wait. (待って、待って、待って、待って…)
フィービー: Huh? (何?)
(Ross tries to clear off the pool table by knocking the balls to the other end of the table, but they all bounce back, and he frantically starts to throw them into the pockets.)
(ロスはボールをたたいてテーブルの向こう側に押し出し、プール・テーブルの上を何もない状態にしようとするが、ボールはすべて跳ね返ってくる。そして、彼はむきになって、プール・テーブルのポケット[穴]にボールを投げ入れ始める。]
フィービー: Okay, it's okay. (大丈夫、大丈夫。)
(Phoebe jumps on to the table and lies down, Ross follows her and hits his head on the light hanging over the pool table.)
フィービーはテーブルに飛び乗って、横たわる。ロスはフィービーに続くが[続いて横たわろうとするが]、プール・テーブルの上にぶら下がっているライトに頭をぶつけてしまう。)
フィービー: Oh. (they start kissing again) (まぁ。[二人は再びキスを始める。])
ロス: Wait, wait, wait! (待って、待って、待って!)
フィービー: What? (何?)
ロス: My foot is stuck in the pocket. (僕の足がポケットに、はまっちゃったよ。)
フィービー: What? (何ですって?)
ロス: No, I can't get it out. (だめだ。抜けないよ。)
フィービー: Well, that's not something a girl wants to hear. (まぁ、それは、女の子が聞きたい言葉じゃないわね。)
ロス: No, come on, don't start. (they start kissing again)
(もう、やめてくれよ。そんな(いつものような)冗談は言わないで。[二人はまたキスを始める])
ロスがテーブルの上にある邪魔なボールをどけた後のト書きですが、ネットスクリプトには、Phoebe jumps on to the table and lays down と書いてありました。
が、この場合は、lay down ではなくて、lie down が正しいと思われるので、上のト書きは lie down に変えてあります。
フレンズ1-5その2 で自動詞 lie、他動詞 lay の区別について書いていますが、lay や lay down は「…を横たえる」という意味になるので、「自分が横たわる」という意味の自動詞としては「本来は」使えないはずです。
lay を使うとするならば、lay herself down と自分自身を目的語にする必要があるでしょうね。
(私の説明に間違いがあればご指摘下さい。)
今、私が上に書いたことは、一般的な lay と lie の用法です。
実は、ロングマン現代英英辞典の、lay (verb) の16番目の項目に注目すべきことが書いてあります。
lay: LIE
[intransitive] (spoken) to be in a position in which you are flat - some people consider this use to be incorrect (synonym lie)
つまり、「lay = lie。(自動詞、話し言葉) 自分が平らになる位置にいること。この使用法は誤りだと言う人もいる。」
上のロングマンに書いてあることは、「話し言葉では 他動詞 lay を、自動詞 lie 「横たわる」と同じ意味で使うことがある、使う人がいる」ということですね。
ですから、ネットスクリプトの lay down という表現も別に「間違い」だと言うことではなく、そう書いても lie down だと理解してもらえる、ということなのでしょう。
私はただ、「lie down と書く方が普通であり、一般的だ」と思うと言いたかっただけです。
そして、今回の lay と lie の件がそうだとは言いませんが、「ネイティブでも間違うことはある、間違っている可能性がある」という「当たり前のこと」も言いたかったのです。
日本人が日本語を書く場合にも誤字・脱字があるのと同じですね。
My foot is stuck in the pocket. について。
stuck は「はまった、挟(はさ)まった、動かない、動きが取れない」という意味です。
フレンズ3-3その22 では「腕が挟まった」シーンがありましたね。
そこで、stuck という単語について説明しています。
今回は、ロスがテーブルに飛び乗った拍子に、足がスポッとハマってしまったんですね。
で、ロスは foot が抜けない、と言う意味で、I can't get it out. と言っているのですが、それに対してフィービーは意味深なことを言っています。
このフィービーのセリフの意味ですが、私の解釈を述べてみます(私の考え過ぎという可能性もあるのですが…笑)。
「抜けない」というロスのセリフから想像するに、今こうしてエッチをしようとしている状態でのセリフなので、まさにエッチをしている時に、ロスの「あれ」が抜けなくなってしまった、みたいに聞こえるので、それは聞きたくないわねぇ、と返しているように思います。
詳しくは知りませんが、本当に抜けなくなってしまった場合は、病院にいかないと分離できない(?)などと言う話を聞いたことがありますので、そんなことになったらすごく困るから、「抜けない」なんてセリフは聞きたくない、聞くのが怖い、ということでしょう。
もしくは、エッチなことをしている時は、もっとロマンチックでうっとりするような言葉を聞きたいのに、「抜けない」なんて現実に引き戻されるような言葉を聞かされたら、女の子は嬉しくないわ、みたいな感じかも。
Don't start. は「始めないでくれ。」ということで、相手が何か小言を言おうとしている時などに使ったりしますね。
いつものやつが始まりそうなので、「また始まったよ…いつものやつはやめてくれよ。」というニュアンスです。
この場合は、フィービーが、「シリアスな時にそういう冗談を言ったりする」ことを指しているのでしょう。
今、僕はマジなんだから、シリアスな時にそんなジョークはやめてくれ、やる気をそぐような(笑)、情熱に水を差すようなことを言わないでよ、という感じかなぁ、と。
上にも書いたように日本語でもあきれた顔で「また始まったよ…」と言うと、「何が」始まったかは言わなくてもわかる、ということがありますよね。
それと似たニュアンスだと思います。
(今日のポイント)
・Don't start. 「(いつものやつを)始めないで。」→「いつものやつはやめて。いつもみたいにまた…をしないで。」
・lay 「他動詞」を lie 「自動詞」の意味で使うことができるか?
英語でも、「その言葉の使用法が正しいかどうか、世代などによって意見が分かれる」ということがあります。
また、ネイティブにも当然、「誤字・脱字」などの間違いがあります。
それを見て、「ネイティブでも間違うんだから、自分の話す・書く英語もブロークンでもいいんだ。」と自分を納得させる日本人英語学習者もおられるかもしれません。
しかし、例え typo (タイプミス)があったとしても、ネイティブの使う英語には、自然なリズムがあり、シンプルな形で的確にイメージを伝える力があります。少しの typo で文が全く意味不明になってしまう、ということはないでしょう。
「少々の間違いがあっても、意味は間違いなく通じる」という部分は、残念ながら、ノンネイティブにはなかなか身に付きにくい。ひたすら「数をこなす」ことで「英語の持つ感覚」に慣れていくしかしょうがないんですね。
ですからせめて日本人は、基本・文法に忠実に、きっちりした英語を使うように心掛けたいと思うのです。ノンネイティブがブロークンでもいいと開き直ってしまうと、「ネイティブには意味の取れない不思議な文章を作り上げてしまう」可能性があります。
私は、「ナチュラルさ」でネイティブにかなわない分、「基本に忠実さ」で頑張っていきたいと思っています。
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「本当に抜けなくなって病院へ…」うんぬんの話はやはり考え過ぎだったでしょうか?(笑)。まだそういうことにあまり詳しくないウブな頃に(笑)、そういう話だけを聞いてそれがあまりにも衝撃的だったので、今回のセリフでそれを思い出してしまったんですよ。私にそういう経験があるってことでは決してありません(笑)。
get it out するだのしないだの、なんて話じゃなくて、もっとロマンチックな言葉を聞かせてよ、ムードが足りないわねぇ、ということなんですね。
put words in/into someone's mouth は「人が言いもしないことを言ったと言う、実際には言わなかったのに人が言ったと言う」という意味ですね。
ロングマン現代英英辞典では、
put words into somebody's mouth:
(spoken) to tell someone what you think they are trying to say, in a way that annoys them
例) Will you stop putting words into my mouth - I never said I disliked the job.
つまり、「こう言おうとしていると思う、と相手に言うこと。その人を不快にする方法で。」
「私の言うことを勝手に決め付けないでくれ。私はその仕事が嫌いだと言ったことは一度もない。」
Don't start. は相手が何かを始めようとするのを見越して、それを相手が始める前に止めようとする、という感じのニュアンスですよね。相手が愚痴っぽい人だったら、「また愚痴を言うつもり? それはやめて。聞きたくない。」みたいな感じでしょうか?
私のイメージは「茶化すのはやめてくれ。」みたいな感じだったのですが、「勝手に解釈しないでくれ、勝手に話を作らないでくれ、いいように話を変えないでくれ。」「何のことかわかってるくせに、わざとそんな風に解釈しようとするのはやめてくれ。」という感じでしょうか?
あくまでも私の思いつきです。ロス: No, I can't get it out. (だめだ。抜けないよ。)の台詞で足がぬけないのをフィービーは違うものがぬけないととらえてるようにロスに言ったのでRachさんの解説のように「わかってるくせに茶化さないでよ」とロスがいってるのだと思います。put words into someone's mouthは人の口に言葉を入れるですね。ネタバレにならなければいいのですが。10-8でRoss :She's putting words in your mouth!という台詞がありました。会話ではintoがinになりますが、これはある人が故意にある人に自分の口からは言えないので言わせているのですね。ついでのコメントですがIt's gonna be okay.の台詞のシーンはよかったですね。実はグランド・フィナーレの最後のチャンドラーの台詞がIt's gonna be okay.(正確には一つ前ですが)で完結するんですよね。それも感動的なシーンでした。今回の台詞が将来を暗示してるというのは、いくらなんでも考えすぎですが、どういう状況で使われた台詞かを思い浮かべるのも英語学習に効果的かも知れませんね。
お返事ありがとうございます。Don't start. そのものがいろいろと応用の利くセリフのようで、その場に合わせていろいろな解釈が可能なような気がします。私は最初「シリアスな時に冗談を言わないで」だと思ったのですが、今は、「わかってるくせに茶化さないで」が一番しっくり来る気がします。
10-8 で確かにそういうセリフがありますね。その言っている内容が誰かを彷彿とさせるので、「誰かが故意に言わせている」のに気付くというシーンでした。その後に、そのイディオムを使うジョークも出てきますね。解説できる日が楽しみです(笑)。
グランド・フィナーレ(フレンズ最終回)の It's gonna be okay. もいいですよね。3-6 のそのセリフが、それにつながっているというのは、いくらなんでも…でしょうが(笑)、「どういう状況で使われた台詞かを思い浮かべるのも英語学習に効果的かも知れませんね。」というお話には、全く同感です。
近いうちに、そういうことについて書こうと思っていました。
グランド・フィナーレの最後の最後のチャンドラーのセリフも、チャンドラーらしくていいですよね。解説できる日が…(以下、省略)(笑)。