[Scene: the bar, Chandler is playing pool, as Rachel enters.]
バー。チャンドラーがプールをやっている。そこへレイチェルが入ってくる。
チャンドラー: I can't believe you came back. (君が帰ってくるなんて、信じられないよ。)
レイチェル: Don't say anything. I don't wanna speak. I don't wanna think. I just want you to take me and kiss me and make love to me right here, right now. (何も言わないで。話したくないの。考えたくないの。ただ、あなたに、抱いて、キスして、愛してもらいたいの、今すぐ、ここで。)
(She hits the jukebox Fonzy style, and Time of the Season starts to play, as they start to kiss.)
レイチェルはフォンジースタイルで、ジュークボックスをたたく。すると、「ふたりのシーズン」の演奏が始まる。そして二人はキスを始める。)
キキ: Rachel! Rachel! (stirs Rachel from her dream, she's in her car driving back from the city) レイチェル、レイチェル! [レイチェルを揺り動かして、夢から覚まさせる。レイチェルは車の中にいて、シティから運転して帰っているところ])
レイチェル: What? (何?)
キキ: You missed the exit. (あなた、出口を下り損ねたわよ。)
レイチェル: Oh, sorry. (まぁ、ごめん。)
ベッツィー: My God, what were you thinking about? (全く。何を考えていたの?)
レイチェル: Um, (shyly) Barry. ([恥ずかしそうに]バリーよ。)
キキ&ベッツィー: Awwww!! (まぁ!)
レイチェルは何とも情熱的なセリフを言っていますね。
take というのは漠然とした言葉ですが、チャンドラーが私を「手に取る」という感じで、抱く、というようなニュアンスだと思います。
引き寄せて、とかでもいいかも。
フレンズ2-13その9 でも、
スージー: I want you right here, right now. (あなたが欲しいの。今すぐ、ここで。)
というセリフが出てきましたね。
ト書きにある Fonzy style について。
これは、このジュークボックスのデザインのことなどではなくて、この叩き方、というか、こうやってジュークボックスを鳴らす方法、みたいなことのようです。
つまり、hit ... Fonzy style で、「フォンジー風に…をたたく」ということらしい。
-style は連結形で、ほかの言葉の語尾に付いて、「…スタイルの」という形容詞、「…スタイルで」という副詞になります。
Fonzy style は、American-style 「アメリカンスタイルで」と同じような副詞「フォンジースタイルで」になるのですね。
で、その Fonzy というのは誰かと言うと、多分、この人みたいです。
Wikipedia 英語版: Fonzie
綴りは、Fonzy ではなくて、Fonzie が正しいようです。
アメリカのシットコム Happy Days に出てくるキャラクターの名前で、本当の名前は、Arthur Herbert Fonzarelli (アーサー・ヘルバート・フォンツァレリ??)というそうです。
シットコム Happy Days についてはこちら(↓)。
Wikipedia 英語版: Happy Days
フレンズ2-21その4 で話題に上っている、Laverne & Shirley は、この Happy Days のスピンオフなんですね。
Fonzie のウィキペディアで jukebox という単語で検索すると、jukebox という言葉が何度も出てくることがわかります。
それを見ると、どうやら、Happy Days というシットコムで、フォンジーがジュークボックスを叩いて直す、というか、叩いて演奏を始めさせる、というシーンが何度か出てきたようですね。
上のウィキペディアの References in popular culture にも書いてあるように、他のドラマなどでその「ジュークボックスを叩いて鳴らす」仕草を真似するシーンがいくつもあるようです。
残念ながら、今回のフレンズ3-6 のこのシーンについては書いてありませんが、これもまさにその「フォンジー」の真似なんでしょう。
ドンッ!と叩いて、音楽が流れてきたので、ただそれだけでもおかしいのですが、ネイティブの人は、「これってフォンジーの真似だよ!」「お前はフォンジーか!」みたいに、余計に笑えるわけですね。
このト書きがなければ、気付かないところでした。
ちなみに、このフォンジーというのは有名な人のようで、後のエピソード、フレンズ5-3 で、このフォンジーの大ファンだと言うお医者さんが出てきます。
その人は、自己紹介で、"And also, I love Fonzie." 「それからね、私はフォンジーが大好きなんだ。」と名乗り、ことあるごとにフォンジーの話ばかりしていました。(また、そのエピソードにたどり着けば説明します…笑)
この 5-3 の件については、上のウィキペディアに書いてあるのですが、その部分を読むとネタバレになりそうなので、気をつけて下さい。
ジュークボックスから流れる曲、ネットスクリプトには、"It's That Time of Season" と書いてあるのですが、正しいタイトルは、"Time of the Season" のようです。(ですから、上のスクリプトはこちらに訂正してあります。)
この曲については、フレンズ2-23その8 のコメント欄 で触れています。
ここでも説明しておくと、Time of the Season は、邦題「ふたりのシーズン」で、歌うのは The Zombies (ザ・ゾンビーズ)。
60年代イギリスの有名なバンドだそうです。
日産ティーダが発売になった時のCMソングに使われていましたので、ご存知の方も多いかも。
そして、チャンドラーとレイチェルはキスをする…のですが、この大胆なシーンは、実はレイチェルの妄想であったことが判明します(やっぱりそんなこったろうと思った…笑)。
stirs Rachel from her dream について。
stir は、「かき回す」。
私は stir と言うと、フレンズ2-5その2 で取り上げた 007 のセリフ、
“Vodka martini. Shaken, not stirred.” (ウォッカ・マティーニ。ステア[かき回す]でなくシェイクして。)
を思い出すのですが、そんな風に何かを動かす、という意味にもなり、また「人を目覚めさせる、起こす」という意味にもなります。(相手の肩などをゆすって起こす感じが出ている気がします。)
You missed the exit. について。
日本語で、「間違う」ことを「ミスをする」と言いますが、このミスは、多分、mistake から来た言葉でしょう。
仕事でミスをした、テストでミスをした、と言う場合は、make a mistake を使うかな、と。
miss は「的を外す、逃す、逸する、し損なう」ということで、「失敗した」という意味では mistake と意味的に重なる部分もあるのですが、本質的には意味は異なると思います。
日本語の「ミスをする」のイメージがあるので、miss the exit を「出口を”間違う”」みたいに訳す方もおられるかもしれません。
でも、そう訳してしまうと、「間違った別の出口で下りてしまう」ように聞こえますね。
miss the exit のニュアンスは、「下りるべき出口で下り損ねる」という感じです。
実際、レイチェルは高速にまだ乗ったままで、どこかの出口では下りていないはずです。
miss the train なら「電車に乗り遅れる、乗り損ねる」になります。
I miss you. 「あなたがいなくて寂しく思う。」というのも、「”本来はいるべきはずの”あなたがいないので、寂しい。」という感じなんですね。
ジュークボックスから流れるこの歌は、レイチェルが運転する車の中でかかっていた曲だったんですね。
しかし、チャンドラーの妄想ならともかく、レイチェルがこんなことを想像するなんてねぇ(笑)。
あの時は、「こんな男、眼中にないわ。」てな感じだったのですが、バリーだけが一人の男だと考えると、さっきあったあの人でもいいや(笑)、みたいについ、潜在意識でそういう想像をしてしまったのでしょうか。
まさか「さっき偶然会った男の人、元同級生モニカの男友達」のことを考えていた、とも言えず、とっさに「バリー」と答えてしまうレイチェル。
みんなの冷やかす声が却ってレイチェルには辛いでしょうね。
しかし、いつもはなかなかそんな対象に見られないチャンドラーですが、想像の中とはいえ、キスできて良かったですね。
フレンズ1-22その1 では、レイチェルがチャンドラーとエッチした夢を見た、という話もありました。
深層心理を探ってみると、レイチェルはチャンドラーのことが結構好きなのかも、ね(笑)。
(今日のポイント)
・miss のニュアンス。日本語の「ミスをする」=「間違える」とはニュアンスが異なる。
・他のシットコムからのサブカルネタ。
そんなトリビアどうでもいい、という話もありますが(笑)、脚本家や演出家は、観客がその元ネタがわかることを前提に、そういうパロディを入れているわけです。
確かに、外国人である日本人がそこまで理解する必要はないかもしれない。
でも、誰かが「何じゃこりゃあ!」と叫んだ時に、「お前は松田優作か!」「お前はジーパン刑事か!」とツッコミを入れられる人とそうでない人では、「何が面白いのか」という笑いの質が異なりますよね。
私は(あくまでも「私は」ですが、)パロディであるならば、そのパロディの元ネタを知った上で笑いたいと思うし、特定の世代のネイティブなら誰でも知っているようなサブカルネタを知識として持っていることも、決して無駄ではないと思うのです。
(Rach からのお願い)
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2007年09月11日
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