チャンドラー: What a wank! (何ていやな野郎だ!)
ジャニス: Oh, I cannot believe he's using our divorce to sell mattresses! (まぁ、信じられないわ。私との離婚を、マットレスを売るために利用してるなんて。)
モニカ: I know. At 499 for a pillow-top queen set, who cares about the divorce? Those babies will sell themselves! (they all stare at her) And I'm appalled for you, by the way. (そうよね。ピロートップ・クイーンセットが499ドルなら、誰が離婚を気にするって言うのよ? そのベイビーたちは勝手に売れるわ。[フレンズは全員モニカを見る] ちなみに、私はジャニスのことを思って愕然としてるわよ。)
マットレス・キング: (on TV) I'm close! I'm cheap! I'm the king! ([テレビで] 私はケチだ! 私はケチだ! 私はキングだ!)
wank というのはちょっとお下品な言葉ですね。
動詞でも名詞でも使うのですが、日本語で書くのが恥ずかしいので、ロングマン現代英英辞典の語義を以下に書いておきます。
wank (verb): [intransitive] (British English informal not polite)
to masturbate
wank (noun): (British English informal not polite)
1. [singular] an act of masturbation
2. [uncountable]something which you think is very stupid, useless, or of bad quality (synonym: rubbish)
基本的な意味は masturbate で、そこから名詞 2. の意味、「非常に愚かな、無意味な、または品質が悪いと思われるもの。同義語は rubbish「ごみ」」に派生したようです。
元々の意味を考えると、そういう非常に悪い意味で使われるだろう、ということは見当がつきますし、チャンドラーの吐き捨てるような言い方からもわかりますね。
離婚話を持ち出しながら、安売りの話に持っていくことに、ジャニスは嫌気がさしているようです。
それに対してモニカは違ったところに反応しています。
「こんなに良い商品で、こんなに安い価格だなんて」とモニカは思っていて、そんな離婚話なんか持ち出さなくても、ほっといてもその値段なら勝手に売れるわよ、だから、そんな離婚話を使うなんて信じられない、無意味なのにね、とでも言いたいようです。
sell oneself は、sell を他動詞と考えると、「自分を売る、自分を売り込む」ということになります。
また、oneself を「自ら、自分自身で」などの強調の意味と捉えて、sell を自動詞のように解釈すると、「(ものが)自ら売れる」という意味になり、「勝手に売れる」という感じになるでしょうか。
自動詞の場合だと、sell by themselves のような意味になると思います。
「自らを売り込む」でも「勝手に売れる」でも、他の助けや変な小細工などは必要ない、という感じが出ますね。
baby は「可愛いやつ、素敵なやつ」という感じでしょう。
appall は「(人を)ぞっと・ぎょっと・愕然とさせる」。
be appalled と受身で使うと「ぞっとした、愕然とした」という意味になりますね。
be appalled by なら、「…で愕然とする」ですが、この場合は、for you で、「あなたのために、あなたのことを思って」愕然とした、と言っているのです。
by the way は「ところで」で、普通は文頭につけて、本題から少しそれる話題を出す時に使いますね。
今回のように、最後に by the way をつけると、「今の話とは別に、言い忘れてたけどそう言えば」みたいな感じが出ます。
どんなに値段が安いか、ということばかり今しゃべってたけど、もちろん、ジャニスの離婚を利用したことに関しては、ジャニスのことを思って、私も一緒に憤慨していたわよ、というのを「付け足して」いるのですね。
"I'm close! I'm cheap! I'm the king!" の部分、意外と日本語訳をどうしようか悩んでしまいました。
close は「接近した、近い」という意味ですが、金銭面で言うと、「けちな、けちで」という意味があります。
He is close with his money. で「彼は金に汚い。」という意味になります。
ロングマン現代英英辞典では、
close [adjective]: UNWILLING TO SPEND MONEY
[not before noun] not generous
close with
例) You won't get a penny out of Jack - he's very close with his money.
つまり、close の意味は「気前がよくない」。
close with を使った例文は、「ジャックからは1ペニーもゲットできないよ。彼は金に汚い[細かい]からね。」
また、money を主語にした Money is close. だと「金詰まりだ。金銭[金融]面で逼迫(ひっぱく)している。」という意味になります。
cheap も普通は「価格が安い」という意味で使いますが、人の性格を表す場合だと、上の close と同じ「けちな」という意味になります。
同じくロングマンでは、
cheap: NOT GENEROUS
(American English) not liking to spend money (British Equivalent: mean)
例) She's too cheap to take a cab.
つまり、「(アメリカ英語) お金を使うことを好まない。イギリス英語の同義語は mean」
例文は、「彼女はケチだから、タクシーを使わない。」
ですから、I'm close. I'm cheap. はどちらも「私はケチだ。」ということになるはずです。
"I'm close! I'm cheap! I'm the king!" は「私はお金を使うのが嫌いな王様だ。」みたいな感じなんでしょうかねぇ?
この人はこのベッドを売っている会社の社長さんなので、この人が「ケチ」だとすると、お金を儲けるために悪い商売をしている、つまり品質の悪いベッドを高く売りつけているようなイメージを与えそうな気もするのですが、「ケチな私も納得しているよ。」「品質が良くて、値段も安い、このベッドをオススメするよ。」という宣伝文句なのかなぁ、と思うのですが、どうでしょう?
(今日のポイント)
・sell oneself のニュアンス。
・「信じられない」と思うポイントが、モニカだけ違っている。「注目してるのは、そこかい!」とツッコミを入れて下さい(笑)。
・「ケチな」という意味の形容詞、close, cheap
(Rach からのお願い)
今回の記事、面白いと思われた方は、下のランキングサイトをクリックして下さい。
皆様の応援が、とても励みになっています。ありがとうございます。
人気blogランキング
にほんブログ村 英語ブログ
私の理解では、
私の店は近い、私の店は安い、私の店は(マットレス)キングである。
Weは「我々の会社」(プロダクト発表会や会社のウェブサイトで、we offer ...)、「国家(The USとか)」(大統領が話している際)を指す場合があるので、ここの「I」は「私の店」だと思います。
「近い」はいろいろの意味で捉えます。(物理距離上の近い、salemanの親切さや、送料無料のサービスやによってお客さんとの心に近い)
close は「近い」「親しい」という意味もありますね。cheap と似たような意味があったので、言葉を変えて表現したのかと思ったのですが、違う意味である可能性も大いに考えられますね。
I は社長である「私」と同時に「私の店」も指している、というのもよくわかります。
この店は、SEVEN TRI-STATE AREA LOCATIONS 「近隣3州に7店舗」ということなので、close は「近い」という長所を述べているのかもしれません。
ご意見ありがとうございました。
I'm cheep!は「私は安い!」、「私の店は安い!」、「私はケチだ!」、「私の店はケチだ!」の4つの可能性がありそうですが、「私は安い!」と「私の店はケチだ!」は論外なので、「私の店は安い!」か「私はケチだ!」のどちらかになりそうです。
「(消費者としての)私はケチだ!」と言ってしまうと、「ケチなあなたはこちらへ」と消費者をケチだとバカにしているように聞こえて、かえって客数が減りそうです。また王様は売っている側なのでこの場面だけ消費者側になるのもおかしいと思います。消費者としての王様のイメージは、一般的には、高価できらびやかなものを買うとか値段も見ずに豪快な買い物をする等、真逆なので、王様がケチという珍しい設定にするならそのような逸話の紹介が必要だと思われます。ここでは国民思いの太っ腹な王様というキャラになっていそうです。したがって「私の店は安い!」と解釈するべきだと思います。
一つ引っかかるのがcheepという言葉で、単純に安いというだけでなく粗悪なという意味で使うことも多いので、この言葉はあまりイメージがよくありません。本来ならinexpensiveやreasonableを使うべきです。私はこの場面ではこの王様のソフィスティケイトされていないキャラを優先してインパクトのあるcheepをあえて使ったのだろうと推察します。
さらにI'm cheep!のIが私の店でなくて私という人だと考えた場合、単にケチだというだけでなく、育ちの悪い悪趣味な人、凡庸でつまらない人、下劣な人、戦略のない人、(女性を指すのでこの場面では関係ないですが)だれとでも寝る女などと、人を形容する場合にはかなりひどい意味で使われている感じがして、宣伝文句に適さないと思います。私はこの場面の役者の腰に手を当てて胸を張った演技からはdependableな印象を受けますが、私はcheapだと言っている感じはしません。
http://www.ahdictionary.com/word/search.html?q=cheap
6. Worthy of no respect; vulgar or contemptible: a cheap gangster.
7. Stingy; miserly.
http://www.urbandictionary.com/define.php?term=cheap
2. An individual who is easy to have sex with
3. An individual who uses the same tactic/tactics to win
総合して考えると主語Iはすべて私の店を指していて、
I'm close! 「MATTRESS KINGはあなたのそば(親切に相談に乗ると物理的に近い両方の意味)に!」
I'm cheep! 「MATTRESS KINGは安い!」
I'm the king! 「MATTRESS KINGは(マット界の)王様だ!」
という意味になると思います。
コメントありがとうございます。
そうですね、おっしゃる通り、I はこのキングその人(ジャニスの夫)のことを述べているのではなく、「マットレス・キングという私の店」のことを表しているのでしょうね。
今回のセリフでは、with money を伴っていないことから、I'm close. は「私の店は近い」と理解する方が自然ですね。
また、cheap という単語は、たくさんの例を挙げていただいた通り、「人を形容する場合にはかなりひどい意味」の単語ですから、これも、「私の店は安い」という意味だと考える方が妥当な気がします。
私は上の記事で、I を「私」として解釈していますが、コメントを読ませていただいて、どれもすべて、「会社の顔として I と言っている」→「I は私の店を指している」と考える方が、すんなり納得できる気が私にもしました。
貴重なご意見ありがとうございました。