自分の両親が離婚する原因となった男について語っているチャンドラー。
チャンドラー: And I hated that guy. And it didn't matter how nice he was or how happy he made my dad. (そして、俺はそいつを憎んだ。彼がどんなにいい人だろうと、彼が俺のパパをどんなに幸せにしようと、そんなことは関係なかった。)
ジャニス: Wow! (まぁ!)
チャンドラー: Yeah, well. It's the right thing to do. (あぁ。これが正しい行動なんだよ[こうすべきなんだよ]。)
深刻な話をしていながら、チャンドラーのセリフには、ちゃんとオチがついています(笑)。
チャンドラーとしては、オチのつもりで言っているわけではなくて、事実を述べているだけなのですが、離婚の原因になった男、というのは、「ママの男」じゃなくて、「パパの男」だった、ということなのですね。
フレンズ1-13その5 で、
チャンドラー: If I turn into my parents, I'll either be an alcoholic blond chasing after 20-year-old boys, or I'll end up like my mom! (俺がもし両親みたいになったら、20歳の男を追い掛け回す酔っぱらったブロンドになるか、ママみたいになっちゃうか、だな。)
というセリフが出てきて、そのブロンドとは誰のことか、について考察したことがあります。
私は、an alcoholic blond chasing after 20-year-old boys という「酔っ払いのブロンド」はチャンドラーのパパを指しているのだと解釈しました。
実は、後のシーズン7に出てくるパパはブロンドではありません。
私の解釈では、それは長期ドラマにありがちな「設定の統一が取れてない」というヤツかな、と思っています。(←自分に都合のいい解釈ですが…笑)
また、「ブロンド」だと言うことで、母親のノーラ・ビングのことを視聴者に想像させておいて、最後に実はパパのことだった、と落とす、というテクニックの一つかな、とも思うのです。
私はその「チャンドラーのパパはゲイ」説が、今回のエピソードではっきりした、ということになると思うのですね。
(今回の 3-8 のこのセリフのことが頭にあって、「パパはゲイである」という先入観を持って 1-13 のセリフを解釈してしまった、という逆の作用も考えられるのですが…)
今回のセリフについてその「オチ」の仕組みを詳しく見てみると…。
"when my parents split up, it was because of that guy." と聞いた時点で、普通は「男が原因で別れた」→「妻に男ができた」ということだと思いますよね。
最後のセリフ、"And it didn't matter how nice he was or how happy he made my..." まで聞くと、「その男が俺の○○(親)をどんなに幸せにしたとしても、そんなことは重要じゃない」と言っているのがわかります。
He made my ○○ happy. 「彼は俺の○○を幸せにした」の happy が前に出て、how happy 「どんなに幸せか」は問題じゃない、と言っているのです。
で、誰を幸せにするのかというのが最後の最後の単語でわかるのですが、それが一般的な予想に反して、dad であった、というところが、爆笑のポイントなのですね。
この落とし方は絶品だなぁ、と思います。
そして英語だからこそ、この落とし方が可能なのだと。
日本語ではこのように目的語が最後に位置しないので、このセリフを最後の最後で落とすように訳すのは大変難しいです。
何とか「パパ」を最後に持ってこようと思うと、
「彼が俺の”親”をどんなに幸せにしたとしても、そんなことは重要じゃなかったんだ。その親ってのは、俺のパパのことなんだけどね。」
みたいに、わざとらしいオチになってしまいますよね。
日本語訳でもその「内容の面白さ」はわかります。
でも、本当にオチ(punch line)の部分でドッと爆笑するためには、英語のセリフの語順で聞かないと、その面白みが完全には伝わらない気がするのですね。
"how happy he made my dad." と聞いて、"Dad? You said 'dad'?" と思わず聞き返してしまうような反応ができて初めて、ジョークを英語で理解することができた、と言える気がします。
まぁ、そのオチはともかくとして、「その人がいい人がどうかなんて関係ない、その人とパパがどんなに愛し合っていようが関係ない、俺にとっては、家族を引き裂いた reason でしかなかったんだ」という言葉は本当に重いですね。
私も子供を持つ親として、肝に銘じておかなくっちゃ…(←おいおい…)。
the right thing to do は「すべきである正しいこと」、つまりは「正しい行動、すべきこと」ということです。
フレンズ2-8その10 では、
ロス: I did the right thing. (僕はするべきことをしたんだ。)
というセリフもありました。
その過去記事でも書いたのですが、「するべき正しいことをする」という言葉には、自分の感情はともかく、客観的な状況から判断して、より正しいと思われる方を選ぶ、というニュアンスが感じられます。
今回も、本当はチャンドラーは別れたくはない、でも、自分の過去の経験を考えると、俺がジャニスと元夫を引き裂くのは正しいことではない、二人の間の子供がどんな気持ちになるかを俺は誰よりもわかっているから、その子のためにも正しい選択をすべきなんだ、ということです。
ジャニスは彼のところに戻るべきだし、俺はジャニスと別れるべきだ、それが正しいことなんだ、と自分に、そしてジャニスに言い聞かせている感じですね。
(Rach からのお願い)
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重要単語chaseで、Don't chase U down.(自分自身を追い込まないで)何かの映画のワンシーンだったような。
it does't matter = none of one's businessってよく日本の試験問題傾向大ですよね。
Do the right thing(正しい事をやれ). 黒人指導者マルコムXの映画のタイトルだったかな?
英国人のHの発音が抜け落ちる発音に、あぁ〜私は美国アメリカ英語教育を受けてきたんだなあとつくづく思う今日このごろです。
愛沙の「実践現代中国語単語集」世界情勢から中国語を学ぼう!
いつも記事を読んでいただいてありがとうございます。
上の記事中に出てきた、chase after はまさに「…の後ろを追いかける」ですが、chase down は「〜を最後まで追いかける、追いつめる」みたいなニュアンスが感じられる気がします。物理的だけではなく、そんな風に精神的に「追い込む、追いつめる」のような意味でも使われるのですね。
It doesn't matter とか、I don't care とかの「どーでもいい」というニュアンスの言葉は、ドラマではしょっちゅう出てきますよね。
IMDb: Do the Right Thing (1989)
http://www.imdb.com/title/tt0097216/
ほんとだ、そういうタイトルの映画、あるんですね。(私は知りませんでした…)
イギリス式発音では、what, which のような疑問詞とか、while, whistle のような単語は、Hを発音しませんよね。私が好きなドラマはアメリカのものばかりなので(たまたまそうなっただけなのですが)、私もアメリカ発音の方が聞き取り易く、耳に馴染み易いですねぇ…。アメリカ英語教育、私も受けたかったな…(笑)。
愛沙さんは池袋がお好きなんですね。私は関西人なもので、池袋と聞いても、イメージがわかないんですよ…。