ロス: Okay, the other night I was leaving the museum just as Laser Floyd was letting out of the planetarium. Without even trying, I sold 50 boxes! That's when it occurred to me. The key to my success: The munchies. So I ah, started hitting the NYU dorms around midnight. I am selling cookies by the case. They call me "Cookie Dude"! (よし話してやるよ。ある晩、ちょうどプラネタリウムのレーザー・フロイドが終わった頃に、博物館を出たんだ。何も努力しなくても、50個売れたんだよ。その時、僕に(ある考えが)ひらめいたんだ。僕の成功への鍵がね。「空腹感」だよ。それで、真夜中頃にNYU(ニューヨーク大学)の寮を訪ね始めたんだ。僕はクッキーを大きなケースごと売る。彼らは僕を「クッキー・デュード」って呼ぶんだよ。)
昨日は、レーザー・フロイドまでを説明しました。その続きです。
munch は「(食べ物を)むしゃむしゃ、ばりばり食べる」。
私が昨日書いた日本語訳では、The munchies =むしゃむしゃ食べるやつら、と訳したのですが、それについて、昨日の記事、フレンズ3-10その18 のコメント欄 でご指摘があり、また貴重な情報を教えていただきました。
その情報を参考に、私も再度、考え直してみました。
まず、昨日の訳を間違った理由について。(却ってこんがらがるという方は、(言い訳はここまで)までワープして下さい。)
昨日の日本語訳で、「むしゃむしゃ食べるやつら」と「人」のように訳してしまったのは、The munchies の munchies を動詞 munch 「むしゃむしゃ食べる」の3単現(3人称・単数・現在)だと思って、the person who munchies みたいな感じに捉えてしまったようです。
さらにそのイメージを「やつら」と複数化しているのは、the wounded 「負傷者」のように、「the+過去分詞形」で「集合的に人を表す」という表現のイメージが頭のどこかにあってそれとごっちゃにしてしまったようですね。
でも、こういう集合名詞の場合は「過去分詞形」でないといけないので、それを混同してしまうのは完全な間違いです。
3単現、つまり単数だと思っていながら、複数形の集合名詞を想像しているところは、一貫性に欠けるというか、致命的というか(笑)。
さらには、munch の3単現は、munches という綴りになり、munchies ではありませんから、ここは動詞ではない、ということです。
ではこの munchies は何かというと「名詞」ですね。
普通は、The munchies という形を見たらすぐに、「the+名詞の複数形」だと気付くと思うのですが、何故か私は「動詞を使った特殊な形」だと思い込んでしまったようで…思い込みって怖いわっ(笑)。
紛らわしいことを書いて申し訳ありませんでした。
(言い訳はここまで)
それで munchies を名詞だと思って考えると、辞書にそっくりそのままの表現が載っていました。
ロングマン現代英英辞典では、
munchies: [plural] (informal)
the munchies
a feeling of wanting to eat something, especially food that is not healthy for you
have/get the munchies
例) Get me a packet of crisps - I have the munchies.
つまり、「何か、特に自分にとってヘルシーでない食べ物を食べたいと思う感情」。
例文は、「ポテトチップスひと箱持ってきてくれ。無性に腹がすいてるんだ。」
ここでの munchies は名詞 munch の複数形、ということで、名詞の場合はもっぱらその複数形の形で用いられる、ということのようです。
単純に訳すと「空腹感」なのですが、ロスが言っているここでの空腹感は、ちょっと深い意味のある空腹感、なんですね。
コメント欄で「マリファナを吸って数時間すると無性にお腹がすく」という情報を教えていただいたのですが、今回はまさにそのことを言っているようです。
コメント欄で教えていただいたように、Wikipedia 英語版: Munchies にも cannabis (大麻、マリファナ)という言葉が出てきます。
Urban Dictionary にもそういう記載がありました。
Munchies:
When you get hungry after smoking weed. Usually people will eat a lot of junk food.
つまり、「マリファナを吸った後に空腹になると、たいていの場合は、大量のジャンクフードを食べる。」
ピンク・フロイドのプログレッシブな音楽のイメージが、マリファナを吸っていることを匂わせている、ということのようです。
また、dorm は dormitory 「(学校などの)寄宿舎、寮」の略なので、the NYU dorms は「ニューヨーク大学の寮」ということですね。
真夜中の大学の寮と聞いて、すぐにマリファナのイメージが浮かぶのかどうか?ですが、大学生がマリファナを吸う話は、アメリカの映画やドラマで時々出てくるようです。
フレンズ6-9 にも、ある人が大学時代に marijuana を吸って、ハイになった(got high)という話が出てきますし。
日本のドラマの場合だと、こんな風に実在する大学名を出して、それを示唆するセリフを言うのは非常にマズイ…ということになるでしょうね。
ある意味、日本語では忠実に訳したくても訳せない部分なのかもしれません。
夜遅いプラネタリウムが終わった後、夜中の大学の学生寮、どちらも「夜中で小腹が空いている(ラーメンでも食べたくなる…?)」みたいなイメージはすぐに浮かぶのでそういう「普通の空腹感」として解釈することも可能なのですが、このやり取りの最後に、やっぱり麻薬がらみかな、と思わせる部分がありますので、私も「マリファナによる空腹説」に賛成(?)します。
それは最後に説明します。
hit は「打つ」「当たる、当てる」ですが、ここでは「訪れる、訪問する」「トライする」みたいな感じでしょうか。
An severe earthquake hit the region. 「激しい地震がその地域を襲った」という場合は、災害などがその場所を襲う、ということで attack と似ていますね。
寮にアタックしてみた、などとも言えるかもしれません。
hit には「到達する」という意味もありますが、とにかく何かの対象物に「当たる」つまり「接触する」感じがあるんでしょうね。
日本語でも「こっちを当たってみる」などと言いますから、感覚は似ているのかもしれません。
started と過去形だったのに、ロスの話は後半、突然、現在(進行)形になっていますね。
フレンズ2-21その22 でも、過去形で何かを語っている時に、急に現在形に切り替わるセリフが出てきました。
その過去記事で、「ハートで感じる」大西先生が説明されていたことについて触れています。
今回のロスのセリフも、その時の自分の様子を臨場感を込めて語っているのでしょうね。
「僕は〜している、彼らは僕を…と呼ぶ!」と。
by というのは、「…単位で」。
by the dozen なら「ダース単位で」。
by the case は「ケース単位で、箱単位で」ということで、その箱は、クッキーの箱が入っている大きなダンボール箱を指すのでしょう。
小さな箱1個ずつを購入するのではなくて、「そのでっかい箱1箱分全部ちょうだい!」とまるで「大人買い」をしているかのような買い方をしている、ということです。
ものすごく空腹な若い兄ちゃんたちですから、買い方もダイナミックなわけですね。
dude は「人、やつ」ということで、「あんた」のような呼び掛け語としても使いますね。
man という呼び掛け語と似ているでしょうか。
この場合は「若い兄ちゃん」というニュアンスで、「クッキー野郎」「クッキー男」「クッキー・ガイ」、一番合いそうなのは、「クッキーのあんちゃん」みたいな感じかなぁ?
ロスが真似している、取り付かれたような、クッキー・デュード!という言い方がおかしいですね。
まるでゾンビがしゃべっているような感じなのですが、この時のうつろな表情とその言い方が「ラリっている」人のそれを真似しているように思えます。
昨日の時点では、「お腹がものすごくすいているのはわかるけど、どうしてこんな言い方をするんだろうなぁ」と思っていたのですが、ヤク中だと言われれば、あぁそうか、と納得できる気がします。
(Rach からのお願い)
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なんか、そこまでやっていいの?って感じもするんですけど。きれいごとでは済まさないフレンズの面目躍如ってとこでしょうか。おもしろいです。
それに、クッキー売り上げ高の劇的上昇!にまつわる裏話としては納得できるし、よくできてると思いました。
I ah, started hitting the NYU dorms around midnight. I am selling cookies by the case. They call me "Cookie Dude"!
そこでロスも興奮して!マークが出てきて、過去形で話していたのが歴史的現在に突入!って感じがするんですよね。
Rachさんがあげていらっしゃる2−21の、フィービーの弟のフランクの科白、
all of a sudden から、「〜それがさあ、ひょいと見ると、なんとね、親父がこっちを見ているわけさ!」みたいな感じで現在形になってます。臨場感があって話が直でよく伝わる。
これは歴史的現在のいい例文ですね。おかげさまで復習できました。感謝。
ただし、上のロスの科白は、
そこで僕は〜大学の寮を急襲してクッキーを売り込むことにしたわけさ。(nowとか入れた感じで)それで今では、毎日箱単位で売ってるよ!
みたいな感じで、過去の事実を過去形で述べていたのが、自然に現在おきている事象の現在進行形と現在形による記述へ移行した(堅苦しい!)ともとれるような気もします。
でも、話しているうちに興奮してきて、歴史的現在に移行!って感じもあるなあ・・ よくわかりません。
嘲る嘲る 空と山とが
どうも私englさんもそうとうしつこくて嘲る対象です。
上の中也の詩の「歴史的現在」は、たぶん、「今この場で」ぐらいの普通の意味でしょうね。(あるいは、この卑小な自分が、この大きな歴史の流れのなかの今に発言すれば・・ ぐらいか。)
今回のロスの言葉に関して私が使った歴史的現在という術語は、もちろん文法上表現上の呼び方です。過去のことを話している話し手が、(興奮などして、あるいは意図的に)いつのまにか過去の出来事のなかに現実に身を置いているように、その場で現在形で話しているように表現することです。(すみません。当たり前のことですね。)
で、このロスのセリフにいやにこだわるんですが、個人的にはすごくおもしろいんですね。
(それもこれもRachさんが現在形への移行を指摘したから。と責任転嫁してみる)
僕(ロス)は今現在、ここに座って話しているけど、真夜中にはまた出かけていってクッキーを売るんだぜ。今も売り続けているし、行けば学生たちは僕のことを Cookie Dude ! って呼ぶ(だろう)よ。
っていう、現在進行中の事象を言うんだったら、やはり nowかなんか入れるんでしょうかね?
もし、ロスのセリフが歴史的現在だったら、
それでその夜、そういうふうに売り始めたんだよ。その晩はすごかったなあ・・ 気がついたら、箱単位でクッキーが飛ぶように売れてて、まわりの学生たちが僕のことを Cookie Dude って呼んでたなあ。すごかった。
みたいな感じですよね。
どっちでもいいような気もする。(それにしてもしつこい。どんだけ〜? ってこういうときには使わないのか・・ )
その空腹感が「マリファナ吸引後の空腹感」だと知ることで、このロスのセリフが本当に「おもしれぇぇ」ものになりますね(笑)。確かに「クッキー売り上げ高の劇的上昇」の理由としては、ただ「真夜中でお腹が減っている」だけでは少々パンチ不足(笑)な気がします。
「歴史的現在」というのは文法書にも出てくる用語ですね。
私のイメージは「その晩はすごかったなあ…」と回想しながら、その時の様子をリアルタイムのことであるかのように語っている、という感じです。englさんが示して下さった2番目の日本語訳と同じニュアンスですね。