2008年05月10日

earlyとsoonの違いは前か後か フレンズ3-13その5

フレンズ3-13その4 の続きです。

リチャード: So, you wanna get a hamburger or something? (ハンバーガーか何か食べたい?)
モニカ: Oh, um, I don't know if that's a good idea. (あぁ、それってグッドアイディアかどうかわからないわ。)
リチャード: Oh. Look, just friends, I won't grope you. I promise. (ねぇ、ただの友達(として)だよ。君をまさぐったりはしないよ。約束する。)
モニカ: No, I just I think that it's too soon. (いいえ、私はただ早過ぎると思うの。)
リチャード: No it's not too soon, I had lunch at 11. (いいや、早過ぎないよ。僕はランチを11時に食べたから。)

楽しく会話しながら、リチャードはモニカを食事に誘います。
モニカが「わからない」と言っているのは、偶然ここで会って、ご飯まで食べるのは、「元恋人、別れた二人」として不適切なんじゃない?、ということですね。
そういうしがらみがなければ、That's a good idea! 「それって名案ね、良い考えね!」とすぐに食事に向かうことができるのですが、そう言えない難しさをそのセリフで表現しているのでしょう。

grope は「(女性の体を)触る、まさぐる」。
フレンズ3-11その26 にも出てきました。
エッチな感じ、いやらしい感じの単語だと思うのですが、リチャードはわざとそういう過激な単語を使って、「そんなことはしないから大丈夫だよ」と、下心などは全くないことを示しているのですね。
確かに、本当にそういう下心というか、よりを戻すつもりがあるのならば、却ってそういうエッチを連想させる言葉は使えないかもしれません。

モニカとリチャード、どちらも too soon 「早過ぎる」という表現を使っていますね。
soon は副詞で「まもなく、すぐ、あまり時間がたたないうちに」。
ASAP, as soon as possible 「できるだけ早く」という決まり文句もあるように「早く」と訳されることもあります。
そういう「はやく」という意味で紛らわしい類語を、研究社 新英和中辞典では、以下のように説明してあります。

early はある定まった時より早く・ある期間の初めのころ、soon は現在またはある時点からまもなく・すぐに、fast は速度が速く

early と fast は「(時間・時刻が)早く」と「(速度が)速く」で、漢字も違うことからその違いはわかりやすいような気がします。

early と soon については、ロングマン現代英英辞典の語義も見てみましょう。

early [adverb]:
before the usual, arranged, or expected time (opposite: late)

つまり「通常の時間、取り決めた時間、または予想された時間の前に。反意語は late 」

soon [adverb]:
in a short time from now, or a short time after something else happens

つまり「今から少しの時間が経って、または何か他のことが起こる少し後に。」

どちらも「早く」と訳されるのですが、early は before 「前に」、soon は after 「後に」という語義で説明されているのが興味深いですね。
early と soon は共に、「何か基準となるもの」と比べているのですが、early は基準となるものの「前」で「時刻や時期が早い」、soon は基準となるものの「後」で「そこからの時間の経過がわずかである」という「期間の短さ」を表している、ということのようです。

今回のセリフでは、二人とも soon を使っているので、何かからの時間の経過が短いこと、食事をするには十分な時間が経過していないことを言っているのですが、その基準となるものが異なる、そして、「食事をする」という行為についての認識が異なる、ということです。

モニカにとっては、「別れた恋人同士が再び食事を共にする」ということは大きな出来事で、そういうことができるようになるためには、かなりの時間を必要とする、と思っています。
だから、「別れてから、一緒に食事をすることができるほどの時間が経ってない」「別れてからまだ日が浅いのに、食事をするのは早過ぎる」とモニカは言っているのですね。
一方のリチャードの場合は、昼食が早かったので、夕食を食べるには十分な時間が経過しているから、too soon ということはないよ、と言っているのです。

フレンズ3-13その1 で、8:02 であったことがわかるので、今は夜の8時過ぎ、だから too soon ではない、というリチャードの理屈も一応筋は通っていることがわかるのもポイントでしょうか。


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posted by Rach at 06:36| Comment(4) | フレンズ シーズン3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
おもしろいですねえ、earlyとsoon  
解説していただいて、よくわかりました。
beforeとafterとの関連の指摘もとても的確で勉強になるしおもしろいです。

ここでのit's too soonで、基点となる時点 は、「ふたりが別れたとき」でもちろんOKですが、
「このレンタルビデオ店で再会したとき、ついさっき」ともとれると思いました。
「たったいま偶然再会したばかりなのに・・ もう?」みたいな感じ。
で、よくよく考えてみると、やっぱり、
「こないだ別れたばかりなのに・・ 」が正解という結論を得ました。
(なんのこっちゃ。またまた個人的メモですみません。)

もしここで、it's too early をもってくると、どうなるんでしょうね。
early in the morning  の、「ある巾のある時間帯のなかで、はじめのほう、早い時間」のearly みたいな感じにもとれます。
リチャードのわざとボケかましたような返事 it's not too soon は、
さっき食べた時点から(after)もうけっこう時間がたったから、not too soonでジョークになってるわけですけど、
「一般的に言って、昼飯たべるのに早すぎる時間でもない。」の意味なら、
(ジョークにならないけど)it's not too early でもOKか。

一方、もしモニカが it's too early と言うと、
それこそ、「ある時点」つまり「ふたりがヨリをもどす時点」が、ある程度確定的で、
その時点より前すぎる、つまり、
「いずれそうなるのはキマリだけど、まだ早いわよ。」みたいな感じが強くなるんでしょうか?

it's too soon でも、「いずれそうなるけど・・」の感じはあると思うんですけど、
「こないだ別れたばっかりで・・ 先のことはまだわからないわよ。」
の感じもあるのか・・
どうも、ごちゃごちゃすみません。
Rachさんの解説がすごく示唆的だったもんで、つい。メモでした。
Posted by engl at 2008年05月10日 21:10
englさんへ
early と soon の話を「面白い」と言っていただけてありがとうございます。
自分で使い分けるためには、やはり「ニュアンスの違い」を理解することって大切ですよね。
なんとなくわかっていたつもりでしたが、ロングマンに before と after と書いてあるのを見て、「なるほど!」と納得したんですよ。

early を使うと、どういうニュアンスになるか、という話は興味深いですね。
early in the morning の場合は、in the morning という「時間帯の中の、初期の部分」ということですね。
人によって、それが何時か、というのは異なりますが、一般的な概念の中である程度共通している認識のように思います。

ただ、単に early と言うと、「何か基準となるもの」があって、その「前」である、ということになり、その基準となるものは、話者の頭の中にイメージとしてあるはずですね。

early の反意語は late で、It's too late. 「遅過ぎる、手遅れである」は決まり文句です。もう間に合わない、もっと早くすべきだったのに、みたいなことですね。
ですから、early はその反対のニュアンスの「早過ぎる、時期尚早の」という感じで、もう少し待ってみるべき、今はまだその時期ではない、するべき時がまだ来ていない、という感じになるでしょうか。

ですから、englさんがおっしゃるように、モニカがもしここで、it's too early. と言うと、「今はまだ早いわよ。もう少し待ってみたらいいと思うけど。」みたいなニュアンスになって、もう少し時間が経てば、食事をするのに「適切な時期」がやってくる、みたいに聞こえそうですね。

私が思うに、今、この時点では(という表現が、これまた示唆的ですが)、モニカとリチャードは「ヨリを戻すこと」は頭にないような気がするのです。「ある時点」のイメージは、「穏やかな気持ちで一緒に食事をできる、過去の恋愛と別れを一つの思い出として語れるようになる」時期、という感じかな、と。

>it's too soon でも、「いずれそうなるけど・・」の感じはあると思うんですけど、
それもそうなんですよね(笑)。soon は「何かからの時間の経過」を表現しているわけですが、too soon と表現すると、「経過時間が足りない」となって、来るべき「時期」はもう少し先だ、と何かしら、別の基準となる時期のイメージが頭にある、ということですね。この場合も、私の解釈は「ヨリを戻す」ではなくて、「過去にこだわらずに友人として食事を共にできる」時期、だと考えました。

一緒にいろいろと考えていただけて嬉しいし、楽しいです。ありがとうございます!
Posted by Rach at 2008年05月11日 10:19
こんにちは。こういう単語の対比が好きなので、人気ブログランキングからやって参りました。earlyは基準時より前でsoonはそれより後という切り分け方はわかりやすくていいですね。ただ、soonには"relatively early" という意味もある点、けっこう大事なポイントなのではないかと思っています。時期尚早という意味で、it's too soon to という言い方をする人もいれば、it's too early to という人もいるのはそのあたりの影響なのではないでしょうか。
Posted by 日向清人 at 2008年05月11日 15:17
日向清人先生
コメントありがとうございます!
日向先生のブログ「日向清人のビジネス英語雑記帳」は、着眼点も、内容も、論理的なご説明も、その全てが素晴らしく、いつも大変感銘を受けております。その先生にコメントしていただけるなんて、大変光栄です。

実は、私、今から約2年前の 2006年4月10日に、貴ブログの
数えられない名詞:何が不可算とされるのか
http://eng.alc.co.jp/newsbiz/hinata/2005/11/post_139.html
の記事で、「集合名詞」に関する質問をさせていただきました。
その節は、ご丁寧にご回答下さり、また記事中に追記までして下さって、ありがとうございました。
先生に質問させていただいたことは、マイブログの、
フレンズ2-13その10+不可算名詞wearの話
http://sitcom-friends-eng.seesaa.net/article/388470365.html
で書かせていただきました。

その日向先生が私の書いた記事に興味を持って下さって、先生からコメントをいただけることになるなんて、ずっとブログを続けていて本当に良かったと思います。


日本語訳ではわかりづらいよく似た言葉を「対比」して考える、というのは楽しいです。
切り分け方について、お褒めの言葉をいただけて光栄です。
また、soon には、relatively early という意味もあるのですね? それは知りませんでした。

ロングマン現代英英辞典の soon の項目に以下の語義があります。

too soon:
too early

too soon to do something

例文) It's still too soon to say whether the operation was a success.
The holidays were over all too soon (=much earlier than you would like).

この語義説明だと、too soon = too early ということになりますね。

Merriam-Webster Online Dictionary では、
soon:
3. archaic : before the usual time
という語義が載っています。
archaic 「古風な言い方」としてですが、early と全く同じ意味なので、その感覚が現在も残っている、ということもあるのでしょうか?

時期尚早という意味で、it's too soon to, it's too early to の両方が使われる、というお話について。
そのお話がとても興味深かったので、私なりにいろいろと考えてみました。

soon の早く、というのは「時間があまり経過しないうちに早く」という感じですね。
as soon as possible や、The sooner, the better. の場合は、「経過時間が短い間に」ということなのでしょうが、
研究社 新英和中辞典の、soon 「早く」の項目には、
You spoke too soon. 早く口を開きすぎた。
Winter has come too soon. 冬のくるのが早すぎた。
という文章もあります。
この二つは、「その行為が起きるべき時よりも早かった」という too early のイメージに近い気がします。
そういう soon の場合は、soon の後に来るべき「適切な時間」のイメージが頭にあって、それに比べて早かった、という意味で、too early のニュアンスが出てくるのかな?という気もします。

too というのは「…過ぎる」というネガティブなニュアンスで、こういう時期を表す副詞の場合は、その行為が行われた時点が「適切ではなかった」ということになり、too soon であることが、too early ともなりうる、ということかな、とも思います。
まず A という行為があって、次に B という行為があったけれど、それは A からの経過時間が少なかった、という意味で、too soon であり、それは、C という「適切な時間を経過した上での、適切な時間」のイメージからすると、too early であった、ともいえる、という可能性もあるでしょうか??

too がついた例で考えてみましたが、too がつかない場合であっても、このような「時期を表す副詞」の場合は、話者が「どの時点を基準に考えているか」によって、soon とも early とも表現できる、どちらを選ぶかは話者次第である、ということにもなるのかな、と思いました。
「soon には "relatively early" という意味もある」というお話が、私なりに納得できた気がします。

思いつくまま書いてしまって申し訳ありません。
先生のお話、大変勉強になりました。ありがとうございました!!
Posted by Rach at 2008年05月13日 11:41
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