2008年05月31日

他動詞の意味で自動詞として使う? フレンズ3-13その22

ボウルの中で手が触れてしまい、一瞬沈黙する二人。
リチャード: Okay. (よし。)
モニカ: Gotta keep squishing. (つぶし続けなきゃ。)
リチャード: Tomatoes are squishing. (ぐちゃぐちゃを音を立てながら、トマトがつぶれてるね。)
モニカ: Okay. (そうね。)
(Richard squishes a little too hard and some lands on his shirt.)
リチャードは少し力を入れすぎてつぶす。そしてその(トマトの)一部が彼のシャツにつく。
リチャード: Op. (あぁ。)
モニカ: Oh, gosh, you got some on your shirt. (まぁ、少しシャツについちゃったわね。)
リチャード: Yeah. (そうだね。)

上のシーンでは、squish という単語が(ト書きも含めて)3回出てきます。
一昨日の記事、フレンズ3-13その21 で、squish のロングマンの語義を紹介しましたが、そこに自動詞(intransitive)の意味も出ていました。
squish:
2. [intransitive and transitive] (informal) to squash something, especially something soft and wet, or to become squashed

他動詞の意味が、to squash something 「何かをつぶす」、自動詞の意味が、to become squashed 「(押し)つぶされた状態になること」ですね。
自動詞の意味はロングマンにもう一つ載っています。
1. [intransitive always + adverb/preposition] to make a soft sucking sound by moving in or through something soft and wet
つまり、「何か柔らかくて湿ったものの中を進む、またはそれを通って進むことで、柔らかい吸い込むような(?)音を立てること。」
この 1. の意味は、研究社 新英和中辞典では、
squish=(自)びしゃびしゃ[ごぼごぼ]と音を立てる[立てて歩く]
と表現されています。

Gotta keep squishing. ですが、ここでは主語が省略されています。
gotta = have got to = have to で「…しなくちゃ」、keep doing は「(ずっと)〜し続ける」ですね。
その意味を考えると、主語が Tomatoes だと考えるのはやや無理がある気がします。
上の自動詞の語義を当てはめようとすると、「ずっとつぶされなくちゃ」「ずっと音を立て続けなくちゃ」みたいな感じですが、ここではむしろ他動詞の「…をつぶす」という意味で、その目的語が省略された形、と見る方がしっくり来る気がします。
普通は省略不可能な目的語を「省略した」と言うと語弊があるのですが、他動詞の意味を自動詞として使っている、と表現したら良いでしょうか?
squash something あるいは、squish something という意味で、「squish を目的語なしで使っている」という感じ??

本来は、We have to keep squishing them (=tomatoes). という形になるはずですが、何をつぶすか、という部分は明白なので、「何かをつぶすという行為をする」という意味で、squish を使っている、つまり、Gotta keep squishing. は「つぶすという行為を続けなきゃ。つぶし続けなきゃ。」という感じかな、と思いました。
ト書きの、Richard squishes a little too hard and ... も、それと同じニュアンスのようですね。(だから、ここでも、文法的には、目的語の them が必要な気がするわけですが…)

「つぶす」という意味の場合、その「つぶす対象物」が必ず存在するはずで、だからそういう語義の場合は他動詞なのですが、それが他動詞であることをわかった上で、あえて目的語を取らずに「つぶすという行為をする」という意味で使っているような気がして、そこが面白いと私は思ったのですが…。
(他のご意見がありましたら、お寄せ下さい。)

辞書にそういう自動詞の意味が載っているとか載っていないとかいう問題ではなくて、その状況から「つぶす」という意味で使っているのだろうな、と思う…それが英語の感覚を学んでいくことなのかな?と思ったりします。

そして、Tomatoes are squishing. は、トマトを主語にした正真正銘の自動詞ですね。
トマトが「つぶされている、つぶされた状態になっている」か「ぐちゃぐちゃと音を立てている」ということで、「ぐちゃぐちゃと音を立てながら、トマトがつぶれてるね。」みたいなことでしょう。

そのつぶしたトマトが服に付くのに、ト書きでは、land on という表現が使われています。
land on は「…に上陸する、(飛行機・宇宙船が)…に着陸する、船が…に着く」ということです。
ここでは、飛行機が着陸するようなイメージでしょうか。
つぶした拍子にトマトがはねて、それが空中を飛んでリチャードのシャツに「着陸、到着」したイメージかと。


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posted by Rach at 08:50| Comment(6) | フレンズ シーズン3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。英語を話す人がsquishと聞いてイメージするのは、水の入った長靴から出る、あの、グシュッ、キュッキュッ的な音だと思います。で、Tomatoes are squishing.は「おお、クシュクシュと(トマトが)いい感じでつぶれていくじゃない)という感じでしょうか。「しまった!」に相当する「ウップス」の表記はOopsのはずです。あと、最後の Yeah. は 「あ〜あっ」の方が辞書にとらわれず、日本語での雰囲気を重視する(これ自体すごく大事だと思っています) Rach さんらしいのではとも思いました。
Posted by 日向清人 at 2008年05月31日 10:41
日向先生。
コメントありがとうございます!

先生の御著書の最新刊「即戦力がつくビジネス英文法」を1週間前に本屋さんで購入させていただき、木曜日に読み終えたところでした。本当にたくさんのことを学ばせていただきました。ありがとうございます。
それで、週明けにでも、貴ブログで「貴著拝読させていただきました」とコメントを入れさせていただこうかなぁ…でも、私なんかがコメント入れていいのかしら?…みたいに「もじもじしていた」のですが、その前に、こうして先生から拙ブログに再び、(厳密に言うと、三度目の)コメントをいただけるなんて…。大変光栄です。ありがとうございます。(「ありがとうございます」としか表現できなくて申し訳ありません。私はかなり「ボキャ貧」のようです…笑)

先生のご説明の「グシュッ、キュッキュッ的な音」という表現、大変イメージが掴みやすいです。日本語では「ぐしゅっ」「びしゃっ」と聞くと何か「水が含まれている感じ(wet な感じ)」が想像されますよね。「きゅっ」だと摩擦や何かをひねった感触がします。
上の記事で squish の語義を、英英と英和で調べた時に、日本語の語義は「びしゃびしゃ、ごぼごぼ」と「擬音語・擬声語・擬態語(?)」で表現してあり、英語ではそれを、make a soft sucking sound by moving in or through something soft and wet と表現しているのが興味深いな、と思いました。そういう「音」を英語圏の人に説明するには、soft sucking とか、soft and wet という言葉を使って説明しないといけないんだなぁ、と。

日向先生が貴ブログで使われていた表現、「外国語を通じて自国語を意識する」「外国語は自国語を映す鏡」…まさにその通りだと思います。同じ語義を説明するのに、こんなにも説明の仕方が違う、あぁ、日本語はこういう音の表現が豊富なんだなぁ、と思う、「雪がしんしん降る」「雨がしとしと降る」、そういう「しんしん」「しとしと」という表現が美しいなぁ、と思える、ということでしょうか。それを英語で説明することは可能だけれども、やはりその美しさ(音の美しさも含めて)は日本語で読まないとわからない、日本語のまま理解しようとしないとわからない、ということですね。
英語を学べば学ぶほど、日本語の素晴らしさ、美しさに気付きます。そんな風に「日本語を意識する」ようになれたのは、やはり英語を学んでいる効用ですね。

「しまった!」は Oops! ですよね。上の Op. はネットスクリプトに書いてあったものをそのまま使ったのですが、実際にDVDを見てみると、限りなく Oh! に近かったです。ディクテーションした方は、Oops. と Oh. を足したようなイメージで、Op. と書いてしまわれたのでしょうか?

最後の Yeah. ですが、正直ここのニュアンスは実際にDVDを見てもよくわからないのです。やはり私の頭の中には、Yeah = Yes というのがあって、モニカの発言に同意したニュアンスと解釈し、「そうだね(君の言う通り、シャツについちゃったね)。」ということかな、と思いました。でも、日本語音声(吹替)では「あ〜あ〜」と言っているんですよね。やはりそういう「がっかり感」「やっちゃった!感」が出ている、ということなのでしょうね。(細かい話ですが、画面がそこで編集されているように思えて、その部分のニュアンスは軽く流されてしまっていて、何回見てもいまいちしっくり来ないのです。)

「Rachらしさ」として、「辞書にとらわれず、日本語での雰囲気を重視する」ことを挙げて下さっていること、そしてそれを「これ自体すごく大事だと思っています」と言って下さったこと、本当に嬉しく思います。日向先生のお優しいお言葉にいつも励まされます。ありがとうございます! 「いち英語学習者」として、これからも頑張ります!
Posted by Rach at 2008年06月01日 08:17
keep squishing ですが、この squishing は keep の目的語でしょ? そんなんに、自動詞もへったくれもあるんかいな、レイチさん?
Posted by J at 2008年12月21日 21:57
J さんへ
コメント、ありがとうございます。
うーん、上の自分の記事を読み直してみると、自分でも、いまいちしっくりこないんですが、keep squishing them [tomatoes] という風に、them がなくてもいいんかいな?と思った、ということなんです。

「squishing は keep の目的語」については、私もそうだと思ったのですが、辞書を調べてみると、これは「目的語」ではないらしい、ということがわかって、ちょっとびっくりしています。

普通は、動詞+ -ing の場合は、「…することを(動詞)する」という意味になり、-ing は「…すること」という動名詞ですよね。(mind doing 「…するのをいやがる」など)

ですが、この keep doing については、

研究社 新英和中辞典では、
keep (自動詞)=(+doing) ずっと(…し)続ける
The child kept crying. その子供は泣き続けた。
He kept saying the same thing over and over again. 彼は何度も同じことを言い続けた。

という風に、「自動詞」の項目で挙げられていて、

ロングマン現代英英辞典でも、
keep: CONTINUE DOING SOMETHING
also keep on
[intransitive] to continue doing something or to do the same thing many times
keep (on) doing something
例) I keep thinking about Joe, all alone in that place.
という説明がされています。ここでも、intransitive 「自動詞」扱いですね。

ロングマンの説明によると、keep doing は、keep [on] doing の on が省略された形で、doing は keep の直接の目的語ということではないようです。

今回の keep squishing は、上の研究社の例文の、kept saying the same thing の the same thing に当たる部分がない感じがしたので、何か中途半端な感じがして、squishing の後に them は必要ないんだろうか??と疑問に思った、ということみたいです、多分。

keep talking ならいいけど、keep telling だったら tell の後に目的語が欲しくなる、という感覚なんですが、ちょっと自分でもよくわからなくなってきました。すみません。
Posted by Rach at 2008年12月23日 07:11
こんなことをほじくりだしている私の方が謝らなければいけませんねぇ。 まぁ、しかし、一読者ですし、、、

Keep doing の doing が目的語ではない、というのは、つまり辞書に intransitive と示されているからですね。 レイチさんがおっしゃっているように、これは keep on doing の on が省略されたものだからということが真相だと思います。 するとこの doing は on の目的語ということになりますよね? となると、on はあくまで「前置詞」なわけですから、doing は動名詞ということになるのでしょうか。

まぁ、それよりもなにも、私がこのクリップを見たとき、なんの違和感も抱かなかったのです。 
たとえば、to boil なんかも、自動詞と他動詞ではことなる意味をもっていますが、なにかを茹でている人に、「まだ茹で続けなさい」という場合、 keep boiling というのが普通ではないでしょうか。 また、なにかを持ち上げている人に、他動詞の意味で、 Don’t stop, keep lifting. ということにしてもそうです。 

自分から I keep doing . . . と言って、何か続けていることを他人に紹介するのではなく、他人に keep doing という場合、その人がすでに行っていることを続けなさい、という意味ですよね? つまり、目的語がはっきりしているから言い直す必要もないわけで、逆に、それを言ってしまうと英語の嫌う反復表現になってしまうのではないでしょうか。 目的語がそこにあるから他動詞、ないから自動詞、という選択肢のみで動詞を理解しようとすると、矛盾点がたくさんでてくるのではないかとおもいます。 (他・動・詞 というのも動作ではない他動詞を考えるとどうも、、、、)

レイチさんの疑問というか納得できない部分というのは、何故、トマトの時は自動的に自動詞になるのに、you の場合はそうでないのか、ということでもあるかもしれませんが、それは semantic と syntactic の違いではないでしょうか。 トマトだからそんな状態になる、ジャガイモだから茹であがる、けれどもトマトが何かをそんな状態にさせるわけではないし、ジャガイモが何かを茹でるわけでもないわけです。(superfluous argument)

べつにまたおっぱじめるわけではないのですが、そういった観点から「他動詞」ではなく transitive verb として transitivity というものを探ってみると、きっと semantic valency というものに行き着き、それがきっとレイチさんもご周知の化学におけるH(水素)からでてる1本の手ぇみたいなやつだったり、O2 の2本の手ぇみたいなやつの valency と考え方に相通じるものがあったりして、楽しいかもしれませんね。 
Posted by J at 2008年12月29日 18:05
J さんへ
お返事ありがとうございます。一緒に考えていただけてとても嬉しいです。

そうですね、辞書に intransitive と書いてあるというのは、その動詞が前置詞なしで目的語を取るかどうか?という話であって、keep on doing が基本形だったとしても、doing は on の目的語であり、動名詞であることには違いない、ということかぁ、、、。

boil 「(何かを)茹でる」、lift 「(何かを)持ち上げる」という行為を続ける、という場合に、keep boiling, keep lifting というのが普通、と言われれば、確かにそうですね。

「その人がすでに行っていることを続けなさい、という意味」である場合は、「目的語がはっきりしているから言い直す必要もないわけで、逆に、それを言ってしまうと英語の嫌う反復表現になってしまう」という J さんのご意見、全くその通りだと思いました。

他動詞か自動詞かを考える時に、私は常に、目的語のあるなしだけで判断しようとする傾向にあるようです。だから、今回の場合、keep squishing の squishing に目的語の them がなくていいのかな?と思ったみたいなのですが、them が省略されている、ということで納得です。私は他動詞の場合、目的語は「絶対に」省略できない、と思い込んでいたみたいですね。自明の場合は当然、省略も可能なのか、、、というより、ここでの「今やっているその行為を続ける」という意味では、目的語まで言うと却ってくどい、のですね。

この記事のサブタイトルを私は「他動詞の意味で自動詞として使う?」としましたが、「他動詞なのに目的語を省略する?」と書くべきだったようです。主語が人であることから、「何かをつぶす」という他動詞であることは明白で、them がなくても誰も自動詞の「音を立ててつぶれる」だとは思わない、ということですよね。

「手ぇ」の話に相通じるものがある、というのはよくわかります。出ている「手ぇ」をつないで分子として結合するように、他動詞の場合、そのくっつく相手が存在していないと、不安定な気がしてしまう、というか、目的語と結合して初めて他動詞として安定する、という感じでしょうか?
Posted by Rach at 2008年12月31日 07:17
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