リチャードの服にトマトが飛んで、そのシミをソーダ水をつけて落としていたモニカ。
モニカ: Umm, you've got some on your pants. (えーっと、パンツにもトマトがついてるわ。)
リチャード: I'll just throw them out. (パンツは捨てちゃうことにするよ。)
昨日の続きです。
この I'll just throw them out. の部分、DVDの日本語字幕では「脱いで落とす」、日本語音声(吹替)では「脱いで洗ってくる」と訳してありました。
ただ、throw out は通常、「捨てる、処分する」という意味で使われることが多いように思います。
ロングマン現代英英辞典では、
throw somebody/something out (phrasal verb):
to get rid of something that you do not want or need
つまり「欲しくないもの、要らないものを取り除く・処分すること」。
同じ throw という動詞を使った句動詞の throw off の場合は「脱ぐ」という意味があるようですね。
研究社 新英和中辞典では、
throw=(他動詞)(+目+副)(衣服などを)急いで着る (on)、(衣服などを)急いで脱ぐ (off)
He threw on [off] his bathrobe. 彼は急いでバスローブを身にまとった[脱ぎすてた]。
同じ「脱ぐ」という意味がロングマンでは以下のように出ています。
throw somebody/something off (phrasal verb):
to take off a piece of clothing in a quick careless way
つまり、「すばやく無頓着に服を脱ぐこと」。
throw 「投げる」という動詞なので、「さっと」「ぞんざいに」「乱暴に」「急いで」という感触が出るのでしょう。
ですから、throw them off なら「脱ぐよ」で、「脱いで洗うよ」「脱いで別のパンツにはき替えるよ」というニュアンスも可能かと思うのですが、ここでは throw thme out となっているので、やはり「捨てる」なのかなぁ?と。
throw off と throw out を比べてみた場合も、throw は「何かをすばやくぞんざいに扱う」感じが出ていて、off だと「分離」、out だと「外へ」という感覚ですね。
「パッとはずす」感覚が throw off、すなわち「脱ぐ」で、「パッと外に放り出す」感覚が throw out、すなわち「捨てる」ということなのだと思います。
フレンズ2-13その14 では、
モニカ: I'll help you fix your sweater. (あなたがセーターを直すのを手伝うわ。)
レイチェル: I'll help you...throw out your purse. (私があなたが・・・カバンを捨てるのを手伝うわ。)
というやり取りがありましたが、ここでは明らかに「捨てる」という意味で使われています。
ここからは私の勝手な推測ですが、訳者のかたは「捨てる」という結論はあまりに早急に過ぎる、というか、極端すぎるので、無難な結論「脱ぐ、脱いで洗う」というニュアンスとして訳されたのかな、と思います。
リチャードの意図は、「今ここでモニカにソーダ水でこすって汚れを落としてもらうのは断念するよ。」ということです。
場所が場所だけに(←しつこい…笑)、パンツをはいたままこすってもらうわけにはいかないから、ということですね。
リチャードは(恐らく)経済的に裕福で、「もうシミになってもいいよ。捨てちゃうからいいよ。」と言う意味で throw out を使ったのでしょう。
でも、普通の感覚で考えた場合は、トマトのシミがちょっと飛んだくらいで、いきなり「捨てる」というのも飛躍が過ぎる気がするし、普通なら、「洗濯する、クリーニングに出す、普段着に使う」みたいなことを言いそうにも思うのですね。
話の流れとしては「ここでシミ抜きをするのは断念する」ということさえわかればいいので、極論を言えば、海外ドラマの日本語版を制作するに当たっては、「脱ぐ」でも「捨てる」でもどっちでもいい、とも言えるわけかなぁ、と。
(この「どっちでもいい」という話については、明日、語ります。)
私の解釈としては、やはりリチャードは「捨てる」という意味で言っているのだろうと。
ただその throw out というのは単なる言葉のアヤで、「捨てるからいいよ」「そうね、捨てちゃって」と二人が言い合うことで、お互い、ヘンな気を起こさないように気をつけましょうね、と自重している感じ、またヨリを戻してしまって、ことが複雑になるくらいなら、これを捨てちゃった方がましだね、みたいな気持ちを二人とも持っているのかな、という気もしました。
throw them out と言った後、モニカは玄関・外の廊下の方を親指で指差して、そうするしかないわね、という感じで、「そっちよね、外よね。」みたいな仕草をしています。
モニカが外を親指で示す仕草がまさに out というニュアンスを出していて、やはり「捨てる」「放り出しちゃう」という意味で使っていると解釈した方が自然かな、と思うのですが、どうでしょう??
(Rach からのお願い)
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染み抜きに執念を燃やすモニカの性格をわかっていて、シミになったパンツは捨てるからいいよと
いなしてるような気がします。言葉の綾で本気で捨てるとは言ってないような気がします。モニカも付き合ってる人のものならともかく、今は赤の他人のリチャードへの遠慮を感じます。I'll just throw them out.でこのシーンが終わってるのは意味深かも。深読みしすぎかな?justの使い方が気になります。捨てるからシミのことは気にしないでという意図がjustにあると思います。「もうシミになってもいいよ。捨てちゃうからいいよ。」はいい訳だ。
>染み抜きに執念を燃やすモニカの性格をわかっていて
というところ、なるほどなぁ、と思いました。きっとそういうことですね。
フレンズ3-2その10
http://sitcom-friends-eng.seesaa.net/article/388470749.html
で、フィービーのドレスについたハマスの染み抜きの方法をモニカに尋ねるシーンがありました。その時のモニカはそれどころではなく、結局染み抜きは出来ませんでしたが、料理上手な彼女のこと、染み抜きも上手なはずだし、それを上手にできることにきっと喜びを見い出すタイプですからね。
リチャードは確かに「捨てる」という発言をしたけれど、別に本気で捨てるつもりで言ったわけではなく、「気にしないで、もういいから。」というニュアンスですよね、きっと。
リチャードが脱げば、モニカもソーダ水を使って染み抜きできるわけですが、ここでリチャードが脱いでしまうのもまたマズい(笑)。だから「捨てるからこのまま放っておこう」といわざるを得ない、ということでしょう。
just にはいろんなニュアンスがありますが、「ただ捨てることにするよ。」という感じで、「ただ単に捨てちゃえば済む話だから、頑張らないでいいよ。困った顔しなくていいよ。」みたいなことでしょうか。
「いい訳」とお褒めいただきありがとうございます。これからも褒めていただけるように頑張ります(笑)。