[Scene: A street, Chandler is kissing Ginger.]
ストリートで、チャンドラーはジンジャーとキスしている。
チャンドラー: Well, that's the best kiss I've had with anybody I've met in a men's room. (あぁ、今のは、男性トイレで会った人とのキスで最高のキスだよ。)
ジンジャー: Actually, me too. (実は、私もよ。)
チャンドラー: (sees her foot is in a slush puddle) Op, foot in a puddle, foot all in a puddle! ([彼女の足が雪解けの水たまりに入っているのを見て] おや、水たまりに足が。足がすっかり水たまりに入ってるよ。)
ジンジャー: Oh damn, I hate that! (あぁ、いやだ。そういうの[水に濡れるの]嫌い!)
チャンドラー: Yeah, we're gonna have to get you out of those shoes. (そうだね。その靴を脱がないといけないね。)
ジンジャー: Oh, don't worry about it. (あぁ、心配しないで。)
チャンドラー: No, really. You're gonna freeze. (いいや、ほんとに。君は凍えちゃうよ。)
ジンジャー: No, I'm not. (いいえ、凍えないわ。)
チャンドラー: You're not? What do you, what do you got a bionic foot? (凍えないの? 君は、君はバイオニックの足[サイボーグのような足]を持ってるの?)
ジンジャー: Someday. Maybe. (いつかね。多分。)
最初のチャンドラーのセリフが面白いですね。
ジンジャーとは男性トイレで出会ったのですが、男性トイレで会った人、というのは、普通は男性です。
恐らく男性トイレで会った人の中で唯一の女性がジンジャーだったでしょうから、男性とのキスと比べているわけで、褒め言葉にはなっていない気もします。
ただ、チャンドラーはゲイだと誤解されることが多いので、そういう意味では、男性のキスとの比較も、何やら真実味があるような(笑)、もしくは、ゲイと間違えられることが多いのを知っている観客にとっては笑えるセリフなのかな、と思います。
今までの人生で最高のキス、とか言ってしまうと、少々嘘っぽい感じもしますが、このチャンドラーのセリフは本当のことだろうし、なおかつユーモアもあるので、すごくチャンドラーらしいセリフだと思いますね。
ジンジャーも「私も」と返しているのですが、ジンジャーもいつも男性トイレに入るわけではないでしょうから、彼女にとっても「男子トイレで会った人とのキスで最高」なのは事実なわけでしょう。
それを、「今のキスは最高に素敵だった」「私も」みたいな普通のやり取りと同じように、me too. と答えているのがしゃれている、というか、面白いというか。
slush は「半解けの雪、雪解け、ぬかるみ」。
puddle は「水たまり」
get you out of those shoes は、その靴から君を取り出す、みたいなことですから、その濡れて冷たくなった靴から早く足を出さなきゃ、靴を脱がなきゃ、ということでしょう。
bionic は「生物工学の、バイオニックの」。
研究社 新英和中辞典には、
bionic=(口語) 超人的な、サイボーグ(cyborg)のような
という意味も載っています。
チャンドラーが言っているのは、そういうニュアンスですね。
ロングマン現代英英辞典には、
bionic [adjective]:
bionic arms, legs etc are electronic and therefore stronger or faster than normal arms etc - often used humorously
例) I swear Mom has bionic ears.
つまり、「バイオニック・アームやレッグとは、電子工学的なもので、そのために、通常の腕などよりもより強力でより動きが速い。しばしばユーモラスに使われる。」
例文は、「絶対に、ママはバイオニックの耳を持ってるよ。」
上の例文はユーモラスに使った例で、どんな秘密も知っているママに対して、日本語で言うところの地獄耳というか、何でもママには筒抜けになっていて、サイボーグみたいなすごい聴力の耳を持ってるに違いない、と言っているのですね。
冷たさを感じない、って、君の足は、サイボーグみたいな、生物工学を駆使した足を持っているのか?と尋ねているわけです。
彼なりのユーモアですね。
でも、実際は、前回のジョーイの話からわかるように、彼女は義足(an artificial leg)をつけているわけで、彼女は、「今はバイオニックフットじゃないけど、そのうちに、多分、そういうのになるわね。」みたいな返事をしています。
そういう意味では、(an) artificial leg と (a) bionic foot [leg] とには、イメージの違いがあるようですね。
artificial は、natural に対する言葉として、「人工的な、作り物の」という意味です。
バイオニック、というと、先端の生物工学を駆使した、見かけは本物そっくりの体の器官、本来の肉体と同じように脳の指示によって動く、というようなニュアンスが感じられます。
ですから、bionic foot の方が、より進化した義足のイメージで、近未来的な感じがするから、ジンジャーも、Someday. Maybe. 「いつか、多分(そういうものをつける日が来るかもね)。」と答えているのですね。
leg と foot の違いについて。
彼女の義足は、ジョーイが a log と間違えたくらいなので、脚全体が義足になっているのでしょう。
チャンドラーが見ていた時には、足の部分(つま先からかかと、足首までの部分)が雪に浸かっているのに冷たくない、と言っていたので、その「足」の部分がバイオニックなの?という意味で、foot を使っているのでしょうね。
チャンドラーは、ジンジャーが義足をつけている、ジンジャーの leg そのものが artificial であるなんて夢にも思っていない、ということです。
ただ、彼女が義足だとわかっている我々視聴者にしてみると、そのチャンドラーのジョークに笑ってもいいのかどうか…ちょっとギリギリのジョーク、という気もします。
さらりと、Someday. Maybe. と答えてみせた彼女の返事に救われる気はしますが。
(Rach からのお願い)
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bionicという言葉ですが、昔放送されていたリンゼイ・ワーグナー主演のバイオニック・ジェミー(原題:The Bionic Woman)という番組を思い出しました。主人公は、確かスカイダイビング中の事故が原因で手足をサイボーグ化されるのですが、それと同時に右耳もサイボーグ化され文字通り地獄耳といえるような超聴力を持っているという設定でした。
この番組の記憶がある私としては、bionicというと「生物工学の」というより、「(口語) 超人的な、サイボーグ(cyborg)のような
」の方がしっくり来る感じがします。
ご参考まで。
はじめまして。コメントありがとうございます。
「バイオニック・ジェミー」という名前は何となく記憶にはありましたが、実物を見たことはないようです。
おっしゃる通りの設定のようですね。
ちゃんとウィキペディアにも、
Wikipedia 日本語版: 地上最強の美女バイオニック・ジェミー
という項目がありました。
つい最近、リメイクもされたようです。
ジェミーの足もバイオニックのようなので、チャンドラーのそのセリフは、ジェミーの足をイメージしたものかもしれませんね。
それから、貴ブログで、拙著を紹介して下さってありがとうございます。嬉しいです! また、早速、フレンズのDVDも買って試して下さったとのこと、ありがとうございます。フレンズは本当に面白いドラマだと思うので、ドラマを気に入っていただければ、効果的な英語学習教材になると思います。
これからもよろしくお願いします。
今夜はバイニック・ジェミーともう1件について、反応してしまい、コメントさせて頂きました。
「バイオニック・ジェミー」や「600万ドルの男」はかなり昔、リアルタイムで見ていたので、とても懐かしいです。
さてもう1件ですが、チャンドラーのセリフの、what do you got a bionic foot? です。 初めて、聞いた時は、What ではなく、Whyと思ってしまいましたが、やはりWhatですね。 a bionic footは目的語と思い、不思議に感じました。 Rachさんはどう思われましたか? 解釈としては、フレンズ3-11その7の、"What's she doing making coffee? を参考にして、バイオニック・フットか何か付けているの? という感じでしょうか? Rachさんのご見解をお聞かせ頂ければ嬉しいです。
コメントありがとうございます。毎日読んで下さっているとのこと、重ねてありがとうございます。
それらの作品はやはり有名なのですね。私は見たことなかったのですが、bionic foot と聞いてそれらをイメージした方は、日本人にも結構おられるのでしょうね(^^)
それから、What do you got a bionic foot? について。
これを普通の1文と考えると、a bionic foot という got の目的語が存在するので、what 部分は、目的語が重複したようになってしまいますよね。
What's she doing making coffee? の構文と似た感じは確かにします。私のイメージでは、What do you got? Do you got a bionic foot? という2文が合体したもののように思いました。
上のセリフでは、What do you, what do you got a bionic foot? となっていますよね。先に、What do you got? 「君は何を持ってるの? (その足は何?)」と疑問詞で尋ねかけて、その後で、Do you got a bionic foot? 「君はバイオニック・フットを持ってるの? (それってバイオニック・フット(か何か)?」みたいに、質問を言い換えた、付け足したようなイメージかと。
What, do you got a bionic foot? 「何? バイオニック・フットを持ってるの?」みたいに解釈することも可能に思いますが、最初は疑問詞で尋ねて、次に具体的な名称を出してみた、という「2文が融合したような文章」になっているところが、「生きた英語のセリフ」っぽいように思いました。
Rachさんのご見解、非常に参考になりました。 有難うございます。
これが「生きた英語」なんですよね。 生きてるから、変化もする。 それを受け入れられるような、「柔らか頭」(フルッ)を持っていかないと思いました。
さて、もう年末に向かおうとしています。 Rachさんもいろいろとお忙しいかと存じます。 どうぞ、おからだ大切に、ご自愛ください。
ご丁寧なお返事ありがとうございます。
「柔らか頭」、、、住友金属の山瀬まみさんですね。懐かしいです^^ でもほんとにドラマを教材として使うに当たってはそういう「柔らか頭」はとっても大事ですよねぇ。学校で習った文法とは違うことが出てきた時に、それを「面白い!」と思える人はこの学習法が長続きするんだろうと思います。
もう12月後半なんですね、本当に早いです。温かいねぎらいのお言葉、ありがとうございます。おかげさまで風邪も引かず元気にしております。どうか、せんごくさまもご自愛下さいませ。
心温まるコメント、ありがとうございました!(^^)